ダーク・ファンタジー小説

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宇宙人二世 マリア 
日時: 2020/06/14 15:56
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

第一章 飛行物体 1

 二千二十二年七月七日の事だ。東野佐希子とうのさきこ二十七才は十日間の休暇を取り一人で旅をしていた。現在、佐希子は東京の奥多摩に住んで居る。そこから愛車ランドクルーザーに乗って首都高から東関東道を抜け潮来から鹿島灘を右に茨城の大洗港に到着。大洗からフエリーで十八時間掛けて苫小牧港へ、そこから室蘭にある地球岬を訪れていた。今から一千万年前の火山活動で出来た高さ百メートル前後の断崖絶壁が十四キロも続く観光名所でもある。
 空は夕焼けからやがて日が沈み、もう上空は星が見え始めていた。天の川を撮ろうと佐希子は高感度カメラをセットし星空を眺めていた。その時だった。上空で見た事もない強い光を放ち、飛行物体が飛んで来た。流れ星かいやそれにしてはおかしい。その飛行物体が近づいて来る。しかも佐希子に狙いを定めたように飛来してくる。そのまま地面に衝突かと思ったら急激にスピードを落とし、そのままフワリと浮かび制止した。UFOか? 良く分からないが謎の飛行物体だ。佐希子の目の前に音もなく着地した。大きさは大型トラック程の大きさで長方形だ。まさか宇宙船? UFOなら円盤型と思ったら細長い。驚いた佐希子はカメラと三脚を持って逃げようとしたが腰が抜けて動けなくなった。


『宇宙人が地球の人間を誘拐しに来たのか? 私が一番先に狙われたのだろうか。それなら北朝鮮の拉致より質が悪い。宇宙の彼方に連れて行かれ解剖されるかも冗談じゃない。私を誘拐したら国際問題だぞと訴えても相手が宇宙人では国際法も関係ないのか』
 佐希子は意味もなくほざく。暫くすると長方形の飛行物体の横扉が開き、誰かが一人だけ出て来た。宇宙人? 佐希子が思わず口に出した。
「あっ私を捕まえに来たのね。きっと私が美し過ぎるから狙ったね。私だって負けてないわよ。学生時代柔道やっていたんだから投げ飛ばすぞ。寄るな! 蛸! 私は蛸が嫌いだ」

 宇宙人なら蛸のような生き物が出てくるかと勝手に思っていたが、それは人間の姿をしていた。何故かフラフラと出て来た。大きな旅行カバンのような物を引き摺っている。
「蛸じゃない。宇宙人でもない? では宇宙飛行士? まさかこんな場所に着陸する筈がない。とにかくそれ以上そばに来ないで。本当は柔道、……そう空手もやっていたのよ」
本当に空手はやっていないが多い方が良いと思った。
 佐希子はパニックになっていた。宇宙人に柔道が通用すると思いないし言葉通じるはずもない。 その謎の人間みたい宇宙人に、子犬が吠えるように佐希子は吠え捲くったが怖くて動けず倒れこんだ。だが佐希子の前で勝手に相手が倒れた。柔道技で投げ飛ばしても居ないのに? 襲ってくるのじゃなく相手が勝手に倒れた。弱っている者を見過ごし訳にも行かない。しかしどう見ても人間のようだ。年齢は三十歳くらいか。人間と分かった以上安心すると、佐希子はやっと起き上がる事が出来た。

「もしもし大丈夫ですか? 私の美貌に目まいがしたの? ……そんな訳ないか」
 どう見ても東洋人には見えない。西洋人なのか分からない。しかし男である事は間違いない。男はキャリアバックのようなケースを開け金属製の注射器のような物を取り出し、それを首に当てると赤い光を放った。暫くするとフーと溜め息を漏らした。なんと! しっかりした日本語でこう話した。 
「驚かせてすまん。君に危害を加えるものではない。安心してくれ」
「…………」
 安心しろと言われても得体の知れない人物、そして奇妙な形をした飛行物体から出て来た者に警戒せざるを得なかった。
「貴方は地球の人……それとも宇宙から来た人? 他の人も居るでしょう何故出て来ないの」
「訳は言えないが地球を調査に来た。私はアルタイル星から来た。アルタイル星は日本では彦星と呼ばれ、ベガ星は織姫星と言われているようだが。その調査船の乗組員だ。どうやら地球の細菌にやられたようだ。幸い他の乗組員は感染していなく無事だが、自分だけが地球の細菌に感染したようだ。このままで一緒に乗れば全員が感染する。仕方なく私だけが船から降りる事になった。他の者は、まもなく地球を離れ離陸する。私は細菌に感染し仲間ともう一緒に帰る事は出来ない。だから一人地球に残るように指令を受けた。助けて欲しい」

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア  ( No.1 )
日時: 2020/06/15 09:20
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 2

そう言葉を発すると同時にその宇宙船は音もなく浮かびあがり、やがて星空の彼方に消えて行った。どうやら見捨てられようだ。無理に連れて帰れば全員感染し全滅する仕方がない処置なのだろう。
「ちょっと! ちょっと待って。アルタイル星人って人間じゃなく宇宙人のこと。それで……私にどうしろと?」
「もう私は、私の星に帰る事は出来ない。あの飛行船も二度と地球には立ち寄らないだろう。だから私はこの地球という星で死ぬか生きて行くしかないのだ。ちなみに私をドリューンと呼んでくれ」
「でも地球の細菌にやられたのでしょう。私は医者じゃないし助ける事は出来ないわ」
 するとドリューンは海外旅行などに使われるキャリアバックのように物からパソコンのような物を取り出した。だがキーボードは付いていない。十インチ程度の画面のような物があるだけだ。どうやらタッチパネルのようになっているらしい。だが画像がパネルの中ではなく放射状に淡い緑色の光が浮かび空間に画像が浮かび上がった。文字のようで絵のような物が見える。それを操作している。 
「地球には風邪という菌がある事が分かった。我々の星にはない菌だ。この菌の一種が私の体を脅かしているようだ。この菌を取り除く方法はないのか?」
「風邪? そんな菌なら風邪薬で治るわよ。それなら持っているわよ。でも人間じゃないから……効くかどうか」
「それがあるなら見せてくれ」
 佐希子は旅行中いつも最低限の常備薬は持ち歩いている。風邪薬もそのひとつだ。
「はい、どうぞ」
 ドリューンはそのカプセルに入った風邪薬を開け、手の平に載せるとそれを眺めた。なんとその眼からは青白い光が放射状に薬を照らし始めた。
 佐希子は流石に後ずさりした。安心しろと言われても人間じゃない事が改めて思い知らされた。どうやらドリューンは薬の分析をしているようだ。
「驚かしてすまない。このカプセルは私を助けてくれそうだ。貰っていいかな」
「いいわよ……そんな物で治るの?」
「分析の結果、有効のようだ。人間そっくりに改造した肉体だからね」
「改造? じゃあ元の形はどんな風なの?」
「形はない。我々生物は目に見えないような微粒子で出来ている。その微粒子の集合体が集って脳が出来、身体が出来上がって行くが体力がない。だが風邪という細菌は我々には脅威だ」
「じゃあ貴方は微粒子の塊なの?」
「ああそうだ。だが私は地球に取り残された微粒子の塊、地球に住む以上は微粒子を符合し続けるしかないのだ。我々は学習する能力がある。だから風邪に対して免疫が出来ればもう大丈夫だ」
 
 佐希子は言っている事を理解しようとするが、微粒子の塊がこのドリューンだとは理解を超えていた。しかし何処から見ても人間そのものだ。眼はやや青く髪はグレーのような妙な色だった。ただ人前で眼から光を放ったら誰もが驚き人とは思わないだろう。
「でも地球で生きて行く為には沢山の菌があるのよ。それに一人では生きて行けないわよ」
「君だけが頼りだ。だから助けて欲しい。その代わり君の為なら何でもする。そして人間になりきる事を誓うよ」 
 助けて欲しいというから佐希子は助けたが相手は宇宙人、心配は大いにある。佐希子は人間ならともかく宇宙人を助ける意志があるかないに関わらず、既に脳はコントロールされていて断る事も出来なかった。ただコントロールされたと言っても、ある程度は佐希子の心は残っている。佐希子はドリューンに言った。
 「ねぇ私の助けが必要なら私をコントロールするのは止めて。そして人間として生きて行くなら完璧とまでとは言わないが、人間になりきって生活するのよ。それと私の名は東野佐希子。では貴方をこれからドリューンと呼ぶわね」
「分った、誓うよ。ただ一度人間に作り上げたら二度と戻し事が出来ない。細胞が分裂すれば私は死ぬ。だから君だけが頼りだ。私もこれからサキコと呼ばせて貰う」
「分ったわ。協力しましょう。でも特殊な能力は残るでしょう」
「それは制御出来るが消すことが出来ない。さっき約束した通り佐希子の心は支配しないと約束する」
「ふーんところで、そのパソコンのような物はなに?」
「これか説明は難しいが地球人の使うパソコンのような機能もあるが、他に特殊な装置がついている。いま言えるのはそれだけ、困った時に役立ち道具にもなる」
 「ふーん佐希子はそれ以上追及しなかった。
 佐希子はドリューンをこのまま他人に合わせる訳には行かないと思い、今日から数日泊まる予定だった友人から借りた別荘に連れて行く事にした。幸いこの別荘は電気ガス水道の設備も整っていて生活するには問題ない。途中スーパーに寄り食料など必要な物を買った。その間ドリューンは車の中で待たせた。もし居なくなるならそれでいい。何も宇宙人の面倒を無理にみる必要がない。だがドリューンは大人しく車の中で待っていた。本当に私だけが頼りなのだろう。仕方がない面倒見る事にした。

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア 3 ( No.2 )
日時: 2020/06/16 08:50
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 3

「ねぇドリューン、貴方の星ではドリューンと呼ばれていたの。貴方はこれから此処で暮らすのよ。地球で生きて行く為には人間を理解し人間に溶け込まなくてはいけないのよ」
「ああ、ドリューンは咄嗟に思いついた名前だ。人類には名前があると調べてあるから。サキコの言う通りにする。これから何をすれば良いのか教えてくれ」
「いいわ。処で貴方は、食事はどうするの。人間は食べて栄養を蓄え身体を保っているの」
「食べ物? 私の星では食べる習慣はない。元は粒子の集合体だから」
「えっしかし今は人間になったのでしょう。何も食べないと栄養失調で死んでしまうのよ」
「ふ〜ん。身体が受け付けるか分からない?」
「人間は食べて飲んで生きて行くの。それと食べるのは楽しみでもあるのよ」
「楽しみ? 楽しみとは何のこと」
「もう一から説明するのは大変だわ。人間には喜怒哀楽というモノあるの。ドリューンは意志と言うものはないの」
「まてまて、サキコの言っている事は理解し難い。まず食べる事と喜怒哀楽について調べて見よう」
「ええ人間になるのだから、なんでも吸収してね。私は二階を掃除してくるからね」
 佐希子が二階に行って居る間にドリューンはまたパソコンのような物を取り出し何やら調べ始めた。例によって空中に絵や文字が浮かび上がる。それから色んな食べ物が浮かび、その料理に手を伸ばして、なんと料理を取り出しではないか。次から次と料理を取り出し二十種類をテーブルに並べた。
「あれ〜なんかいい匂いして来たね。出前でも頼んだ……んな訳ないよね。出前の仕方も分からないのに」
 佐希子が下に降りて来ると沢山の料理が並べられていた。それをドリューンは試食を始めた。
「なっ! なにこの料理どこから来たの。いつの間に出前の取り方を覚えたの」
「嗚呼、サキコ。確かに食べると美味しいね。これが食べる楽しみか」
 佐希子は茫然と立ち尽くし料理を眺めた。驚く佐希子を気にする事もなく次々と食べ続けて居る。
「一体どうなっているの? ドリューン。もう食べられるようになったの。ねぇこの料理は何処から来たの」
 ドリューンは食べるのに夢中になっていたが、やっと驚く佐希子に微笑んだ。
「ああこれは、あの機械から出したんだよ」
「あのパソコンのようなもので」
「そうだよ。必要なら他にも取り出しみようか」
「駄目よ。そんなズルしては人間社会にはルールというものがあるの。苦労しないで手に入れるのもルール違反。人間は働いてお金を手に入れて、そのお金で物を買ったり食べたり遊んだりするの」

 佐希子は頭を抱えた。やはり人間の姿をしていても人間を理解させるのは難しいのか。なんとかして特殊能力を消せないだろうか。この調子なら家に居ながらなんでも手に入れてしまうだろう。金が必要と言ったら、あの不思議な機械で好きなだけ取り出しかもしれない。
「あのね。ドリューン人間として生きて行くなら、その機会を処分して。そうしないと私は貴方を面倒見切れない。私は帰るわ。あとは一人で生きて行きなさい」
「サキコそんなに怒るなよ。人間になる為に学習しなくてはならない。その為にこの機械は必要なんだよ」
「それならその機械で人間社会を勉強して。一週間だけ待ってやる。その間に全てを吸収して宇宙人なのだから一週間あれば充分でしょう。それで地球のパソコンの操作も学んで出来るようになったら次からパソコンを使って、そしてその機械は処分して便利過ぎると努力をしなくなるから」
 佐希子の凄い剣幕にドリューンはシュンとなった。以外と素直で可愛いところがある。
「分った。一週間でマスターするよ。その後はこの機械を処分する」
「約束よ。破ったらもう面倒見ないからね」
 納得した佐希子は機械から取り出した料理を摘まんでみた。普通の料理だ。何処かのレストランから出来た物を電送したのだろうか。理解出来ないが捨てる訳にも行かず二人で食べ捲った。残った物は冷蔵庫に入れ、佐希子はワインを持って来た。
「それは何、食べ物にしては液体のようだが」
「人間は飲み物も必要なの。これはワイン。アルコールが入っているの。ドリューンは馴れてから飲ませてあげる」

つづく

Re: 宇宙人二世 マリア 4 ( No.3 )
日時: 2020/06/17 09:02
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 4

 「ふ〜ん人間って面白い生物だね。私も早く本当の人間になれるように努力するよ」
「そうして、じゃあ今日は色々あったから疲れた。寝ましょう。と言ってもドリューンは寝る事が出来るの。ベッドで寝るのよ」
「私は寝る事は知らない。だから立ったままでいい」
「立ったまま? ああ疲れる。人間は睡眠が必要なの。寝るとは横になって目と閉じて寝るの。ドリューンが立ったままで居たら私が落ち着いて眠れないわよ」
 それから三日が過ぎた。その間ドリューンは不思議な機械で地球や人間の事を学んでいるようだ。人間なら三年は掛かる事をたった三日間で学んだ。その証拠に料理を作るようになり掃除も始めた。恐ろしいほどの吸収力だ。それから更に三日が過ぎ休暇は無くなった。仕方なく体調壊しと三日間有給休暇を使わせて貰った。取り敢えずドリューンを車に乗せ家に帰る事した。
  佐希子は車の中で自分の家族に合わせるからドリューンにイタリア人になり切るように伝えた。それと苗字も決めなくてはならない。イタリア人は何故かアで始まる苗字が殆どと言ってよいほどアで始まる。そこでドリューン・アンドレと決めた。
「今から貴方はドリューン・アンドレよ。そうそう私は佐希子・東野。ただ日本では苗字が先読みだからトウノ・サキコが正しい呼びかたよ」
「良く分かった。それから君の家族に会う時の挨拶も覚えたよ。初めまして私はドリューン・アンドレです。イタリア人で日本を旅行中に佐希子さんとお友だちになりました。よろしくお願いいたします。どうこれで」
「お〜流石、もう完璧よ。それとこれからどうするの。日本で働かなくてはならないのよ。仕事は出来るの」
「大丈夫、パソコンもマスターしたし車も運転出来るよ。料理も力仕事でもなんでも出来る」
「知っているわ。別荘で私の車を勝手にキーもないのに車を動かしていたものね。また特殊能力を使ったのね」
「ごめん、便利だからつい」
「これからは人の前では使わないでね。怖がって誰も貴方に寄り付かなくなるわよ」
「分った。これからは人間として生きて行くのだから全て佐希子に従うよ」
 最近のドリューンはやけに素直で可愛い。つい母性本能がくすぐられる。いやいや宇宙人に惚れる訳には行かないと否定したが、否定しても惹かれて行くことにはどうにもならない。佐希子はドリューンの持っているパソコンのような機械を処分すると言って預かっているが本当に処分していいか迷っている。何かあった時の為に隠してある。
 やがて佐希子の実家に到着した。実家は東京といっても山郷にある奥多摩だ。周りは山ばかりでとても東京とは思えない。佐希子は両親に友人を連れて帰ると伝えてあった。ただ外国人とは伝えていないから驚くかも知れない。

「ただいま〜いま帰りました。お土産沢山買って来たからね」
 すると近くで育てていた野菜を持って母が笑顔でお帰りと言った。
「あらお友だちって外国の方なの」
「そうよ、旅先で仲良くなって暫く泊めるからね。お父さんは?」
「ああ間もなく帰って来るよ。佐希子が帰って来るというので仕事の帰りに肉を買ってくると言っていた」
「へぇ〜じゃ今夜はスキヤキかな」
佐希子が食べたいならスキヤキにしょうかね。そちらの外人さん口に合うかな」
「ああ紹介するね。イタリアの人、日本で働きたいそうよ」
「初めまして私はドリューン・アンドレです。宜しくお願いします」
「あれまぁ日本語が上手なこと。日本語が話せるなら仕事もすぐ見つかるさ」
 それから間もなく父が帰って来た。ドリューンを見て少し驚いているが歓迎してくれた。その夜はスキヤキ歓迎パーティとなった。ドリューンは何処から見ても不思議なところはない。素直で冗談まで覚えて両親を笑わせてくれた。思いのほか好かれているようだ。ドリューンは食べる事の喜びを覚えた。いまでは問題なくなんでも食べられるようになった。そしてアルコールも飲めるようになった。なんという吸収力の高さか。もうどこから見ても普通の人間だ。


次回 第二章 宇宙人二世マリア誕生

Re: 宇宙人二世 マリア 5 ( No.4 )
日時: 2020/06/18 09:35
名前: ドリーム (ID: Oj0c8uMa)

宇宙人二世 マリア 5

 第二章 宇宙人二世マリア誕生

 ドリューンは翌日から仕事探しを始めた。雑誌で探しのではなくパソコンで探した。ドリューンはコンピューター関係の仕事がいいと青梅市に募集している会社があった。ゲームソフト開発会社のようだ。日本人スタッフだけのようだがイタリア人の発想も面白いと採用になった。佐希子は父が勤めいる役場で働いている。ドリューンをいつまでも家に泊めて行く訳にも行かない。佐希子は近くにアパートを借りてあげた。しかし外国人という設定だが一人で暮らせるか心配だ。佐希子は仕事が終わると毎日ドリューンのアパートを訪れ何かと面倒を見てやった。それから休みの日などはピクニックにも行くようになった。半分は両親も参加して、そんな日々が一年続いた。この頃になると両親を含め誰もが認める恋人同士となっていた。佐希子も宇宙人という事はもはや頭になかった。こうして二人は結婚した。結婚式にはドリューンの親は出席しなかった。そなんものは最初から居ないのだから病気で海外に出る事は出来ないという事になっている。その代わり電話やメールは両親の元に届く。勿論、音声も作られたもので顏や容姿も作られた偽物だ。。 
 ドリューンは既に人間になりきっていた。ただ困った時だけ佐希子の許しを得て特殊な機能を発揮した。例えば戸籍の取得を役所のコンピューターへハッカーして勝手に戸籍を作ったりもする。勿論パスポートも取得、更に車の免許に特殊技師として日本で働ける就業ビザまで作った。佐希子の両親もイタリア人として疑う事はなかった。

 やがて二人の間に女の子が生まれた。二人は真理亜マリアと名づけた。聖母マリアのご加護かありますようにと願いが込められている。
 だが母の佐希子は内心穏やかではなかった。なにせドリューンは宇宙人なのだ。その宇宙人との間に生まれた子供だ。いつ細かい粒子となって消えるかも知れないと思った。だが父のドリューンはマリアが生まれてから驚くほどマリアの愛情を注ぎ可愛がった。宇宙人でもやはり我が子は可愛いいのだろう。
 ただマリアには不思議に物がいくつかあった。瞳は日本人と同じ黒だが瞳の下に小さな黒子のような物がある。しかも両目にあるが普段は分からないが必要に応じて現われた。更に人さし指と中指の付け根にも小さな穴のような物がある。場所が場所だけに両親しか知らない。まだ小さいのでそれだけだったが後に、これがやがて人間にない能力を発揮する事になる。
 ドリューンはまったく普通の人間として働き、ただのイタリア人になりきった。やがて何事もなく月日が過ぎて、マリアが大学生になった二千四十五年七月七日の事であった。そうドリューンと佐希子が会った記念すべき日にあたる。
 マリアもまた、一人で大学の夏休みを利用して八ケ岳の高原に立っている時の事だ。マリアの眼が青白く輝き、いや細かく言えば瞳の下のある黒子のような物が青白く光を放ったのだ。星にでも届くような強烈な光を放ったのだった。
 やはり宇宙人二世は特殊な物を身に付けている事が判明された。だがマリアは父が宇宙人だとも両親からは知らされていなかった。しかし己の体が普通の人間と違う事を感じ始めていたマリアは自分に秘められた能力を試していたのだった。この後マリアの運命はどう変わって行くのか? 

 マリアの放った光線は一直線に伸びて行き、宇宙の彼方にある夏の大三角形にあるアルタイル星まで届いた。アルタイル星は恒星で主に水素、ヘリウムの核融合エネルギーにより自ら輝く天体である。アルタイル星は別名(彦星)とも呼ばれている。父と母が遭遇したのが七月七日であるが、マリアが生まれのも七月七日である。マリアは自分とその七月七日が何か関係あるのではないかと感じていた。マリアが眼から光を放ったのは今日が初めてではない。やはり昨年の同じ今日七月七日の事だった。
 現在、両親の東野佐希子と東野ドリューンは東京奥多摩の奥深い所に住んでいる。
 マリアの祖父と祖母はマリアの母佐希子が結婚し間もなく役所を辞め民宿を営んでいた。祖父母の手伝いをして民宿を盛り上げて居たがマリアが中学生になった頃、祖父と祖母は他界し今では父母が祖父母の後を継いで民宿を継いで三人で暮らしている。東京と言えば都会というイメージが濃い。だがここは想像もつかない田舎で周りは山に囲まれた谷の麓にある集落みたいな場所である。マリアは山が好きだ。景色を眺め珍しい草花を探すなど年に五度ほど来ている。今日は八ヶ岳連峰の蓼科山の頂上付近に登り星を眺める事も多かった。今日もまた蓼科山の山頂付近に来ていた。

 すると宇宙の彼方から一筋の光がマリアに向かって伸びて来た。マリアはその光に無意識に反応した。その光が自分の脳に何かを働きかけている。それに応えるようにマリアもまた無意識に応答したのだ。その方向はアルタイル星という星だと思われる。どうやらマリアはアルタイル星と交信出来る機能が脳に植え付けられているようだ。その証拠にマリアは眼から光りを放つ事が出来る。それは人には見えない光の交信であった。マリアその交信で自分の出生の秘密と父が宇宙人、アルタイル星人である事を知った。
「君が我々に光線を送ったのだね。我々は地球で言われる夏の大三角形にあるアルタイル星の者である。交信キャッチをありがとう。日本では七夕と呼ばれ、その彦星(アルタイル星)が我々の住む星なのだ。君の父ドリューンが地球に送り込まれたが、細菌に感染したが奇跡的にも君の母、佐希子に救われた。ただドリューンはもう普通の人間になった。君も薄々感じていたであろう。だからこの交信も驚いた風に見えないのも、その為だ」
「……まさか私を貴方たちの星へ連れて行くと言うんじゃないでしょうね?」
「それは無い。アルタイル星は単細胞生物バクテリアでしか生存出来ない。超微生物の集合体で知能を得た。では何故、宇宙船を製造出来たかは、やはり七夕で知られる織姫、ことベガ星とは友好関係にある。我々は小さな物を作る体力はあるが大きな物は無理だ。その辺はベガ星に依頼し作られた物である。優れた知能を持ったアルタイル星と物を作れるベガ星人と、我々はそうして協力し合い共存共栄しているのだ」
「難しくてよく分らないけど、私とコンタクトを取ったからには、目的があるのでしょう」
「その通りだ。マリアに頼みある。聞いて欲しい」
「一応、聞くだけは聞くけど条件があるわ。地球や私達家族に害にならないのなら」
「それは絶対にない。我々が地球に興味を持ったのは優れた知能と恵まれた身体だ。我々は知能があって物を作る事が出来ない。だからベガ星人と協力し合って生きているのだ。その両方を持つ合わせた人間が羨ましい。出来れば地球とアルタイル星の血を引く二世である君を通して地球の事をもっと知りたい」
「確かにアルタイル星人は知能が優れているようね。でないと十六光年もある地球に来る宇宙船に乗ってくるのだから」
「それはありがとう。我々の星は地球のような綺麗な星ではないが太陽の三倍以上もある巨大な星だ。だから資源はあるが物を作る身体がないのだ。だから我が星の建造物は全てベガ星人が作るのだ。逆にベガ星人は知能が低いが物を作る体力を持っている。互いに協力して生きるしかない不思議な関係にある」
「地球を知ってどうするの? まさか地球征服なんて事はないでしょうね」
「まさか我々は友好関係を結びたいだけだ」
「友好関係と言ってもどうして交流するというの。貴方がたが地球に来て誰と会うの」
「いや我々は地球には行けない。地球には我々に有害な細菌が渦巻いているその内のひとつが風邪という恐ろしい細菌だ」

つづく


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