ダーク・ファンタジー小説
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- ゴーストトレイス
- 日時: 2020/01/19 14:51
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
前代未聞、現実離れした霊障事件発生。
多くの後輩、先輩に囲まれる女刑事、神導エト。
霊能力を持った刑事たちは今日も霊を追いかけて事件を解決に導く。
彼らの元に届く事件は霊能力関連、そして霊関係のモノだけである。
序.「霊能力を持たない刑事エト」>>01
霊障1.「通行止め橋」>>02 >>03
閑話「鬼神を宿す者」>>04 >>05
霊障2.「知らされなかった知らせ」>>06>>08
「鬼神を知る住職様」>>07
霊障3.「古き劇場の炎舞」>>09>>10>>11
「一段落した」>>12
霊障4.「悪ガキを裁く鬼」>>13>>14>>15>>16
霊障5.「女性虐殺事件」>>17-19
霊障6.「
- Re: ゴーストトレイス ( No.1 )
- 日時: 2019/10/12 19:37
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
霊障だった人物もここ、霊障特別課が保護し監視している。エトが入社したと
同時に仕事を離れた刑事がいた。彼の後を継ぐようにエトがその霊障だった人物を
監視するようになった。骨喰に憑かれていた青年、骸井航平と人食い鬼、
雛森郁斗。航平は長い時間、憑かれていたストレスもあって開放感があるのか
よく話す、郁斗に関しては背格好はもう成人、しかしまともな教育を受けられなかったせいで
知識自体は小学生ぐらいだ。
「よし、全部丸。今日は終わりだよ」
赤ペンを置き郁斗にノートを返す。
「なんか先生っていうか親みたいだな。俺にはそのどっちかにしか見えないぜ」
「私は基本、丸つけをするだけだから、そんな大したことはしてないよ」
「あらあら〜仲良くなるのが速いわね。エトちゃん」
長い白金の髪をした柔らかい笑顔の女性、四条柚花だ。彼女は
監察係に所属していて自分ソックリの霊を連れている。その霊を介して死者の心理と
記憶を読み取ることが出来る。
「柚花さん、こんにちは!」
「えぇ、こんにちは〜。わぁ!全部合ってる。これは郁斗君のノートね。凄い凄い」
そう言って柚花は郁斗の頭を撫でる。精神年齢的にはエトたちよりも下らしい。
本人もそう思っているのだろう。
「これは教える人が上手いからかしらね〜郁斗君」
郁斗が小さく頷く。エトが照れくさそうに笑う。
「それじゃあ私はお仕事があるから〜」
そう言って柚花は部屋を出た。
「そういえばよー…アンタはどんな霊能力を持ってるんだ?前に俺らの監視してた奴は
風を操ってたけど」
「え、無いけど?」
その一言で郁斗と航平が目を見開き言葉を失う。ここの職員は全員霊能力を持つはずなのに
エトが持っていないなんて…という表情である。
- Re: ゴーストトレイス ( No.2 )
- 日時: 2019/10/14 20:57
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「行き止まり橋?」
エトが首を傾げた。目の前に座る中年女性刑事、国枝律子は背もたれに体重をかける。
「そうだ。この近くのF橋に現れる歌舞伎役者みたいな霊がいてね。ソイツが通せんぼ
していると通報が入った。荒事は控えないと、って考えで言葉が上手いアンタにこの件を
任せたい。任されてくれるかい?」
「はい、そういうことなら頑張ってみます」
エトの返事に律子が微笑む。後輩からの信頼が厚い、そして先輩からも多く目を向けられている。
目立った霊能力を持たない彼女が何故…という疑問が未だに解けない。エトが部屋を出ると
律子は息を吐いた。
エトはF橋にやって来た。橋の下には川が流れている。今の時間帯は人通りが少なくなる。
「おーい…霊さんやーい。この橋、通りまーす」
誘い込むように声を上げると橋の真ん中に一人の霊が現れた。長い髪に変わった服装、
確かに歌舞伎役者のようだ。歌舞伎なら今の時代もあるが恐らく最近死んだ霊ではない。
江戸時代ぐらいの霊だろう
「ほぅ、ワシが見えておるのか小娘。ワシは景道、通りたいならば首を置いていけ」
「私は神導エト、悪いけどそれは出来ないよ。首を置いていけってつまり死ねってこと
でしょう?私を含め人間の命はそんな軽く差し出せないよ」
エトがそう言うと景道は豪快に笑う。小娘がそんな大口を叩くなんて、といったところか。
「中々肝が据わっているのぅ…ならワシが殺してやろう」
「待って待って!私はそんな…私、そんな強くないの。ねぇ、橋ぐらい渡らせてよ。今はもう
こんな街中で戦いなんて…もう戦の時代は終わったんだから」
微かに相手が反応する。やっぱりか。恐らくこの辺りで起きた合戦で死んだ地縛霊のような
存在だろう。奥には彼の大将やらがいたのかもしれない。一瞬、ほんの一瞬エトが視線を
逸らした時に景道は大きく跳躍しエトの脳天に拳骨を落とそうとしていた。エトが地面に
伏せた時。
- Re: ゴーストトレイス ( No.3 )
- 日時: 2019/10/14 21:15
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「なっ!?なんじゃ…オヌシ!」
「あー俺ですか…鬼、ですよ」
額から生えた二本の角、そして黒目金瞳。人間ではない正に鬼。だが彼は人間。
百目鬼壮吾、エトの後輩の一人だ。彼は二匹の小鬼を使役していてそれぞれを憑依させ
戦闘を行う。
「大丈夫ですかエトさん。ダメですよ貴方、戦闘は基本出来ないからこういう事件の場合は
一人以上戦闘が出来る人間がいないと…ねっ!」
景道を背負い投げする壮吾。赤鬼サグルを憑かせたとき、人間離れした身体能力を彼は
兼ね備える。倍の体格の景道を軽く背負い投げすることぐらい出来る。
「事は色々聞きました。俺らが通ったらアンタの負け、だな」
「ま、まさか…!?」
「はい、そのまさかです」
エトを片腕に抱き2mほどの高さまで跳躍、地面に降りた時には既に景道の後ろにいた。
そして悠々と橋を渡った。
「と、とりあえず…これでもう橋を行き止まりにしないよね」
「…完敗じゃ完敗。若いのに負けるとはなぁ…」
そう言って景道が消えた。これで事件解決。憑依が消えた壮吾はエトに聞いてくる。
「なんで一人でここに?相手は戦闘慣れした霊、上の人たちも行かせるわけがないでしょう?」
「そうだぞ、弱いくせに!」「サグル、言葉が悪いです!」
サグルを咎める青鬼サグメ。余計心が傷付く。
「なんでって…律子さんに言われたんだよ。大きな戦闘はやめたほうがいいからお前が
行けって」
「そうなんですか…」
少し後になってエトも少し疑念を抱いた。サグルや景道の言う通り、霊能力も無く戦闘向きでは
無いので大体事件に向かう場合は戦闘が出来る人物が付き添ってくる。だが国枝律子は彼女を
単独で事件の現場に向かわせた。考えても分からないことは分からない。
- Re: ゴーストトレイス ( No.4 )
- 日時: 2019/10/14 21:41
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
霊障対策課には霊が視える人間、霊能力を持つ人間…多くの現実離れした人間が
いる。そしてその中でエトは一番現実的人間。職場についてから知ったこと、憑依系の
霊能力者は能力が暴走することがあるということである。慕ってくれて尊敬してくれる
部下の中にも鬼が憑いている青年がいる。鬼道院夜叉丸、という人物である。
「へぇ…こういうのでも封印することが出来るんだね」
「そうですね…過去に槐に殺されそうになったことがあって…」
体に残された紋様、それは槐を縛る鎖と言ってもいいだろう。鬼を拘束するものを
描いたのだから相当な霊能力者であることに違いない。
「殺されそうに?あ…あんまり深く入り込まない方がいいよね。ごめんね夜叉丸君」
「いいえ気にしないでください。それに何となくエト先輩には色々周りに話せないことが
話したくなります…」
彼の過去、どんな感じなんだろう。さっきの短い会話で何となく察しはつくが…。
それは数年前、青年ではなく少年時代に遡る。