ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 死を望む人間達。
- 日時: 2021/09/03 19:16
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
『死にたい』
誰もが一度は思ったことのあるこの願い。
でもその思いは______本当ですか?
こんにちは!知る人ぞ知る鈴乃リンです!
ダーファで活動するのは初めてですが、楽しんで読んで頂けると嬉しいです!(更新頑張れ私!)
コメント等もいつでも募集中っ!
《実績》
09/18/2020 作成
09/01/2021 2021夏小説大会にて管理人・副管理人賞受賞
《死の名簿》
坂元蘭 概要>>11 本編>>2-10 >>13-
- Re: 死を望む人間達。 ( No.10 )
- 日時: 2021/09/05 22:06
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
同じクラスの坂元が帰った。
扉の開閉を知らせるちりん、という音が聞こえなくなれば、先程と全く変わらない声色で爺さんが俺に話し掛けてくる。
「……永太、ちゃんと取ったかい?」
「ああ、今回は俺の知り合いだったから怪しまれるかと思ったが意外と鈍感な奴だったな」
そう言って俺の左手にある坂元の を爺さんに見せる。爺さんは を確認し俺の左手から を取った。
「上手く取ったじゃないか、もうすぐ永太一人で店を動かせるんじゃないか?」
「いや、それは無理。俺は爺さんみたいに上手く時計が作られる訳じゃないから」
そう言うと爺さんは「そうかいそうかい」と穏やかに微笑んで奥の作業場に消えていった。俺はその後ろ姿を見送って店内の掃除をし、ティーセットの片付けを始めながら坂元のことを考えていた。
- Re: 死を望む人間達。 ( No.11 )
- 日時: 2021/09/04 11:05
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
今更ながら現在登場してるキャラ達の概要!(分けます)
坂元 蘭
中学2年生で14歳。公立中学校の生徒で永太と同じクラス。いじめられっ子。
茶色の髪をボブにしていて、前髪の一部を黒ピンでとめている。身長は159cmでやせ気味。いつも着ている制服(セーラー服)はいじめによりハサミで切られたり汚されたりしているのでボロボロ。新しくしてもすぐにボロボロになるため諦めている。登下校時はいじめっ子に目を付けられないように隠しているコートを上に着ているので周りから視線は浴びない。スカート丈は基準をちゃんと守っており膝下辺りまでの長さ。
控えめで大人しい性格。しかし他人に対して優しい為、自分のことをあまり話そうとしない。
中学1年の時に学級委員を務めていたがイケメンの担任に贔屓されてクラスメートの反感を買ってしまいいじめに発展した。それが今でも続いている。
母は離婚で家を出てしまい、父と二人暮らし。しかし父も仕事が忙しく家でも殆ど一人。その為いじめのことも誰にも相談できずにいる。
幼い頃から人魚姫のお話が大好き。
- Re: 死を望む人間達。 ( No.12 )
- 日時: 2021/09/05 22:02
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
沈丁花 永太
中学2年で14歳。『時計屋 沈丁花』の店主の孫。
項が隠れる程長めの焦げ茶色の髪。身長は165cmで肉付きが良い。制服(学ラン)はちゃんと規則を守っている。
明るく皆のムードメーカー。それに加え親切で優しいが家である沈丁花では冷たく愚痴が多い。祖父に対してはもっと冷酷。
『時計屋 沈丁花』で祖父の手伝いをしている。父と母の行方を知らず、祖父に引き取られ育てられた。いつかは沈丁花の店主にならないといけないが本人はまだ時計を上手く作ることができない為嫌がっている。
沈丁花 遠
『時計屋 沈丁花』の店主。
永太と同じくらいの長さの白い髪を後ろで短く括っている。白いシャツの上に茶色いエプロンを着て紺色のズボンを履いている。
穏やかで常に笑顔を浮かべている。孫の永太のことを大切に思っており、愚痴を吐かれても動じない。
父と母がいなくなった永太を引き取り育てた。しかし永太に隠している秘密があるようで……?
- Re: 死を望む人間達。 ( No.13 )
- 日時: 2021/12/27 12:48
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
3日が経った。放課後、すぐにあの店に向かった。
2日前……あの日の次の日に行ってみようと思ったのだがあの店に繋がる道が無かったのである。何度も行ったり来たりを繰り返したが、駄目だった。
それと、変わったことがある。
今まで私に暴力を奮っていた虐めが、無視だけになったのだ。2日前…無視だけになったのは偶然かと思っていたが無視が3日続いた。いつも殴られたり物を隠されたりしていたから、少しだけ、ラッキーと思えた。
そう3日間を振り返りながら歩いていると、件の店が見えてきたのである。
看板に沈丁花と書いてあることがなぜか嬉しく思えてきて、心を弾ませながら扉を開けた。
- Re: 死を望む人間達。 ( No.14 )
- 日時: 2022/01/28 22:05
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
ちりん
穏やかな音だ。心が浄化されていくような__そんな音。
まっすぐ前を見ればカウンターの前に店長さんが優しい笑みを浮かべて木箱を持っていた。店長さんは待っていてくれたようで私の方を見れば少し目を細めて「こんにちは」と口にした。
「こんにちは……あの、それって_」
「……できましたよ、人魚姫の時計。開封致しますか?」
「っ……はい…っ!!」
ティーセットが並べられたテーブルの一席に座り、店長さんの持っていた木箱を受け取ってテーブルの上に置き、ゆっくりと蓋を開けた。
「わぁ……!」
その時計は、すごかった。
真ん中の時計盤を囲うように今すぐにでもゆらゆらと揺らめきそう海藻があり、そこから海の世界が広がっている。色とりどりの魚が躍るように泳ぎ、海面近くが太陽の光を反射してキラキラと輝いて、海の底まで照らしている。そして時計盤の下、鮮やかなサンゴの生えた岩に座り歌う__美しい人魚姫。
今すぐ動き出しそうな海の世界に彩られたその時計に、もう一つの世界ができたようだった。