ダーク・ファンタジー小説

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ゴーストトレイス
日時: 2020/01/19 14:51
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

前代未聞、現実離れした霊障事件発生。

多くの後輩、先輩に囲まれる女刑事、神導エト。
霊能力を持った刑事たちは今日も霊を追いかけて事件を解決に導く。
彼らの元に届く事件は霊能力関連、そして霊関係のモノだけである。

序.「霊能力を持たない刑事エト」>>01
霊障1.「通行止め橋」>>02 >>03
閑話「鬼神を宿す者」>>04 >>05
霊障2.「知らされなかった知らせ」>>06>>08
「鬼神を知る住職様」>>07
霊障3.「古き劇場の炎舞」>>09>>10>>11

「一段落した」>>12

霊障4.「悪ガキを裁く鬼」>>13>>14>>15>>16
霊障5.「女性虐殺事件」>>17-19
霊障6.「

Re: ゴーストトレイス ( No.10 )
日時: 2019/11/05 18:47
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

いち早く危機を察知した夜叉丸はエトを突き飛ばす。後方に押し倒されたエトは目前に
広がる火柱を見た。彼がいなければ焼き消されていたかもしれない。礼を述べると夜叉丸は
「礼なんていりません」と答える。

「この辺だな…準備は出来てるな?入るぞ」

扉を開くとステージの方に炎に包まれた女がいた。変わり果てた炎の魔女、あれが自身の
死を知った国枝律子の姿である。

「来たんだねエト…で?霊障退治かい。いい加減、身の程をわきまえな。アンタは課の中でも
最低ライン、底辺だよ。この仕事で生き残れるなんて無理な話さ」
「聞き捨てならねえな律子先輩。全員がそう考えてんなら今頃、エト先輩はいねえよ」

いつの間にかいる不動明王、それは興信の式神である。否、神卸といってもいいだろう。
そのまま彼は殴り掛かる。炎の中に突撃してもへっちゃららしい。

「血気盛んだね。だけどアタシも武術に精通していてね」
「かはっ!?」

カウンターの膝蹴りは興信の腹を捕らえた。防御がスカスカだった。興信は攻撃に徹している。
一方律子は防御に徹している。

「神導エト、アンタを妬み恨む理由は特にないよ。所謂八つ当たりって奴さ。どうせ
短い時間さ…ゆっくり楽しもうじゃないか!」

さっきまでよりも大きな火柱があちこちから上がる。同時刻、別口から入った刑事たちがいた。

「…恐らく中にいるわね。急ぐわよ八咫野君」

久能麗はヒールを鳴らし急ぎ足で進む。彼女に付き添っているのは八咫野幽やたのかすかだ。
彼も夜叉丸ら同様にエトを慕う後輩の一人。最初こそ彼女を認めなかったがエトの器の
大きさに惹かれていった。

「あの人は舐めてるのね。あの子は決して底辺じゃない。あの子は理想の上司って奴よ」

Re: ゴーストトレイス ( No.11 )
日時: 2019/11/06 18:56
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

火柱が上がっていたであろう場所に足を置くと軋み片脚が下へ沈む。その穴はエトの
体重で大きくなり彼女を呑み込んだ。声も上げずに落ちていった彼女に気付いたのは
数分後、夜叉丸が声を掛けた時だった。返事が無かった。

「あらら…落ちちゃったみたいだね。その下はコンクリートのはずだ、無事じゃすまないだろうね」
「テメェ…俺らの上司だったからって調子に乗るなよ?それにアンタ、無線機も持ってねえらしいな」

興信が不敵な笑みを浮かべた。

「聞こえねえのかババア。応援隊の声がよぉ!」

背中を下に向けて落ちていくエトの耳に誰かの声が聞こえた。エトの体は誰かに支えられ
ゆっくりと地面に足を付けた。

「グッドタイミングだったみたいねエトちゃん。ラッキーよ」

八咫野が小さく微笑み頷いた。エトも胸を撫でおろし彼らに礼を述べた。周りに目を向けると
そこには粗末な墓があった。線香も無ければ花も無い。墓石には国木田律子と名前が
彫られている。

「律子さんの旧名ね。結構古い墓だと思うわ」

麗は肩に掛けていたバッグから線香を取り出し火をつける。辺りに線香の独特な匂いが
漂っている。

「花は持ってこれなかったけど線香だけでもあげましょう。あの人を倒すのは正直難しいわ。
なら弔って成仏させるしかない。そうすれば多少は弱まるはずよ」

麗、八咫野、エトはそれぞれ線香をあげた。そして手を合わせる。そしてエトに向き変る。

「で、上から落ちて来たけど…もしかしてあの人は上にいるの?」
「今は夜叉丸君と興信君が相手しているはずです。急ぎましょう!」
「そうね…最後ぐらいしっかり目に焼き付けておきましょう」

上の階へ急ぐ。階段を駆け上がると悲鳴が聞こえた。二人がいる部屋に来ると原型の無い
炎がいた。

「最後…」

八咫野が小さく呟いた。炎は段々と弱まりやがて何もなかったかのように消えていった。

「成仏したみたいね。さてと報告書を書かないと…」

国枝律子、霊障化。成仏完了。

Re: ゴーストトレイス ( No.12 )
日時: 2019/11/09 14:31
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

霊障特別課は上層部では登録されているが表向きには発表されていない幻のような
課である。霊障特別課の存在を知る警察はごく少数に限られている。

「さて、本題に入ろうか。霊障特別課、新課長の草凪菫」
「はい。警視総監」

長い黒髪をした女刑事、草凪菫は真剣な表情で目の前の男を見た。

「話に聞いたよ、これからも霊障特別課の活躍を期待している」

霊障特別課のオフィス。事件の報告書を書き終えたエトは大きく伸びをした。

「お疲れだねエトくん」
「あ、灰崎さん」

いつの間にか後ろに来ていた男、灰崎憶久はスッと微笑む。何かと怖い噂が立つ
男だが穏やかな性格だ。そしてエトの上司の一人である。彼の持つカンテラの中には
黄色っぽい炎が灯っている。ただの炎ではない、それは「悪魔」である。

「最近は事件が連続していたから疲れるのも無理はない。もう休憩の時間だ。
休んだらどうかな?」
「じゃあそうします。お先に失礼します」

最近、営業停止中だった食堂がリニューアルしたという話を聞いた。エトはそこに
足を運ぶ。

「おぉ、なんか久し振りに見た気がしますね」

後輩の一人、雛野斎ひなのいつきだ。年齢はエトより上だが入って来たのはエトより後なので
彼はエトを先輩として認識している。

「つーか今の今まで気づいてなかったけど先輩、霊能力は使えないんすね。そんだけ
力があるのに使えないとか勿体無いと思うけど」
「そう言われましてもね?無いものは無い」

昼食を食べながら二人は話す。どうやら彼女の霊力はかなり高い方らしい。なのに霊能力を
持たないことは他人も本人も謎である。

Re: ゴーストトレイス ( No.13 )
日時: 2019/11/13 21:04
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

霊障特別課に新たな事件が入って来た。

一週間ほど前から現れた悪童狩り、彼はナマハゲを名乗り世間を脅かす。既に
数十人の少年少女が重傷を負わされている。ナマハゲが襲うのは全員学生で被害者から
事情聴取すると彼らに共通点が見られた。

「やっぱり多いんだな、こういう悪童も。エト、まさかお前もッてことは無いよな?」

柄シャツを着た男、萩野槙人はエトに聞く。エトは笑いながら首を振る。

「私、怒られるようなことをする勇気はなかったし目立ちたくなかったから…それに
悪い事と良い事の見分けはちゃんとついてたよ」
「だよな」

被害者の行った悪行は虐めや集団暴力、飲酒運転など様々だ。軽傷で済んだ人物も精神的な
傷が深い。病院送りされた者のの中には両手足を折られる、全身火傷など数知れず。
悪童は多い、たった一週間で数十人にも上る悪童を調べることは出来るとは思えない。
つまり考えられるのはもう一人の霊能力者。

「共犯っすか…ってなると共犯者の能力は…」
「探知能力かな?サイコメトリーとかも考えられそうだけど」

斎の言葉に繋げるようにエトは自身の考えを話す。ただ単に悪行が許せないというだけで
ここまでするのだろうか?もっと悪行が許せなくなった理由があるはずだ。そして
その行為は人間技ではない。何か強化系や憑依系の霊能力を持っているのだろう。
ナマハゲと名乗っている辺り、鬼の力と考えるのが妥当だ。ネットではナマハゲを批判する
意見もあれば彼をヒーローとして称える者もいる。若干、後者の方が多い。ネットのみならず
テレビでもその事は取り上げられている。

「先輩はこの事件の事はどう考えてるんですか?」

夜叉丸は横目でエトを見た。

「そりゃあ悪いことはダメだけどナマハゲがやってることも結局は同じだと思うよ。
言葉じゃ止められないことはある。何度言ってもやめない人の方が多いからね」

Re: ゴーストトレイス ( No.14 )
日時: 2019/11/14 19:20
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

「凄いね、これならあっという間に悪い子は消えるよ」

セーラー服を着た少女はスマホの画面を見て微笑む。ネット上ではかなりナマハゲの
存在が広がっている。嬉しそうに眺める少女の顔が少し歪む。都市伝説、幽霊を手懐ける
警察という題名が付けられている。

『幽霊を見つけて退治する警察がいるらしいよ』
『いや幽霊なんていないだろ』『だよねぇwww』『こんなのでっち上げだろ(笑)』

「本当にそんな人たちがいるのかな?ねぇどう思う?」

少女の目線の先には大きな包丁のような刀を持ったナマハゲがいた。彼は再び悪童を
狩る。彼らが動き出した頃、同時にエトたちも動いていた。

「煙草吸いながら適当に歩いてろって…一体どういう風の吹き回しだ」

バンダナをつけた少年、否、男は言われた通りに道を進む。エトの後輩の一人、
影井リュウだ。彼の式神は小さな黒いトカゲ「ハリム」だ。ハリムを通して
リュウは影を操ることが出来る。

『でもきっと何かあるんだよ。リュウも知ってるでしょ?』

上着の内側からひょっこり顔を出した。エトが言うに一般人に見えるようにハリムは
隠すらしい。そして本命は案外早く来た。隠れて見守っていたエトたちの眼にも見えた。
写真にあったナマハゲだ。

「未成年の喫煙か…」
「あぁ!?誰が子どもだよ!!俺は列記とした男だっての!!」
「え?でも…その身なりで言われても…」

ナマハゲの後ろから顔を出す少女が困惑する。青筋を浮かべるリュウにハリムは小声で
『リュウ、抑えて!抑えて!』と呟くがそれは出来なかった。

「よぉし、テメェら歯ァ食いしばれよ?」
「お前…噂の幽霊警察か」
「随分と有名なんだな…まぁ事情はじっくり聴かせてもらうぜ」

リュウが影を右腕に纏って殴り掛かる。同時に全員が動いた。


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