ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

宇宙人二世 マリア 
日時: 2020/06/14 15:56
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

第一章 飛行物体 1

 二千二十二年七月七日の事だ。東野佐希子とうのさきこ二十七才は十日間の休暇を取り一人で旅をしていた。現在、佐希子は東京の奥多摩に住んで居る。そこから愛車ランドクルーザーに乗って首都高から東関東道を抜け潮来から鹿島灘を右に茨城の大洗港に到着。大洗からフエリーで十八時間掛けて苫小牧港へ、そこから室蘭にある地球岬を訪れていた。今から一千万年前の火山活動で出来た高さ百メートル前後の断崖絶壁が十四キロも続く観光名所でもある。
 空は夕焼けからやがて日が沈み、もう上空は星が見え始めていた。天の川を撮ろうと佐希子は高感度カメラをセットし星空を眺めていた。その時だった。上空で見た事もない強い光を放ち、飛行物体が飛んで来た。流れ星かいやそれにしてはおかしい。その飛行物体が近づいて来る。しかも佐希子に狙いを定めたように飛来してくる。そのまま地面に衝突かと思ったら急激にスピードを落とし、そのままフワリと浮かび制止した。UFOか? 良く分からないが謎の飛行物体だ。佐希子の目の前に音もなく着地した。大きさは大型トラック程の大きさで長方形だ。まさか宇宙船? UFOなら円盤型と思ったら細長い。驚いた佐希子はカメラと三脚を持って逃げようとしたが腰が抜けて動けなくなった。


『宇宙人が地球の人間を誘拐しに来たのか? 私が一番先に狙われたのだろうか。それなら北朝鮮の拉致より質が悪い。宇宙の彼方に連れて行かれ解剖されるかも冗談じゃない。私を誘拐したら国際問題だぞと訴えても相手が宇宙人では国際法も関係ないのか』
 佐希子は意味もなくほざく。暫くすると長方形の飛行物体の横扉が開き、誰かが一人だけ出て来た。宇宙人? 佐希子が思わず口に出した。
「あっ私を捕まえに来たのね。きっと私が美し過ぎるから狙ったね。私だって負けてないわよ。学生時代柔道やっていたんだから投げ飛ばすぞ。寄るな! 蛸! 私は蛸が嫌いだ」

 宇宙人なら蛸のような生き物が出てくるかと勝手に思っていたが、それは人間の姿をしていた。何故かフラフラと出て来た。大きな旅行カバンのような物を引き摺っている。
「蛸じゃない。宇宙人でもない? では宇宙飛行士? まさかこんな場所に着陸する筈がない。とにかくそれ以上そばに来ないで。本当は柔道、……そう空手もやっていたのよ」
本当に空手はやっていないが多い方が良いと思った。
 佐希子はパニックになっていた。宇宙人に柔道が通用すると思いないし言葉通じるはずもない。 その謎の人間みたい宇宙人に、子犬が吠えるように佐希子は吠え捲くったが怖くて動けず倒れこんだ。だが佐希子の前で勝手に相手が倒れた。柔道技で投げ飛ばしても居ないのに? 襲ってくるのじゃなく相手が勝手に倒れた。弱っている者を見過ごし訳にも行かない。しかしどう見ても人間のようだ。年齢は三十歳くらいか。人間と分かった以上安心すると、佐希子はやっと起き上がる事が出来た。

「もしもし大丈夫ですか? 私の美貌に目まいがしたの? ……そんな訳ないか」
 どう見ても東洋人には見えない。西洋人なのか分からない。しかし男である事は間違いない。男はキャリアバックのようなケースを開け金属製の注射器のような物を取り出し、それを首に当てると赤い光を放った。暫くするとフーと溜め息を漏らした。なんと! しっかりした日本語でこう話した。 
「驚かせてすまん。君に危害を加えるものではない。安心してくれ」
「…………」
 安心しろと言われても得体の知れない人物、そして奇妙な形をした飛行物体から出て来た者に警戒せざるを得なかった。
「貴方は地球の人……それとも宇宙から来た人? 他の人も居るでしょう何故出て来ないの」
「訳は言えないが地球を調査に来た。私はアルタイル星から来た。アルタイル星は日本では彦星と呼ばれ、ベガ星は織姫星と言われているようだが。その調査船の乗組員だ。どうやら地球の細菌にやられたようだ。幸い他の乗組員は感染していなく無事だが、自分だけが地球の細菌に感染したようだ。このままで一緒に乗れば全員が感染する。仕方なく私だけが船から降りる事になった。他の者は、まもなく地球を離れ離陸する。私は細菌に感染し仲間ともう一緒に帰る事は出来ない。だから一人地球に残るように指令を受けた。助けて欲しい」

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア  ( No.5 )
日時: 2020/06/19 09:34
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 6

 「えっ風邪が恐ろしい細菌なの」
「そうだ君は笑うかも知れないが我々には脅威だ。だから君を通して地球を知りたい。そのお礼として君に贈り物をする」
「贈り物と言ってもどうやって届けるつもり?」
 「もちろん無人宇宙船を使って届けることが出来る。大気圏を抜けたら小型無人船から地球の大気圏でカプセルを放出する。それを君が受け取ってくれ。地球に役立ちはずだ」
「それでは私に要求する事はなに? その前に宇宙船で地球まで何年、何百年? 確か十六光年よね。宅急便じゃないんだから」
「宅急便? 地球はそんな宇宙船があるのか。我々の宇宙船は地球まで八日間で移動出来る。現在は研究中だがいずれ地球まで十二時間で行けるようにしたい」
「えっそんなに早いの。人類にはとても無理」
「君にお願いがある。出来るなら君の血液を少し欲しい。それで人間の細胞を調べたい」
「止めてよ。私の血を吸い取るつもり」
「そうじゃない。試験管一本分だけだ。その血液で人間のような身体が何十年か何百年先か作れるのが夢だ。そうなれば食べる喜びも得られるだろう。他に地球の植物のあらゆる種類の種が欲しい。なんとか我々の星で育てられないか研究する。成功すれば我々は樹木や野菜、果物など手に入れる事が出来る。それに花を育てられたら地球みたいな楽園が出来る。これから送るカプセルに入れてくれ。既に無人飛行船はまもなく到着するはずだ」
「えっだって貴方達は食べる事が出来るの?」
「いや最初はエキスにして放出させそれを吸収する。その後は更に研究して君が送ってくれる血液を調べ人間と同じように食べられるような身体を作りたい。地球は食べる楽しみというものがあるらしいね。羨ましい限りだ」
「信用していいのね」
「勿論だ。君は我々の細胞も受けついで居る。我々の星人であるドリューンを悲しませたくないからな。なお君の血液とあらゆる種類の種が準備出来たら知らせてくれ。そのときまたカプセルを送る。カプセルの中に入れたら後は自動的に我々の宇宙船まで戻ってくる仕組みだ。それと君の身に何かあっては困る。君の身を守る為に特殊能力を贈ろう。そして長く我々に協力してほしい」

 そんな交信が暫く続いた。やがて八ヶ岳連峰の上空に光る物があった。宇宙船から更に小型無人船で放出されたカプセルだろう。幸い周りには誰も居ない。怪しまれる事はないだろう。いやそれを計算して放出しのだろうか。そのカプセルは上空から降って来るように落ちて来た。そのまま落下すると思った急速にスピードを緩めフワリとマリアの目の前に着地した。直径一メートル程の球体があった。この球体はどうやって開けるのかと思ったら無意識にマリアの手で触ると上の部分が開いた。四角い金属の箱が二つ入っている。そのうちの一つを開けると、その中からパソコンのような物を取り出した。マリアは見た事ないが父のドリューンが持っている物と似ている。他に注射器のような物と鉄の試験管のような物が入って居る。たぶん血液をこの注射器で取り出し試験管に入れろと言う事だろう。もう一つの箱は帰ってから見る事にした。マリアは近くに停めてあるワンボックスカーに乗って持ち帰った。しかしこのまま家に持って帰れば、それは何かと追及される仕方なくワンボックカーの中に隠してある。頼まれた植物の種はあとで買いに行く予定だ。揃ったらアルタイル星に交信して約束の血液と植物の種を送るつもりだ。家に帰ると母の佐希子が訪ねた。

「お帰りマリア。蓼科山どうだった天気も良くいい写真撮れた」
「うんいい写真撮れたよ。お客さん多いの、手伝おうか」
「丁度良かった。今から奥多摩駅に三人連れお客さんを迎えに行ってくれる」
 奥多摩駅の一日の利用者は千人に満たない駅だ。その為に平均一時間に一本、通勤時間帯に二本だ。完全に赤字路線だ。だから圧倒的に奥多摩に観光に来る人は車が多い。奥多摩の観光と言えば奥多摩湖、日原鍾乳洞、鳩ノ巣渓谷、氷川渓谷、鳩ノ巣渓谷、白丸調整池ダムなどがある。特に夏から秋にかけて観光客が多いが、冬は流石に殆ど観光客が来ない。正月を除き冬場は民宿を休む。
 両親はそれを利用して旅行に出かける。とにかく二人は旅行好きだ。二人が知り合ったのも北海道だと聞いている。たが未だに母の佐希子は父のドリューンはイタリア人だと言っている。マリアは父がイタリア人じゃない事を知っていた。マリアに父が宇宙人と聞いたらショックを受けるだろうと気を使っているのは分る。だから当分は父の出生の秘密には触れない事している。

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア  ( No.6 )
日時: 2020/06/20 09:28
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 7

  第三章 特殊能力

 マリアはその日の夜、アルタイル星からの贈り物を調べる事にした。カプセルから取り出した二個の箱は愛車のワンボックスカーに隠してある。父母が営んで居る民宿の駐車場があり、お客様用と兼用で十五台ほど停まれるスペースの奥に停めてあり、マリアが車に近づいて行くと異変に気付いた。後ろのガラスドアが壊されていた。マリアはアルタイル星人から送られて来た箱二個が無くなっているのに気づいた。マリアは囁いた。
『やってくれたな。でも盗る車の相手を見誤ったようね』
 マリアは車の周辺を調べた。バイクのタイヤの跡が沢山残されていた。マリアはバイクも持っている。オフロード用バイクでヤマハの新型バルーンⅢ二百五十だ。ヘルメットを被ると迷うことなく青梅市へ向かった。青梅市を中心に暴れまわっている青梅連合で間違いないと読んだ。奴らの溜まり場は多摩川添えにある青梅リバーサイドパーク周辺にたむろしているはずだ。時刻は夜の八時を過ぎた頃だ。河川敷に降りると暴走族が二十人ほどいて騒いでいる。
「おいサトル早く開けろよ。きっとお宝が入って居るぞ」
「それがさあ一向に開かないんだよ」
「じゃあハンマーでやって見な」

 一人がハンマーで箱を叩いた。ガーンと鈍い音がしたもののビクともしない。それはそうだ。木箱に見えるが木でもなく地球の物ではない。簡単に開くはずがない。マリアは川上の方にバイクを停めて歩いて来た。服装は皮ジャンにジーンズだ。マリアは大人になって何故か瞳の色が黒からややブルーに変わった。マリアは父のドリューンの血を引いているのか眼はややブルー。髪は黒ではなく少しグレーぽい。身長は百七十センチと大きい。運動神経も優れていてサッカーやテニスも都大会に出るほどだ。それだけじゃなくあらゆるスポーツに対して優れていて大学に入ってからは空手も始めた。マリアは大声で叫んだ。
「こら〜泥棒ども人の物を盗んだあげくに壊す気か」
「なんだオメイ。お前のだという証拠はどこにある。邪魔だから消えろ」
 だがマリアは怖じ気づくどころか平気で河川敷に降りて来た。すると暴走族は一斉にマリアを取り囲んだ。二十対一余りにも無謀過ぎる。
「いい根性しているな、ネイちゃん。まさに飛んで火にいる夏の虫だな。調子に乗るなよ。素っ裸にして廻してやるぞ」
「なんと下品な物言い、しかし出来るのかな。いまのうちよ。謝ってその箱を返すなら許してあげない事もない」

 すると暴走族の連中は腹を抱えて笑いだした。そしてすぐ一人が真顔になりマリアを後ろから羽交い締めにしようとした。だがマリアは其処には居なかった。もはや人間とは思えない。まるで瞬間移動するかのように動いていた。世界で一番早く走る動物ランキングではチーターが時速百十五キロ、海ではバショウカズキ百八キロ、空ではハヤブサ三百八十七キロ。因みに人間では世界記録保持者のボルトは三十七.五キロが最高だ。一瞬マリアが消えたと思ったらリーダー格の男を見つけると物凄い勢いで跳躍して飛び蹴りを喰らわせた。リーダー格の男はフイを突かれてもんどり打って倒れた。すかさずマリアは男のアゴを強烈に蹴った。男は泡を吹いて伸びてしまった。暴走族達は唖然とする。女だと思って舐めて掛かったのが間違いだった。暴走族達は真剣な表情になりチェーンや木刀を持ち出した。そしてジリジリとマリアを追いつめる。

 マリアはそれでも怯むことなく睨みつける。十九対一、一人減ったぐらいでは状況は変わらない。するとマリアの眼の表情が変わって行く。そして眼が青白く光り始めた。そうあの隠れた瞳に下にあるホクロのような物が光っている。驚いた暴走族は後ずさりし始めた。次の瞬間その眼は強烈な光を放った。まともにマリアの眼を見た連中は眼を抑えてのた打ち回る。眼が強烈に痛みだし何も見えない。鼓膜に唐辛子の粉末を入れられたような感じだ。残ったのは三人、何が起きたか分からない。しかし現実にはリーダー格を含め十七人が倒れて戦意喪失状態だ。もはや勝ち目はないと見た三人は逃げようとした。だがマリアは逃がさない。瞬時に移動し三人の前に立ちはだかる。怒りに満ちた眼がまた光はじめた。
「わぁ許してくれ俺達が悪かった。あんたは何者だ。人間かエスパーか」
「宇宙人だとでも言いたいの。見れば分かるでしょう。普通の大学生よ。さああの箱を此処に持って来て」
「分りました。いま持って来ます」
「よし次は倒れている連中を川の水をぶっかけて目を覚まさせるのよ」
 三人の男は慌てて川の水をバケツに入れて次々と水をぶっかけた。なんかと起きた連中を整列させるが完全に怯えている。もはや人間ではない。眼が光りレザー光線のように狙ってくる。マリアの眼を見るように命ずると怯えながら仕方なく見た。次の瞬間またしても眼から強烈な光が放たれた。暴走族の連中は立ったまま金縛りにあったように動けなくなった。
 マリアは笑いながら箱をバイクに乗せて走り去って行った。暴走族の連中は暫くして睡眠から覚めたように動き出した。だが箱を盗んだ事もマリアが現れこっぴどく痛めつけられた事も記憶になかった。マリアが記憶を消し去ったのだ。マリアが初めて見せた特殊能力の一部だった。宇宙人の血を受け継いだマリアはエスパーになりつつあるようだ。

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア  ( No.7 )
日時: 2020/06/21 09:17
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 8

ただいまぁ。そう言ってマリアは帰って来た。母の佐希子と父のドリューンはリビングでテレビを見ながら寛いでいた。ドリューンは五十歳、沙季子は四十九歳となった。ドリューンはテレビ鑑賞が好きなようで特に漫才のファンのようだ。漫才番組を好んで見て笑い転げている。これが宇宙から来た人とは思えない。顔はイタリア系でも心は完全に日本人だ。もはや佐希子と知り合った当時の特殊能力は消え失せたのか?
「お帰り遅かったね。何処に行っていたの」
「ああ大学の友人に誘われてね。くだらない話で盛り上がっていただけよ」
 すると父のドリューンがマリアに微笑みながら語りかける。
「マリア大学生活は楽しいかい。友達は沢山いるのかい」
「うんお蔭様で楽しい学生生活を楽しんでいるよ」
「そうかいそれは良かった。処で特に親しい友達というか恋人とはいるのかい」
「ふっふふ、もう二十歳よ。恋人の一人や二人居たっておかしくないでしょう」
「なに? やはり居るのか。どうも最近帰りが遅いと思ったら」
「なぁにお父さん。私に恋人が居るといけないの。それとも心配してくれているの」
「そりゃあ可愛い一人娘だもの。気になるさ」
 母の佐希子が笑って二人の会話を楽しんでいる。昔のドリューンと違っていまでは普通の優しい中年のお父さんって感じだった。もはやドリューンは完全にアルタイル星人のカケラも残っていないようだ。結婚した当時は、時おり超能力を発揮して佐希子や周りの人を驚かせたものだ。ドリューンが超能力を使うたび佐希子は激しく叱咤した。人に怪しまれる事をして人間じゃない事が知られるのが怖かったのだ。ドリューンから取り上げた不思議な機械は今でも倉庫の奥にしまってある。しかし未だにどう処分して良いものか困っているらしい。

 数日前からマリアは両親に頼み離れにある倉庫を改造して自分の部屋にしたいと頼んであった。 両親も年頃の娘だしプライバシーも必要だろうと快諾し近くの業者に頼み現在工事中である。マリアは八王子まで買い物に出た。此処には日本だけじゃなく世界中から集めた沢山の種を売っている。マリアは果物の種や野菜の種などを買いそろえた。種だから大して量にならない。その他に頼まれもしない水を何種類か揃える事にした。井戸水、海水、川の水などを揃えた。それから一週間が過ぎ離れ部屋が完成した。早速マリアはアルタイル星人が送って来た金属の箱から試験管のような物にマリアの血液を採取して入れ、他の管には各種の水を入れた。約束にはないがサービスだ。これで約束の物は揃った。そして楽しみにしていた金属の箱を開けた。勿論開けるには特殊な構造でマリアにしか開けられない。ひとつは例のパソコンのような物。もうひとつは金属なのか石なのか分からないが二種類入っているだけだ。マリアは少しガッカリして呟いた。
『私は科学者じゃないのよ。鉱石かただの石か何か分からない物を分析しろと言うの。まさか売って金に替えろというんじゃないでしょうね。もし宇宙からの石として何処で手に入れたと追及されるだけよ』

 つづく

Re: 宇宙人二世 マリア  ( No.8 )
日時: 2020/06/22 09:33
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 9

 苦笑いを浮かべてマリアはパソコンのような物を取り出した。アルタイル星から貰った物だ。十インチほどの画面だがキーボードは付いていない。初めて手にするのに慣れた手つきでマリアは画面の上に手を当てた。すると丸い円の輪づくの光が浮かび上がった。なんと其処には立体の画面になっていて空間に日本語が浮かび上がった。
 『ようこそマリア。私を仮にドレーンと呼んでくれ。君の疑問はここで説明出来る。その鉱石が二個あるはずだが。最初に赤みがかった鉱石はエネルギーを半永久的に産み出す。地球では電気を作る為に石油や原子力発電を使うそうだが石油は無限にある物ではない。原子力発電はある程度無限だが危険が伴う。この鉱石を使って電気を作れば燃料は不要だ。これ一個で火力発電所に匹敵する電気を作り出せる。地球にない鉱石だが地球にある三つの鉱石で似たような物を作れるはずだ。あとは科学者達で研究すればよい。やがて地球人は無限のエネルギーを手に入れられる日がくるだろう』
 文字は其処で終わって居る。マリアは空間に浮かぶ文字を払うと次の文字が浮かび上がった。
『次の青みがかった鉱石はバクテリアを破壊する強烈な光が一点を攻撃し死滅されるものだ。特に人間にとって癌は治らないと言われているが、この石にはそれを死滅させる効力が含まれている。他の難病にも効果があるだろう。皮肉だが我々には強過ぎて身体がもたない。人間なら有効と思う』
 更にマリアは画面を払った。すると同じように文字が浮かび上がる。

『最後にあとはどう使うか地球上の学者と相談し活用方法を研究することだ』
 確かに素晴らしい贈り物だ。使い方によっては地球のエネルギー問題、地球の汚染浄化、そして医学会にとって正に画期的な代物だ。ただ宇宙からの贈り物だと言って誰も信じないだろう。どう説明しても分って貰えない。出所が何処だろうと無限のエネルギーが得られるなら世界中の学者が集まって考えることだ。余計な詮索するより人類の発展のために世界がひとつになることだ。
「ありがとう。それと貴方達が要望していた私の血液と沢山の種が揃いました。それと地球の水も入れました。何かの役に立てれば」
「ご苦労様、約束を守ってくれてありがとう。それでは数日後、以前と同じ場所にカプセルを届けよう」
 数日後の夕方マリアはまた蓼科山に登った。いや正確には車で行ける所まで行き其処から少し歩けば例の場所に辿り着けるのだ。勿論人気がない場所だ。もし他の人が見ても流れ星だろうと思うだろう。暫くすると東の方から流れ星のような物が流れて来る。また例のカプセルが音もなく着地した。ただ前回の物より倍の大きさがあった。恐らく再び帰る為の装置が付いて居るせいだろう。マリアはカプセルの上に手を差し出した。するとスーとカプセルの上部が開いた。そこにマリアは血液と水と沢山の種の入った金属の箱を入れた。暫くするとカプセルの上部が閉じられ音もなく浮かび横に流れるよう滑ったかと思うと強烈な光と共に上空を登って行き見えなくなった。マリアは溜め息をついた。夢の世界じゃないの? 

 私は本当に宇宙人と交信していたのか不思議な気持ちだ。それにしてもあの石はとんでもない代物だ。問題は誰にどうやって伝えよう。アルタイル星人からの贈り物だと言ったら笑われてしまう。本当だと言ったら精神鑑定を受けろと言われるに決まっている。信じさせるには私はアルタイル星人二世と言ったら更に気が狂っていると言うだろう。やっと父のドリューンが地球の人間として生きているのに平和な家庭が崩壊し宇宙人とバレてしまう。
 こうなったら家の下に埋めてしまおうかとまで思った。あの石の効力は地球を救うことが出来るのに歯痒い話だ。出来るならアルタイル星人が直接来て説明してくれれば良いものを。勿論、相手の記憶を消す事は出来るが相手にもよる。暴走族なら訳はないが、それに国の機関に石を提供し政府用人の記憶を消したとしても宇宙からの贈り物の鉱石の記憶まで消えては意味がない。

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア  ( No.9 )
日時: 2020/06/23 09:26
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 10

第四章 家族の結束

 こうなったら誰か信頼出来る人に相談するべきか。両親は勿論考えたが母も父も、その事には触れたくないだろう。次に考えられるのは友人……いや笑われるだけだ。それなら大学の講師が一番良いだろう。アルタイル星からの石だと説明しても分るかな。隕石は世界各地で何百個か落ちている日本の岐阜県でも数年前に畑に落ちていたそうだが、珍しい石だと家に飾って居て五年も経って、つい先日隕石と分かり話題になったばかりだ。それと同じでただの隕石だろうと言われたらそれまでになる。それを証明させるにはやはりアルタイル星人から貰ったパソコンのような物を見せて信用させるしかない。

 もし信用させたとしても君とアルタイル星とどういう関係があるのだと問われると、やはり父がアルタイル星人でありその娘とだと言わなくてはならない。アルタイル星人が日本に住んでいると分かったら日本国内はともかく世界中が大騒ぎになる。母や父も引っ張りだされアルタイル星人と結婚した母も注目を浴びる。
 やはり駄目だ。私の生活も東京の片田舎で静かに民宿を営む両親の幸せを壊す訳には行かない。まったくアルタイル星人のドレーンと言う奴、これで私に贈り物したつもりか。いっそのこと畑に埋めてしまえばいい。何年か何十年か先、誰かが掘り起こしたとしても隕石だとして騒ぐが珍しい事でもない、それでいずれ終息するだろう。この悩みがアルタイル星人達に説明したって分かる訳がない。もう関わりたくない、そう思った。

 マリアが家に帰ると父のドリューンが玄関前で立っていた。どうもいつもの優しい父と雰囲気が違う。
「マリア話がある家に入りなさい。いままで何処に行っていた」
「あれお父さん今夜はどうしたの。怖い顔して」
「とにかく家に入って話をしよう」
 ちょっと今日は疲れたからと言って誤魔化せる雰囲気ではなかった。仕方なくリビングに行くと母の佐希子は真剣な顔をしている。一体どうしたと言うのか。暫くすると父はパソコンのような物を持って来た。そうアルタイル星人から貰ったもと同じ物だ。佐希子は長年かくしていたが成長したマリアの様子が最近おかしいと二人が気付き、ドリューンに例の機械を差し出したのだ。

つづく


Page:1 2 3 4



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。