ダーク・ファンタジー小説
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- 新撰組を見たのは
- 日時: 2018/09/25 21:04
- 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
この時代には珍しい短い髪の少女がいた。彼女は三雲沙恵、ある日死が近い
母は彼女に地図と手紙を持たせその場所で働きなさいと言ってこの世を去った。
彼女は母から渡された物をヒントにその場所へと向かった。
その途中は彼女は宿で襲われる。そこを数人の男たちが救った。
出会い、池田屋編 >>01-07
- Re: 新撰組を見たのは ( No.8 )
- 日時: 2018/09/26 18:41
- 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
「お?もしかして沙恵!?」
刀鍛冶の前に立つ男が斎藤や原田と見回りをしていた沙恵に声を掛けた。
その男の姿は沙恵も覚えている。
「有介さん!!久しぶりです!!」
久遠有介、光重の従兄弟に当たる男だ。彼は一流の刀鍛冶屋である。
「沙恵の知人か?」
「はい、久遠有介さんです。有介さん、こちらは原田左之助さんと斎藤一さんです。
今は彼らの元で働いているんです」
有介は「ほぉ」と言い彼らを見た。斎藤も有介の手にある刀に目を向けた。
「その刀…」
「あぁ、これか?俺が作った刀さ。だがないつまでも売れずに残っちまってな。もしよければ
持ってってくれねえか?俺は刀を作るが剣術はからっきしでな」
斎藤は有介から刀を受け取り鞘から刀を抜いた。鋭く刀身が輝く。斎藤は刀を鞘に
納める。
「刀には作った人物の思いが写る。この刀にはアンタの刀に込めた思いが滲み出てる」
「そりゃそうさ。刀を使う人を俺たちは選べねえ。だが思いを込めることには意味がある」
斎藤は微笑み刀を抱く。
「この刀、俺がもらっていく」
「え?斎藤?」
****
「あの有介って男、嬉しそうだったな」
原田は斎藤が刀を貰っていくと言ったときの有介の顔を思い出す。
沙恵「そうですね。私の護身用の刀とかも有介さんが作ってくれたんですよ、
日輪って名前があります」
原田「日輪、太陽のことだな」
- Re: 新撰組を見たのは ( No.10 )
- 日時: 2018/09/27 19:38
- 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
元治元年7月、つまり今は真夏である。
巡回中、周りの目が気になった。何やらヒソヒソと話している。
道場、そこに帰ってくると全員暑さに参っていた。沙恵も手で自身を扇いでいた。
「全員、集まってくれるか?急用なんだ」
少し早口で近藤は全員にそう告げた。
全員が集められ話を進める。会津藩主を倒すため兵を挙げた長州藩を倒すべく
新撰組も戦いに参加することになった。これが後の禁門の変である。
土方「しかしお前も来るのか?沙恵」
沙恵「はい。手当てとかなら役に立てるはずです。護身用の刀はありますし…頑張ります!」
羽織を纏った沙恵は自信ありげにそう言い切った。それを見て土方は頷く。『誠』の字が
書かれた旗が挙げられ会津藩と合流する。
そして戦は始まる。大砲まで使われるほどの戦いだ。
「大丈夫?僕」
沙恵は小さな子に声を掛けていき避難するよう促す。そして彼女が刀を抜いた。
「なんだぁ?お前」「ハハッ自分から死にいくような恰好しやがって!」
「そういうの、やめてください。暴れんならチャンバラごっこしてれば!?」
その声を近くで戦っていた永倉が聞いていた。
刀を持ったまま声のした方向へ急いだ。一方の沙恵もどうにか刀で男たちの刀を受け流していた。
受け流すだけで精一杯である。持ってはいるが剣術の心得など全くない。
「沙恵——!!」
「永倉さん!!?」
沙恵は少し屈み避ける。
「クソこの!避けるな!」
「失敬な!危なくなったら避ける!当然っしょ!?」
ポロッと出た強気な口調、それは光重も言っていた。
「後ろがガラ空きだぜ!!」
あっという間に男たちが前のめりに倒れた。沙恵も刀を納め、息を整える。
「大丈夫か?沙恵」
「はい、ありがとうございます永倉さん!」
突然、沙恵の後ろに燃えている柱が倒れてきた。戦火だ。
その炎は次々と他の建物に燃え移る。
「…ここも危ないな。移動するか」
- Re: 新撰組を見たのは ( No.12 )
- 日時: 2018/09/27 20:58
- 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
新たな隊士、伊東甲子太郎。飄々とした彼には裏があるように沙恵やその他数人の隊士には
見えた。
山南「どうしたんですか?いつも以上に眉間に皺が寄ってますよ土方さん」
優しく微笑む山南の顔を見て土方も少し笑った。
土方「いいえ、少し考えてしまって…」
山南「…もしかして甲子太郎くんのこと、ですか?」
土方「当たり前だ!山南さんは悔しくないのか!?あんなに言われて」
山南のことを伊東は罵っていた。だがそれを黙ってみているしかなかった。
山南は反論しようとした彼らを止め、庇ったのだ。
山南「良いんですよ、僕のことは…気にしないでください。僕は皆が傷付くのは
嫌ですから」
沖田「あ、いたいた。山南さん!」
沖田と永倉、原田、平助、斎藤、近藤そして沙恵。
近藤「いつも仕事ばかりでは疲れるだろう。どうだ?島原に行ってたまには休もう」
土方と山南は互いに頷く。
山南「では一緒させていただきますね」
****
島原、そこには山南の恋人がいる。
??「まぁ!おいでやす山南様」
山南「明里。久しぶりです」
明里と呼ばれた女は山南の手を握る。
近藤「そうか、山南さんの恋人というのは…」
沖田「芸妓のことだったんだ〜」
沖田は悪戯っぽく笑った。
明里「私は芸妓どす。ここに来た皆さんを楽しませるんが仕事どす」
彼女は沙恵に目を向けた。
明里「光重はんの娘さん?光重さんとは反対な雰囲気ですが似ておりますね」
沙恵「あはは、母は気が強くてどんどん行くんですけど私はどうも、ね」
永倉「そういえば光重さんはここで芸妓姿になったこともあるな…沙恵の芸妓姿も
見たいな〜‥‥」
全員の視線が沙恵に集まる。
そして数十分後、芸妓姿の沙恵は明里に支えられお披露目された。
明里「ほんに嬉しいわ山南様、無茶はせんでくださいね。ほな皆さん、また来てください」
明里は店を出ていく新撰組一同に手を振った。
- Re: 新撰組を見たのは ( No.13 )
- 日時: 2018/09/28 17:52
- 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
あの夜、島原から帰って来た沙恵の机に一枚の手紙があった。
『母に会いたいだろう?父に会いたいだろう?なら大阪城へ来い。夜に』
その後に沙恵の様子に違和感を感じ土方は山崎烝に彼女の様子を見させることにした。
近藤「トシも感じたか、沙恵ちゃんの違和感」
土方「当たり前です。明らかに可笑しいでしょう?」
沖田「へぇいつも彼女に冷たい態度取ってる土方さんがそんなこと言うなんてね」
夜の静かな町を沙恵は歩いていた。大阪城前で数人の男たちに少々強引に中へ入れられる
沙恵の姿を見て引き返し報告した。
中では数人の男と沙恵が向かい合っていた。
「この手紙を送って来たのは貴方たちですか?何故そんなことをしたんですか?」
大柄な男、狭霧。赤い目の男、御影。銃を扱う男、才人。
御影「あぁ、だが本当に来るとは思わなかった。本当に会える、とでも思ったのか?」
沙恵「…そんなこと思ってません。大切な人を利用したことに私は怒っています!
貴方たちがやったことは外道中の外道がやることです!」
才人「随分と強気じゃん?でもさぁ俺たち相手に戦えると思ってるわけ?」
不敵な笑みを浮かべ才人は銃口を沙恵の額に突き付ける。沙恵の顔が引き攣る。
だが全員の耳に騒がしい音が入ってくる。
扉がゆっくり開き数人の男たちがやってきた。
土方「なるほど、この手紙を書いたのはお前らか」
土方は沙恵の自室にあった手紙を破いた。
永倉「無事か?沙恵」
沙恵「はい、すみません迷惑を掛けまいと思ったんですけど…余計迷惑かけちゃって」
原田「いいやこれは寧ろ、御手柄かもしれないぞ」
どうやら土佐藩士たちが大阪城を乗っ取ろうとしていることを察知したのが今日、沙恵が
大阪城に行ったことを知り今、彼らが来たのだという。
- Re: 新撰組を見たのは ( No.14 )
- 日時: 2018/09/28 18:22
- 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
土方「斎藤、沖田!お前らは沙恵を先に連れ帰れ!」
二人は頷き沙恵の手を取る。沙恵は少し振り返りながら大阪城を後にする。
沖田「…本当は嘘だって分かってたでしょ?沙恵ちゃんさ」
沙恵「……」
そんなことは分かっている、だがどうしても許せなかったのだ。大切な両親を
利用されるのは。
沖田「…一言、言ってくれればついてってあげたのに」
沙恵「す、すみません…あの手紙、前にもあったんです」
前の手紙、両親に会えるという手紙の後に受け取った手紙には新撰組のことまで
書かれていた。
斎藤「俺たちのことが…」
沙恵「だって嫌じゃないですか!脅迫に他人の名前を使うなんて!」
突然、二人は足を止めた。沙恵も一旦止まった。沖田と斎藤は刀を抜き両サイドから
斬りかかって来た藩士たちを斬る。
斎藤「…囲まれたか」
沖田「みたいだね」
二人が動くと同時に三人を囲んでいた男たちも斬りかかって来た。
城の外では槍が空を切る音と銃の発砲音が聞こえていた。
原田「お互い無傷ではないみたいだな」
才人「まぁ、ね。でもその傷は結構辛いんじゃないかな?」
右肩には弾が貫通した傷がある。
土方「ッ」
土方の右頬を御影の刀が掠る。
御影「前を見ることだけが戦いじゃないぞ?」
土方「黙れ。お前ら何故、沙恵ばかり狙う?それもどうやら光重と彼女の夫のことも
知っているようだな」
御影「語るようなことではない。だが光重という女は死んじゃいない、勿論ソイツの恋人もな」
平助「何でお前らが光重さんのことを…」
平助は息を切らしながらそう呟く。
狭霧「私が言えることではない」
永倉「なら力尽くで言ってもらうぜ!」
永倉の刀を狭霧は素手で掴む。平助の刀も同じように掴み二人を投げ飛ばした。
狭霧「一つ言えることは——」
御影「一つ三雲沙恵に伝言を頼もうか?三雲光重も修之介も無事だということだ」

