ダーク・ファンタジー小説
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 第2の人生を得た俺は、恵まれたスキルで快適生活を過ごす
- 日時: 2024/05/02 20:28
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
どうも!初めましての方は初めまして、既知の方は御無沙汰しております、柔時雨です。
同掲示板で他の方と一緒にリレー小説をしているのですが、他の方の作品を読んだり
実際に販売されている漫画を読んでいるうちに、少しソロで物語を始めてみようかな……と思い
今回こちらを立ち上げさせていただきました。
物語は世間一般で言われる『異世界転生物』になります。
作中に出て来るキャラクター名は、リレー小説の方で登場しているキャラクターと同じ名前を使用しますが
純粋に、俺のネーミングセンスとバリエーションが無いためと、予めご了承いただけると幸いです。
あと、会話文主体で情景描写が少なく、読みづらい箇所が殆どですが、御了承いただけると幸いです。
それでは、数ある作品の中からこちらを覘きに来てくださった皆様
どうぞ、ゆっくりしていってくださいね。
【 お知らせ 】
誠に勝手ながら、タイトルを変更させていただきました。
( ちょっと、人間に敵対するだけのストーリー展開が思い浮かばないかもしれなくなったので…… )
【 圧倒的 マジ感謝! 】
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~✝ キャラクター Profile ✝~
>>1
【 物語 】
~✝ 1章 ✝~
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10
~✝ 2章 ✝~
>>11 >>12 >>13 >>14
- ダンジョンに潜む性欲 ( No.10 )
- 日時: 2024/05/02 21:16
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
この日、俺とシルヴィアは地下ダンジョンを訪れていた。
屋外での戦闘はまぁまぁ戦えるようになってきたので、今回は限られたスペースでの戦闘をしてみようということになって
アルガスの町から1番近いダンジョンへ来たというワケだ。
「当然のことながら、俺はダンジョンを訪れるのは初めてなんだけど……シルヴィアは?」
「私も初めてですよ。主様に出会うまで、森を出たことはありませんでしたから。」
「そっか。じゃあ……己のステータスに慢心しねぇで、慎重に進んで行こうか。」
「はいっ!」
生前読んでいた漫画で、大まかにだがダンジョンというのが、どういう物かというのは理解している。
こういう地下へ伸びるダンジョンは、下の階層へ行くほど、棲息しているモンスターが強くなっていく……と、思う。
坂道を下りて出た場所は、小部屋風の洞窟。
4、5メートル四方はありそうな、正方形に近い小部屋だった。
明るくはないが、全体がぼんやりと光っている。
小部屋からは道が前方に1本、右に1本、左にも1本延びていた。
部屋から延びる道は、どこかのトンネルのような薄暗い空間で、幅は3メートルもないくらい。
薄暗いため、奥の方まで見通すこともできない。
前に進む道はすぐ先が十字路になっている。
結構複雑にできているようだ。
「思ったより、複雑な構造ですね。」
「マッピングが重要になりそうだな……シルヴィア、お願いしても良いか?」
「はい!お任せください。」
「とりあえず常に壁を左側において進むことで対処しよう。迷路を歩くとき、常に左右どちらか
決まった方の壁に沿って進めば、迷うことはないって話を聞いたことがあるんだ。」
「なるほど。そのような法則が……わかりました。本日は左ルートで進みましょう。」
俺が前を歩き、シルヴィアが俺が【 創造 】のスキルで出した紙とペンで、ダンジョンの地図を描いていく。
「ちなみに主様、本日は何階を目指しますか?」
「ん~……初めてだし、いつでも挑めることを考慮して……3階くらいが妥当かなぁ。シルヴィアは?
もっと深い階層を目指したい?」
「いえっ!どのようなモンスターが出てくるのか、まだ判りませんし、主様の仰る通りいつでも
挑めるのですから、本日は様子見ということで、3階層辺りが私も妥当だと思います。
そこまででしたら、急激に強いモンスターが出現するということもないでしょうし。」
「大丈夫か?無理して俺に合わせてくれなくて、シルヴィアの意見をちゃんと言ってくれて良いんだぞ?」
「大丈夫!大丈夫です!今回に関しましては、主様の考えに賛同できたからで、異論がある場合は
きちんと申し上げますよ。」
「そっか?それなら良いんだけど。」
その後……
1階、2階に出現するモンスターは、このダンジョン周辺でもよく見るモンスターで
苦戦することなくモンスター共を倒しつつ、適度に休憩して
現在、地下3階に到達していた。
「ダンジョンに出現するモンスターは、このダンジョン周辺に棲息しているモンスターみたいだな。」
「既に何度か倒した事のある相手です。余程のことが無い限り、負けることは無いでしょうね。」
「慢心するつもりはないけど、これなら3階も割と簡単に踏破できそう……ん?」
3階層を少し歩いたところで、前方から身長2mほどある、頭から角を生やし、原始人のように皮の衣服を
纏った筋骨隆々のモンスターが歩いて来た。
手には木製と思われる棍棒を持っている。
「あれは……初めて見るモンスターだな。」
「主様。あれはオーガです。」
「オーガ!名前は聞いたことあるよ。……あれ?何か、名前の似たオークってのも居なかったっけ?」
「そちらは、豚の頭のモンスターですね。ゴブリンと同じ低級の悪鬼です。」
「あぁ、そっか。とりあえず……初見モンスターなので、ステータス確認しておくか。」
前方からのっし、のっしと歩いてくるオーガのステータスを【 超解析 】で確認する。
【 オーガ 】 Lv・48
種族・モンスター
年齢・-
性別・♂
移動ユニット・【 歩 】
属性・闇
【 使用武器 】
〇 棍棒
【 ステータス 】
HP・3700
MP・0
【 STR 】・450
【 VIT 】・390
【 INT 】・5
【 MND 】・10
【 DEX 】・5
【 AGI 】・80
【 スキル 】
〇 性欲 『 パッシブスキル 』
属性:-
消費MP:-
*戦闘中、隙あらば異性に対して優先的に襲い掛かろうとする。瞬間的に、【 STR 】の値が2倍になる。
*自分で自分を慰めた時、瞬間的に【 INT 】と【 MND 】の値が2倍になる。
「いや!スキルの内容が直球過ぎるわっ!」
思わず、反射的にそこそこ大きな声でツッコんでしまった。
同じようにオーガのスキルの内容を確認したのだろう。
俺の隣で、シルヴィアが苦笑いを浮かべている。
「でも、これ……スキルの対象が【 異性 】なら、オスのオーガは俺が前に出て対処して、
メスのオーガはシルヴィアが対処してくれれば、そこまで危険な相手ってこともないよな?」
「そうですね。ただ……主様。以前、里に居た頃に他のエルフから聞いた話なのですが、オーガの中には
時々、希少種と呼ばれる存在が産まれることもあるそうなんです。」
「希少種?」
シルヴィアの言葉に首を傾げた瞬間、接近してきたオーガにガシッ!と肩を掴まれた。
体術……投げ技に持ち込まれるかと思ったが……
俺の方を掴んでいるオーガは頬を赤くして、荒い息遣いでジッと俺を見つめている。
そして
「ウホッ!イイ男」
と、野太い片言で確かにそう言った。
「おぉぉおおおっ!?希少種って、そういうことかぁっ!?」
最近、世間様ではようやく寛容に認知されるようにはなってきてはいるみたいだけどさぁ!
漫画や動画で、ネタとして見る分には笑って済ませられるが
いざ、実際に自分の身に迫ってくるとなると……
生憎と!俺にそっちの気はありませんのでっ!
全てを理解し、咄嗟にオーガを突き飛ばしたが、オーガはすぐさま起き上がり、今度は俺のズボンに
手をかけてきた。
同時に、『 これだけは死守しなくては! 』という防衛本能が、俺の身体を条件反射で動かす。
「させるかぁぁあ!何が悲しくて俺の初めてを、てめぇなんぞに奪われないといけねぇんだよ!シルヴィア!
援護を……援護を頼むっ!」
オーガの攻撃を必死に防ぎつつ、シルヴィアに援護要請をしたのだが……
シルヴィアは何か、考えるような素振りで俺とオーガをジッと見つめている。
「このままいけば、主様の……しかし、オーガに先を越されるというのも、釈然としませんね……」
「えっ?ちょっ!?シルヴィアさん!?」
結局……
意地でオーガを蹴り飛ばし、再度跳び込んで来るタイミングで、オーガの首をツヴァイハンダーで
斬り落とした。
「はぁ……はぁ……危なかった……いろんな意味でヤられるかと思った……まさか、同性愛者が
存在するとは……なんて恐ろしいダンジョンなんだ……」
「災難でしたね、主様。」
「あぁ……まったくだぜ……」
己を犠牲にオークの危険性を確認した直後、前方からオーガが歩いてくるのが見えた。
腹筋が割れ、筋骨隆々なのは今倒したオーガと同じなのだが、胸の膨らみが先程のオーガより大きいような
気がする。
「あれって……まさか、メスのオーガか!?」
「主様……」
「はぁ……マジで今日は厄日か?」
迫り来るオーガを倒すため、再びツヴァイハンダーを構えると……
メスのオーガは俺の隣に居るシルヴィアの両肩をガシッ!と掴んだ。
「「え?」」
オーガは頬を紅潮させ、荒い息遣いで、熱い視線をシルヴィアに向けている。
そして
「ウフフ!カワイイ娘ネ」
と、片言で確かにそう言った。
同時にシルヴィアの顔がサー……と、一気に青ざめる。
そんな彼女を前に、オーガはシルヴィアを押し倒し、衣服を強引に剥ぎ取りにかかった。
「きゃあぁぁああぁぁぁぁっ!!ちょっ、やめっ……やめなさいっ!何を考えているのですかっ!?」
いきなりのことで、普段落ち着いているシルヴィアが、珍しく取り乱している。
「あぁ~……そりゃ、オスの同性愛者のオーガが居るなら、メスの同性愛者のオーガも居るわな。」
「主様!観察して納得されてないで!たっ……助けてくださいぃいっ!」
「ん~……でも、女性と女性なら、別に失う物は何も無いような……」
「ありますっ!純情とか、尊厳とか……そういう何か大事な物を無くしてしまいますからっ!」
ステータスの【 STR 】の数値だけを見れば、シルヴィアも充分オーガを突き飛ばせるんだろうけど
それができる状況かどうかというのは、また別の話で……
仕方ないので、メスのオーガの顔面を蹴り飛ばした後、ツヴァイハンダーで首を斬り落とした。
「はぁ……はぁ……主様……本当はもっと早く、動けましたよね?」
胸を両手で隠し、黒い紐パンツ1枚の状態にされてしまったシルヴィアが、肩で息をしながら恨めしそうな
視線を俺に向けてくる。
「いやぁ、初見のモンスターの生態を、より詳しく確認しておく必要があると思ってな。それで……
シルヴィア、変えの服は?」
「いえ……オーガに引き裂かれた、あの1着しか……」
「だよな……わかった。同じ物で良いか?」
俺は【 創造 】のスキルの『 自分の記憶にある物・1度見たことある物を、『 お金 』以外なら作り出すことができる 』効果を利用して
シルヴィアがいつも着ていた服を出現させた。
「ありがとうございます、主様。」
俺から服を受け取ったシルヴィアが、いそいそと着用する。
「とりあえず……倒すことはできるけど、厄介な敵が居るってことは、分かったな。」
「えぇ……同時に、予想外の事態に陥ると、対処が遅れるということも分かりましたね。」
「……今日はここまでにしておこうか。」
「はい……違う意味で、どっと疲れてしまいました。」
目的の階層に到達し、棲息している( ある意味 )厄介極まりないモンスターの存在も確認したことだし
これ以上何かされる前に、俺達は上の階層へと引き返した。
- 岩山の闘士 ( No.11 )
- 日時: 2024/05/02 21:17
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
アルガスの町・冒険者ギルド
自分達のレベルアップに付き合ってくれた魔物達の素材を買い取ってもらっている間、空いている席に座り
テーブルの上に、このヴェルスティア大陸の地図を広げる。
「ん~……」
「どうされました?主様。」
「ん?あぁ……そろそろ拠点を手に入れようかなぁって考えてたんだけど……」
「まぁ!拠点ですか!主様と私の……私達だけの……うふふ。良いですね!是非、検討しましょう!」
「それでなんだけど、今考えてるのは、この町で家を買うか……何処か、空いた土地に作るか……なんだけど
シルヴィアはどっちがいい?」
「私は主様と一緒でしたら、どこでも構いません。ですが……そうですね。できれば、空いた土地に
1から作っていただけると……」
「了解。でも……そんな都合よく、空いてる土地なんてあるのかな?」
「ありますよ。つい最近、空き地になった場所が……此処です。」
そう言いながらシルヴィアは、地図の一角を指差す。
「以前はエルフの里があった場所です。主様にお話しした通り、此処は心無い人間の襲撃に遭い、
森が燃やされ、現在は一部が焦土となっています。」
「一部?」
「はい。地図に描かれているこの森全体が、人間がこの大陸で栄える以前からエルフが所有していた
独立した土地なのです。長い年月の中で様々な生き物や魔物も棲み付くようになりましたが……
そして、エルフの里があったこの一部だけが、現在焦土になっているんです。」
「なるほど。ん~……エルフの里が襲撃されたことが既に世間に広く知れ渡っているなら、エルフ達が
居ないこの土地を自分の領地にしようと思って動き出す奴も、少なからず出てくるよな?」
「おそらく……」
「ちなみに、此処は絶対駄目!みたいな場所はあるか?」
「はい。私も以前、エルフの里で少し話に聞いただけですが、このヴェルスティア大陸の東にある……
此処です。」
そう言いながらシルヴィアは、机の上に広げている地図の一角を指差した。
「此処は?」
「『 聖都・ルルブシア 』。この世界を想像したと云われている神様を初め、様々な神様を信仰している
聖騎士や神官が集う町です。そして、その殆どの人間が『 絶対人間至上主義者 』で、
闇に染まった者に対し激しい嫌悪感を抱き、アンデッドやモンスター、ドラゴンの討伐、幽霊や悪魔祓いの
エキスパートであるそうです。敵対するものが倒れるまで、攻撃の手を緩めない過激な
集団なんだとか……」
「なるほど。暗黒騎士として転生した俺や、過程はどうあれダークエルフになったシルヴィアが
この町に行けば、都市全体を巻き込んだ闘争が勃発しちまうと……」
「そういうことです。」
「ふむ……なぁ、シルヴィア。」
「はい。」
「俺のスキルで、海に1から土地を作って、領土と拠点を作るのは……有りだと思うか?」
「海に……ですか?そうですね……えぇ、問題無い……いえ、むしろその方が良いかもしれませんね。
建国というほどではありませんが、1から拠点を作るメリットは大きいと思います。」
「そっか。それじゃあ、とりあえず海に出て、どの大陸にも属していない海域に、【 創造 】のスキルで
土地から作る方針でいくか。」
「はい!では、主様。海に出る前に、必要な物を用意しましょうか。」
「ん?何か必要な物があるのか?大体の物は【 創造 】のスキルで出せるけど……」
「ですがそれは、主様が以前居た世界の物であったり、こちらの世界の物であっても、1度見たりして
認知していないといけませんよね?」
「あ、確かに……ということは、俺がまだ見たことが無い物が必要なんだな?」
「はい。主様、この後ですが、『 転移石 』を採りに行きませんか?」
「転移石?初めて聞いた……けど、何となく、どういう物なのかは解かった。それがあれば、
瞬間移動ができるっていうアイテムか?」
「その通りです。その石の片方をこの拠点に、もう片方……破片でも構いませんので、
それを私達で持っていれば、何処に居ても、瞬時に此処へ戻って来ることができます。使用するには
主様や私の持つ方の転移石に、今後できる拠点のことや目的地の場所を記憶させる必要がありますが。」
「なるほど。何にせよ、その石が無いと始まらないってことか。」
「そうですね。人間の里の市場に出回ることもあるそうですが、比較的に簡単に見つけられる鉱石なので
常識の範囲内で、自分達で採取する方が確実かと。」
「わかった。それじゃあ、その石を探して、見つけたその足で海に……あぁ、いや。アルガスの情報を
石に記憶させる必要があるから、1度戻って来ないといけないのか。」
「えぇ。焦ることはありません。主様、まずは確実に石を見つけることに専念……見つからなかった場合は
購入する方向で事を進めましょう。」
「そうだな。よし!それじゃあ、この町から1番近い場所にある岩山に行ってみようか。」
「はい!」
◇◇◇
……ということがあり、【 Soul of Centaur 】を発動し、シルヴィアを乗せて走ること数十分。
現在、岩山に到着して【 Soul of Centaur 】を解除した俺とシルヴィアは、岩の壁に挟まれた
谷底を歩いていた。
「勢いで来たけど、この岩山にあるのかな?っていうか、俺、その転移石ってのがどんな見た目なのか
知らないんだけど?」
「そうですね……青緑色で、水晶のように透き通っているので、割と簡単に見分けられると
思うのですが……」
「今まで歩いて来た処には無かったな……ん?」
シルヴィアと話しながら歩いていると、前方240度を聳え立つ岩の壁に囲まれた、足場が平らで円形の
石舞台に出た。
「此処で行き止まりでしょうか?」
「……いや、目の前の壁に、洞窟がある。ダンジョンになっていて、モンスターが居るかもしれねぇけど
まだ先に行けそう……っ!?」
「どうされました!?主様!」
「いや……誰かに見られているような視線を感じて……」
ツヴァイハンダーの柄に手をかけたまま、視線を感じた方を見ると、切り立った岩壁の上に1人の
女の子が立っていた。
女の子もこちらに気付いたのか、岩壁の僅かに出っ張っている所を足場にしながら、垂直跳びで
華麗に跳び下り……石舞台の上に着地した。
石舞台に下りて来てもらって、初めて気付いた。
菫色の綺麗な長髪、人間のどちらかといえば『 可愛い 』よりは『 美人 』寄りの顔立ち、
袖と脇腹から腰に掛けて生地の無い、『 覚悟を感じる 』エグい角度の白いハイレグのレオタードの上から
灰色の何かの生き物の毛皮をジャケットのように羽織り、殆ど機能していないほど
丈を極限まで詰めた薄い灰色のミニスカートを穿いている。
そして、彼女の左目の処を縦に、右頬や剥き出しの手足には、所々に大きな古傷が刻まれている。
ここまでは人間としての容姿……
その女の子の頭には、髪の毛と同じ色の毛の犬の耳が、わざわざレオタードに穴を開けたのか、
尾骶骨の辺りから、犬耳と同じく、髪の毛と同色の犬の尻尾が生えている。
「お前達……何の目的で、こんな場所に来たのかは知らないが、その先には何も無いぞ?」
「その先って……あの洞窟の奥のことか?」
「あぁ。以前はリザードマンの集落があったのだがな……」
「以前はあった……今は無いのですか?」
「何ヶ月か前に、何処の鉱山から来たのか、ドワーフ達がこの岩山を訪れてな……夢中で採掘しているうちに
リザードマンの集落の壁に、大穴を開けてしまったんだ。」
「それは本当なのですか!?まったく!本当にあの者達は!他の種族への迷惑も考えないで!」
珍しく、シルヴィアが感情を剥き出しにして怒っている。
「どうしたんだ?シルヴィア。」
「見たところ、その女はダークエルフ……エルフなのだろう?エルフとドワーフの仲の悪さは
有名だからな。」
「あぁ、なるほど。何かで読んだことがあるな、その情報。」
「まぁ……そういう事情があって、リザードマン側は大激怒。武力行使によって、ドワーフ達を
その集落……いや、この岩山から追い出した後、何処か他所の土地へ遷都していったというわけだ。」
「なるほどな。それで、お前はそのことを伝えるためにずっと、この岩山に……」
「ん?いや、違う。アタシは……他に、行く場所が無いだけだ。」
「行く場所が……なぁ、もし良ければ、お前のことを色々聞かせてくれないか?時間はあるんだろ?」
「え?まぁ……あるにはあるが……アタシの事を?」
「シルヴィアも構わないよな?」
「はい。急ぎの用事でもありませんから、ゆっくり致しましょう。」
「…………わかった。だが、アタシの話が終わったら、お前達のことも話してもらうからな?」
「あぁ。わかった。」
話がどれくらいの長さになるかは判らなかったので、俺とシルヴィアはキャンプの用意をして
人数分の飲み物を用意する。
「まずは名乗るべきか……アタシは『 ライザ 』。半人半狼だ。」
「半人半狼!その名前は聞いたことがあるな。」
そっか、狼の耳と尻尾だったのか。
迂闊に犬耳とか言ってたら、どうなっていたことやら……
「どうされました?主様。」
「いや……何でもない。俺はユーヤ、彼女はシルヴィアだ。」
「よろしくお願いしますね、ライザ。」
「ん……」
微笑むシルヴィアに、ライザが短く返事をして、ペコリと頭を下げる。
「それで?ライザはどうして此処に?さっき、他に行く場所がないって言ってたけど……」
「そのままの意味だ。アタシにはもう……帰る場所がない。それだけのことさ。」
「「帰る場所が……?」」
ライザの言ったことに、俺とシルヴィアはほぼ同時に訊き返してしまった。
「……まず、私は自分の両親のことを知らない。父親が狼で母親が人間、あるいはその逆なのかも
判らない……此処より遥か北にある『 エギス 』という極小の村の外れにある廃れた教会に、
赤子だったアタシが籠に入れられた状態で放置されていた……と、私を見つけて育ててくれた
老夫婦から聞いた。」
「そっか。ライザの御両親が何でそんなことをしたのかは判らないけど、そうしないといけない理由が
その時にはあったんだろうな。」
「あぁ。アタシも、その件に関しては別に何とも思っていない。育て親の老夫婦にはとても
良くしてもらったからな。ただ……村の人間の全員が全員、好意的だった訳ではなかった。
見ての通り、アタシには狼の耳と尻尾が生えている。それが、恐怖の対象……いや、嫌悪の対象とでも
言った方が良いのか?とにかく、『 自分達とは違う 』という理由で、村の同世代の子ども達の中には
アタシに小枝や小石を投げつけてきた奴等も居たし、老夫婦に幾度かアタシを捨てる様に
意見してきた奴等も居たが、あの2人はアタシを慰めてくれて、頑なにアタシを追放することを
拒んでくれていた。」
ライザは少しだけ空を見上げた後、続けて話してくれる。
「ある時、老夫婦の母の方がアタシに、『 近くの林で焚き木にする様の枝を集めてきて欲しい 』と
お願いしてきたので、言われた通りに作業をこなし、意気揚々と帰宅したら……家が炎に包まれていて
育て親の老夫婦が……村人共の足元で、血を流して倒れていた。」
「「!?」」
「アタシは集めた枯れ枝を投げ捨て、慌てて駆け寄ろうとしたんだが、まだ意識があった父に
『 逃げろ! 』と言われ……正直、今思えば、あの時、村の連中を八つ裂きにできたかもしれない。
でも、その時は父の言いつけを守らなければいけないと思ったことと、本能で『 生きなければ 』と
思ったから、歯を食いしばってその場から逃げたんだ。何人か追って来ていたような気もするが、
狼の脚力で逃げ切ってやった。」
「「ライザ……」」
「それからは、生きるために動物や鳥、モンスター共を狩って、その血肉を啜って今日まで何とか
生きてこられた。たまに、傭兵として人間と共闘したこともあれば、この肉体を求めて襲ってきた連中を
返り討ちにしてやったこともあったな。」
「なるほど……ありがとな、ライザ。話してくれて。そして、悪い……『 大変だったな 』っていう
ありきたりな言葉しか出てこなくて。」
「いや、そんな……構わない。聞いてくれただけでも、気が楽になったし……それに、アタシも今から
お前達のことを聞かせてもらうんだからな。」
「わかった。じゃあ、俺から話そうか。」
俺とシルヴィアは順番に、自分達の過去に何が遭ったのかを、俺達が出会って仲間になるところまで
ライザに話した。
「……アタシの人生も大概だと思っていたが、シルヴィアも散々だったな。しかも、ユーヤに関しては
1度死んでいるというのだから、驚いた。」
「信じてくれるのか?シルヴィアにも言ったんだけど、すぐに信じてもらえそうな内容じゃねぇのに。」
「確かに、作り話という可能性はある……だが、アタシの話をとても真摯に聞いてくれた2人の
これまでの話だ。アタシは2人の話を信じたいと思う。」
「そっか……ありがとな、ライザ。」
「いや……別に……」
少し頬を赤くして俯くライザだが、彼女の尻尾は左右にピョコピョコ振り動いている。
実は、案外分かりやすい娘なのかもしれない。
「なぁ、シルヴィア。」
「えぇ。私も良いと思います。」
「ははっ……おいおい。まだ、何も言ってねぇぞ。」
「うふふ。今の主様が考えていることは、手に取るように分りますよ。」
「? 何の話をしているんだ?2人共。」
「なぁ、ライザ。もし、お前さえ良ければ、俺達の仲間にならないか?」
「え……?」
「もちろん、これは強制ではありません。もし、ライザがこのまま1人での生活を続けたいというのでしたら
私達は貴女の意見、意思を尊重します。」
「……お前達、アタシを仲間に誘うということが、どういうことか解っているのか?半人半狼を受け入れて
あの老夫婦みたいなことになっても……アタシは責任を取れないぞ!?」
「それがどうした?俺は暗黒騎士で、シルヴィアはダークエルフ。そこに半人半狼が
仲間に加わったところで、別に痛くも痒くもねぇよ。」
「むしろ、戦力が増えるという考えですと、とても心強く思いますし、苦楽を共にできる仲間が
増えるということは、とっても嬉しく思います。」
「お前が半人半狼だからっていう理由で馬鹿にするような奴等が現れたら、俺とシルヴィアが守ってやるし
何なら一緒に戦ってやる。だから……仲間になってくれねぇだろうか?」
俺が右手を差し出す前で、ライザは両目の端から大粒の涙を零していた。
「「ライザ!?」」
「ぁ……すまない……嬉しくって……10歳で村を去ってから今日まで1人で……人間と一時的に
共闘したことはあるが、こうして仲間に誘われたのは、本当に初めてで……」
涙を拭い、ライザは俺が差し出していた手を握り返してくれた。
「傭兵稼業は今日で廃業だ。アタシを仲間に誘ってくれたこと、心から感謝する。ユーヤ、シルヴィア
これからよろしく頼む。」ニコッ
「おぅ!よろしくな、ライザ!」
「えぇ。仲良くしましょうね。」
「いやぁ、転移石を探しに来たのに、それ以上の存在を見つけてしまったな。」
「うふふ。そうですね。」
「ん?2人は転移石を探しに来ていたのか。」
「えぇ。ライザはこの岩山のどの辺りにあるか、御存知ですか?」
「それならアタシが持っている。以前、結晶で採掘した後に、当時の自分には使い道が無いと思ってな……
でも、いつか使える日が来るだろうと思って、未使用のまま保管している物がある。
今から取ってくるから、2人はアタシを信じて、此処で待っていてくれ。」
「あぁ。わかった。」
そう言うと、ライザは身軽な動きで岩山を跳び上がって行き……しばらくして、麻袋を持って戻って来た。
「待たせたな。ほら……これが転移石の結晶だ。」
ライザは麻袋から転移石の結晶を取り出し、俺達に見せてくれる。
「まぁ!とっても綺麗ですね!」
「しかも、こんな大きい物……本当に良いのか?貰っても。」
「あぁ。さっきも言ったが、アタシ1人では使い道が無かったからな。それに、ドワーフの連中が
殆ど掘り返してしまったから……今から見つけるのは、難しいだろう。とにかく、これはユーヤに預ける。
有効活用してくれ。」
「わかった。責任をもって与らせてもらうよ。」
ライザから転移石の入った麻袋を受け取り、目的を果たしたので1度、アルガスの町へ戻ることにした。
ただ正直、転移石の入手よりも、新しい仲間ができたことのほうが嬉しかった。
- 拠点製作 ( No.12 )
- 日時: 2024/05/02 21:17
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
ライザを仲間にした後、1度アルガスの場所を転移石に記憶させておこうということで
俺達はアルガスの関所まで戻ってきた。
町の中で位置を記憶させようと思ったが、今後この大陸で拠点とするのなら
少しでも衛兵さんの心証を良くしておこうと思い、関所前のこの位置を記憶させることにした。
「これでアルガスの場所も記憶させることができたし、いつでも此処へ来ることができるな。」
「そうですね。では、主様。この町の冒険者ギルドで、改めて拠点をどうするかの話し合いを……」
「ん?何だ?2人はこの町に、家を買って……そこを拠点としているのではないのか?」
「それもちょっと、考えたんだけど……やっぱり、1から拠点を作ろうと思ってな。」
「拠点を……1から……?ユーヤ……いったい何年かけるつもりだ?」
「いや、場所さえ決めれば……ん~……実行に移す前に、訊いてみるか。」
俺は念を送るように、転生の神様との会話を試みる。
『お久しぶりですね、悠耶くん。そちらでの生活を楽しんでいますか?』
「はい。おかげさまで。実は、今回もちょっと、神様に訊きたいことがあって……」
『おや?何ですか?』
「【 創造 】のスキルで、拠点を1から……土地から作ってみようと考えているんですけど、
この世界の海……領海について確認しておきたくて……」
『なるほど。悠耶くん、安心してください。そちらの世界に、領海というものはありません。
一応、大陸の近海という認識はあるのですが、あくまで近海。
『 ○○大陸の○○という町の近くの浜辺と海 』という認識程度で、
『 そこで海賊行為があったから、○○の国の海軍が、○○の都市の海軍や私掠船が、
海賊討伐に出向く 』……みたいなことは、無いのですよ。』
「そいつぁまた……海賊船に襲われたら、商船や漁船に乗っている船乗り達が、自力で
対応しなければいけないってことか。」
『そういうことです。先程も申しましたが、領海という物はありません……が、
一応、念には念を……悠耶くんが持つ世界地図に、どの大陸からも丁度等しく同じ距離になる場所に
記をつけておきました。海に出るというのでしたら、そこを目指すと良いでしょう。』
「いつも、いつも、ありがとうございます。神様。」
『いえいえ。それでは、引き続き、良き異世界生活を満喫してくださいね。』
神様との会話、終了。
「海に作っても、問題無いみたいだ。」
「そうですか。では、これから海に向かうのですね。」
「ふむ……暗黒騎士のユーヤが、神様と仲良くしていることに関しては……まぁ、ユーヤが
特別なんだと思うことにして……だ。海に出るのであれば、アタシ達が初めて出会った
岩山に向かうと良い。」
「あの岩山にか?」
「あぁ。リザードマンの集落が無人になったと言っただろ?実は、興味本位で中を探索してみたら、
岩山の向こう側に出てしまってな。ちょうどそこが、岩礁だったんだ。」
「まぁ、そうだったのですね。」
「よし!それじゃあ、海に向かう前に……」
俺は【 創造 】のスキルを発動して、1列3人掛けの席を向かい合わせに設けた、ちょっと良い感じの
馬車を出現させた。
「なっ……!?何も無い場所から、いきなり馬車が……」
「ライザに見せるのは、初めてだったもんな。こういうスキルがあるから、拠点を1から作るって
発想が出たんだよ。」
「なるほど……そういうことか……」
「【 Soul of Centaur 】状態の馬の背中に、シルヴィアは乗せたことがあるが……さすがに
2人乗りさせるのは……それに、今後、仲間が増えるかもしれないことを考えて……な。
用意しておくに越したことはないだろう。」
「えぇ。そうですね。」
「それじゃあ……」
俺は馬車の扉を開け、
「よしっ!さぁ、お嬢様方。どうぞ、御乗車ください。」
「うふふ。ありがとうございます、主様。」
「すまない、ユーヤ。魔物が出現したら、遠慮なく言ってくれ。扉を蹴破ってでも、すぐに助ける。」
「あぁ、わかった。」
2人が馬車に乗り込んだのを確認して扉を閉め、手綱を腰辺りで固定する。
「それじゃあ、出発するぞ。」
馬車の中に居る2人の返事が聞こえたのを確認し、俺達はライザと出会った岩山へ向かった。
◇◇◇
数十分後
岩山に到着し、足場が悪くなってきたので馬車を【 アイテムボックス 】に収納し、歩くこと更に数分。
ライザの案内で石舞台の奥にあった洞窟を進んで行き、岩山の反対側……本当に岩礁に出た。
磯の香りが漂い、不定期に波が岩に当たって散っている。
「わぁぁ!これが海なのですね!私、初めて見ました!」
「それで……?ユーヤ。此処に拠点を作るのか?」
「いや。此処から船で海に出て……地図に印が付いている、この場所に作るつもりだ。」
俺は世界地図を開き、転生の神様が印を付けてくれた場所をライザに見せる。
「ふむ……ということは、この先は船で移動か。」
「そういうこと。」
俺は【 創造 】のスキルを発動し、日本昔話でよく見る木製の小舟と櫂を出現させた。
「いや……いやいやいや……ユーヤ。さすがにこれは冗談だろ?これで海を越えるとか……
ふざけているのか?正気の沙汰ではないぞ?」
「大丈夫!大丈夫!きっと、いけるって……たぶん。」
昔話の桃太郎は犬と猿、絵本によっては雉までこういう船に乗せて鬼ヶ島まで行って
鬼を退治した後は宝物まで乗せた状態で本土まで戻ってるんだ。
さすがに宝物と動物を積んでの航行はフィクションかもだけど……
こういう船で海まで漁に出かけていた時代があったんだ。
俺はこの船の可能性を信じる。
「それに、大きな帆船を出したところで、俺達3人だけじゃ、手が回らないだろ?」
「あぁ、確かに。それはそうだな。」
「まぁ、できるだけ安全な航行を心掛けるよ。シルヴィア、行くぞ。」
「え?あっ、はい!」
森育ちで海を初めて見て、テンションが上がっていたシルヴィアを呼ぶ。
「それじゃあ……ほら、お手をどうぞ。お嬢様方。」
「はっ……はい。主様。」
「あぁ、ありがとう。ユーヤ。」
右足で船を固定し、シルヴィアとライザの手を取って小舟に乗せた後
左足で岩を蹴って離岸する。
「あら?」
「ん?どうした?シルヴィア。」
「私も目的地が気になったので、世界地図を見ていたのですが……何やら、地図上に
青い印が浮かび上がってまして……どうやら、今、私達の居る位置を示しているようです。」
「そっか。それなら、迷わずに進めそうだな。」
とりあえず、まずはシルヴィアの案内で大海原を進むことにした。
◇◇◇
数時間後
「大丈夫か?2人共。」
「申し訳ありません……うぅ……これが酔うという感覚なのですね……」
「アタシはまだ、何とか……此処からは、酔ったシルヴィアに代わって、アタシが案内するが……ふむ。
かなり近い所まで来ているようだぞ。」
「そっか。意外とコレでも進めるモンなんだな。よしっ!ライザ。案内を頼む。あと少しっていうなら
このまま一気に目的地まで向かってしまおう。」
「あぁ。任せてくれ。」
数十分後
「…………! ユーヤ、止まれ。此処が目的地のようだ。」
「おっ!そうか。それじゃあ……」
俺は【 創造 】のスキルを発動し、直径2kmの正方形の土の足場を出現させた。
「下は見えないけど、たぶん、ちゃんと海底にまで到達しているはず。」
「…………うん。飛び跳ねてみても、衝撃で揺れたり、沈んだりする様子も無いし、問題無いみたいだ。
ほら、シルヴィア。」
「うぅ……ありがとうございます。ライザ……」
先に上陸したライザが差し出した手を掴んだシルヴィアが上陸したのを確認してから、俺も上陸を果たした。
「さてと……住居を出す前に、もう少し、足場を整えないとな。」
「既にこの足場が大丈夫なことは、ライザが確認してくれましたが……まだ
何かすることがあるのですか?」
「あぁ。とりあえず、土台の素材を土から黒曜石に変える。」
「黒曜石……確か、物凄く硬い鉱石という認識なのだが……ユーヤ。黒曜石に変える意味は?」
「ただ単に俺の趣味っていうのもあるけど……仮にもし、海賊船とかによる砲撃があったりした時、
それなりに耐えてくれるかな……って、思って。あとは、満潮の時に浸水しない高さまで土地を
上げて……」
同じようにして3つの土台を出現させ、縦横直径4kmの土地を作り上げる。
「……で、西側の1kmの土台だけ砂にして、坂道にして……よし。ここからが本題だ。」
俺は【 創造 】のスキルを弄り続け、生前プレイしたゲームのラスボスが居座っていた立派な城を
丁度真ん中になる2kmの処に出現させた。
「まぁ!あれが、これから私達の拠点になるのですね!」
「おぉ……随分と、立派で……ふふっ、アタシ達、闇属性の者が居座って雰囲気の出る、
良い城じゃないか。」
「気に入ってもらえたかな?」
「はい!」
「あぁ!」
「よしっ!じゃあ、細かい調整は城に着いてからにするとして……まずは、あそこに向かおうか。」
俺は小舟を【 アイテムボックス 】にしまうと同時に、馬車を出現させ、2人を乗せた後
【 Soul of Centaur 】を発動して、馬車を引きながら城へと向かった。
***
その日の夜。
城のどこを何の部屋にするかは、明日考えることにして
とりあえず、まずは自分達の部屋を決めることに。
結果……
螺旋階段を上りきった最上階の向かって左側。
その壁に面した3部屋の手前から、ライザ、シルヴィア、俺の部屋となった。
「ふぅ……やっと一息つけるな。」
土地やこの城の細かい微調整や設定は、明日に回すとして……
自室に【 創造 】のスキルで出現させたベッドの上で横になっていると、扉が2回叩かれた後に
開き、シルヴィアが入って来た。
「主様。」
「ん?どうしたんだ?」
「はい。その……夜這いに参りました。」
シルヴィアの発言に、飲みかけた水を吹き出しそうになる。
「えっ!?シ……シルヴィアさん!?」
「まぁ、それよりも先に、お伝えしておかないといけない話があります。」
「わかった。」
シルヴィアが真面目な表情をしているので、変に茶化したりすることはしないで
椅子に座るように促す。
「ありがとうございます。」
「それで?話というのは?」
「主様……以前、アルガスの冒険者ギルドで世界地図を開いた時のことを、覚えてらっしゃいますか?」
「あぁ。確か……王都に、世界地図とかを作る専門の機関があるんだっけ?」
「はい。そして、本日。この世界に、たった1日にして新たな島が誕生した……これがどういう意味か、
主様ならすぐに理解していただけますよね?」
「新たな地図が発行されたら、此処を目指して来る冒険者共が現れるかもしれないってことだな?」
「その通りです。まぁ……地図の発行には時間が掛かるでしょうし、そもそも土地の大きさ的に
地図に載るかどうかすら怪しいです。
さらに、この土地が乗った地図が発行されたとして、どの大陸からもそれなりに距離が
離れていますので、今すぐに冒険者達がこの地に上陸することはありませんが……
念のため、意識しておいてくださいと伝えておきたかったのです。」
「そうだな。うん……意識しておくよ。忠言、ありがとうな。シルヴィア。」
「はい!……では、主様。真面目な話も終わりましたし、夜這いの続きと参りましょうか。」
「……え?」
立ち上がったシルヴィアが、ベッドに腰掛けていた俺の傍まで歩いて来て
そっと俺を押し倒すと、俺の上に覆い被さってくる。
「主様……」
「いやいや!夜這いは、真面目な話をするための口実なんじゃ……」
「いえ?私は本気ですよ。」
シルヴィアの本気の眼差しに、嬉しいと感じてしまう。
「……美人なシルヴィアに迫られて、正直ドキドキしてる……このまま襲われてしまうのは、簡単だよ。
けど、まだちょっと早いんじゃねぇかな?いずれはまぁ、シルヴィアをちゃんと受け入れるつもりでは
いるけどさ。」
「うふふ。嬉しいです。では……何も問題ありませんね?想い合う男女がすることは1つ……
種族の壁だって、簡単に乗り越えられますよ。」
「そう……だな。ここまで言われて、シルヴィアのお誘いを断ることはしないけど……最後に
これだけは言わせてくれ。」
「はい。何でしょう?」
「あっちの世界で生きて、死んで……この世界に転生してから今日まで、その……そういうことを
したことが無かったからさ。初めてでぎこちない思いをさせてしまうかもしれない。下手糞でも、
笑わないでもらえると……助かります。」
「それなら私だって……主様が初めての相手です。満足してもらえないかもしれませんが……
許していただけますか?」
「もちろん。それじゃあ……おいで、シルヴィア。」
「はいっ!」
新たにできた拠点で、1夜をシルヴィアと共に過ごした。
1つ奥の部屋ではライザも休んでいるんだけど……まぁいいか。
それにしても……シルヴィア、声、大きいな。
明日、『 拠点の全部屋、防音 』の設定は付与しておこうと思う。
- 荒廃した村 ( No.13 )
- 日時: 2024/05/02 21:18
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
拠点1階・軍議の間
玄関から入り、向かって左側の壁の1番手前、仲間同士の話し合いをするために設けられた部屋。
テーブルと木製の椅子を4脚を部屋の真ん中に配置し、グレンさんから貰った地図を保管している。
「……昨夜はお楽しみだったようだな。」
俺の前に座っているライザが話しかけてきた。
「…………やっぱり、気付いてましたか。」
「ユーヤの声は聞こえなかったが、シルヴィアの声が……な。おかげで、ちゃんと眠れなかったんだが……
どうしてくれるんだ?」
「それは俺に言われても……とりあえず、『 この拠点全ヶ所、防音強化 』の設定を追加しておいたから。」
「へぇ、そんなこともできるのだな。」
「ついでに、掃除をするのも面倒だから、皆寝ているであろう『 午前4時に、拠点全土自動清掃 』の
設定も追加しておこう。」
2つの設定を自分達の居る、土地を含めた拠点全土に登録して、一息吐き……
「……で?どうしたんだ?ライザ。組手の申し出か?」
「ふむ……それも良いな。けど、今回は違う。少し、お前に頼みたいことがあってな。
作業が終わるのを待っていたんだ。」
「俺に頼み事?」
「あぁ。ユーヤ。アタシと一緒にエギスの村に来て欲しいんだ。」
「エギスって確か……お前が以前住んでいた村だっけ?」
「ふふ……ちゃんと覚えていたんだな。感心、感心。あれから6年……あの村がどうなっているかなど
興味はないが、育て親の老夫婦が埋葬されているのか……それだけを確認しに行きたいんだ。
もちろん、あの時のまま放置されて、骨は雨風に晒され、あそこには既に無い可能性だって
充分考えられる。それでも念のため……な。」
「わかった。帰りは転移石を使えば良いから、行きだけアルガスの町から【 Soul of Centaur 】を使って
サクッと移動しよう。」
「ありがとう。ユーヤ。」
「あら?2人共、こちらに居らしたのですね。」
この軍議の間の隣に設けた図書室から、【 創造 】のスキルで出した、俺が生前読んでいた
漫画や小説を数冊持ったシルヴィアが扉を開けて入ってきた。
「シルヴィア。いきなりで申し訳ないんだけど、ちょっとエギスの村まで出かけることになった。」
「エギスというと……ライザが育った村でしたね。」
「あぁ。少し……個人的な用事でな。ユーヤに護衛をお願いしたんだ。」
「そうでしたか。えっと……」
シルヴィアは机の上に本を置き、保管していたヴェルスティア大陸の地図を手に取ると、
残りのスペースに地図を広げる。
「エギス……エギス……あぁ、ありました。以前、ライザが言っていたように、かなり
北方にあるみたいですね。」
そう言いながら、シルヴィアは地図の上の方に描かれているエギスの村の場所を指差す。
「出発地点をアルガスとして、人の住む町などを迂回してエギスへと行く道ですと……主様の
【 Soul of Centaur 】を使用されても、1日は費やすと思います。」
「なるほど。シルヴィアに聞いておいて良かった。食べ物や飲み物は【 創造 】のスキルで出せるから
あんまり気にしてなかったけど、どれくらい時間が掛かるかを知っておきたかったからな。」
「シルヴィアも一緒に来てくれるか?」
「私もですか?そうですね……いえ、今回は此処に残ります。主様の世界の書物も読みたいですし……
それに、主様にはお話しましたが、来訪者がいつ来るか判りません。そして、その者達が敵意を
持って接してきた場合、此処を防衛せねばなりませんから。」
「なるほど……その話の後で、ユーヤとよろしくやったのか。」
ライザのその言葉を聞き、シルヴィアの顔が一瞬で真っ赤になった。
「わかった。それじゃあ、留守は頼んだぞ、シルヴィア。用事が終わったら、転移石ですぐ戻る。」
「はい!お任せください!」
俺とライザは転移石を使い、アルガスの町前へと向かった。
◇◇◇
シルヴィアの予想通り、1日ではエギスの村に到着しなかったので、俺とライザは見通しの良い平原で
キャンプすることになった。
「あっ、そうだ。ライザ。」
「ん?何だ?」
「大したことじゃねぇんだけどな、ステータスを見せてくれないかなって。」
「そんなことか。もちろん、構わないぞ。」
そう言ってライザはステータス画面を表示してくれた。
【 ライザ 】 Lv・52
種族・半人半狼【 亜人種 】
年齢・16歳
性別・女性
身長・165cm
3Size・B 88 / W 58 / H 87
クラス・アサシン
Range・前衛
職種・傭兵
移動ユニット・【 歩 】
属性・闇
【 使用武器 】
-
【 ステータス 】
HP・147500
MP・66000
【 STR 】・144500
【 VIT 】・138200
【 INT 】・129000
【 MND 】・135000
【 DEX 】・800
【 AGI 】・47800
<< 適正 >>
【 歩兵 】 SS+ 【 騎兵 】 D 【 弓兵 】 D 【 海兵 】 A 【 空軍 】 F
【 魔導師 】 D 【 工作兵 】 C 【 商才 】D 【 間諜 】 SS+ 【 軍師 】 A
【 築城 】 F 【 統率力 】 S+
【 剣術 】SS+ 【 短剣術 】B 【 槍術 】D 【 弓術 】D 【 格闘術 】SS+
【 銃撃 】G 【 投擲 】S+ 【 魔術 】A+ 【 召喚術 】G 【 防衛術 】S+
【 生産職 】E 【 罠工作 】D 【 機械操作 】G 【 交渉術 】B+
【 推理力 】A+ 【 軍略 】A+
<< スキル >>
〇 闇に染まりし者 『 パッシブスキル 』
属性:闇
消費MP:-
*自分が使用する属性・【 闇 】の攻撃スキルの威力が3倍になる。
*【 荒野 】【 廃墟 】【 墓地 】での戦闘で、自分の【 STR 】【 VIT 】【 AGI 】の値を
戦闘終了時まで5倍にする。
*職種・【 聖騎士 】【 白魔導士 】【 聖職者 】の敵と対峙したとき、自分の【 STR 】【 VIT 】の値を
戦闘終了時まで5倍にする。
*属性・【 光 】の敵と対峙したとき、自分の【 STR 】【 VIT 】の値を戦闘終了時まで
5倍にする。
〇 静かなる奇襲『 パッシブスキル 』
属性:闇
消費MP:-
*移動中、【 隠密状態 】が発動し、敵から完全に視認されず、攻撃の対象にならなくなる。
立ち止まって5秒経過してから、ようやく視認されるようになる。
*1対1の戦闘時、自分の【 STR 】の値を戦闘終了時まで5倍にする。
*『 潜入任務 』『 討伐戦 』『 侵攻戦 』『 攻城戦 』に参加した時、戦闘終了時まで
自分の【 STR 】【 VIT 】【 AGI 】の値を5倍にする。
〇 神をも処す魔狼の血統『 パッシブスキル 』
属性:闇
消費MP:-
*自分が使用する属性・【 氷 】【 闇 】の攻撃スキルの威力が3倍になる。
*1対多数の戦闘時、自分の【 STR 】【 VIT 】の値を戦闘終了時まで5倍にする。
*種族・【 人間 】【 妖精 】【 天使 】の敵と対峙した時、自分の【 STR 】【 VIT 】【 AGI 】の値を
戦闘終了時まで5倍にする。
*職種・【 勇者 】【 聖騎士 】【 白魔導士 】【 聖職者 】の敵と対峙したとき
自分の【 STG 】【 VIT 】の値を戦闘終了時まで5倍にする。
*属性・【 光 】の敵と対峙した時、自分の【 STR 】【 VIT 】の値を戦闘終了時まで5倍にする。
*『 討伐戦 』『 侵攻戦 』『 攻城戦 』に参加した時、戦闘終了時まで
自分の【 STR 】【 VIT 】【 AGI 】の値を5倍にする。
〇 Phantom Fang 『 魔法攻撃スキル 』
属性:闇
消費MP:5
攻撃威力:狼1匹 = 3000
攻撃範囲:B
移動距離:G ~ SS++
*紫黒の闇で作られた狼を5匹召喚し、対象の敵へ向けて攻撃する。
*召喚された狼は直進したり、蛇行しながら対象の敵に当たるまで追いかけ続け続ける。
*敵にダメージを与えた後、召喚した狼は霧散する。
*1分のクールタイムの後、再び使用することができる。
〇 Celsius calibur 『 魔法攻撃スキル 』
属性:氷
消費MP:2
攻撃威力:6500
攻撃範囲:A
*空気中の水分を集めて冷やし固め、氷の片手剣を作り出した後、左右から1回ずつ斬りつけ、
斬りつける段階で先端が砕けた氷の剣を対象の身体に正面から突き刺し、冷気でくっついている
剣の柄の部分めがけて、更に追い討ちで渾身の蹴りを繰り出して、対象大きく吹っ飛ばす。
*この攻撃を受けてHPが0にならなかった敵に、状態異常・【 凍結 】を付与する。
*最後に敵の身体、または装備品に冷気でくっつける氷の剣は対象によって場所が変わり
大型の種族・【 機械 】【 モンスター 】【 ドラゴン 】【 悪魔 】の頭か背中に突き刺した場合
最後の蹴りは大きく跳躍してからの踵落としに変化する場合がある。
「おぉ!強いスキルが多いな。」
移動中に敵から視認されなくなるのは、純粋に強いよな。
「これから先、いろいろと頼りにさせてもらうぜ、ライザ。」
「ふふっ……あぁ。任せておけ。」
◇◇◇
夜が明けてからまた移動して、俺達はエギスの村に到着した。
「こ……こいつは……閑散とした……いや、既に廃村と言っても過言ではないかと……」
建物はどれもボロボロ、雑草もこれでもか!というほど伸びきっていて、畑らしき物や何かを
飼育していたのであろう柵は見えるものの、農作物や動物の姿は見当たらない。
この村に住んでいる人達は、一体何で生計を立てているのだろう?
「…………」
「ライザ?」
静かに歩きだすライザに着いて行くと、とある焼け崩れた廃材の前で足を止めた。
「…………此処が、ライザのお家があった場所なのか?」
「あぁ……丁度、此処が玄関で……あの2人は、此処に倒れていたんだ。」
そう言いながらライザはしゃがみ込み、カサカサの罅割れた地面をそっと撫でた。
「ん?なっ!?おまっ、お前!!」
今にも崩れそうな家から出てきた小太りした中年の男性が俺……いや、ライザに気付き、
勢いをつけて詰め寄って来た。
「お前のせいだ!!お前がこの村に来たせいで、何もかもがメチャクチャになったんだ!」
「おっと!おっさん。それ以上、俺の大事な仲間に近づかねぇでもらおうか。」
俺はツヴァイハンダーの剣先を男性の喉元に突き付ける。
「ひぃっ!!おっ……お前!そいつを仲間にしただと!?正気か!?そいつは災いしか呼ばないんだぞ!
一緒に居るお前だって、この先どうなるか……」
「あぁ?何をもって、ライザが災いを呼ぶなんていう、ふざけたことを言ってやがるんだ?」
「だっ、だって……そいつが村に来た時から、急に作物が育たなくなって……そのせいで、
家畜にやる餌だって……!」
「はぁ?それって、お前達が畑仕事をサボったか、この土地に合わねぇ作物を育てようとした
結果じゃねぇのか?」
「なっ!?悪いのは我々だと言うのか!?」
「過去に起きた不作の原因なんざ、資料も無さそうなこの状況で、今から判るワケねぇだろ。
それでその全ての原因をライザ1人のせいにするなって言ってんだよっ!!他の原因が
あるかもしれない、自分達に不足があったかもしれねぇって、何で考えられねぇんだっ!!」
「ユーヤ……」
ライザはスッと立ち上がり、俺の隣、男性の前まで歩いて来た。
「ひぃっ!?くっ……来るな……」
「アタシがお前等この村の者に訊きたい事はたった1つだけ……代表してお前が答えろ。」
「な……何だ?」
「お前等が殺した、アタシの育ての親である老夫婦の墓はどこにある?」
「はぁ?そんなモン、無いに決まってるだろ。ずっとお前を匿っていた愚か者共だぞ!
村八分になっても当然……誰も墓を建てようなどと思わんかったよ!ただ、ずっと村に死体を
放置しておくわけにはいかんから、そこの森に捨ててやったわ!」
そう言いながら男性は震える手で、俺達の背後に広がっている森を指差す。
「こいつ……!」
「そうか……」
ライザは少し体を捻ると、男性の腹部に渾身の回し蹴りを叩きつけた。
「ぐっ……ごぼぉあぁあぁああぁあああっ!!」
ライザの蹴りを受けた男性が、扉が既に壊れて無くなった今にも崩れそうな家の中まで吹っ飛んだ。
漫画などの作品で、ドンガラガッシャーン!と擬音で表記されそうな音が、男性が吹っ飛んだ
家の中から聞こえてきた。
「……命を奪わないよう、手加減してやったことを、ありがたく思え。」
「慈悲なんてかける必要は無さそうに思ったけどな……どうする?ライザ。この村を地図上から
消すっていうのなら、幾らでも力を貸すぜ。」
「……いや、この村に住む全員が全員、あんな屑とは限らない……と、思いたい。新たに産まれた
子ども達には何の罪も無いだろうからな。それに……アタシ達が手を下さずとも、この村はもう
駄目だろう。」
「……そうだな。ここから再度復興・発展させるのは……とても有能な統治者が来たとしても、
かなり難しいだろう。」
「ユーヤ。我儘ばかり言ってすまないのだが……一緒に森まで来てくれないだろうか?
骨を見つけられないだろうということは、重々承知している。ただ……そこの森の何処に居るかは
判らないが、せめて祈りだけでも捧げてやりたいんだ。」
「そんな……それくらいのこと、我儘のうちに入らねぇよ、ライザ。お前の気が済むまで、
どこへだって付き合ってやるよ。」
「ユーヤ……ありがとう。」
ライザを先頭に俺達は森へ足を踏み入れ、歩を進めている途中で、立派な大樹の前に出た。
他の場所は荒地だったり、腰の位置まで草が生い茂っていたりするが、
この大樹の周囲だけ、誰かが手入れしているのかと思うくらい短い草が生え揃っていて、綺麗な花も
沢山咲いている。
「此処で良いか……骨なんて、とっくに風化してしまっているだろう。すまない……願わくば、
どうか2人の魂が、天国で安らかに過ごしてくれていることを……」
「ライザ……ん?」
地面に片膝を着いて祈りを捧げるライザを包むように淡い光が舞い上がる。
「これは……」
「此処は……そうか、思い出した。この樹は……」
***
8年前
「良いか、ライザ。この森のこの樹は、あの村を守ってくれておる御神木じゃからな。絶対に
傷つけてはならんぞ。」
「ん……わかった。」
「うむ。それにな……この樹には不思議な力が宿っておるようでな。周辺の草木や獣や鳥、
儂等のような者達から、ほんの極僅かな、日常生活に支障をきたさん程度の魔力を一定の周期で
吸い続けていてな……ある一定の量まで、その魔力が貯まった時……この樹を訪れた物が、
1番会いたい者の姿を映し出すんだそうじゃ。」
「……父さん。何言ってんのか、難しくて解んない。」
「はっはっは!今のライザには、まだちょっと難しかったか。まぁ、いつかお前にも解る時が
くるじゃろうて。もっとも……その奇跡に巡り合えるかどうかまでは、判らんがな。」
***
「これが……父さんが言っていた奇跡……」
舞い上がった光はライザの前で集まると、薄っすらと年老いた男女を映し出す。
『ん?おやおや、婆さん。誰かと思ったら、儂等の可愛い娘が来てくれたみたいだぞ。』
『えぇ、えぇ。大きくなったわねぇ、ライザ。』
「父さん……!母さん……!」
勢い良く立ち上がろうとして、前のめりに倒れたライザに、お爺さんが優しく手を伸ばす。
『ほっほっほ!儂等の愛娘は慌てんぼうじゃのぅ。』
「父さん……母さん……迷惑かけて、ごめんなさい!ぐすっ……アタシ……アタシ……!」
『大丈夫ですよ、ライザ。私達は迷惑だなんて、これっぽっちも思っていませんよ。』
『まったくじゃ!子宝に恵まれんかった儂等が偶然、あの廃れた教会でお前を見つけた時は、
どれほど神様に感謝したことか。』
そう言いなら2人は泣きじゃくるライザの頭を、優しく撫でる。
『ありがとうねぇ。私達の所へ来てくれて。』
『こうしてまたお前に会えるまで待ってくださった神様には改めて感謝せんといかんなぁ。
本当に……無事に生きていてくれて良かった。』
「うん……!うん……!」
ライザを撫でている2人の視線が俺とシルヴィアへ向けられる。
『あんたは、ライザのお友達だね?儂等はもう、行かねばならんのでな。どうか、娘のことを
よろしくお願いします。』
「はい。大まかな話は彼女から聞きました。もう、絶対にライザを1人にさせないよう!あなた方の
大事な娘さんは、俺が責任を持ってお預かりさせていただきます。」
「ユーヤ……」
『えぇ、えぇ。よろしくお願いしますね。』
老夫婦は優しく微笑むと、スッ……とライザから離れていく。
「父さん!母さん!……10年間、アタシを育ててくれてありがとうございましたっ!アタシも!
2人に会えて、一緒に過ごせて幸せでしたっ!」
大粒の涙を流し、張り裂けんばかりの声で感謝の言葉を述べたライザを優しく見つめながら、
老夫婦を映していた光は掻き消えた。
そのまま張り裂けんばかりに声を上げて泣き続けるライザの傍へ歩いていくと
ライザは俺に飛びつき、胸に顔を擦り付けて泣き続けるので、俺は彼女が泣き止むまで頭を撫で続けた。
~ 数分後 ~
「…………みっともないところを、見せてしまったな。」
満足するまで泣いたのだろう。
少し落ち着きを取り戻したライザが、恥ずかしそうにそっぽを向いて呟く。
「何言ってんだよ。泣きたい時に泣けるんだったら、満足するまで泣けばいいんだよ。
我慢する必要なんて何1つ無いんだから。苦楽を共にしてこその仲間だろ。」
「ユーヤ……本当にありがとう。」
「もう、思い残すことは無いか?」
「あぁ。あの2人に会えて……伝えたかったことを伝えられた。もう、此処でやることは……
思い残すことは、何も無い。」
「わかった。それじゃ、帰ろうか。」
「あぁ!」
俺の呼びかけにライザが力強く頷き、そのまま転移石を使って拠点へと帰還した。
- 温かい福利厚生 ( No.14 )
- 日時: 2024/05/02 21:19
- 名前: 柔時雨 (ID: ..71WWcf)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13011
拠点1階・軍議の間。
「大まかな設定は殆どやった……つもりだ。後は、破壊された時のことを考えて
『 拠点全土、午前4時に自動修復 』と……『 この城を中心に、全包囲1km圏内の様子を
好きな時に観れる 』ようにして……」
「失礼します。主様。」
扉を2回叩いた後、扉を開けてシルヴィアとライザが入って来た。
「あっ、作業中でしたか。」
「いや、大丈夫。たった今、終わったところだから。」
「先日、エギスに行く前もしていただろう?あの時、まだ終わっていなかったのか?」
「終わらせたつもりだったんだけど、後から後から追加したいことが思いついてな……
基本的には拠点全土に関することだったけど、そろそろ……この城の内装に関して、本格的に
着手するのも有りだな。螺旋階段を上りきった最上階は俺達の部屋にするから、
そのままにしておいて……とりあえず、1階の部屋を色々変えていきたいな。」
現状、この軍議の間と、隣の図書室しか無いからな。
「そう申されますが、特に客人を招くことなどありませんし……仮にそういう機会が訪れたとしましても、
この部屋を使用すれば良いですから、変える処というと……」
「魔物を討伐した後は、ユーヤの【 アイテムボックス 】に保管しておくことができるから、
品質保持に関しては特に問題も無いし……あっ、金品はユーヤの部屋に保管しておいた方が
良いぞ。仮に賊などに狙われるようなことになったとしても、この城の最上階の1番奥の
部屋だからな。到達するまでに、僅かばかりだが時間稼ぎができる。」
「なるほど、確かに。それじゃあ、金品は後で金庫でも出して、そこに保管しておくよ。他は……」
俺はウィンドを操作して、この拠点の見取り図を表示する。
「正面の螺旋階段から見て、左側が今俺達が居るこの部屋……よし、じゃあ、右側のこの2つの
部屋を引っ付けて、1つの部屋にしよう。」
「ふむ……1つの部屋でこの広さなのだろう?それを1つにするとなると、かなり広い空間になるが……」
「主様、この部屋をどうなさるおつもりですか?」
「それは後で、この部屋に行った時に調整するよ。その前に……この拠点を取り囲むように城壁を
出現させておこう。」
この建物から全方位に300mの余裕を持たせて、取り囲むように黒曜石造りの城壁を展開。
同時に、外の様子を見れる範囲が、出現した壁から全方位1km圏内に広がった。
この拠点の玄関から壁までを、煉瓦で直線の道を敷き、出入り口となる壁の1部を鉄製の門に変える。
「そして、この壁と門に、拠点と土地と同じように『 破壊不可 』の設定を付与して……これでよし。
さてと!それじゃ、俺はさっき1つにした部屋に、色々備品を置いてくるよ。
今回は、俺が良いって言うまで、見に来たら駄目だからな。」
「む?アタシ達に内緒で何をするつもりだ?」
「うふふ。そう言われると、見に行きたくなりますね。」
「残念ながら、今回ばかりは駄目です。本当にすぐだから、待っててくれ。」
「わかりました。」
「あぁ、わかった。」
俺の呼びかけに首を縦に振って承知してくれた2人を長く待たせておくわけにもいかないので、
俺はすぐさま統合した部屋に向かう。
「よし……さっさとやってしまうか。」
【 創造 】のスキルで巨大な曇り硝子の壁を出現させて部屋を前後に分け、曇りガラスの壁に
引き戸を設置する。
「……うん、ちゃんと中に入れるな。それじゃあ……」
引き戸から入った内側の床を、全面タイルに変更させ、この部屋の半分くらいを使用した浴槽と
部屋の左右に3ヶ所……計6ヶ所、洗い場を設置する。
「此処にお湯を張って……そうだな、脱衣所も含めて、此処も『 午前4時に自動清掃 』と
『 使用直前に自動でお湯張り 』するようにして、あとは……」
その後……最後に、脱衣所に箪笥や籠を用意し終えたので、先程の大広間に居る2人を呼びに行く。
「待たせたな、2人共。」
「主様。もう、部屋の装飾が終わったのですね。」
「本当に、それほど時間がかからなかったんだな。」
「あぁ。もう、使用できるようにもしておいたぞ。」
「「使用?」」
とりあえず、2人を部屋へ案内して、中を見てもらうことにする。
「これは……箪笥に……鏡ですか?」
「此処より、メインはこっちかな。」
俺は引き戸を開けて、浴室を見せる。
「おぉおっ!広いお風呂!」
「シルヴィアと約束してたからな。『 拠点にお風呂が欲しい 』って。」
「覚えていてくださったのですね!主様!」
「当たり前だろ。それじゃ、俺は軍議の間で本を読んでるから、2人で楽しむと良いよ。」
「え?何を言っているのですか?一緒に入りましょうよ。主様。」
「えっ!?いやいやいや!仮に……仮にだぞ!?まぁ、シルヴィアは良いとしてもだ。
ライザはどうすんだよ!?ついこの間出会ったばかりの野郎と一緒なんて……なぁ?」
「ん?アタシも構わないぞ。世間には裸の付き合いというものがあるらしいからな。他の野郎共なら
ともかく、ユーヤとなら全然構わないぞ。」
「マジか…………ん~……じゃあ、2人が良いって言ってくれるなら……お言葉に甘えさせて
もらおうかな。」
「はいっ!一緒に入りましょう、主様。」
「ふふっ、仲間と一緒にお風呂か……楽しみだな。」
その後、躊躇うことなく服を脱いだ俺達は、浴室へと足を踏み入れる。
……正直、2人共、タオルで隠すかな……と思ってたんだけど、そんなことはなく
2人共文字通り一糸纏わない姿で、堂々とした姿のまま浴室へ足を踏み入れていた。
おかげで……と言っては何だが、2人の豊満な胸から、髪の毛と同色の下の毛まで全て視認できた。
此処で俺だけ隠すのも変なので、男らしく堂々と2人の後に続くように浴室へ入る。
「ほぅ……ユーヤは、ツヴァイハンダー以外にも、立派な長柄武器を足の間に隠し持っていたのだな。」
「長柄武器って……それより2人共、浴槽へ入る前に身体を洗えよ。」
「えぇ、承知致しております。」
「ん?なぁ、ユーヤ。この紐みたいな……これは何だ?」
「ん?紐?……あぁ、シャワーのことか。これは、この突起を捻ると……ほら、先端からお湯が
出るんだよ。」
「おぉ!凄いな!こんな魔道具、初めて見た!」
「本当に!シャワーでしたか?これがあれば、髪を洗うのも、身体を流すのも便利ですね。」
「下に付いてる筒……蛇口っていうんだけどな。これも同じようにお湯が出る。シャワーか蛇口かは、
この突起に描かれている絵を頼りに捻ってもらえれば、切り替えられるよ。」
「ふむふむ。ユーヤ、この赤色と青色のは?」
「それは赤い方を押すとお湯が、青い方を押すと水が出るように切り替わるんだ。お湯が熱いと
感じた時に、水を足して好みの温度にするための物だよ。」
「なるほど……これは、主様が居た世界では当然の浴室なのですか?」
「あぁ。正直、設置したこれがどういう仕組みで稼働してんのかは判らないけど、この蛇口と
シャワーが1つになっているこれは、俺の居た世界の風呂屋では、基本的な装備だったな。」
「ユーヤの居た世界は凄いな!ん?この筒は何だ?3つあるが……」
「そいつは左からボディソープ……まぁ、早い話が液体の石鹸だな。それが体を洗うための石鹸、
真ん中がシャンプーっていう髪を洗う用の石鹸、1番右がリンスっていう……髪質を整えるための
石鹸?で良いのかな?俺はこのリンスをあんまり使わないから、ちょっと曖昧な説明でゴメンな。」
「いえ。充分な説明です。では、早速……まぁ!このボディソープという石鹸、凄いです!こんなに
泡立つなんて!」
「凄い!今日、この浴室の中だけで、驚かされてばかりだ。」
2人が思い思いに身体を洗う隣で、俺も身体と頭を洗い、シャワーで流す。
「……あの、主様。」
「ん?何だ?」
「あの壁の扉は一体……?何処に繋がっているのですか?」
「行ってみるか?」
身体を洗い終えた2人を連れて、脱衣所へと続く扉とは違う、浴室内の引き戸の処まで行き、
扉を開けて外へ出る。
「まぁ!お外にも風呂が!」
「露天風呂って言ってな、外の景色を見ながら入る風呂なんだけど……悪いな、壁で囲っちまったから
景観が……でもまぁ、海を行く船から見られることを考えてな……2人の裸を他の野郎共には、
絶対見せたくないし。」
「ふふっ、構わない。夜なら、星を見ながら利用できるしな。」
「私達のためを思っての配慮ですもの……ありがとうございます、主様。」
とりあえず俺を真ん中に、左側にシルヴィアが、右側にライザが、俺を挟み込むように露天風呂の
湯船に浸かる。
「あぁぁ……大きいお風呂は良いなぁ……」
「あぁ。作って正解だったな。」
「ユーヤ……泳いでも構わないか?」
「お~……1人の時ならなぁ……」
「うふふ。やっと主様と一緒にお風呂に入れましたね。」
「以前、アルガスの風呂屋を利用した時は別々だったもんな……」
「お湯の温もりと、主様の温もりを同時に感じられて……とっても幸せです。」
そう言いながら、シルヴィアがピッタリと寄り添って、腕を組んで胸を押し当ててくる。
「しっ、シルヴィア!?」
「む……アタシだって。」
反対側から、負けじとライザもピッタリと寄り添って、腕を組んで胸を押し当ててきた。
「ライザ!?」
「ふむ……確かに、ユーヤの温もりを感じられる……ふふっ、これは良いな。」
「あらあら。うふふ……これは、私達を侍らせている主様に、是非とも一言いただきたいですね。」
「そうだな。アタシ達の御主人として、何か気の利いた一言でも聞かせてもらいたいものだな。」
「無茶振りすぎる。でも、まぁ……その……ありがとうございます。」
◇◇◇
風呂上り
脱衣所である程度の衣服を着た後
「シルヴィア、ほら。」
「え?あっ!ありがとうございます!」
俺は【 創造 】のスキルで出現させたフルーツ牛乳を手渡す。
「ん?2人共、それは何だ?」
「フルーツ牛乳という主様の居た世界の飲み物です。とっても甘くて美味しいんですよ。」
「ほら。ライザも飲んでみな。」
「あぁ。いただこう。」
俺からフルーツ牛乳を受け取ったライザが、一口……ゴクッと喉を鳴らして飲み込んだ。
「……っ!?なっ……何だ、これは!?とっても甘くて、美味しい!神の世界の飲み物か!?」
「俺の居た世界の飲み物だっつってんだろ。けど、この世界には無い物だもんな。そう思うのも
無理はないか。」
「あのシャワーといい、このフルーツ牛乳という飲み物といい……ユーヤの居た世界は、
素晴らしかったんだな。これだけでも、お前の仲間になって良かったと心から思うよ。」
「安上りすぎるだろ!でもまぁ、2人には快適に過ごしてもらいたいからな。風呂以外にも
要望があれば、随時言ってくれ。俺のスキルで何とかなりそうなら、できる範囲で何とかするから。」
「えぇ。ありがとうございます、主様。」
「ふふっ、その時は遠慮せずに頼らせてもらおう。」
◇◇◇
22時
拠点最上階・自室
ベッドの上で本を読んでいると、俺の部屋の扉が2回叩かれた。
「主様、シルヴィアです。今、御時間宜しいでしょうか?」
「シルヴィア?あぁ。入ってくれていいぞ。」
扉を開けて、シルヴィアが入って来る。
今回は普段着なので、夜這いではなさそうだ。
「失礼します。主様、ライザのことで御話が。」
「ん?どうした?先日のエギスの件や、今日一緒に行動してみた感じ、特に問題は無さそうだったぞ?」
「はい。そういう話では無くてですね。えっと……仮に、仮にですよ?今はまだそういう兆しは
見受けられませんが、今後、ライザが私と同じように、主様に対して想いを伝えてきたとき、
その想いを受け入れてあげて欲しいのです。」
「えっ!?えっと……良いのかな?俺が住んでいた国だと、基本的に1人の男性に対して1人の女性と
恋仲になって、結婚して生涯を添い遂げるんだ。逆もまた然りで……複数の女性、または男性と
恋仲になれば、それは浮気ってことになって、結婚してからこの浮気が発覚すると、
不貞行為をした側に慰謝料っていう罰金が科せられるんだ。」
「まぁ!主様の居た世界は、ずいぶんと厳しいのですね。」
「世界っていうか……国かな。ヴェルスティア大陸みたいな感じの。世界全体で見れば、
複数人の伴侶を侍らせても許される国もあったはず……この世界には、そういう法律は無いのか?」
「ヴェレスティア大陸には無かったように思いますが……主様。この土地、この拠点は、
どこの大陸にも属さない、主様が1から作られた土地です。つまり、他の大陸の法律が
適応されることはありません。」
「あぁ、そっか。」
「ですので、主様が『 この土地は一夫多妻制 』という法を定められれば、それが適応されるのですよ。」
「!」
シルヴィアの提案に、俺の中のスケベ心が跳ね上がる。
「そっか……まぁ、仮にその制度を俺が定めたとしても、最終的には本人の意思に任せるけどな。
強引に、相手の意見を無視して……ってのは、ちょっと性に合わない。」
「お優しいのですね、主様。そういうわけですので、いつかその時が来たら、私とライザ……そして
今後仲間になった女の子達を等しく愛してくださいね?」
「ははっ、新しく仲間にする子も、女の子限定なのかよ……あぁ。シルヴィアが許してくれるのなら、
いつかもし、本当にそういう時が来たら、ちゃんと皆の想いを受け止めるよ。」
「はい!うふふ。それでこそ、私が心から永遠の忠誠を誓った主様です。お話ししたかったことは
以上です。本日は、このまま自室に戻らせていただきますね。お休みなさい、主様。」
「あぁ、お休み。シルヴィア。」
小さく頭を下げてお辞儀をしたシルヴィアが退室していった。
「そっか……じゃあ、この土地最初の法律は、一夫多妻制にするか……」
今後どうなるかは判らないけど、少なくとも、今、既に仲間になってくれている2人は
絶対に大切にしたい。
俺にできることがあるなら、何とかしてやりたいと改めて思った。