ダーク・ファンタジー小説

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White/Fang(Thanks閲覧数1000!)
日時: 2020/08/02 21:42
名前: 祝福の仮面屋 (ID: siKnm0iV)

代零節「求められる知識」

登場人物『White/Fang編』

一ノ瀬小隊
葛城 静流→雨宮 赤城
生年月日(2106年、12月25日)
身長 162cm
体重 52kg
好きなもの ふわふわした物
嫌いなもの 鴉
所属 対特殊災害隠密局『White/Fang』
コードネーム『クノイチ』
専用装備「粒子加速式忍刀『ムラクモ』」
式神レギオン『双刃』」

一ノ瀬 燈矢(一ノ瀬小隊隊長)
生年月日 (2070年4月1日)
身長 176cm
体重 85kg
好きなもの 筋トレ、部下達
嫌いなもの レイヴン、得体の知れない物
所属 White/Fang
コードネーム 『スサノオ』
専用装備 「7式大型変形斧『オシリス』」
式神レギオン『爆斧』」

鹿島 新(一ノ瀬小隊副隊長)
生年月日 (2092年6月4日)
身長 172cm
体重 63kg
好きなもの 読書、料理
嫌いなもの 特になし
所属 White/Fang
コードネーム 『ホロウ』
専用装備 「粒子圧縮機構搭載型大鎌『セト』」
式神レギオン『大蛇』」

灰崎 佐之助
生年月日 (2106年1月1日)
身長 180cm
体重 75kg
好きなもの 鯛茶漬け、強い奴
嫌いなもの 弱い奴
所属 地下格闘技会『天逆鉾』→White/Fang
コードネーム 『ナックルダスター』
専用装備 「火薬炸裂式加速手甲『レッカ』」
式神レギオン『鉄拳』」

氷室 三葉
生年月日 (2100年3月9日)
身長 158cm
体重 40kg
好きなもの ふかふかベッド
嫌いなもの 硬い物全部(食材は除く)
所属 White/Fang
コードネーム 『ラプンツェル』
専用装備 「狙撃式大型銃剣『アズサ』」
式神レギオン『天弓』」

東 総二郎(White/Fang総司令官)
生年月日 ?
身長 ?
体重 ?
好きなもの ?
嫌いなもの ?
所属 White/Fang

日出 有紗(戦術オペレーター)
生年月日 (2089年11月10日)
身長 160cm
体重 50kg
好きなもの ショッピング、子供達
嫌いなもの 叔父
所属 WF

相葉 相太メカニック
生年月日 (2085年8月15日)
身長 173cm
体重 65kg
好きなもの 運動、トレーニング、植物園巡り
嫌いなもの 無し
所属 WF

青原 霞(専属医)
生年月日 (2085年10月9日)
身長 168cm
体重 50kg
好きなもの 特になし
嫌いなもの 特になし
所属WF





人物及び用語解説
>>1.>>2



代壱章
>>3.>>4.>>5.>>6.>>7.>>8.>>10
>>11.>>12.>>14.>>15.>>16
>>17.>>18.>>19.>>20.>>21



代弐章
>>23.>>24.>>25.>>26.>>27
>>28.>>29

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.14 )
日時: 2019/11/10 08:58
名前: 祝福の仮面屋 (ID: jo2UR50i)

White/Fang代壱点零伍節
「束の間の夢(閲覧数100到達記念)」




『食』…それは人の呼吸に並ぶ生きる上で最もと言っていい程大切な行為である、だがしかし人は常に美味を求める者、味より量を求める者、粗食を謳う者など千差万別。これは、私の誕生日サプライズに私の部下達が送ってくれた真心の話。







「そういや隊長」
「どうしたんだい?佐之くん」
「今日ってアンタの誕生日だったよな」
今日は4月1日、確かに彼の言う通り私の誕生日だ、だが何故彼は唐突にその話を?
「あぁ、そうだが何かあったかい?」
「いや、サプライズでも送ろうかと思ってよ」
マジかこの子優しすぎるだろ、今まで誰も祝ったり話題に出さなかったのに…、しかもサプライズ付きなんて物だから彼にとんでもない父性を感じる。
「隊長は何が食いたい?可能な限りなら俺が調達するぜ」
「いや、気持ちだけ貰っておこう、この歳になってまで祝ってもらうのは少々恥ずかしくてね」
「いえ、今年くらいは祝わせていただきますよ、貴方には拒否権は無いのと同じです。」
鹿島くん…!君そんな熱い奴だったか…!
「隊長には日頃お世話になってますし、たまには苦労を労わせて下さいよ!」
三葉ちゃんも言ってくる
「全部合理的に終わらせてやる」
赤城ちゃんもこんな時には協力的なんだよなぁ…よし、ならば最高のサプライズを用意して貰おうでは無いか
「なら、つい先程天津巫國郊外にて巨大なイノシシが発見されたらしい、特殊任務だ!一般市民に危害を加える前にそのイノシシを討伐せよ!」
「「「了解!」」」
さあ、見せて貰おうか、君達一ノ瀬小隊の実力とやらを!




〜鹿島Side〜
「ふむ、今回は猪の討伐か…」
「レギオン使用許可」
「いや、猪のサイズによるな、C-1からC-5までなら俺達だけで何とかなる、C-6クラスならレギオン使用許可」
「分かった」
「さてと、隊長の為にも市民の為にも頑張りますか!」
俺達は山へ出向く、待っていろ猪よ…貴様のその肉、我々の血肉として受け入れてくれよう!


〜天津郊外 とある山奥〜
捜査を始めてかれこれ2時間、午前9時に出発した為現在は午前11時だ、何の皮肉か全く見つかる気配がない。
「クソッ、一旦作戦を練り直すか…!?」
「いや、副隊長!あれを見てみろ!」
「なっ、あれは…!」
佐之助に言われた方角を見てみると、巨大な穴があった、恐らくあの猪の巣穴だろうか。
「あそこに火力を極限まで抑えた発破を打ち込む、出て来た瞬間に叩き潰せ」
「了解!」
「分かった!」
「ん」
俺は発破を投げ入れる、そして数秒後にパァンッ!と小さな爆発音を出して、その音に驚いた猪が出て来たのだが
「な、何ィ!?」
「これはデカすぎだろぉぉぉ!」
そう、その猪はめちゃくちゃデカかった唯でさえ猪は最大70kgの岩石を動かすブルドーザー並みの膂力を持っている、こんな巨体なら70kgじゃ済まないだろうし人里に降りたら甚大な被害を被るかも知れない。
「緊急事態だ!暫定クラスはC-9!レギオン使用許可!」
「待ってたぜェ、この時をなァ!」
「隊長と市民の為に、心臓を捧げよ!」
「ヒャッハァァァァァァァァァ!」
各隊員が各々のレギオンを召喚しながら奇妙奇天烈な事を叫びまくってる、このカオスな状況の中で一番最初に動いたのは佐之助だった。
「力仕事は俺の出番だ!」
ガッ!とレギオンを装身し持てる全ての力を持って猪の突進を食い止める、180cm超えの巨体もありさながら某一狩り行くゲームを思い出した。
「くぉ…!コイツ、力強ぇ…!」
だが猪も負けておらず、力自慢の彼に優勢に立っている
「氷室さん!援護頼む!」
「言われなくても!」
三葉の専用装備とレギオンによる援護が始まるが、周囲の自然を破壊しない様に威力を抑えている為牽制程度の威力しかないが、足止めには十分!
「佐之!そのまま抑えておけ!」
「オーライ!」
「雨宮、一気に行くぞ」
「うぃ」
俺と雨宮はレギオンを召喚、トドメを刺しに行くが
「ブィーーーーーィィィッ!」
「うおわっ!」
「きゃあっ!」
「佐之!氷室!」
佐之助と氷室が吹き飛ばされる
「(まずいなこれは、そうだ!)」
「雨宮」
「はい?」
「お前のレギオンの干渉であの猪の動きを止める事は出来るか?」
雨宮のレギオン『双刃』は、両腕の双剣で干渉する事によりエネルギーの流れを切断する事が出来る、一か八かの勝負だがこれに賭けるしかない!
「やってみます、失敗しても文句はなしで」
「少し止めるだけでいい、後は俺が片付ける」
「『斬・撃』!」
「ブィィィ…」
猪が倒れ込む、その隙を易々見逃してやる程俺は甘くないぞ!
「良くやった雨宮!うおおおおおおおおおおおおおお!」
レギオンを変形させ、大鎌と共に袈裟懸けの姿勢に入る、遠心力と体重を込めたそれは巨大猪の体をザックリと抉った。
「討滅…完了!」
終わった…俺達の戦いは…、これでまた、人々が救われたのだ
「でもよ副隊長」
「どうした?佐之」
「この猪どう持ち帰る?」
「あ」
「あ」
「あ」
そこまでは考えてなかった、ごめん佐之、疲れてるだろうけど持ってって!










一先ず街へ帰って来た俺達は、戦利品として得た猪肉や採集して来た山菜の一部をショッピングモールや卸売業に渡した、これで暫くは食材(主に肉と野菜)には困らないだろう。
「隊長、ただ今帰りました」
「お帰り、話は聞かせて貰ったよ、無事討伐出来たみたいだね」
「はい、全体的に誰が一番仕事したかではなく、我々のチームワークが発揮されたと思います。」
「うん、チームワークが大切ってのは赤城ちゃんも分かってくれれば良いけどね、新くん、後で一緒にどうだい?」
「………はい、喜んで」








〜一ノ瀬Side〜
どうやら佐之助くんと赤城ちゃんの提案で、この猪肉のステーキが私へのサプライズらしい、私としては彼等がチームワークの大切さを実感してくれるのが一番のサプライズだが、一石二鳥という事だ。
「ん!これは美味しいね」
「当然!俺がより腕をかけて作ったからな!」
「佐之助は女子力高いよね、本当に」
「氷室、お前が低すぎるだけだな」
「何よそれ!」
「隊長が嬉しいならそれで良いじゃん」
全く…、彼等も良い感じに育って来てるじゃないか、これからが楽しみだな。





〜翌日〜
「テメェ赤城!それ俺の獲物だぞ!」
「遅いのが悪い」
「新!何で私の狙撃の邪魔すんの!?いつもいつも射線上に入って来て!」
「な、俺が戦ってた所にお前が横槍挟んでくるだけだろうが…」
「はぁー!?何よそれ!」
「ハァ………」
うん、彼等が本当のチームワークを発揮するのはまだまだ先だろうな…











閲覧数3桁突破記念!
皆様ありがとうございます!

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.15 )
日時: 2019/11/10 15:08
名前: 祝福の仮面屋 (ID: Z.5JjKPv)

White/Fang代拾節
「それでも私は戦いたい」



「四堂隊長殿!一ノ瀬隊長殿!遠征お疲れ様です!」
「あぁただいま、拠点に何か問題はあったかい?」
「いえ、特に問題等はございませんが」
「ならいい、俺達は先に風呂は入らせて貰う、お前らは隊員達と夕食にしておけ」
「はっ!了解しました!」
私達はつい先程遠征から帰って来た、帰って来た時間は午後十八時、要するに移動だけで片道二時間も掛かるのだ。なら本来はもう少し進んだ場所に拠点を設置すべきなのだが、ここから先は未知の領域である為、ギリギリの及第点がここなのだ。損害はなし、だが目立った収穫もなし。明日にはもう少し進展すると良いが
「君達はどうする?食事にしても構わないが」
「いえ、俺は武器の手入れをしておきます、妖の血で性能が落ちてはいけませんから」
「副隊長、俺も一緒していいっすか」
「あぁ、構わん」
そういったやり取りをしながら新くんと佐之くんは武器の手入れに向かう、あの二人結構気が合うんだよなぁ…、側から見れば兄弟っぽく見える。
「じゃあ、私は防衛班の皆さんに食事届けて来ますね!」
「頼んだよ三葉ちゃん、赤城ちゃんはどうするんだい?」
「別に、無駄に動くのは合理的じゃないし」
本当にドライだなぁ赤城ちゃん…、あの頃は良く笑ったと言うのに、彼女からすれば確かにあれはトラウマだったのだろう。身内が目の前で生きたまま喰い殺されるおぞましい光景を間近で見たのだから。
「じゃあ私と一緒に来ないかい?四堂の所へ行くんだが…」
「四堂の隊長んとこ行くならアタシも行く、あの人に聞きたい事あるし」
「よし、決まりだね」
私達は四堂の元へ歩く、…アレ?四堂って今入浴中だったかな…?まぁいいか、彼は基本シャワーしか浴びないから多分上がってるだろう。







私達は四堂の部屋へ来た、何とこの拠点、隊長及び班長格は個室があるのだ。
「四堂、いるかい?」
「入れ」
「失礼するよ」
「客人も連れて来たか」
「うちの新人さ、ほら赤城ちゃん挨拶」
「どうもシドウ=サン、雨宮です」
「ふむ、その奇妙な挨拶は別としてだな…四堂小隊隊長の四堂 叡山だ、よろしく頼むよ」
四堂は若干戸惑ったがすぐに立て直した、流石は一瞬の気の迷いが生死を分かつ隠密任務主体の四堂小隊隊長と言ったところか。
「さて雨宮、俺はまず君に聞きたい事があるんだ、聞かせてくれるかな?」
「何でしょうか」
「君の旧姓…葛城だったそうじゃないか」
「………っ!」
四堂の一言で彼女の顔が強張る、確かに隊長格は君の旧姓を知っている事を彼女には伝えてなかったな、後でフォローしようと思ったが
「何で…その名を…?」
「何、君は一ノ瀬から聞いてなかったのか?俺達各部隊長は全員知っているが」
彼女がジロッとこっちを睨んでくる、そう睨まないでよ、今思えば私は伝えようとしたのに君が突っかかって来るのが悪いじゃん。
「まぁそんな怖い顔をするな、折角の美人が台無しだぞ?」
彼女の顔が少し紅潮する、えっ、もしかして嬉しかったの?
「お世辞は良いです、で…私の旧姓に何の用ですか?」
「俺が気になったのは何故、君の家があの日レイヴンに襲撃されたかだ、俺はあの事件に君の父親が関与していると考えているが、父親について何か分かる事はあるかい?」
「分からないです…、私はその時友達と遊びに行ってましたし…、何より私は基本的に祖父と母が居ましたが父とは一度も会った事はないんです。」
「会った事がない…か、じゃあ父親の仕事もよく知らないと」
「はい」
「俺は隠密任務を主に請け負っていてね、かつて若手だった時代にレイヴンに潜入した事があってね、そこで奇妙なものを見つけたんだ。それは何だと思う?」
四堂は意味深な事を言ってくる、私は彼がレイヴンへの潜入任務を受けていたのは初めて知った、彼がそこで見つけたもの…この世界の現状の核心にでも繋がっているのだろうか。
「俺があそこで見つけたのは『名簿』だよ」
「名簿?」
「あぁ、そうだ…そしてそこに書かれていたのは…」
「待ってくれ四堂、話を遮って悪いが君は一体全体いつから、レイヴンへの潜入任務を受けていたんだ?」
「その話は後でしてやる、それでだな雨宮、そこにはある計画とその被験者の名前が書かれていたんだよ。

葛城 静流 (かつらぎ しずる)

灰崎 佐之助 (はいざき さのすけ)

Graham・Taylor (グラハム テイラー)

Chloe・Alain (クロエ アラン)

Ирина・Азимов (イリーナ アシモフ)

Jack・Thomas(ジャック トーマス)

とな、可笑しいと思わないか?君と灰崎の二人は勿論、おそらく下の三名も俺が若手だった2089年時点では誰一人とて生まれていない筈なんだ、計画名こそは掠れていて判読不可だったがおそらく人体実験の類だろうな。」

名前を聞くだけでも天津巫國、ユニオン、ブリタニア、セントブリーズ、北方連合の四つの國の人間だ、何故レイヴンはそこまでして…
「少なくとも俺達は君と灰崎以外の名簿の人物との接点はない、なら何故君達の名が乗っているのか、その秘密が『Thunder・Volt』に隠されている可能性がある、だからこそ遠征を志願したんだ。」
なら、この世界は誰かによって人為的に造られた物なのだろうか、私には分からないがその秘密もおそらく『Thunder・Volt』にある、四堂は世界の真実を知る事が目的とでも言うのだろうか。
「でも、私とそれに何の関係が…」
「今日はもう遅いから寝よう、急に呼び出して悪かったな、またいつか…いや、もう会議の時話題として出すか?」
「いや、成る可く情報が集まってからにしよう、他の隊の反感を呼ぶ恐れがある。」
「同感だ、では明日」
「では失礼するよ、行くよ赤城ちゃん」
「…失礼しました」
明日、この世界に関する何かが分かるのかも知れない、彼女や佐之くんの出自の事も、あと四日間にて解き明かす必要がある…いやないか。駄目だったら気長に待てばいい、それが一ノ瀬小隊の教訓じゃないか、私はそう思いながらベッドに横になった。







〜翌日〜
「本日で遠征は二回目となる、本日も昨日と同様に衛生班ならびに補給班から二人ずつ連れて行く、あと俺達の混合部隊から何人か置いて行くから防衛班から一人ずつ来い、以上だ」
「一ノ瀬小隊からは氷室三葉を、四堂小隊からは最上翔也を拠点に残す、拠点を頼んだよ二人共」
「「了解!」」
私達は昨日と同じ装甲車両に乗り込む、さぁ二回目の遠征だ、何か進展があると良いのだが
「よし、それじゃ行こうか」
「全隊、前進!」
「「「うおおおおおおお!」」」
私は知らなくてはならない、この世界の真実を彼等の出自を、そして、私自身の正体を




















報告書
遭遇した妖 無し
数 0
目立った収穫 『四堂の過去』
進捗率 5%

次回White/Fang代拾壱節
「踊る阿呆に見る阿呆」
新章は名簿に載っていたユニオン(アメリカ)、ブリタニア(イギリス)、セントブリーズ(フランス)、北方連合ロシアに観点を合わせて行きます。辞書見ながら名前打つのめちゃくちゃ疲れた…
もうロシア語はこりごりだぁぁぁぁぁ!
そしてクロエのeは実際の表記と違いますが、実際のフランス語表記で打つと文字化けするのでそこはご愛嬌

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.17 )
日時: 2019/11/10 15:04
名前: 祝福の仮面屋 (ID: Z.5JjKPv)

White/Fang代拾壱節
「踊る阿呆に見る阿呆」



再びThunder・Volt入り口までやって来る、一回目の調査の帰還時に簡易結界(と言う名の電磁フィールド)を張っておいたから問題ない筈だ、このThunder・Volt自体が増幅装置の役割を果たしている為、簡易的だが相当な効果を望めるだろう。
「準備は?」
「問題ないよ」
「よし、ここで降りるぞ、防衛班並びに衛生班と補給班は俺達が降りた後に降りろ」
四堂は本当に指揮官に向いている、一応五河隊の隊長以外は訓練学校時代からの付き合いなので、誰がどの様な傾向を好むのか、どの様なパターンで行動するのかが良く分かる。
「先遣隊は俺達四堂小隊が務める、ここまで培ってきた隠密任務のノウハウって奴を見せてやるよ」
「あぁ、楽しみにしてるよ、僕達もすぐに合流する」
「分かった、四堂小隊、前進!」
四堂の合図と共に小隊のメンバーが内部へ駆ける、まるでかつての特殊機動隊を思わせる無駄のない動きだ、まぁ四堂の事だから参考にしているのだろう。
「じゃあ一ノ瀬小隊も行こうか」
「了解」
「はーい」
「っす」
相変わらず一致しない返事をして私達一ノ瀬小隊も内部へ侵入する、すると同時に叫び声と走行音が聞こえてきた。
「四堂!これは!?」
「妖だ、だがC-1クラスの特攻要員だから各界から出るな、ただし爆発でやられるだろうから一気に駆け抜けるぞ!」
突進して来た妖が結界にぶつかった瞬間に大爆発を引き起こし、それが別個体に次々と連鎖して行き、限界を超えた結界は5撃目で遂に決壊した。
「走れぇぇぇ!」
四堂の合図で各班員及び隊員が一斉に走り出す、おそらくその先にも妖はいるだろう。
「殿は僕達一ノ瀬で担当しよう、四堂は皆と先に行ってくれ!」
「…良いのか?」
私は頷く、流石は四堂、訓練校時代からの友は察してくれた
「……死ぬなよ」
「なに、危なくなったら逃げるさ」
「なら良い…、行くぞお前らァ!」
四堂小隊と各班が走り出すと同時に特殊型5体、異形型2体、人型3体の計10体もの妖が現れる、だが妖討伐を専門とする一ノ瀬小隊はこの程度では怯まない。
「さぁ、ここは守り切るよ!」
「「「オウッ!」」」










〜四堂Side〜
「隊長…」
「あぁ、不自然な位に妖が居ないな…」
現在俺達四堂小隊並びに各班は地下へ来ていた、閉塞感を全く感じさせない場所で高さと広さが東楼の地下空間にも似通った静けさを感じさせる。
「隊長!ここに扉があります!」
「分かった、どいてろ」
俺は隊員に引くように命じる、そして俺はデルタスーツの腕輪に触れて専用装備の「腕部着脱式防御装甲『アルバ・D・ナウ』」を展開する、こいつは灰崎のと似たような物だがコイツは衝撃を与えると空気反響技術を応用した高周波により物体を切断すると言う代物だ、かつてのウォーターカッターに原理は近いかもな。
「切除完了だ」
カキンッと小気味好い音と共に扉の留め具が外れる、すると扉は横にスライドし、中には実験室の様な場所があった。この様な空間にも不自然すぎる程の存在感を示すそこは、俺の興味を惹きつけるには十分過ぎて…
「何だ、あれは…」
「隊長!」
後ろに立っていた、猟奇的殺人鬼の存在に気付く事が出来なかった。














〜一ノ瀬Side〜
「これじゃキリがない!」
「一体何匹湧いて組んだよ…!」
「戦術的には合理的だけどな」
一方私達はかなり苦戦を強いられていた、10体倒す毎にまた10体と現れるそれは、私達を精神的に追い込むのはそれほど難しい事ではなかった。
「よし、四堂小隊と合流しよう!佐之くん!」
「アァ!?」
「新くんと殿を任せて良いかい!?」
彼は肉弾戦を得意としている、彼の力なら妖数匹を同時に相手取れるだろう。
「分かった!行くぜ副隊長!」
「足引っ張るなよ!佐之!」
「わぁってんよ!」
「「装身《アンペイル》ッ!」」
新くんはレギオンを武器に、佐之くんはレギオンを鎧として纏い妖の群れを薙ぎ払って行く、近接格闘戦において彼ら程頼りになる存在は無いだろう、そう油断していた私に妖が襲い掛かって来たが…
「クッ…!」
「あ〜らよっと!」
赤城ちゃんが一撃を食らわせる、すると斬られた妖が爆発したのだ。
「赤城ちゃん…、今のは…」
「葛城流忍術地の型拾伍式『葬撃』、要するに武器版二重の極みです」
彼女の忍術と、加速粒子を用いて斬れ味を激増させるムラクモはとことん相性が良いらしい、今更になってそれを知らされる。
「だが赤城ちゃん、君は葛城でない以上もう使わないって…」
「気が変わりました、私はもう自分が何なのかすら分からないんで、好き勝手やらせて貰います。」
彼女も彼女なりに覚悟が決まったらしい、その3人により妖は瞬く間に蹂躙され、全滅した。
「よし、急ごう!」
「了解!」
「うっす!」
「はい!」
私達は走る、四堂達がいる地下へ
「…時に赤城ちゃん」
「はい?」
「良い顔になったね」
「そうですか?…ありがとうございます」












〜四堂Side〜
「キャハハハハハッ!」
「くおッ…!」
ガキィンッ!と二つの金属がぶつかる音が地下に鳴り響く、相手は妖じゃない、おそらく人間の類だろうか…女性的な体格だが肌は薄い桃色であり外骨格の様な物を纏っている上に左腕は巨大な鋏だ、シルエットは完全に妖のそれだ。
「隊長!俺達も戦います!」
「来るな!お前らでは勝てん!」
「しかし…!」
「(一ノ瀬…、まさか死んじまったか?いいやアイツは必ず来ると言った、ならアイツが来るまで稼いでやろうじゃねぇか!)」
「キャアアアアアアアアアアアアアッ!」
「おおおおおおおおおお!」
化け物の甲高い叫び声と俺の低く重々しい叫び声が交差する、だがこちらは不意打ちにより負傷した身、力で敵うはずもなく
「があああああああああ!」
脇腹を刺し貫かれてしまう、だが俺は話す事なく刺された鋏を小脇に抱え一言告げる、
「フッハハハ…!ヒーローは…遅れてやって来るってか…!?」
訓練校時代の友に、
「遅えぞ一ノ瀬ぇぇぇぇぇ!」
野次を飛ばしながら!
「柱を爆破しろォ!」
「分かった!」
一ノ瀬により命令を受けたレギオンは、柱に干渉し柱を爆破させる、すると地下空間に天変地異の如き揺れが鳴り響き、天井が落ちて来た。
「全員掴まれぇぇぇぇぇ!」
「俺がやる!」
「佐之!?」
「昇龍!」
レギオンを纏った事で膂力を強化された灰崎が放った強烈なアッパーは、落ちて来た天井の一部を打ち抜くと同時に上昇気流を発生させ俺達の体を浮かせた、おそらくあの化け物は圧死しただろうか…




「はぁ…はぁ…ふぅーっ」
「四堂、一体何だったんだあれは…?」
「分からん、だが…」
「キ"ィ"ィィア"ァア"ァアア"ア"ア"ッ"!」
それは何と愚かな考えだったのだろう、化け物が瓦礫程度で死ぬ事はないと分かっていた筈なのに、明確な『死』が俺達の目に飛び込んで来た瞬間…
「ア"ァア"ア"アァア"ア"ッ"!?」
突如として動きを止めた
「何だ!?」
「Chloe…Si tu t'efuis sans permission N'est-ce pas?」
1人の男がそこに立っていた、待てよ?今この男はあの化け物を『クロエ』と呼んだのか?
「アンタは…一体誰なんだ…?」
「Je m'apelle Abel.je suis dersole」
「(この発音はフランス、いや今はセントブリーズだったか…意思疎通が図れるか…?)Vous etes Parlez-vous Japanese?」
「ん?あぁ!アンタら天津人か!?いや〜すまんすまん!つい母国語で喋ってしまう」
「なっ…初めから天津語は喋れたのか?」
「あぁ、さっきもしたが自己紹介と行こうかな、俺の名はアベル、Abel Blancだ、よろしく頼むよ。」
「俺は四堂 叡山」
「一ノ瀬 燈矢です、アベルさん…貴方はその化け物の管理者で?」
「化け物?あぁ、これはキメラと言ってね我々セントブリーズが作り出したレギオンと人間の融合体さ」
この男はいきなり凄い事を言って来た、少なくとも天津ではレギオンと人間の融合実験は行われていない、まず倫理上莫大なコストが掛かるのと被験者と周囲に何が起こるか分からないからだ。
「俺はChasse aux demons…CADの科学班長を務めている、ちょっとこっちの政治状況に興味があって来た、暫くはお邪魔させて貰うぜ?」
どうする、セントブリーズからの客人…しかもそうそう来ない特殊部隊の重鎮と来た、ならば手段を選ぶ暇は無いだろう。
「壁外遠征は中止だ!今すぐアベル氏を連れて東楼へ帰還する!」
「なんだ遠征中だったか、なんか悪い事しちゃったな」
「アベル氏、貴方には聞きたい事があります」
「あぁ構わんよ、こちとら天津の技術にも関心を持っていた所だ、ギブアンドテイクでどうだね?」
「交渉成立だ」
各班員が帰還準備をしている中、俺と一ノ瀬はただ呆然と立ち尽くした、アベル ブラン、この男が何を知り何を握っているのかはまだ、誰にも分からない…









報告書
遭遇した妖「異形型、人型、特殊型」
数 15体
目立った収穫 『セントブリーズの人間及びレギオン融合体(仮称)』
進捗率 5→0%







次回White/Fang代拾弐節
「我ら其れを端から笑う阿呆」
フランス語の文法めちゃくちゃですけどどうか許して下さい
セントブリーズの重鎮アベル、彼は世界の秘密を知る人なのか否か

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.18 )
日時: 2019/11/13 06:18
名前: 祝福の仮面屋 (ID: kNmNzfjC)

White/Fang代拾弐節
「我ら其れを端から笑う阿呆」
今回久方ぶりに過激グロ要素くるかも






『ぎゃああああああああああああああっ!』
『首尾は?』
『順調ですが、実験体577に外見的変化は未だに見られません』
『成る程な、薬を投与しろ』
『ですが…もう投与限界値を超えて…』
『やれ』
『…はっ』
『嫌だ!化け物になんかなりたくない!お兄ちゃん助けて!お兄ちゃん!お兄ちゃ"ぁあ"ぁ"ぁあ"ぁ"ああ"ぁあ"ん!』
グジュッ、グジュッ、と彼女の…Chloeと呼ばれる少女の左腕が縦に裂けながら金属質へと変化していく、私達は壁外遠征から予定の一週間より少し早く東楼へ帰還していた、何の成果も得られなかったのか?否、我々は大き過ぎる成果を得たと言っても過言ではない。
「これがウチの…政府の研究データらしい」
「随分と悪趣味な事をするな」
「おいおい、やってるのは政府だぜ?」
「お前の所属しているCADも我々White/Fangと同様に政府直轄の極秘部隊だろう?」
先程のムービーが映されていたタブレット端末の電源を切ったのはセントブリーズ(旧仏)の極秘部隊「Chasse aux demons」通称『魔獣狩り』の科学班長Abel・Blanc氏だ、Abel氏は私達White/Fangの量子操作技術を取引材料に、セントブリーズにて行われている実験の一部を見せて貰ったが…
「明らかに非人道この上ない実験だな」
「落ち着けよ三島、ここで取引終了になっちまったら何も打つ手がなくなっちまう。」
「ま、二伊隊長の判断が賢明だな、だが俺は何も取引したいってのもあるが何よりも北方連合やユニオンを相手にしなくちゃならなくなるだろうアンタらを思ってやってるだぜ?」
Abel氏が言ってるのは最もで、どうやら近い内にユニオン、ブリタニア、北方連合によって始まる戦争にレギオンの技術が使われるらしい、現在レギオンを使役出来るのは天津とSBの二ヶ国のみだ。
「まぁ話を戻すんだが、このChloeって少女はそこのMr.四堂が若手時代に手に入れた名簿に名前が載っていたんだろう?」
「あぁ載っていた、ユニオン、ブリタニア、北方連合の子供の名前もな」
「男3人女3人、それもその内の2人はWhite/Fang一ノ瀬小隊で現役軍活中…と」
二伊、婚活みたいなノリで言うのやめようか
「とは言えAbel氏」
「何だいMr.東」
「貴公はユニオン、ブリタニア、北方連合の子供達と会った事はありますか?」
「無いな、少なくともブリタニアに友人はいたがそれだけだ、めぼしい情報は期待しない方がいいぜ。」
「…その…ブリタニアの人…、貴方と…同じ…?」
めちゃくちゃ、本当にめちゃくちゃ珍しく五河隊長が口を開いた、明日槍でも降るのか?
「どう言う事だ?Mrs.五河」
「Abel…さんは、その人の…連作先…知ってる?」
「いや、生憎だがそいつは何も話して…まさか!」
「その…まさか…」
どうやら話の核心に近づいて来たらしい、各隊の隊長達はそれぞれ顔を見合わせた。
「司令」
「あぁ、Abel氏と五河隊長が言ったようにブリタニアにいるAbel氏の友人も我々と同じ特殊部隊の人間として考えていい、彼等に近づければ妖やこの世の真実がある程度分かる筈だ。」
次も私達一ノ瀬に任務が来るだろう、おそらくは要人…Abel氏の警護、要人警護こエキスパートとして二伊小隊も来る筈だ。
「一ノ瀬、お前達にばかりすまないが次は要人警護だ、受けてくれるか?」
「勿論です」
ほら来た、だが私達が受けるとなると当然二伊も…
「二伊、お前も付いてやれ」
「了解〜♪」
やっぱり付いてくる、この辺りは流石二伊と言うべきか、私はこれまで彼が与えられた任務を拒否する所を見た事がなかった。
「よし、じゃあ各隊の打ち合わせはしておけ、解散!」



「二伊」
「あぁ、打ち合わせは昼飯終わったからな」
私達は現在食堂に来ていた、White/Fangの食事はバイキング、自分で好きな物をとり好きなだけ喰らう事が出来るが、元々少食な私はあまり食べない…二伊はその逆だが。
「くぅ〜っ!やっぱここのカレーは最っ高だな!」
「あまり食べない私に言われても困るかな」
「何だよしっかり食えよ〜、大きくなれないぞ!?」
「いやもう背は伸びなくて良いし…」
「ま、後で小会議室借りとくからそこで打ち合わせと行こうぜ」
「分かった、後で会おう」
そう言って二伊は食器を片付けて小会議室へ向かった、私もそろそろ行こうか、私も食器を片付け部下達にこの事を知らせに行こうと廊下を歩いていると…
「赤城ちゃん…」
「静流で良いです、どっちにしろお爺ちゃんが名前を変えろと言っていたのは一般人として生きる選択、お爺ちゃんの思惑通り忍になった今は名を変える必要性がありませんから」
「そっか…」
どうやら彼女の中で何かが吹っ切れたらしい、今の彼女はもう過去の怨念に囚われる事は無いだろう、なにより笑顔の可愛い美少女のそれだ…いやいや、私は何を言っているんだか
「そう言えば静流ちゃん」
「午後14時から小会議室ですよね、分かります」
「あぁ、うん…そうだけど何で知ってるの?」
「レギオンって便利ですよね」
成る程レギオンに盗み聞きさせたか、吹っ切れたと同時に狡賢さも彼女は手に入れたらしい、私は近々自分の胃に穴が開く予感がした。
「前はそんなじゃなかったのに…」
「えへへ〜♪」
「褒めてないけどね、とりあえず連絡網で回しておこうか、彼等は知らないだろうし」
今は自由行動時間だ、隊舎の各々の部屋の物資の買い込みや外出が許可されている。







〜佐之助Side〜
「着いたか…」
今、俺は暇潰しに東楼の娯楽街の路地裏へ来ている、何が目的かって?そりゃあ
「よぉ、元気にしてたか?」
「な〜ご」
「にゃ〜」
「みゃ〜ん」
猫達である、コイツらは路地裏に集まった野良猫達で、この5番路地は『猫の集会所』、『路地裏の猫カフェ』、『猫団地』などと呼ばれ意外と見に来る奴らが多い。無論俺もその1人なのだが…
「よ〜しよし、いつもの買って来てやったからな〜」
俺は猫缶を出す、俺は基本物欲が無いから貰った給料等は殆ど募金や寄付に回しちまう、隊長や司令には『たまには自分の為に使え』って良く言われるがこれが俺の生き様だ…
「ん?」
…と思っていたのだが、何処かから叫び声が聞こえる、数はおそらく6で1人が逃げてて5人が追いかけてる。
「良くねえなぁ、そう言うのはよ」
俺は路地裏を飛び出す。



「Что вы,ребята!?」
「ちょっと待ってよ姉ちゃんよぉ!」
「俺らと遊びに行こうぜぇ」
「マジで気持ち良くなれるって〜!」
「Кто-нибудь,пожалуйста помогаите!」
「見つけた…!」
俺は逃げている少女と追っている男達を見つける、見つけたなら後は簡単だ…全速力で捕まえに行く!
「マジ待ってって!」
「んのアマ…良い加減に…!」



「うおああああ!」
「何だ!?」
「何だコイツ…ボハァ!」
「そこォ…どけやダボがぁぁぁぁぁ!」
「「「いやマジで何だありゃあ!?」」」
俺は追う、誰を?男共を、取り巻きどもを吹き飛ばしながら前傾姿勢で走り抜ける!
ギュンッ!とすぐに追われていた少女と追っていた男達の間に入る、周囲の市民はまるでヒーローショーでも見るような顔だ。
「誰だテメェ!」
「何だ?正義の味方かぁ?アァ!?」
「調子乗ってっとッコロスゾラァ!」
やはりチンピラはチンピラだ、ちょっと油を注いでやれば勝手に燃える、まるで少しの衝撃で爆発するニトログリセリンだな。
「俺は…正義の味方?いや違うな…あ、俺ぁ何なんだ?」
「「「知るかああああああああ!」」」
チンピラどもの息の合ったツッコミが入る、もしかしたら俺達漫才いけんじゃね?
「訳分からねえ事抜かしやがって…!テメェら、やっちまえぇぇぇ!」
「死ねオラァ!」
1人が拳を振るう、チンピラの攻撃は単純かつ単調だ、ちょっと体を動かせば余裕で回避出来るし…
「甘い!」
「グハッ!」
カウンターを決める事だって造作もない!
「なっ!野郎…」
「テメェェェ!」
「また脳無しに突っ込んで…うわ!ガム吐きやがった!汚ねえ!」
何と目潰しを使って来た、地下格時代でも目潰しやって来る奴はいなかったぞこの野郎!
「小賢しい!」
「プギャッ!」
アッパーを叩き込んでやったら舌を噛んで気絶しやがった、ざまあみやがれ、ガムを吐き捨てるからだ罰当たりめ。残るは1人
「で?どうする、お前もやるか?」
「フッ、ハハハハハ!」
突然男が笑い出した、何だ?プッツンしちゃったか?
「何が可笑しい?」
「テメェ、拳一つで勝てると思うなよ?」
男が出した物…それは、拳銃だ
「うわあああああああ!」
「警察、警察呼べ!」
「おい嘘だろ!?兄ちゃん死んじまうぞ!?」
周りの民衆は叫ぶ、そりゃそうだ近くの人間がいきなり拳銃を出したのだから、だが俺はその程度では怯まない。
「落ち着けェッ!」
一喝して騒ぎを収める、民衆の騒ぎが収まり俺の方に視線が向く。
「その銃、本物だな?銃刀法違反だ、今下ろせば殺人も加わらなくて済むぞ」
「はっ!テメェを殺す為ならムショに入ろうが知ったこっちゃねぇよ!」
男は本気だ、おそらく何を言ってももう無駄だろう、ならば、こちらも相応の本気を出すまでよ…!
「(ちょっと重大事件に巻き込まれちゃったんで許してくれよ?)」
レギオンを解放する、レギオンは一般市民…というかレギオンの保有許可を得た物にしか見えない、俺はレギオンをそっと纏う。
「なら撃てば良い、その後の人生を全て棒に振る事にがな」
「今更命乞いか?」
「否だ」
「そうかい」
パァンッ!と銃声が響き渡り、チンピラの放った弾丸が俺の胸を貫く
「きゃあああああああああああ!」
「はっ、俺に楯突くからそうなんだ…何!?」
筈だった、そう、倒れなかったのだ、目の前の俺に撃たれたはずの男は悠然と俺の懐まで来ていて…
「罪状、銃刀法違反に殺人未遂の追加だ…豚箱ん中で永遠に後悔するんだな」
「ヒ、ヒィッ!まっ待ってくれ!やめてくれ!分かった反省する!反省するから!」
「もう…遅え!」
ドッゴォォォォォンッ!と豪快な音を立てて俺を撃ったチンピラが吹き飛ぶ、そして周囲からは歓声と拍手の嵐が鳴り響いた。
「すげぇぞ兄ちゃん!」
「銃持った奴に勝ちやがった!」
「格好いい!」
その周囲の完成を尻目に俺は少女の元へ歩み寄る、セミロングで銀髪ブロンドの、まるで人形のような少女だった。
「大丈夫か?アンタ…名は?」
「Спасибо,меня зовут Ирина・Азимов」
「「「「「!?」」」」」
俺と民衆は呆然とする、まさかロシア人だったとは…
「すまねぇ、ロシア語はさっぱりなんだ」
まぁ、保護すれば良いかな、そう思っていると不意にスマホが鳴り響いた。
「あ!すんません!ちょっと会社の方からのメールでして…」
メールを見る
『佐之助、今どこにいる?』
「(ヤッベぇぇぇぇぇ!副隊長だ!しかもキレてる!やべえってどうしよう!)」
副隊長がキレるって相当だぞおい、しょうがねぇ、この少女拾ってくか。









どうやら打ち合わせがあったらしく、遅れた俺は別室でめちゃくちゃ怒られた。











次回White/Fang代拾参節
「僕は昇りまた堕ちて行く」

ロシア人の少女、イリーナ登場、名簿に記載されていた人物は後3人です。
(クロエに関しては名は同じだが本人ではない)
最近描いてて思ったんですが、この作品主人公いなくない?
そして久々の佐之助回、近々好きなキャラに投票してもらおうかしら
そしてコードネームと仮面は主に1人の任務の際に使用されます、わ、忘れてたわけじゃないからね!

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.19 )
日時: 2019/11/10 22:31
名前: 祝福の仮面屋 (ID: Z.5JjKPv)

White/Fang代拾参節
「僕は昇りまた堕ちて行く」
白牙史上最恐の回、お楽しみに



〜2109年、北方連合とある戦場〜



「隊長、сирена(セイレーン)、出撃準備完了しました」
「よし、行け」
私が初めて見た世界は真っ白だった、家も地面も空も木も何もかもが真っ白、まるで有るべき色を無くしてしまったかの様に、私は歌い続けていた、何故かは分からない、ただ歌いたかったのだ。そしたら街の人たちは、「歌上手だね〜」って私の足元にお金やお菓子を置いていってくれた。
「隊長!誰かが来ます!」
「あれは…子供か…!?」
「どうしますか…?」
「とにかく保護だ、外に行くぞ」
「はいっ!」
でも私の所に来るのはおじさんやおばさんだけじゃなかった、偶に来てくれる若いお姉さんは私に綺麗なお洋服を買ってくれた、偶に来てくれる若いお兄さんは私に色んな物を食べさせてくれた、だから皆私の事が嫌いだったんだ。自分達は貧しい暮らしをしているのに、1人だけ綺麗なお洋服を着て豪華な食べ物を食べる、それが気に食わなかったんだ。私の何がいけないの?私はただ歌い続けてただけで、その人達が寄って来たのに。
「お嬢ちゃん…大丈夫かい?寒いだろう、中へ入りなさい」
「〜♪」
「?何を歌っているんだい?」
「喜びの歌♪」
「何を言って…ガッ!?」
「た、隊長…うぐあっ…!」
踊れ踊れみんな踊れ、狂った様に踊り出せ♪
踊らない奴はどうするの?
舌を切り取り目を抉れ♪
血で血を洗い殺し合え♪
さぁ始めよう1、2、3♪
楽しいショーの始まりだ♪
「がっ…かっ…」
「ば、化け物…が…!」
「один」
「な、何を…!?」
「два?」
「答えろ…!」
「три♪」
「一体何を…ぎゃああああああああああ!?」
「た、隊長…ぐあああああああ!」
ドロドロ、グチャグチャ、ブチブチと音を立ててみんなみんな死んで行く、1人は眼窩を溶かして口から泡を吹き、もう1人は体という体を幾千もの槍に貫かれ、そしてもう1人は体の中を食い潰されて。
国の敵は私の敵、そう思ってた、王子様に会うまでは…









〜佐之助Side〜
「で、お前はチンピラから少女を救い、その少女を追っていたチンピラを警察に突き出したから遅れたと」
「だからそう言ってんじゃん」
「Есть точн!」
今俺はWhite/Fangの取調室にいる、俺の目の前に座っているのは鬼上司の鹿島 新、そんでもって俺の隣に座っているワンピースの少女は俺が救った少女だ、決して事案じゃねえぞ
「北連人か…」
「そうっす、俺が救った女の子が北連人って俺色々と凄くないですか?」
「お嬢さん、年齢は?」
「16 лет」
「16歳か」
「俺や静流と同級っすね」
「だな」
このセミロングの銀髪ブロンド少女はどうやら一人で天津まで来たらしく、手持ち無沙汰でどうしようもなかったらしく、そこを俺が保護して現在に至る。ちなみにだが表情や仕草、ニュアンスの違いが分かれば外国語を聞き取るのは然程苦にはならない、まぁ個人差あるからおすすめしないが。
「Да,он мой жених,тас что не говори со мнои」
「ブゥーーーッ」
待って、なんかいきなり凄い爆弾発言かまして来たよこの娘、俺にこの組織全体を敵に回させる気か!?
「ほう…、婚約者を名乗るとはお前も偉くなったな…」
「いや違うんすよ!?イリアはちょっと恋愛脳だから…!」
「Меня зовут Ирина・Азимов Спасибо」
どうやら彼女の名はイリーナ・アシモフと言うらしい…、アシモフ?ん?アシモフ!?
「Ирина・Азимовだと…!?」
「Ирина・Азимовって、四堂隊長の名簿に載ってるあのИрина・Азимовか!?」
どうやら俺は、とんでもないものを釣り上げてしまったらしい、まさか四堂隊長の名簿に名前が記載されている少女だったとは…!
「隊長…!」
「あぁ、時は一刻を争う、直ぐに隊長の元へ行くぞ!」
「イリア、付いて来てくれ」
「Что?Что?」
彼女は今ひとつ理解出来ていないみたいだがしょうがない、俺達は全速で一ノ瀬、二伊混合大隊の元へ駆け付けた。
「隊長!」
「遅かったじゃないか二人共、何かあったのかい?」
「いえ、端的に言わせて頂きます、護衛対象が増えました」
「…聞いたかい?冷次」
「あぁ、ばっちりとな」
どうやら俺達の護衛対象が増えるらしい、だが俺達は二伊小隊は要人警護のエキスパートだ、護衛対象が一人や二人増えようが苦にはならない。
「えっと…、本日貴方の護衛を勤めさせて頂きます、White/Fang二伊小隊隊長、二伊 冷次です、Ирина・Азимов様でよろしいでしょうか?」
「Да спасибо сегоданя」
成る程、天津語は話せない訳ではなさそうだが無理に話させる必要はない、要人には北連の方も多い、何の問題もない。
「なぁMr.二伊、これは何の騒ぎだ?」
「Abel氏、此方は北方連合のИрина・Азимов嬢です。」
「初めましてMrs.Азимов、Abel・Blancだ」
「こちらこそ初めましてбарон・Blanc、Ирина・Азимовです。」
かなり流暢な天津語だ、おそらく幼少の頃から学んで来たのだろう、この歳でここまで流暢なのは流石の一言に尽きる。
「私は一ノ瀬小隊隊長を務めております、一ノ瀬 燈矢と申す者です、Азимов嬢、いきなりですが北方連合、ユニオン、ブリタニア、SBによる戦争に付いてはご存知でしょうか?」
「えぇ、もちろん存じております、私達北連はあなた方天津巫國の量子操作技術並びにレギオンの技術を高く買っております、なのであなた方をウチの技術顧問として迎え入れたいのですがどうでしょうか?」
「「「「「ッッッ!」」」」」
全員が絶句した、なんと彼女の考えている事はAbel氏の考えと全く一致しているからだ、とは言え天津には今後一切の戦争に参加しない『不戦の契り』が交わされている為、おそらく…
「お待ち下さいАзимов嬢、私達天津巫國はかつての日本の時代から続く一切の武力行為を捨てる『不戦の契り』がございます、残念ですが断念下さい…」
「何で?」
瞬間、俺を含む混合大隊の全員の動きが止まった、彼女の威圧感によってだ、あんな可憐で華奢な体のどこからドス黒い威圧感が出て来るのだろうか。
「なら、灰崎 佐之助君を下さいな」
「何故、灰崎を…?」
「彼は私を救ってくれた王子様なんです♪私は彼と一緒に居たい、ねぇ、佐之君は私と一緒に居てくれるでしょ…?」
よせ灰崎、その手を取るな!そう叫びたかったが声が出ない、体が動かない、そして彼は…灰崎はなされるがままに彼女の手を
「悪いな」
「え?」
パンッと払った
「…何で…?」
「言っておくが、俺はあくまで俺が助けたいからお前を助けただけでお前を助けたくて助けた訳じゃない、そこんところ勘違いすんなよ」
彼は言う、バッサリと、それも本当に恋をしている少女ならその場に泣き崩れる程の…だが彼女は
「じゃあ何で助けたの?」
微動だにしなかった
「何で助けたの…?助けなくても良かったじゃん…、男は皆そう、期待させて裏切る…力任せで女にしか脳がなくて醜くて傲慢で強欲で怠惰で嫉妬深くて意地汚くて自分勝手なわがままでそれでもって…恐ろしい」
「………っ!」
灰崎も危険を感じ取ったのか臨戦態勢に入る、そんな彼には目もくれず
「そうだ、なら死ねば良い、私の事を裏切る男は道具としか見ない男は、皆、皆死ねば良いんだ♪」
彼女は歌い出した、それはまるで小鳥のさえずりの様で、なのに悪魔の囁きにも聴こえて、それでもってなお天使のラッパの様に聴こえる悲しく醜くて美しい破滅の歌

「Танцуй,танцуй,все танцуют♪
(踊れ踊れみんな踊れ)」
「Танцуй как сумасшедший♪
(狂った様に踊り出せ)」
「一体何を…ぐあぁ!?」
「ぎゃあああああああああああ!」
歌を聞いた隊員達に異変が訪れる、隊員達の眼窩が溶け出し、口から泡を吹き出し倒れ始めたのだ。
「(一体何が…?)」
だが破滅の歌姫は歌うのを止める事はない
「Что вы делаете,если не танцуете♪
(踊らない奴はどうするの?)」
「Вырежьте язык и утолите глаза♪
(舌を切り取り目を抉れ)」
レギオン保有者である俺達の眼窩は溶け出る事は無かったが、その代わりに尋常じゃない痛みが全身を襲っている。
「(くっ…おおっ…!)」
だが殺戮の歌は終わらない
「Это налачо веселого шоу♪
(さぁ楽しいショーの始まりだ)」
「Давай начнеи Один?Два?три!♪
(さぁ始めよう1、2、3)」

「ぐあああああああ!」
「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」
「クソォッ…クソォ!」
痛みが全身を駆け巡る、まるで寄生虫に食い潰されるかの様に、痛みが酷くて、なのに体は動かなくて、体を内部から弄られてるみたいで、場所が見えないから余計怖くて
「嫌だ…!まだ死にたくない!」
だけど希望は叶わない、ブチブチ、グシャリ、グチャグチャ、ズブリ、と体から幾千の槍が生え出て来る。腹を、手を、腕を、顔を、目を、鼻を、喉を、耳を、足を、背中を、ありとあらゆる場所から槍が生えて来る。
…もう死んだ、みんな死んだ、私を虐める男達も、王子様を誑かす醜く汚い女もみんなみんな死んだのだ。
「Я люблю тебя принц♪」
私は血の海になった地面の真ん中でぐったりとした唯一無事の佐之君を抱き抱える、156cmしかない小柄な私でも彼を軽々抱ける理由は簡単、私はもう人間じゃないから



私の歌は人を殺す、その姿は伝承上の怪物に例えられ
「сеирна(セイレーン)」と呼ばれた。






次回White/Fang代拾肆節
「殺人鬼も聖者も凡人も」
書いてる自分でも感じたWhite/Fangで一番狂気に溢れた回
そして全滅end(復活するけどね)北連へ連れ去られた佐之の結末は?
祝福の仮面屋の次回作にご期待ください(終わらないけど)


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