ダーク・ファンタジー小説

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ゴーストトレイス
日時: 2020/01/19 14:51
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

前代未聞、現実離れした霊障事件発生。

多くの後輩、先輩に囲まれる女刑事、神導エト。
霊能力を持った刑事たちは今日も霊を追いかけて事件を解決に導く。
彼らの元に届く事件は霊能力関連、そして霊関係のモノだけである。

序.「霊能力を持たない刑事エト」>>01
霊障1.「通行止め橋」>>02 >>03
閑話「鬼神を宿す者」>>04 >>05
霊障2.「知らされなかった知らせ」>>06>>08
「鬼神を知る住職様」>>07
霊障3.「古き劇場の炎舞」>>09>>10>>11

「一段落した」>>12

霊障4.「悪ガキを裁く鬼」>>13>>14>>15>>16
霊障5.「女性虐殺事件」>>17-19
霊障6.「

Re: ゴーストトレイス ( No.5 )
日時: 2019/10/15 17:43
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

「夜叉丸!夜叉丸しっかり…しっかりするのよ!」

焼かれるような熱は少年の体を蝕んでいた。少年の手を彼の母親がギュッと
握る。「こっちです」と落ち着きつつ慌てる父親の声。連れて来たのは中年の男だ。

「お、陰陽師様!ど、どうか助けてください!この子だけは…」

泣き崩れる母親に陰陽師はそっと口を開く。

「落ち着いてください。大丈夫です。しかし話したことは忘れていませんね?これは
一生彼の体に残るもの」
「構いません。この子が助かるなら!」

両親の強い思いに応えるべく男は包みを開き準備する。

「夜叉丸か…とても強そうな名前だ。ここまでよく耐えたね。本当に逞しい子だ。
これは一生残る。すまないね…」

男が筆を執る。そして体に何かを書き始める。

「僕にも娘がいてね。君より少し年上だけど、優しい子だ。今は色々酷いらしくて
泣いてる姿ばかりさ…僕はね、霊障を扱う元・警察だよ名前は×××。もしかしたら
君はいつか僕の娘の後輩になるかもしれないね。もしまた苦しくなったら是非頼りなさい」

過去の夢から覚めた青年の体には確かに男が施した封印が残っていた。

Re: ゴーストトレイス ( No.6 )
日時: 2019/10/16 19:06
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

霊能力は暴走するときがある。相当な危険が迫ったとき、心に傷を負ったとき、人によっては
制御装置が破壊された時。暴走した場合、霊障化したときは酷い場合始末することになる。
そして今、様々な霊障が一度に舞い込んできていた。正直霊能力を持たないエトは足手まとい。
そう思われているに違いない。その時、ヒールを鳴らし歩いてきた白衣の女性がいた。
柚花ではない、凛とした女性だ。監察係、久能麗。

「良かったエトちゃん、いるわね。ちょっと来て!」
「え、あ、ちょっと!」

強制的に立たされ場所は資料室。一つのファイルが机に置かれている。

「貴方、聞いてないの?貴方の後輩が霊障化したのよ!」
「え!?」

聞いてない。霊障化した場合は必ず全員に通達がされるはずだ。それが来ていなかった。

「どうしてかは分からないけど…良いわ。貴方宛てに伝言を頼まれたの。この辺に
住んでいる寺の僧、藤堂さんって人なんだけどね…とりあえずその人が住む寺に
行って頂戴、住所は—」

外に出て車に乗り込む。助手席で麗から渡されたファイルに目を通す。時々、一般人が
霊能力に目覚め制御が出来なくなると言うことがある。そのファイルでチェックされているのは
とある少年の体が鬼神に蝕まれた事件。その少年が鬼道院夜叉丸だった。そしてその事件を
たった一人で解決させたのは。

「神導イザナ、ってまさか!」

車を運転する後輩、藤野興信が驚く。エトが頷いた。

「神導イザナは私の父親、つい最近死んじゃったし警察で働いてるってことしか
知らなかったけど…それにあまり仕事の事は気にならなかったし」
「お父さんは霊能力持ってるのに娘のセンパイは持ってないんすか…」
「そうなんだよねぇ…ってそんなのは今はどうでもいいから!で?もうすぐ到着?」

責め立てる口調で聞くと頷いた。

Re: ゴーストトレイス ( No.7 )
日時: 2019/10/16 19:35
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

車を止めて窓を開ける。そよ風が吹く清閑の地。車を降りて少し坂道を上る。
辿り着いた寺、仏像の前に座っている僧にエトは「すみません」と声を掛けた。

「霊障対策課の神導エトです。あの貴方が藤堂さんですか?」
「いらっしゃい…そっちの子は君の仕事仲間か。さぁ入って入って。君には話すべきことが
ある。今だからこそちゃんと知っておかなくちゃならん」

靴を脱いで寺の中に入る。藤堂倉之助という僧は二人分の座布団を用意し二人の前に
座り直す。

「昔…強い鬼神がいた。鬼神の名は槐、槐はある人間に恋をした。名を小夜という、
とても美しい女性だ。鬼はその女に告白をした…彼女もまた槐に思いを寄せていたため
二人は仲良く暮らした」
「…?なんだ?そんな話なのか?」

口を挟む興信をエトが無言で睨み黙らせる。それを見た住職は微笑み「重要なのは
ここからだ」そう言ってから再び口を開く。

「小夜には婚約者がいた。地主の鬼道院だ、その男は金持ちでな。小夜を有無も聞かずに
自身の婚約者にしてしまった。だが小夜は槐の方を選んだ。鬼道院は勿論、自身の許嫁を
鬼神に横取りされたのだから怒った。槐がいない間に鬼道院は槐の家から小夜を拉致し
すぐに子どもが出来た。それからだ…槐が怒り狂った」

住職が険しい顔をする。

「見境なく鬼道院を殺すために多くの人間を殺しまわった。ついに鬼道院を殺した時、
彼の腕の中には腹を裂かれ死んでいる小夜がいた…そして腹には小夜の子がいた。
自我を取り戻した槐は小夜の子を抱いた。そしてその子に呪いをかけた。内容は知らないがな…」
「その小夜さんの子が…夜叉丸君の子孫ってことですね」
「そうだ。そしてお前さんの父親イザナが封印術を施した。彼と同じ霊力を持つ君でなければ
描いても意味はない。槐に憑かれている子は恐らくこの辺りに隠れている。君の後輩は
鬼に負けてしまう弱い子はいないだろう。さぁ、これを持って、急いで行きなさい。君も
いざとなったら彼女を守ってあげるんだぞ」

手渡された包みを抱えたまま森林の中を歩く。段々暑くなってきた。

Re: ゴーストトレイス ( No.8 )
日時: 2019/10/16 20:58
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

大きな鬼神はエトを見下ろす。エトは呆然と鬼神を見つめていた。最早夜叉丸の
面影は残っていない。これが槐。

「じゃあ危なくなったら助けるんで」

そう言って離れた興信。もう一度、エトは槐に乗っ取られた夜叉丸を見つめる。
そして手を伸ばす。

「早く、来て。戻ってきて」

微かに聞こえる、唸り声と共に小さな声「逃げてください」という声。その言葉をエトは
拒絶する。下手すれば本当に取り返しがつかないことになる。殺さなければならなくなる。
それだけは避けるために来た。

「それは…出来ないよ。逃げるなんて…それは先輩として許さない。私を逃がして
どうするの?その先は…一生ここで隠れてるつもり?ここで自害するつもり?折角
一回、呪いから救ってもらったのに…その命、捨てるつもり?」

険しいエトの表情は優しい顔に変わった。

「私は霊能力を持たないから凄いことは出来ない。それこそ助けるなんて出来ないかも
しれないから…私は信じるだけだよ」
『人間の、娘よ…非力なお前が何故そこまでする』

低い声、槐本人の声だ。

「私、霊能力が無いから戦闘があるだろうって予想される霊障に向かう時はいつも
誰かが付き添う…夜叉丸君もいつも私についてきてくれて慕ってくれたから…
答えなきゃね」
『心の強い女だ…それならば、返してやろう』
「うわっ!?」

強い熱風に煽られ、腰が抜ける。興信に支えられどうにか立っていた。消えた槐は恐らく
夜叉丸の体の中に戻ったのだろう。ここからはエトの仕事だ。彼を寺まで連れて行った。

「…先輩」

Re: ゴーストトレイス ( No.9 )
日時: 2019/11/05 17:38
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

無線機から突然声が流れた。その声は久能麗だった。

『緊急事態よ、今すぐ旧帝国劇場に来て霊障事件よ。霊能課職員が霊障化した。
今回は国枝律子さんよ…エトちゃんのラインに資料は送るから目を通して頂戴。それと
そっちには夜叉丸君もいるわね?体調はどう?無理しなくても良いから』
「いいえ大丈夫です」

きっぱりと返す。無線機から麗の微かな笑い声が聞こえた。

『大丈夫そうね。エトちゃんの事、頼んだわよ。それとついさっき律子さんの部屋を色々
探してみたんだけどちょっとヤバい話よ…エトちゃん、貴方彼女に狙われてたみたい』
「え?あ…でもそんな感じがしなかったわけもなかったような…」
『裏で霊障を開放して暴れさせた。それをエトちゃんに解決させるように仕向け、あわよくば
殉職で済まそうとしてたみたい。あの人も馬鹿ね、エトちゃんの周りは恐ろしい程堅い壁で
守られてるっていうのに…後は資料を見て頂戴』

無線が切れた。車の速度を上げ目的地へ急ぐ。国枝律子、その女刑事は既に殉職した
はずだった。だが強力な生霊として現世を彷徨い再び刑事として活躍していた。
霊能対策課も出来上がり、そこで彼女は神導イザナに一目惚れ。だが彼には既に
子どもがいた。それがエトである。彼から沢山の愛を注がれた彼女に嫉妬していたようだ。
そして今日、霊障事件に向かい行方不明に爆破事件で霊障化したことが明らかになった。

「じゃあ俺たち、ずっと霊を視てたってことか」
「そうなるね。そう考えたら本当に怖いわ…でももっとびっくりしたのはあの人が私に
嫉妬してたってところかな?うちのお父さんと結婚したかったのかも、私に嫉妬したんじゃなくて
私のお母さんに嫉妬したの間違いでしょ」

ラインの画面を閉じバッグに携帯をしまう。標識に旧帝国劇場の名前が見えて来た。交通規制が
張られているため見張っている警備員に警察だという証明書を見せ中に入る。まだ爆破は
していないらしい。中に入り異常に暑い事に気付いた。確か律子は火を操る霊能力者。この
暑さは恐らく律子が関係しているのだろう。


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