ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

confuser WARS
日時: 2018/04/10 11:52
名前: 第六天魔王六世 ◆D5Fm7GU/Nk (ID: uAlEbnba)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=817.jpg

死体の山が阿鼻叫喚の地獄絵図を表すように激しく静かに横たわる。

敵が味方が死んでいく。

……赤い鎧が味方だ。

「……ぐぐ……この我が…追い詰められたのか…!」

眼前で狼狽しているのは徳川家康。討つべき敵だ。
既に家康は自害しようとするほど追い詰められていた。

その家康を睨みつつ、敵兵の腹を刺す。殺しの音。
戦場では常に耳にしなければならない音。
誰かの何十年の人生が一瞬で無に帰す虚無への回帰を表す音。

どれだけ重ねても、崩れるのは一瞬。
いやむしろ、積み上げれば積み上げるほどに、その崩壊は酷くなる。

敵兵が、溢れる腸を気にも留めず、最後の力を振り絞って呪咀をかけてくる。
「…貴様は………豊臣方……豊臣方は……皆殺……………」

なので、首を斬って呪咀を遮り、返す。

「そうだよ……俺ぁ……豊臣方さ……。だが……その前に……………人間だ……」

……本当はもう悟っている。じきに死ぬということを。
どうせ死ぬのならば、首はくれてやる。死んでまで守る大義はない。死ねば無だ。
これまでの全てが崩れる、と言ったが…ならば地獄で積み直せばいい。
どの世界でも変わらず功績を積み上げるために生きる。その努力が一瞬で崩される。
崩れるからこそ、映えるのだ。盛者必衰。刹那の輝きこそ美しい。
この幸村めの生き様も、刹那の輝きだからこそ誇らしい。
だから、首を差し出す気で突撃した。


それに、敵とて同じことだ。ならば────









真田幸村の猛進は、正直腹を下すほど恐ろしい。
「もう……死ぬしかないのかなぁ………我」
幸村に殺されるのも、自害するのも同じことだろう。

それでも、家臣は必死に止めてくれる。
美味い天ぷらを食べられなくなる、と。そして、自害は人生の否定だ、と。

果たしてそうだろうか。自害とは生きているからこそ出来ること。
辺獄をさまよう死者に自害は不可能だ。

ならばいっそ自害してしまった方が、楽だろう。負け戦を闘い抜くのは美徳ではない。
ただの我が儘だ。大義のために死ぬのは、大義を守り抜けないのと同義。
大義のために、無責任に…むざむざと殺されるのはごめんである。

敵に手柄すら与えてしまう。ならば────




───────────────────────






「よう、家康」

迫る兵を殺しながら幸村が言う。その顔は憂いを帯びているようにも見える。

「…………」

家康は何も答えない。自害の算段は付いている。
目の前で自害すれば、コイツに恥をかかせてやれる。敵将を殺せなかった恥を。

「何黙ってんだ、家康。来いよ」

その挑発には乗らない。殺されるのだけはごめんだ。
自害した男の無価値な首を掴ませてやるのだ。

だが、そこで幸村は何故か刀を降ろした。まさか心のうちを見透かされているのか。

と、

兵達が一斉に、幸村に群がる。刀を降ろせば武士も平民も同じひ弱な人間だ。

幸村はそして吠えた。天にも届く大声で。

「手柄を……くれてやらあああああああっ!!!」






──1939年 大日本帝国本営


「我等は必ず勝つ。大日本帝国は不滅なのだ!」
声を張り上げたのは、大本営の中で最も暑苦しそうな男であった。名を吉良野半蔵という。

「勝てるわけがない。アメリカの国力は日本の比ではないんだぞ」
冷めた声でそれに返したのが、大本営で最も注目されている、五条斗賀。
大本営はこの男の言うことを何の根拠もなく信じるのだ!
軍部は最早全てを諦めていた。
勝てないと。

勝てない。

アメリカは強い。


アメリカは……
「いででででで!何だよここは!!?」
…?

そこには、先程までいなかった筈の、…鎧を着た男が転がっていた。

「…!?うわっ!お前ら何者!?」
「こっちが聞きたいね。君…鎧なんか着て何をしてる?どこの誰だ?」

「………俺の名を知らんとは……」
すると男は腰の刀に手を当てた。嫌な予感へまっしぐらである。

「無礼者が!斬り伏せてやらぁぁぁ!!」
嫌な予感は的中するものだ、良い予感よりもずっと高確率で。

だが、



ガキュッ



ヒュンヒュンヒュン



サクッ



「んなっ」

「アンタ…いきなり危ないわ。何なの」

先程男が振り下ろした刀は、そこに現れたこれまた謎の女に弾かれていた。

「何じゃいオマエは!失せろ尼めが!」
「うっさい!豚がぶしょったい糞垂れ流す時みたいな声で喚くんじゃないだに!」

と、斬り合いが始まった。


「何じゃと!?オマエこそ下町の男みてえな下品な喋り方しやがってよォ!おあいこじゃねえか!あー!?」


「アンタほど汚くないだら!このヘド爺!はよ老いて往ね!」

「おい君達!ここで戦うな!見るからにどちらも我が国の民だろう!」
議会長が止める。

「お前誰け?誰け?あ?関係ないだら、黙っとけチビ助!その目の周りの輪っかみたいなん取ったろけ!?」
女が捲し立てる。
「うるせー爺ィコラ!てめーも勝負の最中に背中向けんなァ!」
ついでに男にも捲し立てられる。

「もう訳が解らん。どうなってる。奴等、見てみたら現代の服装ではないぞ」
「本当だ」
「………」
議会長が考えて、もう一度…しかし先程より低く重い声で言う。
「……君達、何者だ?」

Re: confuser WARS ( No.1 )
日時: 2018/04/10 12:15
名前: 第六天魔王六世 ◆miwaoqDlgA (ID: uAlEbnba)

男は名乗った。我こそは真田幸村である、と。

女は名乗った。私こそは井伊直虎である、と。

どちらも、死んだ筈の人間。この1939年の日本には存在しない筈の人間だ。


議会長達は混乱していた。何故こんなことが起きているのかすら解らない。



「あー糞垂れどもが。何だここは。後少しでカッコよく死ねるとこだったのによぉ!」

幸村が叫ぶ。

斗賀は冷静に答える。

「ここは大日本帝国。1939年…アメリカとの戦争を始めるか否かで大人げなく揉めているところだ」

すると幸村は斗賀の首もとに刀を当てた。斗賀は思わず短い悲鳴を溢した。

平静を装っている斗賀でも、殺されるとなったら話は別か。

幸村は冷酷に斗賀を見下ろして言った。

「戦争?アメリカ?何だそれはよ」

斗賀はしどろもどろになりそうなのを抑えて答える。

「…アメ…アメリカという大国があり……、
日本は…その大国によって石油…つまり物資が入ってきにくい状態にされ、
戦うか戦わないか言い争っているのだ…」

「ほぉ、で…戦うのか」

「否……勝てない相手に挑むのは───」

と、言いかけたところで幸村の分厚い拳が斗賀を弾き飛ばした。

「バカタレが!勝てるか勝てんかの話は聞いてねぇよ!
負け戦とか何とか言い訳作って逃げてんじゃねーぞタコ!あぁ!?」

幸村は、それでもまだ怒りが収まらず、壁を蹴った。するとそこに大穴が開いた。
軍服を着た男達は震え上がった。

「負けるから何されても黙っとけっつーのか、てめーら腰抜けどもはよぉ!あぁ!?答えやがれゴラァ!!」

斗賀はもう涙目になりながら答えた。

「はひぇぇ……すみませんでしたぁっ!命だけは…命だけはお助けを…」

すると幸村は、深呼吸し、目を瞑った。

そして目を開け、先程とはうってかわって静かな表情で返した。

「………もういい」

幸村はそれから少しして、叫んだ。

「……お前ら……この日本は……………

大日本帝国は………

俺が率いる!」

Re: confuser WARS ( No.2 )
日時: 2018/04/10 17:54
名前: 第六天魔王六世 ◆miwaoqDlgA (ID: uAlEbnba)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=901.jpg

唐突だった。

勇猛果敢なのかその場のノリで言い放ったのか…とにかく叫んだ。

軍服どもは唖然としていた。当たり前である。
真田幸村がいくら強かろうと、現代には通用しない。

井伊直虎を名乗る女は呆れ果て、ずっと黙っている。

そんな状況が二分程続いた頃。
どこからともなく──


『alternative』


そう書かれた扉が轟音と共に現れた。


「うぉお!何だてめぇ!」

幸村が扉に怒鳴る。

すると、扉が開いた。

出てきたのは、一言では言い表せぬような…奇抜で毒々しい少女だった。

「……女ぁ……?」

「何いきなり『女ぁ?』って。失礼ね、この脳筋」

「だ……誰が脳筋だとコラァ!」

「あーけたたましい。黙りなさい。真田幸村」

「な…何で俺の名前を………さっきの話聞いてたのかよてめえ!」

「私は何でも知ってるの」

すると井伊直虎が堪りかねて訊く。

「んじゃ、私はどうなる!?これから私はどうなる!?
このまま、このぶしょったいとこで糞尿どもと一緒に死ぬんけ!?」

「誰が糞尿だとコラァ!」

「糞尿に糞尿言うて何が悪い!」

「だーまーれーこのク………」

───突如。突如、幸村の暴言が止まり、次に直虎が喋れないという風にもがく。

そして少女が話し始める。

「話を聞きなさい。あなた達はこれから殺し合う。

いい?これから『第二次世界大戦』という大きな戦争が始まるの。

国同士の戦いで、あなた達の時代の戦争をはるかに凌ぐ規模の戦争よ。

そ各国にあなた達みたいないわゆる『国の英雄』が出現し、その国のために戦う。

アメリカならペリー、フランスならナポレオン…って、あなた達は解らないかしら。

とにかく、あなた達はこの国……大日本帝国を守るために戦う。
仲間割れしたり、裏切ったりすれば国が滅びる。あなた達、ここから先もその様子が続くなら大日本帝国そのものが滅びることになるからその辺理解しておきなさい。

……さあ、説明は以上よ。理解出来ないところだらけでしょうけど、あとは知ーらない」

すると、謎の力から解放され発言権を取り戻した幸村がまた叫ぶ。

「おま…え……お前ナニモンなんだよ!」

すると少女は、含みのある笑みを浮かべて答えた。

「オルタナティブ」





オルタナティブが扉を開け、閉めると同時に全てが終わり、始まった。


Page:1 2 3 4



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。