ダーク・ファンタジー小説
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- White/Fang(Thanks閲覧数1000!)
- 日時: 2020/08/02 21:42
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: siKnm0iV)
代零節「求められる知識」
登場人物『White/Fang編』
一ノ瀬小隊
葛城 静流→雨宮 赤城
生年月日(2106年、12月25日)
身長 162cm
体重 52kg
好きなもの ふわふわした物
嫌いなもの 鴉
所属 対特殊災害隠密局『White/Fang』
コードネーム『クノイチ』
専用装備「粒子加速式忍刀『ムラクモ』」
「式神『双刃』」
一ノ瀬 燈矢(一ノ瀬小隊隊長)
生年月日 (2070年4月1日)
身長 176cm
体重 85kg
好きなもの 筋トレ、部下達
嫌いなもの レイヴン、得体の知れない物
所属 White/Fang
コードネーム 『スサノオ』
専用装備 「7式大型変形斧『オシリス』」
「式神『爆斧』」
鹿島 新(一ノ瀬小隊副隊長)
生年月日 (2092年6月4日)
身長 172cm
体重 63kg
好きなもの 読書、料理
嫌いなもの 特になし
所属 White/Fang
コードネーム 『ホロウ』
専用装備 「粒子圧縮機構搭載型大鎌『セト』」
「式神『大蛇』」
灰崎 佐之助
生年月日 (2106年1月1日)
身長 180cm
体重 75kg
好きなもの 鯛茶漬け、強い奴
嫌いなもの 弱い奴
所属 地下格闘技会『天逆鉾』→White/Fang
コードネーム 『ナックルダスター』
専用装備 「火薬炸裂式加速手甲『レッカ』」
「式神『鉄拳』」
氷室 三葉
生年月日 (2100年3月9日)
身長 158cm
体重 40kg
好きなもの ふかふかベッド
嫌いなもの 硬い物全部(食材は除く)
所属 White/Fang
コードネーム 『ラプンツェル』
専用装備 「狙撃式大型銃剣『アズサ』」
「式神『天弓』」
東 総二郎(White/Fang総司令官)
生年月日 ?
身長 ?
体重 ?
好きなもの ?
嫌いなもの ?
所属 White/Fang
日出 有紗(戦術オペレーター)
生年月日 (2089年11月10日)
身長 160cm
体重 50kg
好きなもの ショッピング、子供達
嫌いなもの 叔父
所属 WF
相葉 相太
生年月日 (2085年8月15日)
身長 173cm
体重 65kg
好きなもの 運動、トレーニング、植物園巡り
嫌いなもの 無し
所属 WF
青原 霞(専属医)
生年月日 (2085年10月9日)
身長 168cm
体重 50kg
好きなもの 特になし
嫌いなもの 特になし
所属WF
人物及び用語解説
>>1.>>2
代壱章
>>3.>>4.>>5.>>6.>>7.>>8.>>10
>>11.>>12.>>14.>>15.>>16
>>17.>>18.>>19.>>20.>>21
代弐章
>>23.>>24.>>25.>>26.>>27
>>28.>>29
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.2 )
- 日時: 2019/11/13 06:22
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: kNmNzfjC)
代零節「求められる知識其の参」
『用語解説編』
用語
天津巫國
かつて日本と呼ばれた極東の島国、2030年に起きた超規模な地盤沈下により、周りを海に囲まれたこの国は国土の5分の1を失い、そして地盤沈下により生じた穴から大型の化け物が出現し人々を蹂躙し、この事変は『厄祭』と呼ばれた。2072年1月1日、日本政府は国名を『天津巫國』と改名し化け物を『妖』と総称、妖討伐を専門業とする政府直轄の特殊部隊、対特殊災害隠密局…通称『White/Fang』を結成、彼らを介することで妖による被害は瞬く間に減少したが依然テロリストなどの人災はどうしようもなかった。新政府は、『東楼』、『重月』、『飾利』、『天翁』、『伯楽』の五つを首都と制定し首都の周囲を壁で囲う事で妖の侵入を防いでおり、2120年現在の技術力も2030年当時のそれと比べ圧倒的に向上している。
対特殊災害隠密局『White/Fang』
日本政府改め天津幕府直轄の特殊部隊、暗殺、隠密、戦闘、要人警護、妖討伐など様々な仕事を請け負っているが、あくまでも幕府直轄の特殊部隊である為民間への普及は原則禁止されている。局員は汎用装備を自警用に持つ事を義務化されており、汎用刀、汎用拳銃、汎用棍から構成され基本的に汎用装備は一般隊員や各職員が所持している。志願などで入局した一般隊員とは違い推薦など特別な理由で入局した隊員は『特務隊員』と呼ばれ、各々に適した専用装備と新型生体兵器の式神の使用が許可されている。ただし大隊員によっては専用装備ではなく汎用装備を使用する者も存在する。
式神
オフィサーに所持を許可される新型生体兵器、基本的に逆三面体形状のコアに収納されており専用装備のコネクターを介して召喚を行う。
レギオンは個体ごとにパートナーとの特徴を前面に押し出せる様にチューンされている、主にレギオンは独立型、支援型、装身型、追従型、特殊型の五つに分けられており、独立型は相手を選ばないベーシックな性能、支援型は他に比べると火力こそ劣るが隠密任務に秀でている他、追従型は主に要人警護や捜索に適している。その分特殊型や装身型は戦闘に特化したチューンを施されており、異形型は佐之助と新のレギオンがそれに該当する。
第9区『アイズ』
かつて会津地方があった廃墟、地盤沈下により住む場所を失った人々…所謂不法移民が暮らす土地、元々あった家屋の下階を利用する人々は首都の人間から「落ちぶれた者」と呼ばれ見下されている。またレイヴンの本拠地もここに存在する。
第5区『ネオアキバ』
東楼に存在する娯楽街、ショッピングモールなど娯楽施設は勿論多くの観光客で賑わっている為、天津経済の中心地とも言える場所。ただしストリートギャングなどの荒くれ者達によった被害が多く路地裏はスラム街の様な惨状になっているなど多くの闇も抱えている。
妖
地盤沈下により生じた穴から出現する化け物の総称、C-SIZEと呼ばれる特殊な大きさ基準が用いられており最小のC-1から最大のC-9までが存在し、C-9クラスが出現した際には民間人がいる状況でもWFに出陣要請がかかる程の被害が想定されている。基本的にはC-1やC-2クラスの妖ではレギオンに出来ず、出来ても戦力にならない為レギオンの素体として鹵獲されるのはC-3〜4の個体が主。C-5〜9の個体は制御が難しく、倫理上C-9クラスは人の手では操れない事が証明されている為レギオン化の計画は実行されていない。
レイヴン
通称『鴉』と呼ばれているハッカー集団、中でもリーダーを務めるカンヘルは他のメンバーに比べて身体能力、クラッキング能力共に比較対象がいない程高く、カンヘルや幹部を相手する際には必ず1人はオフィサーが必要とされる。幹部からその上は専用装備を所持している者が多く、さらには売人を通した増強剤を使用して身体能力を強制的に引き上げている者もいる。
これは、2120年を生きる忍者の血を引く私の素敵で素敵な物語。
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.3 )
- 日時: 2019/11/13 06:20
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: kNmNzfjC)
White/Fang 代一節「悲劇への序曲」
2030年、突然、だけど奇妙な現実味を帯びた破滅は、好きな人の告白の様に唐突に訪れた。
昔私が祖父から聞いた話によれば、超規模な地盤沈下が日本の各地で発生し、日本の国土の5分の1を根こそぎかっぱらってったそうな。
とは言え当時産まれていなかった私からすれば御伽噺の様な空想感が漂っていた、人間は他人から見聞きした情報をこの世の理として捉える習性がある、それ故に本来の情報に懐疑的になるのだ。
私が産まれて5年経った2111年の時点で、もう日本という国は存在せず天津巫國と呼ばれる國になってたらしい、これはマジ情報だったのが救いだったのかもしれない。
私の祖父…と言うか私の家はかつての経済界の首領的な立ち位置の家系だったらしく、おまけに忍者の家系でもあったらしい。一昔前は「アイェェェェェェ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」なんてネタが某動画投稿サイトにて持て囃されたらしいが、今もそのネタ通じるのかな…通じる訳ないか、ないな
とにかく、これは2120年現在を生きる忍者の孫娘の私が紡ぐ、素敵な素敵な物語
〜天津巫國(旧日本国)ある山奥〜
「ただいま〜」
そう言って私は靴を脱ぐ、靴は時代錯誤なものではなく普通に何処にでも売ってそうな靴だ。時代錯誤といえば自分ちの外観くらいだろう。(寝殿造と言うらしい、いつの時代だ)そう思いながら上がるとちょっと視線を感じた、上の方だろうか。コソコソ…いやカサカサと動き回る音が聞こえて来る。
「ちょっと、コソコソと隠れていないで出てきて貰える?バルサン炊くよ?」
「………!」
おっと、少し意地悪のつもりで煽ってやったら唐突に殺気が吹き出してきた、いや単細胞か。はぁ…面倒な事になったなぁ…
「ムカつくなら捕まえてごらんよ、でも私…鬼ごっこは強いよ?」
と言いながらも私は弾ッと飛び上がり轟ッ!と風切り音でも鳴りそうな程に鋭い蹴りを牙ッ!と相手に叩き込む、骨を叩き斬ってやったつもりだったが相手も相当な手練れらしい、私の蹴りはアッサリと掴まれた。
「クッ…」
ミシミシと嫌な音が聞こえる、ヤバイ、マジで折る気だコイツ。
「(パニックになるな、こんな時は…こう!)」
弾ッ!と相手の腕を蹴り、強引に拘束を抜け出す、そして空中へ翻すと同時に相手を爪先で蹴り上げる。
「小癪な…!」
男のくぐもった声が聞こえる、仮面でも被っているのだろうか、表情は読みづらい。
「おぉ、あなた喋れたんだ…、てっきり喋れないと思ってたよ。ケリ付けたげるから付いておいでよ、鬼さん!」
私は走り出す、向かうは屋根裏部屋…の煙玉保管庫、何故そんなものあるのか?おいおいここは忍者屋敷だぜ?
「アイツは…ってはぁ!?」
後ろを見ると暗殺者(仮)は壁を走って来てる、パルクールじゃないんだから床走ってよ!障子破ったら弁償だよ!?
「(付いた!久し振りだなぁ…ここ来るの…ってそうじゃない、今はアイツをどうにかしないと…!)」
私は隠れる場所を探す
「(あの木箱がいいな…)」
私は丁度いい大きさの木箱に身を潜める、そして5秒程後に暗殺者(仮)の足音が聞こえる、歩いているのかゆっくりだ。
「小娘め…、一体どこへ…!?」
男の足音が近づいて来る、あと少し…あと少しだ…、来た…今!
「何っ!?」
磐ッ!と蓋を勢い良く開けて飛び出すと同時に踵落としの体勢に移る、蓋は相手の視界を塞ぐし、踵落としのモーションはフェイク、だが相手は反射的に防御の構えに移るから時間稼ぎには十分!
「さて問題!これは何に見えるでしょうか!」
「貴様…っ!」
「楽しかったよ♪鬼ごっこォォォォォ!」
私は豪快かつ大胆に煙玉を投げる…そう、煙玉を投げた筈だった…突如として怒尾尾尾尾音!と盛大な爆発音を鳴らしながら煙玉は爆発したのだ。なんと言う事でしょう!これまで薄暗く視界の悪かった屋根裏部屋の屋根が吹き飛び視界が明るくクリアになったではありませんか!
「これぞ劇的BeforeAfter…ってね」
だけどこれは私も想定外だった、まさか炸裂弾だったとは、とはいえここに来るのは幼稚園の頃以来だし受験だなんだで来る暇無かったし…とか思っている内に暗殺者(仮)が落ちて来た、おいおいマジかよ、あの勢いと体勢でスーパーヒーロー着地決めちゃったよ。すっご
「ふむ、腕を上げたな…静流」
「え、お、お爺ちゃん!?」
なんと言う事だ、私の命を狙った暗殺者(仮)はまさかの祖父だった、悲しきかな現実…
「おい待て、お主今変な事考えとるじゃろう…だが家に入った瞬間に殺気を感じ取るのは見事じゃ、小さい頃はまともに見つけられなかったからのう。」
「いや、お爺ちゃん手ぇ抜いてたでしょ?」
「いいや?お主がマジで儂を殺しに来るもんだから若干本気でやらせて貰った、周りの物を利用して勝機を生み出すのも高評価じゃ…」
とお爺ちゃんが評価していると刃牙ッ!と床が抜けた、お爺ちゃんは無論落ちた、あぁ可哀想に…ついに天からのお迎えが…なんて冗談かましてる場合じゃない!私は和室に飛び降り、お爺ちゃんの元に駆けつける。
「おぉ…おつつつ…」
「お爺ちゃん!大丈夫…!?」
私の伸ばした手はガシッと掴まれる、え?何で?私助けたのに?
「勝ったな…!」
私はハッとする、あろう事かこの爺敵の同情を誘って来やがった!汚ねぇ!
「いやいや、そこまでして勝ち欲しいの!?」
「いや、最後はお主がどんな反応するか試したまでよ、結果お主は助ける道を選んだ。結果としては悪くないが戦場だだたらお主…、とっくに死んどったぞ?」
「だってお爺ちゃん…」
「いや、わかっとる、寧ろ敵だったらそのまま追撃加える気がして来た…」
「多分お爺ちゃんって分からなかったら掛けてたかも…」
「何じゃろうな、孫に殺されるってすっごい複雑な気分」
「そっか…ふふっ♪」
「ククク…!」
コンコン
「「!?」」
「すいません、静流ちゃんの友達の朝比奈なんですけど、静流ちゃん居ますか?」
「あぁ〜ごめんヒナ!ちょっとお手伝いしてた!」
「そうなの?大丈夫だよ!行こ、映画遅れちゃうよ?」
「じゃあお爺ちゃん!行って来ま〜す!」
「遅くなるなよ〜」
私は友達と街へ出かけた、だが今の私は知らない、この『おでかけ』が悲劇のトリガーになる事を…
次回White/Fang
代2節「9を失い1を得る」
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.4 )
- 日時: 2019/11/13 06:21
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: kNmNzfjC)
White/Fang 代弐節(玖を失い壱を得る)
「行って来ま〜す!」
愛しき孫の声を聞き儂はそっと踵を返す、あの子は少々喧嘩っ早いが友達を危険に晒すほどの馬鹿ではないだろう、それにあの子は理解しとるじゃろう、自身の力…葛城流がどれ程危険な技なのか位…。儂は一つ息をついて仏壇の前へ歩いた、今は亡き静流の母…志乃はもう、儂や静流、真一に笑いかけてくれる事はもう二度とあり得んじゃろうな。
「志乃や…、お主が愛した娘は順調に育っとるぞ…元々お主は体が弱く、だから儂も忍の道を歩ませとう無かったと言うのに…」
すでに届かぬ思いにふけっていると不意に扉をコンコンと叩かれる、儂は一瞬体が強張ったが我ながら流石葛城の家の者と言うべきか咄嗟に対応できた。敵襲と思ったが敵意は感じない…恐らく交渉の類だろう、とりあえず儂は表に出る事にした。
「何奴じゃ」
「おっと失礼、私こう言う者でございます」
そう言って狐顔の男が差し出した名刺には、「対特殊災害隠密局『White/Fang 』」と書かれていた。
「狼が何の用じゃ、今更になって儂のような老いぼれの手を借りたくなったか?」
「いえいえ、とはいえ確かに猫の手も借りたい状況ではありますね、貴方様を今すぐにうちの戦闘技術顧問として雇いたい位だ」
「ふん、冷やかしなら他所でやらんか。儂は政府の狗に成り下がる気は無い、何より葛城流は門外不出の流派、お主らは其れ位知ってるじゃろうが。」
「確かに葛城流は門外不出…、ですが、私めが今回来た理由は貴方様のお孫さんに用があるからなんです。」
「孫はやらんぞ」
「いえ、もう推薦状は届いておりますのでほぼ強制的にうちへ来て頂きます。」
「式神の実験台にでもするつもりか?」
「いいえ?寧ろその逆です、彼女には…式神のパートナーになって貰う予定ですから。」
「成る程…、じゃが答えは否じゃ、出直して来るがよい、うつけ」
「貴様…!」
黒スーツの男が怒りを露わにする、この様子を見るにこの狐顔の男は相当な上役らしい、そして狐顔の男は前に出た黒スーツを手で制した。
「やはりそうですか、ですがまぁ…精々『鴉』には気を付けて下さいね?さぁさぁ、お前達行きますよ。」
男はそう言って踵を返すと黒スーツを引き連れて去っていった、台風一過…とまでは行かないじゃろうが、孫を渡す訳にはいかん。そう思い戸を開け土間へ足を踏み入れた瞬間、爆熱と熱風と衝撃波が儂の体と家を包み込んだ。
〜天津巫國 首都・東楼 第伍区〜
「いやぁ〜ごめん!待った?」
「静流ちゃんお手伝いしてたみたいでね、時間過ぎちゃったけど大丈夫?」
「あぁ、別に問題ねぇし女の遅刻をウダウダ言う程器の小せぇ男じゃねーよ」
私とヒナはもう一度「ごめん」と目の前の男子に謝る、背が高く筋骨隆々とした体は側から見ればアスリートがボディビルダーと間違われても可笑しく無いくらいに鍛え上げられていた。大板 一樹、私達のクラスメイトで私達は勝手に『カズ』とあだ名で呼ばせて貰っているが、嫌な顔一つしない良い奴で一緒にいてもストレスの感じない良い男である。
「お昼どうする?ヒナの観たい映画って午後にもやるんでしょ?」
「うん…、でも近くで食べられる所がいいよね、そうだ!奏楽苑とかどう?」
「ラーメンか…そうだな、なら俺んちで食わないか?ここから近ぇしよ、それにもう2時だしマジで腹減っちまった。」
「うん!よし決定!早く行こ!」
ヒナは自分がやろうと思った事には積極的なタイプだ、こうやって文化祭の時とかも率先してやってたっけな…カズの家は歩いて数分だし、運動にもなるから一石二鳥かも。
「よ〜し、じゃあ競争しよう!一番遅かった人の奢りね〜!」
「あ、ちょっと待ってよ…もう!脚だけは早いんだから!」
「いや、親父に頼んで半額にして貰うから割り勘で良いだろうが…」
「さっすがカズ!いい事言うねぇ!」
「俺んちだしな、だけど金は払えよ!?」
「はいはい、早く行くよ!」
私達は歩く、でも愚かな私はまだ知らない、私の身内に悲劇が降りかかっている事を…
〜柳奏庵〜
「親父ー!いつもの!」
「お邪魔しま〜す」
「こんちわー」
「おう一樹!来たか…てオメェ、遂に女を…しかもこんな別嬪さんを…!?」
「いや女じゃねぇし…俺も手伝うから早くやろうぜ、疲れてんだろ?」
「いいやお前も座れ、折角友達連れてきたってんだからゆっくりしてけよ?それに今日はクリスマスだ!おじさん奮発しちゃうぜぇ〜!?」
そう言いながらカズの父はラーメンを作る、私はここのラーメンが大好きだ、何が好きって?無論、豚骨醤油である。ここの豚骨醤油は豚骨の味が主張し過ぎず、それでもって醤油も主張し過ぎずな絶妙なバランスを保っている。でも私は思う、豚骨ラーメンって豚の骨と書いておきながら豚要素チャーシューだけじゃないか?
それに今日はカズの父も言った様にクリスマスだ、ケーキとかチキンライス食べたいな。
「よぅし、豚骨醤油、野菜たっぷり味噌、海鮮塩お待ち!」
と思ってるうちにラーメンが出来上がり、私達は各々の好きな味を手に取り啜る、うん、豚骨の薄過ぎず濃過ぎずのまろやかな旨味がちょい辛口醤油のピリッとした辛さにベストマッチしている…、まさに至福
「お昼のニュースを始めます、現在、東楼郊外の山奥で山火事が発生しました、原因は不明とされています。」
と…思っていたのだが、『山奥で山火事』その言葉を聞いた瞬間に私の背は凍りついた。
「今は消防隊が決死の消火活動を行なっていますが、消火完了の目処は立っていません。」
「物騒なもんだな…、そういや嬢ちゃんの家も山奥だったろ…って嬢ちゃん!?」
私は気が付けば走っていた、前傾姿勢で一定のリズムで呼吸、言葉通りの全力疾走だ。
「(うちの近くには神城橋がある…!そこを通れば…!)」
なんて甘い考えだろう、神城橋は家のある山の麓、結構距離はあった為今はもう夜中だが神城橋は野次馬と報道で埋め尽くされていた。私はとりあえず現状を知りたいがため人垣を掻き分け、消火活動をしていた一人の消防隊員に声をかけた。
「すいません、今の状況ってどんな感じですか?」
「ん?あぁ、炎の勢いが凄いのか未だに消火どころか鎮火すら出来てない状況だ、お嬢ちゃんは危ないから下がっていなさい。」
「行かなきゃ…」
「行かなきゃって…、聞いてなかったのかい?危ないから下がってって…オイ!?どこへ行くんだ!待ちなさい!」
私は走る、消防隊のおじさんごめんなさい、私は行かなきゃいけないんです。私の家が、お爺ちゃんが、焼けてしまうから…
「お爺ちゃん!大丈夫!?」
「静流…?静流なのか…!?」
家は凄惨な有様だった、家は全壊し轟々と燃えている、私は大昔の戦争の跡地もかんな感じなんだろうなと思ながら瓦礫の下敷きとなった祖父の元へ駆け付け瓦礫を手に掴んだ。
「お爺ちゃん、今、この瓦礫どかすから…!一緒に…逃げよう!」
「儂は…もうだめだ、瓦礫に脚を潰されとる。もう出れたとしても歩けんじゃろう…!」
「私が担いで逃げるから!お願い…!一緒に行こうよ…!」
「グル"ル"ァァ"ァァ"ッ"ッ"!!」
突如奇声とも鳴き声とも取れる謎の音が響き渡った、それと同時に数匹の小型の恐竜に鬼の面を被せたような化け物が周りを取り囲んでいた事に気付いた。
「やはり、鴉に目を付けられたか…!」
「鴉!?鴉が何なの!?何で鴉が…」
「お主はもう逃げろ…、ただし葛城の名はもう出すな…名を変えて生きろ…!お前は一人でも生きて行ける力がある…!早く行かんか!」
「う、うぅ…うわぁぁぁぁぁぁ!」
私は走り出した、無我夢中に、全力で、見えない物から逃げる様に泣叫びながら逃げ出した。
「志乃…、お前との約束は果たした…!どうかあの子を守ってやってくれ…!」
「あぁあぁあああぁ…!ゲホッ…、あぁあああぁ"ぁ"ぁ"!」
私は走る、己の無力さを呪い、憎み、そして恨みながら走る、走っている内に麓の町へ出た、出たと同時にドンッと人とぶつかる、男の人で若い女の人を二人連れている、従者だろうか。『殺される』そういったありとあらゆる恐怖と絶望が渦巻く中で、男の人は私に手を差し伸べた。
「こんばんはお嬢さん、今夜は冷えるね、寒いだろうからこれを着なさい。」
男の人はコートを羽織らせてくれた、暖かい…さっき身内を失ったのに情けなくそう感じてしまう。
「貴方は…?」
「これは失礼、自己紹介がまだだったね。私の名は一ノ瀬 燈矢、対特殊災害隠密局『White/Fang 』の者だ。名前を聞いていいかな?お嬢さん、そして復讐の為の力が欲しくないかい?」
「(お爺ちゃん…名前を変えろって言ってたっけ…)赤城…雨宮、赤城…。復讐の為の力…私に下さい…!」
「赤城か…いい名前だね、それに良い目をしている。私達White/Fang は君を歓迎しよう。」
私は伸ばされた男の人…燈矢さんの手を握る。そして私は誓う、「鴉を駆逐する」と…
これは、クリスマスに玖を喪い壱を得た私の、素敵な残酷な
復讐譚
次回White/Fang 代参節「弐つの選択」
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.5 )
- 日時: 2020/02/11 16:24
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: HWQyDP4e)
代参節
「弐つの選択」
去年のクリスマス、私は玖を喪い壱を得た
「お前は一人でも生きて行ける力がある…!早く行かんか!」
「う、うぅ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
今でも脳裏に鮮烈かつ鮮明に焼き付いている、あの日の記憶。まるで私を繋げて離さない鎖の様に巻きついて、私を拘束する首輪の様に私を締め付ける。
「あの日から2ヶ月…か」
今は2121年2月1日、私は今天津巫國の首都、東楼を囲む外壁の外の警備に回っている。私の家を襲った化け物…妖はいつ現れるか分からないからだ、かつて糸魚川静岡構造線…まぁ糸静線があった場所には地盤沈下によって生じた大穴から化け物で生まれてくる、なんて噂を聞いた事がある。だが所詮は噂、信じるに値はしない。
「ブル"ル"ォォ"ォ"ォォ"ッ"ッ"!」
「クソッ、取りこぼした!」
「そっちに行ったぞ!」
怒尾尾尾音!と轟音を立てて巨大な全長5mはあろう巨大な化け物が現れる、恐らくC-5クラス、異形型か。
「な!雨宮!何をしてる退避しろ!」
「………」
「聞こえてないのか…!?おい!大丈夫か!?」
先輩が駆け寄ってくる、正直面倒くさいから本音をぶちまけてやる。
「…るさい」
「何!?」
「うるさい…」
「なっ…、この状況が分からないのか!?さっさと退避を…」
「だから、私は鴉の駆逐が出来れば良いんだ…、だったらこんな化け物程度…仕留められなくてどうすんだよ!」
そう叫び私は先輩の命令を無視して忍者刀を手に駆け抜ける、異形型の妖はその巨腕を叩き付けようとしてくるが、当たらない。
葛城流忍術・海の型弐式『空蝉』
ようするに変わり身の術だ、私の心得ている葛城流は武器を主体とした天の型、武術主体の地の型、回避術主体の海の型がある。空蝉はかなり古い技だが信頼性は高い。
「遅い…!」
私は駆ける、デルタスーツと呼ばれる特殊繊維を用いた戦闘服は、まるで自分の体とは思えない位の速さを実現していた。
「見つけた…、とどめ刺します。」
妖の弱点に狙いを定め剣戟を放つ、だが相手の装甲が硬かったのか斬撃は相手の外殻を削り取るだけだった。
「ダメか…!?」
「何言ってるんですか?先輩の目は節穴ですか?」
「何を言って…!?」
驚くべき事になんと相手の装甲が弾け飛んだのだ、放った斬撃は一撃だけのはず…だがその斬撃にカラクリはあった。
葛城流忍術・地の型拾伍式『葬撃』
一撃の衝撃が逃げる刹那の瞬間に、もう一度攻撃を加える事で衝撃を逃す事なく相手に与える技だ、殺傷力が高く妖戦では使い勝手がいい。原理こそ違うが武器版二重の極みだと思えば簡単だ。
「ブルル"ァァ"ァ"ァ"ァ…ッ"!」
「討滅、完了…」
「あのバカ…!また命令違反を…!」
妖の討伐に成功した私は先輩方の元へ歩く、褒められる…と思ったが命令違反は命令違反、帰って来たのは手厳しい言葉だった。
「先輩、私やりましたよ?」
「馬鹿野郎!上官命令を聞かずに行くバカがあるか!」
「何でですか?倒せる者が標的を仕留めないのは合理性に欠きます。」
「俺はお前の事を心配してるんだ!何かあったら本隊に任せればいいだろう!?何をそんな死に急ぐ必要がある!…もういい、お前はしばらく謹慎だ、しっかり反省しろよ。」
は?謹慎?んなアホな、いくら命令違反でも謹慎は聞いた事がない、私を貶める為の御託か…
「おい、雨宮!聞いてるのか!?」
マジだった
「雨宮…、お前マジでボーッとしてたが大丈夫か?」
目の前で叫んだり質問したり忙しいのは私の担任の国語教諭だ、一々感情を変化させるのは本当に合理性に欠けると思う。
「…」
私はそっぽを向く、なんせ暑苦しい男に構ってやるのは好きじゃないからだ、何より合理性に欠ける。私はあの一件以来合理性に欠ける事が嫌いになったらしい。
「な…!お前なぁ!転校して来たばっかだから緊張してんのかなーって思ってたがあんまり態度悪いと謹慎か停学だぞ!?」
おいおいこっちでも謹慎かよ、心底うざったいし何より合理的じゃない、なら停学の方が幾分かマシだ。まぁ言葉が違うだけで意味合いは同じだろうが
「あ、なら停学でお願いしまーす。謹慎はもう飽きたんで」
「ふざけんなぁぁぁ!お前明らかに教師バカにしてんだろ!?」
どっちだよ、謹慎にするって言ったりしないって言ったり
「どっちだよ…、ったく…」
と思いながら座るとトントン、とシャーペンで背中を軽く叩かれる、誰だと思って後ろを見ると見知った顔がいた。
「や、入隊式以来だね」
「貴方は…」
「不破 大志郎、久し振りかな?雨宮 赤城…いや、葛城 静流さん」
「………」
「おっと、ここでは暴れない方がいい、何せ君が暴れたら局に報告して謹慎延長だからさ」
「ハァ!?そんなの聞いてな…!」
「うるさいぞ雨宮!」
「………クソが」
「クソがァ!?」
私は今、本当に思う、この謹慎も監視の目も何より私が専用装備を貰えない時点で…、かなり合理性に欠ける…いや欠け過ぎてる。
「やっと授業終わった〜」
「部活ダリ〜」
「ねぇねぇ、帰りスタバ寄ってかない?」
「いいね〜」
「新作出たんだっけ?」
放課後、様々な生徒の声が聞こえる、私も前はああやってたっけ…そう思っていると
「ちょっと待ってよぉ〜、私もスタバ行きた〜い♪なんて言ってみたら?」
「………」
「あ、ちょ!無視しないで!?」
「…ていうかまだいたんだ、いい加減失せれば?」
「そうしたいのは山々だけどさ、こちとら君の監視を…」
と不和が言おうとした途中でガシャアンッ!と窓が割られる、どうやら不良女子達による気弱な女子を虐める自己満タイムらしい。
「ちょっとぉ、ジュース零れたんだけどぉ」
「どうしてくれんのかなー!」
「その、ごめん…なさい…」
「ごめんで済むと思ってんの?顔で舐めろよ顔で!」
どうやらジュースを床に零してしまったらしい、アホくさい、本当にそう思う。そう思っているとリーダー格の女子が取り巻きの男女にアンケート名義の一方的な強行を行なった。
「はいアンケートぉ、床にこぼしたジュースは舐めて拭いた方が良いと思う人は挙手ー」
「いーや顔で舐めるもんでしょ」
一人が挙げる
「オラ、さっさと舐めろよ」
もう一人も挙げる
「たしかに」
「それな」
一人が挙げる事にドミノのように一人ずつ増えていく、タチが悪い、アンケートもクソも無いだろうと思う。
「いや〜、酷いね」
不破は私をちら見してくる、まさか私に助けに行けってか?
「…平和だね」
だが私は助けない、私は正義の味方じゃない、何より接点がない以上変に関わりたくない。
「見てこの人間雑巾!顔ぐっちゃぐちゃなんだけど!?」
「キャハハハハ!ウケる〜!」
「おいおいマジかよ!きったねぇな!」
「ちょっといい加減にしなよ」
「「「あ?」」」
「…何だ、結構良い奴じゃん」
何で動いたんだろう、私は思う。だが私には弐つの選択肢が課せられた訳だ、まずは一つ、『私が雑巾で拭く』一番単純だが後ろ指をさされかねない。そして二つめは『彼女を助け取り巻きを潰す』実に非合理的だが一緒にやらされるのは私のプライドが許さない。弐にしよう。
「んだテメェ、まさかアレか正義の味方か?味方しちゃうか?」
「うるさいなぁ…とっととかかって来いよ、腰巾着」
相手の男子からビキッと音がなる、不良やチンピラは扱いが楽で良い、ちょっと煽れば劫ッと燃え上がる。まるでニトログリセリンだ。
「民間人に手を出したら謹慎延長だよ?」
「抑えるだけならいいでしょ?」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!」
拳を振るってくる、無論遅過ぎる拳を合気道の要領で相手を投げ飛ばす。不良やチンピラは一々モーションが単発かつ大振りだ、力で殴れば良いとか思っているんだろうがその際の引き戻しなども考えてやらないとマジで損する。
「うおっ!?」
弾ッ!と組み伏せる、相手の方からミシミシと嫌な音が聞こえるからすんでの所で放した、いや〜危ない危ない、折っちゃう所だった。
「次はあんたら?」
「な…、あのさぁ、何調子乗った事してんだよ!」
「うるせぇな、顔で拭くくらい自分でやれや阿婆擦れ女。」
「う、うるせぇんだよ!ブス!…行くぞ」
「え、おい!」
「ちょっと待ってよぉ!」
私が一言行ってやると、リーダー格の女は負け惜しみを吐いて去って行くと取り巻き達が付いて行く、これにて一件落着…だと良いな、報復とかマジ非合理的。
「あの…私は高崎 美沙…助けてくれてありがとう、ございます」
「いやお礼とか要らないから、ムカついただけだし」
「でも…」
「彼女には人を助ける理由がないからね、強いて言うなら…気まぐれ?」
不破がフォローを入れてくれる、気まぐれではないけどね
「とりあえず、貴方は教師に虐められてるって言えば?そうすれば…」
と言いかけた瞬間に爆音と警報が鳴り響く、妖とは考えられにくいな…鴉か…?
「どうしよう…、早く逃げなきゃ…」
「貴方はここで待ってて、すぐに終わらせてくるから。」
「うん、彼女の言った通り君はここを動かない方がいい、僕と一緒にいよう。」
私は走る恐らく数mもの距離を一息で、走ってる途中で担任とすれ違う。
「あの、なにか出たんですか?」
「化け物だ!行くな雨宮、俺の教室だ!」
「…分かりました、警察に伝えておいてくださいね」
「おい!雨宮!」
ロッカールームに着いた私は右から2番目のロッカーを開ける、すると中には忍者刀と顔の上半分を覆う黒い狼の面が置かれていた、私は狼の面を着け、忍刀を手に取る。
いつでも殺れる
教室に着いた私は戸を開ける、すると中には人と鬼が入り混じったような化け物が一匹いた。
「貴方が不審者?」
「ニ"ン…ゲン"…ハ"…ミ、ミ"ナ"…ゴロシ…」
「あっそう、でも丁度良かった、憂さ晴らしの相手が見つかったし…八つ当たりに付き合ってよ、バケモノ」
「グ…グオ"ォ"アア"アァ"ァ"ァ"ァァッ"!」
化け物が一足飛びで私との距離を詰めてくる、いや〜さすが化け物!身体能力は全然上だね!いや冗談かましてる場合じゃないや、そう判断した私は忍刀を鞘から抜く、黒い刃は私の狼の面と同等、それ以上に黒く輝いていた。
武器版二重の極みである葬撃を放つが、弾かれて逆に壁に吹き飛ばされる。
「ガハッ…!」
弾ッ!と壁に当たった体から…主に受け身の為に後ろに向けていた右手から嫌な音が聞こえた。多分折れたな、そう思いながら目を巡らせると意外な人物が目に移った。
「あ、貴方達は…!」
「ヒッ!?」
「くそっ!」
彼女達は、かつての高崎 美沙を虐めていた女子生徒達だ。私は手を伸ばす、だが時すでに遅くビュンッ!と振るわれた触手によって体を真っ二つに両断される、恐らく逃げ遅れた生徒は全員死んでるだろう。
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!」
「あ、あぁ…!」
「痛え!痛えよぉぉぉぉぉ!」
当たりどころが悪かったのか脇腹を抉られ内臓を零しながら痛みに泣き叫び悶絶する少女、壁の破片が喉や目などを突き破り声を出そうにも出せない男子など、かなり地獄絵図だ。
「とんでもないな…!」
正直多分勝てない、この人数を守りながら戦うなんて神業、スタンドプレイヤーのお手本とも言える私に出来るわけがない。
「(どうする、私が囮になって軽傷者を逃すか…?いや、恐らく奴は見逃さない。…どうしよう、八方塞がりだ…!)」
その時化け物に体当たりをする少女がいた、高崎 美沙、なんと彼女は来るなと言われたのに来たのだ。
「バッ…!来るなって言ったじゃん!何で来た!?」
「だって…、私達…友達じゃない!友達くらい守らせてよ!」
「コ"…、ゴザガ…、ゴザガシィィィ"ィ"ィ"ィィ"ィ"!」
化け物の長腕が私の首を撥ねようと振るわれる。だが振るわれない、何故か、私は信じていたのだ。私の友達は、雨宮 赤城が化け物の腕を切ってくれると…!
「雨宮さん!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
私を頼ってくれた彼女の期待に応えるべく、私は化け物の胸に忍刀を突き立て駆け抜け窓から飛び降りる、その時に飛散した破片で頬を切るが知った事か、だが途中で化け物に身を翻され私が逆にクッションとなる形で木に突っ込んでいった。
「まだ…死なないか…!」
私は立ち上がるが右半身に力が入らない、神経でもやられたか…
「グ…ギギ…ゴ、ゴロズ…」
化け物はまだ生きてる、だが私ではもうどうにも出来ない、『死』その一文字が脳を過ぎった瞬間…
ヒュンッ
謎のキューブが目の前に現れ、キューブから出現した人型の生物と機械の中間くらいの物体が現れ化け物の首を掴み、ゴキャッと言う音と共にへし折った。私は…コイツを見た事がある
「やぁ、随分と苦戦したみたいだね」
「うるさい、あと少しで殺せた」
「まぁそんな強がらなくてもいいよ、やっぱり暴走レギオンはまだ難しいかな」
どうやら最新鋭の生体兵器が暴走したらしい、どんだけガバガバセキュリティなんだよ…
「一ノ瀬、御託は後にしてコアの回収を急ぐぞ、多分だがかなり汚染されてる」
「三島隊長、不破、ただ今帰りました。」
「ご苦労、不破 大志郎」
どうやら不破と話している女性は不破の所属する隊の隊長らしい、参番隊だろうか
「壱番隊隊長殿にも報告です、彼女は一般市民並びに軽傷者数名の救助を行いました、そろそろいいんじゃないですか?」
「そうだね…、赤城、君に話がある。」
「?」
何やらまた話があるらしい、もう謹慎はいやだからな。
「私は、君がやっと一般市民を気に掛けてくれる様になったのが嬉しいよ、そして改めて聞こうか、君を妖退治に利用させてもらう。良いかな?」
私は再び聞かれた、『この惨状を見てもなお、復讐する覚悟はあるか』と、だが私の腹はとうに決まっている、答えは…
「当たり前じゃん」
「よし、では本日を持って、君を正式に対特殊災害隠密局『White/Fang』への入隊を許可しよう。」
始まる、戦いが、戦争が、聖戦が、そして復讐が、盛大なる鴉狩りの始まりだ
次回White/Fang代肆節
「所詮この世は修羅か羅刹か」
佐之助登場、次回から陸節までの参節は佐之メインで進行します、
本格的な妖退治は漆節から
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.6 )
- 日時: 2019/11/08 20:45
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: jo2UR50i)
White/Fang代肆節
「所詮この世は修羅か羅刹か」
『行け行け行け行け行け!』
『ぶっ殺せぇえぇぇぇえええぇ!』
『うおおおおおお!』
「…五月蝿え、滅茶苦茶五月蝿え」
俺が今いるこの部屋の上では、種族体格関係なしのデスマッチが行われている。ここが何処かって?おお悪い悪い、まずはここの説明からだな。ここは元神奈川県横浜市にある赤レンガ倉庫の跡地だ、ここ横浜は東楼を囲む壁の外にある『隔離地帯』っつーとこの地下にある。
じゃあ、種族体格関係なしの『種族』の説明と行くか、本来ここの住民達は元々東楼や他の都市となんら変わらねえ見た目してたんだが、ここはかつて地盤沈下の発生した土地の一つだ、それが影響して大穴がぽっかりと空いた旧鎌倉市から漏れ出た有害物質によって人々の外見は誰から見ても『バケモノ』としか言い様がない異形の姿になっちまった。
無論、東楼やその他首都では「妖」と呼ばれる化け物が出現した為、見た目がアレなここの住人達は妖扱いされ後ろ指をさされ実験に使われ殺される、だから俺がここの住民達を養ってかなきゃならねえのと同じだ。
つっても一応ちゃんとした人間もいるが、殆ど逃げちまって今残ってるのは俺とここの運営者達だけ、ここは隔離地帯非合法地下格闘技界『天逆鉾《アメノサカホコ》』、こいつぁ天逆鉾に属する…しがねぇチンピラの話だ。
「Ladies,And,Gentlemen!さぁさぁ今夜も張り切って行こうぜ!今夜もレフェリーはこの俺ルフトが務めさせてもらう!まずは赤コーナー!さぁ、猛る猛獣の登場だ、その力を見せつけてやれ!天上天下唯我独尊のチャンピオン、『灰崎ぃ、佐ぁぁぁ之助ぇぇぇ!』」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
レフェリーの紹介と共に歓声が上がる、俺の名は灰崎 佐之助、この天逆鉾不落のチャンピオンだ。
「期待してるぜ!良い死合見せてくれよ!」
「佐之ちゃぁぁぁぁん!頑張ってぇぇぇ!」
「グッチャグチャにしてやれぇぇぇぇぇ!」
周囲の歓声がよりヒートアップする、俺が現チャンプってのもあるんだろうが、何よりこれはデスマッチギャンブルだ、金を賭けて勝った方により多く変換される。よりシンプルで単純明快なルールで女性も多い、女性ファンから俺は『佐之ちゃん』と呼ばれていた。
「さぁさぁお次は青コーナー!堅実に攻め堅実に守り、型に嵌りながらも堅実な戦績を収める武闘家ァ…フランキー・マキシマァァァァァァァァァァス!」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
青コーナーからも歓声が湧き上がる、どうやら相手もかなりの手練れらしい、だが俺と違う点と言えば顔付きが人間のそれじゃねえのと、両脚が極端に長かった。一体関節何個あるんだろうか。
「フランキーかー」
「渋い線組んで来んじゃん」
「負けんなよフランキー!」
「人間なんざブッ潰せぇぇぇ!」
めっちゃ蛮声飛んでるなおい、まぁ地下格だから問題ねえけども表舞台だったら警察沙汰だろうな…、まぁ誰が相手でも遠慮はしねえが
「ヘイ!」
不意に相手から声を掛けられる、何だ?友好の証でも結ぼうってか?
「アンタ、現チャンプなんだってな。」
「だったら何だよ」
「アンタ相当『使う』だろ?」
「それが?」
「魅せてやろうじゃねぇの、血に飢えたクリープショーの住民にさ」
「同意だな…レフェリー、早く鳴らせ」
「まぁ待てよ、まずは発券からだぜ?佐之助は1.5でフランキーは2.65!五分後に発券は終了するから急いでくれよな!」
「佐之助に40!」
「フランキーに65!」
「こっちは70だ!」
俺より相手の方が券多いってどういう事だよ…、まぁ俺がいつも通り勝つより相手が勝つ方に期待した方がスリルもあるか…、とりあえず頼んだぜ、ルフト
「OK発券は終了だ!さぁ、準備は良いか!?Ready…Fight!」
カァァァンッ!とゴングが鳴り響くと同時に相手が間を詰めてくる、成る程…脚が逆関節になってるからその機動力を生かしたか
「シッ!」
轟ッ!と振るわれる回し蹴り、関節真っ直ぐにも出来んのか、便利だなおい。と称賛したいがここは地下格、俺は群ッと身を沈めた。
「何っ!?」
「フッ!」
そしてカウンターのアッパーを俺は放つ、相手は咄嗟にガード体勢に入るが良いのが入った、牙積ッ!と衝撃が相手を貫き吹っ飛ばす。
「くっ、中々やるなアンタ…!」
「現チャンプだからな、そら行くぞ!」
轟ッ!と放たれるストレート、だが驚くべき事に相手が受け流しを使って来たのだ、ストレートをスカして硬直した俺の体に前蹴りが叩き込まれた。
「ガッ…ハッ!」
「どうだ?俺の蹴りは、流石のアンタでもかなり効くだろう?」
「っせーな…、図に乗ってろ」
俺はまたストレートを放つ、無論相手は予想の範疇だろう、遂に自棄になったかと勝機を見出した相手は鼻で笑った
「また同じ手か!?同じ手は二度と俺には通用しないぜ…!?」
…と笑っていた顔は一瞬で驚愕に変わった、俺が闘牛の如く突っ込んで来たからだ、そして俺の手は相手の塞がった両腕を強引にひっぺがし怒波庵ッ!と顎に強烈なフックを叩き込んでやった。
「カッ…!?」
「テメェまた同じ手をっつったよなぁ…、だが現チャンプはノコノコと同じ手を使う程甘くねえんだよバァァァカ!」
俺は怒涛のラッシュを怯んだ相手に叩き込む、我流拳術奥義「玖頭龍」、上下左右斜めの玖方向から放たれる乱撃は相手に防御する暇も回避する余裕もカウンターを決める隙も与えない!
「クッ、おおお…!」
「悪いな、トドメだ」
怒轟音ッ!と強烈なアッパーを打ち込む、相手は白目を剥き仰向けに倒れた、ヤッベもしかして殺っちまったか?
「レフェリー、生死判定」
俺はレフェリーに生死判定を求める、死んじゃったら興行相手がいなくなっちゃうからね、死なれちゃ困る。主に俺が
「どう?」
「生きてるぜ、問題ねぇ」
息はしてるっぽい、良かった
「さぁ!勝敗は決した!この死合を制したのはァ!?天上天下唯我独尊のチャンピオン…赤コーナー、佐ぁぁぁぁぁ之助ぇぇぇぇぇ!」
「「「うおおおおおおおおおおお!」」」
オーディエンスから歓声が噴火の如く吹き上がる、正直この勝利後の歓声は嫌いじゃない、とにかく勝った事の喜びを感じられるからだ。
「やっぱ佐之は強えな!」
「これからも頑張れよぉぉぉぉぉ!」
「佐之ちゃぁぁぁん!おめでとぉぉぉぉぉ!」
歓声を背に俺はリングを降りる、今尚歓声は止まず佐之助コールが始まっているが関係ない、正直疲れた…鯛茶漬け食いたい…と思いながら控え室への通路を歩いていると
「佐之!」
…と声を掛けられた。
「…ミズハか」
「そうだよ♪試合お疲れ様」
彼女はミズハ、まぁ…俺の親友みてえなもんだな、それ以上でもそれ以下の関係でもねえ、ただ話のしやすい奴ってだけだ。ただし顔はバケモンのそれだが個人的にかなり美人だと思う、俺って性癖歪んでんな…
「相変わらず呑気だよなお前は、親友が地下で殺し合いしてるってのによ」
「でも毎回勝ってるんだしいいじゃん、それに佐之のおかげで私達が生きていけてるって訳だし…、お父さんやお母さんも…いや、みんな感謝してるよ?」
「おい佐之」
「あぁ、義父か」
この黒スーツの顔に刀傷が走ったガタイの良い男は、俺が義父と呼ばせて貰ってる天逆鉾を経営してるヤクザ「吾妻會」の若頭だ。
「ミズハちゃんも来てたか、こんなチンピラと一緒にいて楽しいか?」
「育てたの義父だけどな?」
「いえ、楽しいですよ?性格はこんなだけど色々知ってますし、寧ろ私達みたいなバケモノじゃないから…」
俺はちょっとムカついたから拳骨を下す、厳ッと鈍い音を出してミズハは頭を抑えた
「何すんの!?」
「るせえな、自分を勝手に卑下するもんじゃねえよ、俺は自身のねえ奴が大嫌えなんだよ」
「なんで自信持てよって素直に言えねえかなぁ…、俺はそんな捻くれた子に育てた覚えはないぜ?」
「あのな義父!俺は真面目に…!」
「ふふっ…、アハハハ♪」
「何が可笑しいってんだ…」
「ううん、だって…私の事を綺麗って言ってくれるのは佐之位だから…!アハハハ♪」
「お前性癖歪んでんな」
「るせーな、わぁってんだよんなこたぁ」
俺は思うには、俺は皆で笑い合う日常が欲しいのかも知れない、冗談かまして、感情ぶつけ合って、妖を殲滅してここにいる皆も日の元を歩ける世界が欲しいのかも知れない。所詮この世は修羅か羅刹か、弱肉強食でも構わない、皆が笑い合える世界が欲しい。だが俺はまだ知らない、俺の選択が余りにも愚かで残酷な事を…
次回White/Fang代伍節
「散り行く時は命徒花」
正直言って技とか全部るろ剣リスペクト…