ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 妖伝説
- 日時: 2017/12/05 20:22
- 名前: 白虎丸 (ID: AZnIL7RT)
序章
丑三つ時、静かな夜に一人の男の叫び声が響き渡る。
「うわああ!化け物だああ!誰か、誰か助けてくれーっ!!」
その男は化け物から逃げていた。
しかし、すぐに化け物は男に追いつき、そして・・・
ズシャァ!
その男を切り裂いた。
「愚かなものよ。貴様ら人間ごときが、この俺から逃れられるわけがないのにな。つくずく人間の
愚かさには、飽きれを通り越して笑えてくるな。」
すると、ビュウ!と急に強い風が吹いてき、先ほどまで誰もいなかった場所にもう一人、化け物が
現れた。
「相変わらず容赦ないね、君は。」
その一言が合図かのように、次々と化け物たちが現れる。
「ほんと、狐は怖いよねぇ。人間に見られただけで、そいつ殺しちゃうんだもん。」
「まあ、狐の気持ちは分かるよ。」
「どちらにせよ、私たちの事が周りに知られれば、厄介ですし、結果として殺してしまうのが一番
でしょうね。」
「怖いこと言うんだな。あんたも。」
「どうせ俺らは人間に忌み嫌われている。何をしても変わらないさ。」
そして、化け物たちは笑う。
〜これは、人間から忌み嫌われた妖達と、とある一人の少女の伝説の話である〜
- Re: 妖伝説 ( No.7 )
- 日時: 2017/12/04 23:11
- 名前: 白虎丸 (ID: AZnIL7RT)
夜になり、いつも通り戸締りをしてから、夕飯を食べ、風呂に入り、
眠った。
どれくらい眠ったのだろうか。ふと目を覚ました。
いつもは朝まで熟睡しているのだが、どうしたのだろう。
二度寝しようと試みるものの、全く寝付けず、仕方ないので、少し散歩
にでも出かけようと、羽織を着て、灯りを持って外に出た。
やはり、昼間より冷える。羽織を着てきて良かったと思いながら、
辺りをうろうろする。
店から出たのはいいが、行く所はこれといってない。
どうしたものか、と考えていると、山中に神社があるのを思い出した。
少しばかり遠いが行ってみるかと思い、そこへ向かった。
暗いな。灯りを持っていても、その先は真っ暗な闇が広がっている。
まるで、私を別世界に誘い込んでいるかのようだ。
ずっと進んでいくと、どこからか鈴の音が聞こえだした。
チリン・・・チリン・・・チリン。
段々と鈴の音が近づいてくる。
その途端、視界がぼやけ始めた。
あれ・・・何で・・・。
そして、ゆっくりと意識を手放した。
- Re: 妖伝説 ( No.8 )
- 日時: 2017/12/05 23:07
- 名前: 白虎丸 (ID: AZnIL7RT)
・・・あれ、私・・・何してたっけ・・・確か、夜中に目が覚めて、
散歩しようと外に出て、山中にある神社に行こうとして・・・
それから、どうしたっけ・・・。
あれ、何か、話し声が聞こえる。男の人の声、だよね。
それも複数聞こえる。
「ん・・・ここは・・・っ痛い!」
足を少し動かしたら、激痛が走った。どうやら、足を捻挫してしまった
らしい。周りを見ると、七人の男の人が座ってこちらを見ている。そし
て、どうやらここは行こうとしていた神社の中のようだ。
一番手前にいる人が心配した様子で声をかけた。
「大丈夫か?足を酷く捻挫しているようだったので、手当はしておいた
が、まだ痛むか。」
「はい。ご迷惑をおかけし、すみません。」
すると、奥の方にいる人も、優しげな顔で話しかけてくる。
「いいのですよ。そのような事は気になさらないでください。
ところで、貴女はなぜあんな時間に山の中で何をしていたのですか?
彼が見つけた時、気を失っていたようですが。」
と、私の一番手前にいる人を指し言った。
「夜中に目が覚めてしまったので、散歩に行こうと思いまして。
山中に神社があるのを思い出して、行ってみようかと。」
「夜中に散歩に、しかも山中の神社って、かわってるね君。」
と、自分の癖毛を撫でつけていた人が私の方を物珍しそうに見ながら言
う。
「そんな事は言うものではない。しかしその足では帰りずらいだろう。
しばらくの間この神社にいろ。」
「それが良い。」
と、あとの二人が言う。
だが、ここにいては、迷惑になってしまうだろうし、早く帰らないとい
けない。
「でも、それでは、邪魔になってしまいます。それに、他の人も心配し
ますし・・・」
「別に邪魔じゃないから皆言ってるんだ。帰るにしても、あいつが言っ
たように、帰り大変だよ。ふもとまで行くのに結構時間かかるし、獰猛
な動物とかが出てきたりしたら、それこそ死んじゃうかもよ。
だからここにいなよ。」
端の方にいる眠そうにしている人もそう言う。
彼らの言う通り、この足じゃ帰れないし、正直あの店には戻りたくなく
なっている。ここは、お言葉に甘えさせてもらう方がいいのかもしれな
い。
「では・・・少しの間、お世話になります。」
- Re: 妖伝説 ( No.9 )
- 日時: 2017/12/12 20:15
- 名前: 白虎丸 (ID: AZnIL7RT)
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。」
と、奥の方にいる人が言った。
「私の名前は伊月と申します。そして、貴女をここまで運び、手当した
のが貴女の一番手前にいる・・・」
「武彦だ。よろしく。」
「よろしくお願いします。運んでくださって、有難うございました。」
そう言い、頭を下げる。
「別に構わない。何かあれば俺に言え。」
「はい!」
「そして、そこにいる癖毛が将輝です。」
「ねぇ、僕の紹介の仕方おかしくない?なんだよ、そこにいる癖毛、っ
て!もう少し別の言い方があるだろ!」
ふふ、確かに癖毛が目立ってる。
「はいはい、すみませんね。あと、そこの仲良しの二人が悠氏と千徳、
眠そうにしているのが総士です。そして最後にそこの無口が仁です。」
「・・・よろしく。」
「はい、よろしくお願いします!」
無口って・・・確かにあまりしゃべらなそうだけど。
「そいつは、めっぽう口を利かない奴だ。気にしないでくれ。」
「分かりました。あ、私の自己紹介がまだでしたね。私は凛と言いま
す。よろしくお願いします!」
そう言って頭を下げると
「うん、凛・・・か。良い名前だね!」
と、将輝さんが言ってくれた。自分の名前を褒められたのって初めて。
「有難うございます。」
「早速ですが、あなたの部屋は一番奥の部屋になりますが、よろしいで
しょうか?」
「はい、構いません。」
「服はこちらが手配しますので。」
「わざわざ買わなくても・・・」
と慌てて言うと
「女物の着物がありますから。」
と伊月さんが言った。
え?女物の着物ってあるの?と思っていると、それを見透かしたように
「一応、巫女はずっと前にですが、おりまして。その時の巫女の着物が
あります。もちろん、普通のもありますので。」
と言った。
良かった。流石に、男物のは着れない。
だが、いいのだろうか。そんな、先代の巫女が着ていた物を着てしまっ
て。それに、色々と本当に申し訳ない。
「すみません。私のためにそんな色々と。」
「構わない。それに、迷惑などとは思っていないさ。好きで俺たちがや
っていることなんだから。」
「そ。困った時はお互いさまって言うし。」
と、悠氏さんと総士さん。皆さん、心優しい方たちなんだな。
あまり、邪魔にならないようにしないと。
- Re: 妖伝説 ( No.10 )
- 日時: 2017/12/13 22:43
- 名前: 白虎丸 (ID: AZnIL7RT)
ここに居候させてもらってから数日がたった。
私の身の回りの事は、全てここにいる方たちがやってくれている。
食事も運んでもらっているし部屋の掃除や洗濯もやってもらっている。
流石にやってもらってばかりでは申し訳ないので、何か手伝おうかと
言ったが、皆さんには
「怪我人が何言ってるんだ。」
とか、
「そんな事はしなくていい。休んでいろ。」
など言われた。
確かに、怪我はしているけれど、居候させてもらっているのに何もしな
いのは本当に申し訳ないのだ。
というか、何か手伝ったりしないと落ち着かないのだ。
あの店で働いていたから、何か手伝うのは習慣になっているのだ。
思い切って、そう言ってみたら
「そんなに手伝いたいのであれば・・・針仕事、お願いできますか?」
と伊月さんが提案してきた。針仕事か。いいかもしれない。
「はい、私にできることならなんでも。」
「では、将輝の着物を直してください。彼は、着物は大事にしないよう
で、すぐに破いてくるんですよ。」
「な!俺がわざと破いたみたいに言うな!山ん中走ってたら、木の枝に
裾引っかかって破けちまうんだよ!」
「どちらにせよ、意味は同じです。他には・・・」
「特にないだろう。まあ、何もしていないと、退屈だろうし、何かあれ
ば言おう。」
良かった。何もしないのは、嫌だからね。
「では、将輝の着物を持ってきますので、少々お待ちください。」
「はい!」
嬉しい。役に立つことができる!頑張ろう!
- Re: 妖伝説 ( No.11 )
- 日時: 2017/12/17 23:56
- 名前: 白虎丸 (ID: AZnIL7RT)
今、将輝さんの着物を繕っている。それにしても、かなり破れている。
そんなに破れてしまうものなのだろうか。
でも、元気のいい将輝さんのことだ。きっと、山を駆け回ったりしたせ
いだろう。その姿を想像すると、自然と笑みが浮かぶ。
しばらくすると、伊月さんがお茶とお菓子を持ってきた。
息抜きでもしようかと思っていたので、丁度良かった。
「ありがとうございます。」
「いいえ。作業はどうですか?」
「順調です。」
「大変でしょう。あちこち繕わなければなりませんからね。将輝も、も
う少し、謹んで行動していただきたいものですがね。子供ではあるまい
し。」
「ふふ。でも、元気があって良いじゃありませんか。」
「元気が良すぎてもいけませんが。限度というものがあるでしょう。
さあ、茶と菓子を召し上がれ。」
そう言って差し出されたのは、緑色の濃い緑茶と、ようかんだ。
ようかんは私の好物なので嬉しくなった。
ようかんは四つあった。私だけ全部食べてしまってはいけないないの
で、伊月さんに二つ差し上げる事にした。
「伊月さん。二つ、差し上げます。」
すると、伊月さんは驚いた様子で
「私のことに気を遣わず、全部食べてください。」
「いえ、私だけ食べてしまってはいけません。」
「そうですか。では、いただきます。」
伊月さんがようかんを口に運ぶ。
それにつられて、私も一つ口にする。
小豆の味が口いっぱいに広がっていく。
甘すぎず、かと言って薄くもなく、丁度いい感じのほんのりとした甘
さだ。やはり、ようかんは好きだな。食べると、美味しくて頬が緩む。
「ふふ。お気に召したようですね。良かった。」
「凄く美味しいです!どなたが作ったんですか?」
「私です。」
「え!?」
「料理は比較的得意なので。特に、こういった菓子作りは上手いほうだ
と思っておりますが。」
「本当に美味しいですよ!」
そう言って口に運ぶ。
「そんなに褒められるなんて。嬉しいです。」
そして、緑茶のお椀に手をつけた。お椀を回し、お椀の色や形などを見
て、お茶の色や香りを楽しむ。そして、一口飲む。
香もとても良かったが、味も良い。さっぱりしていて、お菓子の後の
お茶には最適だ。
「このお茶、とても良い香りで、美味しいです。」
と言うと、伊月さんはふっと、笑い
「良かったです。」
と言った。