ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!?
日時: 2023/04/02 16:04
名前: 天麩羅 (ID: OHC2KpRN)

1話目〜25話目>>1-25部分を改稿しました
内容事態に大きな変更は無いので、読者様が再度お読み頂く必要は特にありません
新しい話は当分先になると思います

内容は概ねタイトル通りです
一応タイトル回収は出来たので、あとは魔女先輩が後輩君を甦らせたくてアレコレしながら異世界を旅する話になると思います

飽きっぽい作者はファジーの方でもう一作品掲載させて頂いております
なので、どちらかの更新、若しくは両方の更新が無い時は書き溜めに忙しくしているか、何か別の理由で筆が進まなくなっているとお考え下さい

あと、名前変えました(天麩羅→htk)
途中、打ち間違いでhtkのつもりがhtsになっていますが気にしないで下さい

12、13話についての補足ですが、途中出てくるモノクルの数値は適当です
後で変更する可能性が大いにありますので、気にせず読み飛ばしちゃって下さい

タイトル回収出来たので、ひとまずは一区切りとなります
作者はそろそろ他の小説を書きたくなってきたので、暫く更新は止まるかもしれません
また魔女先輩とその友人達を書きたい欲が湧いてきたら、いずれ書きます
何となく打ち切りっぽい終わり方ですが、今後この作品がどうなるかは作者にも分かりません

※ベリー様に当作の略称を付けて頂きました
『魔女甦』←まじょよみ、と読みます



以下、主要キャラ〜〜

・真島リン
魔女先輩。異世界の記憶を前世に持つ自称大魔女だが、その記憶は朧気。
決して厨二病では無い。

・天ヶ嶺開人
後輩君でリンの想い人。互いに想いを寄せる相手、リン先輩の目の前で……?
たぶん厨二病では無い。

・鳥居ひよ子
リンの親友にしてオヤジ女子。リン達を異世界へ見送り、研究者を目指す。
厨二病を超えたナニカ……?

・迦具土テツヲ
眼帯ヤンキーでひよ子とは幼馴染み。あらゆるオタク道を邁進する猛者。
厨二病と呼んではいけない。

・前垣沙梨亜
後輩女子。現代に続く祓魔衆の家筋出身だが、テツヲに想いを寄せている?
厨二病を恥とも思わないつもり。



以下、目次〜〜

1話目〜6話目、プロローグ〜序幕>>1-6
7話目〜15話目、1章〜第1幕>>7-15
16話目、>>16
17話目、>>17
18話目、>>18
19話目、>>19
20話目、>>20
21話目、>>21
22話目、>>22
23話目、>>23
24話目、>>24
25話目、>>25

Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.6 )
日時: 2023/03/23 17:16
名前: htk (ID: F69kHN5O)

プロローグ〜〜序幕、閑話ーーヒョコちゃんの後日談



 やっほ〜、皆の衆!
 みんな大好き、異世界をこよなく愛するさすらいの愛の戦士ヒョコちゃんだよ〜。
 いや〜、それがね〜ーー?
 私が〈ワルプルギスの集い〉の同志達を送り届けて、その後はしんみりと自販の缶コーヒーでも買って夜空を見上げながら物思いに耽ろうかと思ってたんだけどね〜?
 眼前の光景を見て、ぶっちゃけ息がーーってゆうか時が止まれ!
 とか思わないでも無いんだよね〜、これが!?
 えーー?
 何があったってゆーと、ぱっくりと抜け落ちたみたいなクレーター?
 えーー?何なのこれ?
 私が愛する同志達を送り届けてしんみりする下りはドコ行っちゃったのかな〜?
 うへへ〜ーー。
 いや〜、笑えないですなーー。
 そんでもって情景を描写するとだね〜?
 何故か喚術陣が描かれてた範囲が丸ごとすっぽり抜け落ちてて、綺麗な断面の縦穴が地の底まで続いてる感じなんだよね〜?
 これどうすんのーー!?
 明らかに人為的な現象を超えた光景なんですけど〜?!
 もしかしてあれかな〜?
 明日から我が愛する母校は休校する流れなのかな〜?
 あ、でも旧校舎あるし、たぶんそっちで普通に受講再開する流れだよね〜?
 でもそれとも、地盤沈下とかの懸念で暫く辺り一帯に近付くなって行政から司令が来る流れかな〜?
 いやーーね?
 夜中に校内に不法進入してた私って立場的にどうなのかな?
 もう一度言うよ!
 夜中に不法進入してた一学生の私がこんな上天からの裁きみたいな事象を起こせる筈無いと世間一般的には思われるんだろうけどそれでも重要参考人として突然家にサツの方々が乗り込んで来たりしないよね〜!?まさかね〜!?
 焦燥のあまり思わず句読点抜きで一気に喋っちゃったけど、これマズイんじゃねーー?ガチで!
 うへへ〜ーー?
 逃げなきゃマズイですなーー!



 あ〜、え〜、コホンーー。
 それでね〜?
 あの後家に帰ってその日の内に逃避行の旅に出ようかどうしようかの判断も込みで、暫く何処かに潜伏しようと思ってたんだけどね〜?それがーー。
 何故か、お家に偉い人が来たんだけど〜?
 え、何ソレーー?
 ガチ過ぎて笑えない。



次話、>>7

Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.7 )
日時: 2023/04/02 14:21
名前: htk (ID: OHC2KpRN)

1章〜〜第1幕、1話ーー副題(未定)



 見渡す限り、森林ーー。
 遠く霞んだ山々が雲を纏い、私の頬へと息を吹きかけてくる。
 東西南北何処を見下ろしても、森、森、森、森だらけだった。
「はあ……高いわね、後輩君」
「はい、、そうですね、リン先輩」
 簡易な装具を身に付けた男子は応じ、辺り一帯を見下ろす。
 もう一度言うが森、森、森ーー。
 遠く見下ろした視点は遥か下方の森との間に切り立った崖を映していて、思わずーー身震いが肌を伝ってくる。
 後輩君が同意を示したように、高いという言葉だけでは足りない程度には高いーー。
 円形の断崖の上に、私達は居た。
 あの学校の屋上の足場ごと転移してしまったらしく、私達は今ーー少し途方に暮れている。
 この状況ははっきり言って、斜め上なのだろう。
 私達がこうして無事に五体満足で居るのを見れば、転移自体は成功裡に終わったといって差し支えない。
 しかし、その転移先が例えば海中とか地中とか、それとも或いは宇宙等ーーは、喚術陣に組み込んだ術式で避けたから有り得ないが、想定外の座標なり次元なりに繋がった挙げ句、まったく未知の環境で数分と保たずに死ぬ可能性は幾分かはあったのだ。
 それを考えるとーーひとまずは僥倖といって差し支えないのだろう。
 転移術式に組み込んだ衣装ーー武闘服の上着を肩で纏った眼帯ヤンキーが言う。
「しっかしなァ、、
、、高ェ!高過ぎじゃねェかァ!?」
 円形の足場の端でしゃがみ込んだ彼、迦具土テツヲは真下を覗き込んだ。
 眩暈がしてくるような高さーー。
 武闘家になりきった格好のテツヲにとっては平気なのかもしれないが、この高さはーーたとえ苦手でなくても、足場の端に寄るのすら躊躇ってしまいそうな高所だ。
 思わず後退りしたのは、身体のラインが幾分か際立つ魔女装束を着た、私だけでは無い。
 隣で立っていた歳下の後輩君ーー下級騎士というよりも、従者然とした簡易な軽装を身に付けた天ヶ嶺開人君も恐る恐る、といった様子だった。
 そして、発動を終えた喚術陣が描かれた中央から、まったく身動ぎもしない女の子は項垂れている。
「、、む、無理です
わ、わたし、、高い所だけは駄目なんです、、」
 ガクブルと震えているあたり、高所恐怖症なのだろう。
 その場から一歩たりとも動けそうにない後輩女子ーー前垣沙梨亜ちゃんは、場所が場所なら闇に溶け込みそうな生地の衣装に身を包んでいた。
 身体にフィットした薄い布地の上からフード付きの上衣を羽織った、アサシンスタイルだ。
 しかしこの様子では、最初のクラス選択を誤ったと言わざるを得ないのかもしれないーー。
 大体、高所が駄目なアサシンが果たして任務を遂行出来るのかと疑わしく思えてくる。
 そもそも沙梨亜ちゃんが本当に戦えるのかどうかを、生憎と私は知らない。
 次いでにいうと私達のこの格好は予め、喚術陣に組み込んだ術式が置き換えられたものだった。
 これを使いこなせば大概の事は実現可能ーーとひよ子が以前言っていたのを思い出すが、前世の記憶があやふやな私にとってはそこまでの見地に至っていない。
 ともあれ、こうして異世界ーーなのかどうかはまだ未確認だがそれはともかくとして、転移自体は成功したのだーー!
「遂にやったわね……!
思えば永かったのだわ……。
成長するにつれ自覚せざるを得なかった記憶と現実との乖離……周囲の無理解と己が異物であるという根拠の無い確信に、幼少の頃の私は囚われていたの……。
けれども、それももうお終いね……!」
「良かったですね!リン先輩」
 後輩君が祝福してくれた。
 そう、今の私は無力で愚昧なただの一般市民では無い。
 終期末を司ると謳われし大魔女の魂をその身に宿す者なのだからーー!
 手にした長杖を高々と掲げた私の後ろから、後輩君の拍手が鼓膜を打ってくる。
「おお!格好良いですよ!
、、ところで、此処からどうやって降りるんですか?」
 そう、問題はそこなのだ。



「よっしゃ、飛び降りるかァ、、!」
「却下よ……!
はあ……どうしてそういう発想になるのかしら?」
 あまりに乱暴な意見を私は一蹴した。
 発言者は、これはもう言うまでもないと思うが、脳が筋肉の鼓動だけで動いていそうな人物ーーテツヲだ。
 電気信号の司令など、彼にとっては瑣末なものに違いない。
 私は既に一蹴したつもりだったが、テツヲは抗弁してくる。
「でもなァ、術式とかナンとかの中に色々仕掛けたんだろうがァ、、?真島とヒョコでコマゴマと、、
そういやァ、この服もソレだったんじゃねェのかァ?」
 それは、確かにそうなのだ。
 転移の際に様々な恩恵が得られるよう、私とひよ子は多様な術式の開発に取り組んだ。
 向こうの世界ーー。
 今居る此処が異世界と仮定するならば、という但し書きは付くが、テツヲを止めたのにはそれなりの理由がある。
 元居た向こうの世界では、不可視の比定物質ーープラーナと確か、前世でそう呼ばれていた存在の源のようなものが薄いらしく、仮に大掛かりな術式を組んだとしても制御が難しい事が予想され、迂闊に発動しないようにしていたのだ。
 それでも細々と安全を確保しながらの実験で、高校一年生の間に様々な異世界文字を用いた術式をひよ子と共に開発したは良いがーー。
 元居た世界のプラーナが薄い影響下での実証実験は、生憎とほとんど果たせなかったのである。
 だから、つまりーー。
 体内に含有されるプラーナとの適合の術式も喚術陣には予め組み込んでおいたのだから、もしーー此処が異世界なら身体能力向上などの恩恵やら各員装備の耐久力で飛び降りたとしても、何の問題も無いのかもしれない。
 だが、これが単なるーー世界間を跨がない転移だったとすると非常に危ういのである。
 だから私は、まだ飛び降りたそうにストレッチするテツヲに釘を刺す。
「そうね……。
此処がもし、異世界じゃなく元居た世界ならテツヲ、あなた……潰れるわよ?」
「アアン?そうなのかァ、、?
、、なら仕方ねェ」
 諦めてくれたらしい。
 彼が好き勝手に動けばその余波で私達諸共詰みかねないのだから、そこは自重して貰うつもりだった。
 遣り取りを聞いていた後輩君が、何か思い付いたらしく手を挙げる。
「はいはい!リン先生」
「質問タイムね……?後輩君」
 私は発言を許可した。
 彼ならば、テツヲよりも具体的で建設的な案を出してくれると期待したい。
「スキルって無いんですかね?
確か、リン先輩とヒョコ先輩でそんな話してたような、、?」
「ええ……そうだったわね
けれども、各人の適性に裏打ちされたスキルのようなもの……。
ある種の超常的な能力がどういった経緯、どんな形で発現するか、はたまた発現しないのかはまったくの未知数なのよ……?
申し訳無いのだわ……」
 これは正直、詰んでるのかもしれない。
 此処がどれくらいの高さかは目測で測りようも無いが、遠く霞む山々とそれ程変わらなそうなのを見るとーー。
 少なく見積もっても、千メートルはあると考えた方が無難なのだろう。
 私の謝罪を耳にした後輩君は、項垂れた。
「はは、、そうですか」
 失望させてしまったかもしれない。
 少々の間、私達の間には沈黙が流れた。
 気不味いーー。
 どうにかしなくては、と私は手荷物の中を改める。
 術式に組み込んでおいた装備一式だ。
 中を漁っていると、皮袋の中から奇妙なものを見付けた。
「あら……?これは何かしら……」
 異世界に来たとしても早々、必要になるとは思えないものだ。
 私が掴んだのは、一冊の本ーー。
 その表題には、こう書かれていた。
〈ヒョコちゃんとのラブリーアツアツ通信記〉とーー。



次話、>>8

Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.8 )
日時: 2023/04/02 14:24
名前: htk (ID: OHC2KpRN)

1章〜〜第1幕、2話ーー副題(未定)



 私達は喚術陣の円陣が描かれていた中央に寄り集まっている。
 日記なのだろうかーー?
 最初のページには既に誰の手によるものか、これは言われなくてもわかるがーー。
 それを見た後輩女子が、剣吞さを隠さずに言う。
「、、ちっ!?
何がラブリーアツアツですか!?あの女、、
、、消し炭にしてしまいましょう!是が非でも」
「待って待って!?前垣さん!
ほら?たぶん、せっかくヒョコ先輩が用意してくれたものだし、、?」
「、、っち!?
仕方ないですね、、」
 後輩君のお陰で危うく消し炭の末路を免れた日記ーー〈ヒョコちゃんとのラブリーアツアツ通信記〉は風でパラパラとページが捲れた。
 最初のページ以外、全て白紙なのだろう。
 テツヲは怪訝そうにその日記を拾い上げる。
「アア?交換日記かァ」
「……みたいね
……ヒョコったら、こんなもの用意して……」
 ジワリとくるものがあったが、此処はみんなの前だ。
 私は手渡された日記の最初のページをゆっくりと開いた。


『やっほ〜、元気〜?
うへへ〜、びっくりしたかな〜?
どうも〜、みんな大好き愛の戦士ヒョコちゃんだよ〜?
あ、これね〜?文字を転送する術式とか色々組み込んで出来ないかと思ってね〜?
結果はどう出るのかな〜?
い〜やはや楽しみですな!
あ、そうそう〜
あの後、みんなを送ってから色々あってね〜?
何日かゴタゴタしてたんだけど、』


「待て待てェ!何だァ今のは、、!?」
 違和感に気付いたテツヲを、私は窘める。
「……煩いわ!?ちょっと黙ってなさい!」
「、、っち
トンデモナイ女ですね!?
まさか異世界にまでストーキングしてくるなんて、、」
 ストーキング、と口にした沙梨亜ちゃんとひよ子との間に何があったのかは分からないし、詮索する気もないのだがーー今は煩い。
 私の眉間に皺が寄ったのを察した声が、クラスメイトの沈静化を図る。
「まあまあ、落ち着いて落ち着いて?
早く続き読もう?前垣さん?」
 後輩君の取りなしに沙梨亜ちゃんも口を噤み、文章の羅列を静かに追った。
 ひよ子曰く、何日かゴタゴタしてーー?
 こちらとあちらでは時間の流れが違うとでもいうのだろうかーー?
 ひとまず読み進めてみる。


『あ、そうそう〜
あの後、みんなを送ってから色々あってね〜?
何日かゴタゴタしてたんだけど、なんか家に偉い人が来てね〜?
たぶんそっちで、私の推測が正しければ喚術陣の真下にあった地盤ごと転移してる可能性が考えられるんだけど、どうかな〜?
色々ハショるけど状況の説明するね〜?
つまり、こっちではいきなりくっきりと学校の屋上から地盤ごと消失する事件があってね〜?
そりゃもう大騒ぎなわけですな!うっへっへ〜!
ともかくそんな流れでみんな!聞いて驚くなよ!?
私こと愛の戦士ヒョコちゃんは晴れて晴れて何と!?
国家機密の研究機関に務める事になりました〜!
まだまだ研究者じゃないんだけどね〜?内定ってやつかな〜?
そんなわけでこっちはすこぶる順調です!世間一般は大変なんだけどね〜
あ、そうそう〜
みんなの手荷物の中になんか色々術式組み込んで再現した便利アイテム仕込んどいたよ!
ブランド名は、ヒョコティティル製品とかかな〜?
ちゃんとそっちに持ち込めてるといいね〜?
この〈ヒョコちゃんとのラブリーアツアツ通信記〉もその一つなんだけどね〜
無事届いたかな〜?
それとみんなも無事異世界に行けたのかな〜?
心配だし〜?出来るだけ早い返信求む!
首を長くして待ってるからね〜?

          by 愛の戦士ヒョコティティル』


「……まさか、私の知らない間にそんなとこまで手を回していたとはね
いやはや、畏れ入ったのだわ……!
さすが私の唯一無二の友人……」
 ホロリときた。
 涙を零す程では無いにしても、少し目元を拭うのは不可抗力だ。
 ジワリときてる隣で後輩君がそっとハンカチを差し出してくる。
「ありがとう……。
私ったら、こんなに友人に恵まれていたのね……」
「はは、そうですね!
ヒョコ先輩は規格外な人でしたから、敵わないですよね
本当に、、」
 彼がみんなの気持ちを代弁した。
 さしもの沙梨亜ちゃんも舌打ちはするが、脱帽してるらしい。
「、、っち
不本意ですがあの女が仕込んだブツを見ますよ?」
「だなァ?
、、ヒョコのクセにやりやがる!
思えば小っこい頃からいつもだけどなァ、、」
 ひよ子とは幼馴染みのテツヲも、何処か遠くを見るような趣きだ。
 私は瞳がジワリと滲みそうなのを堪え、彼女が仕込んでくれた〈ヒョコティティル製品〉とやらの確認を始めた。



「……現状、よく分からないものが多いわね」
 ひよ子特製の便利アイテムの数々は、私達を困惑させた。
 用途不明のものが多いーー。
 そもそもそれぞれ各人が持つ荷袋自体もそうなのだが、外観上のサイズと内容量をまったく無視した代物だった。
 よく異世界系小説で登場する、空間ボックスというものなのだろう。
 見た目は片手で持ち運べる程度の荷袋だが、中身に簡単な食料品等も含まれているのを見ると、従来のーー腐食を防止する為、時間が止まっている類のものかもしれない。
 その内容量は明らかに外見を裏切っていて、袋の口にサイズが合う物ならまだまだ入りそうだった。
 中身から取り出されたのは先に触れた食料を始め、水、ガスコンロや携帯用トイレ等は勿論だが、折り畳み式テントや寝袋、果ては化粧品やら応急セットにも加え、ちょっとした小物まで様々だ。
 それら必需品を押し退けて並べられたものはーー。
「あ、これ何ですかね?
、、モノクル?」
「アア、あれじゃねェのかァ?
異世界ものでよくある鑑定のヤツ、、」
 試しにと眼帯の付いていない方の左目で片眼鏡を着用するテツヲだが、特に変わった事は無いらしい。
 他にも何も描かれていない羊皮紙だとか、ペットボトルサイズの大型キャンドル、栓のされた内容物の怪しげなフラスコが複数種及び、明らかに尋常では無い毒々しい液体まである。
 沙梨亜ちゃんはその一つを手に取り、困惑顔だ。
「、、これをどうしろと?
飲め、ですか?」
「まさか……?
いくらひよ子でもヤバイ薬飲ませようとはしない筈なのだわ?たぶん……」
 言いはしたが、自信は無い。
 彼女にとっては便利アイテムでも、私達が使えば危険物となり得るかもしれないのだ。
 沙梨亜ちゃんは嫌そうにフラスコから手を離し、こちらの荷袋を窺ってくる。
「、、先輩の方はどーなんです?
何か、状況を打開出来そうなものとか、、」
 聞かれ、私が皮袋から取り出したのはーー箒だ。
 各人それぞれの手荷物の中には〈ヒョコティティル製品〉が幾つか入っていそうだったが、魔女に箒とはーー。
 よく分かっていたのだろう。
「最高よ……!さすが我が愛する親友、愛の戦士ヒョコティティルなのだわ!」
時々冗談めかして、異世界風ネーミングとして考案されたヒョコティティルが、唯一無二の親友にランクアップした。



次話、>>9

Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.9 )
日時: 2023/04/02 14:27
名前: hts (ID: OHC2KpRN)

1章〜〜第1幕、3話ーー副題(未定)



「それで、どうやって使うんですかね?リン先輩
魔女といえば箒なのは分かりますけど」
 後輩君が訊ねてくる。
 おそらく術式を施した特別な箒なのは間違いないのだが、問題は使い方だ。
「待ってて……なんかこう?
今少し思い出せそうだから……」
 私には、前世由来の知識がある。
 それは今世の記憶ーー例えば昨日食べたご飯みたいにいつでも思い出せるようなものでは無く、ちょうど数ある記憶の糸を手繰り寄せるようなものなのだ。
 目を閉じた私は意識を深く沈め、静かな時間が訪れたかに思えた。
 だが、喧しい奴が何か言ってくる。
「おォ、またいつものヤツかァ、、
、、今度は何日かかんだろうなァ?」
「、、しっ
黙りやがれですよ!テツ先輩」
 沙梨亜ちゃんに諌められ、余計な茶々入れは入ってこなくなった。
 じっくりと集中する必要があるだろう。
 私は意識を閉ざし、辺りは沈黙した。



「これは……プラーナに働きかける事で効能を発揮する導器具の一種ね
その証拠にほら……?
……ここに紅い金属が埋め込まれているのが見えるのだわ?」
「、、紅い金属、です?
どれですか?」
 箒のボサボサ部分を掻き分け、その奥に見えた紅い金属を指し示した。
 沙梨亜ちゃんの疑問に、私は答える。
「これはフィフィーロカネン……。
プラーナに干渉する際に必要とされる力……さっき次いでに思い出したのだけれど、通力解放と呼ばれる力の干渉により感応する貴金属よ?」
「、、なるほど、フィフィーロカネン?
聞き覚えはありますが、、?」
 沙梨亜ちゃんが言い、それに頷いたのはテツヲだ。
「ヒヒイロカネ、だなァ?確か、、
訳すなら紅銅、とかかァ?
またひよ子がナントカいうアレで引っ張りだしてたみてェだなァ?」
「そうね……。
ナントカじゃなくて、術式変換品……とひよ子は呼んでいたのだわ?」
 先程広げていた〈ヒョコティティル製品〉を正確に言い表すと、そんなところだろう。
 私の記憶にある異世界原語はあらゆる事象に作用するらしく、記憶の当事者よりもその効果を理解していた友人には脱帽する。
 フィフィーロカネンーーテツヲが言い表した紅銅が元の世界でいわれるそれと同じかはともかくとして、前世の世界では確か希少金属だった筈だ。
「そんなに流通するようなものでは無かった筈だけれども……。
……ひよ子ったら、いつの間にこんなもの再現させてたのね?
ま……いいわ!
早速使ってみましょう!」
 そう言って私は、ベンチにでも腰掛けるような姿勢で箒の柄に座る。
 ふわりと浮きかけたーーが、そこは習熟が必要なのだろう。
 ぽすんと下に落ちた私はぼそりと呟く。
「……練習が必要みたいね」
「ですね、リン先輩
おれ、応援してます!」
 後輩君に頷き、私はもう一度箒の柄に座った。



 木ーーというのはそもそも、通力を通しやすい。
 だから魔女が乗る箒や振るう杖は押し並べて木を素材に作られていたりするのだが、この箒も例に漏れずーー木で出来ている事が功を奏したと言えた。
 もしこれがフィフィーロカネンのような貴金属でもなく、ただの鉄製の柄だったらーー飛び続ける自信はとても、さしもの大魔女といえども無い。
 そんな私達は今ーー空中に居る。
 箒の柄に腰掛けた私は勿論だがーー。
「おいッ!?沙梨亜ァ!
、、テメェガタガタ震えてんじゃねェ!?」
「、、ご、ごめんなさい!?テツ先輩
、、で、でも怖いんです、うぅ、、」
 眼帯ヤンキーの小脇に抱えられた彼女はもう、箒の柄にまで振動が伝わってくるぐらいに震えていた。
 他方の手で箒のボサボサを掴むテツヲは、その両手が塞がっているにも関わらずーー更には口で荷物を咥えているのだから、まさに筋肉お化けだ。
 そもそも口が塞がったままどうやって怒鳴っているのか、さしもの私でも見当が付かない。
 そして、もう一方の箒の先端を掴むのはーー必死に脂汗を浮かべる後輩君だ。
 彼も残りの手荷物を他方の手にぶら下げてから、既に体感で数十分あまりが過ぎている。
「もう駄目です、リン先輩
おれ、、
、、落ちます」
「後輩君……!?
待って早まらないで……!?
もう少し、もう少しだから……!」
 思わず声が裏返りそうになった。
 何とかしなければーー彼が落ちていくところなんて見たくない。
 たとえ座り続けたせいでお尻が痛くても、前世を跨いで十数年ぶりの通力のコントロールが覚束なくても、後輩君に死なれてはその後の異世界ライフがーーきっとその後の私の人生にも深く関わってくるのだ。
 若干の焦りを覚えつつ閃く。
「そ……そうなのだわ!?
つ、通力よ……!通力循環!
体内のプラーナを意識しなさい……!?今すぐ!」
「む、無理ですって!?先輩
通力とか何の事かさっぱり、、」
 無茶振りが過ぎるのは分かっていた。
 それでも今ここを乗り切らなければ、私は後悔してもしきれないだろう。
 荒療治だが、それに今後色々と差し障るかもしれないが、この際だから仕方ない。
 柄の先端を掴む後輩君の手に、私は手を伸ばす。
「せ、先輩!?」
「……良いからそのまま握ってなさい!?
今から私の通力解放による外気への干渉で、直接後輩君のプラーナ……内気へと働きかけるのだわ!」
 もうヤケクソだった。
 私は触れ合った手と手で別の妄念が浮かんできそうになるが、そうした想いを排してーー自身の指先へと意識を向ける。
 後輩君の、ピクピクと震える指先ーー。
 そこに被せた掌から直接相手の体内へと私自身のプラーナを流し、それによって押し出された彼の内気はーー今度は逆に私の中へと流れ込んでくる。
 後輩君は、何かを感じたらしいーー。
「お!?おお、、!?
な、なんかこれ、、す、凄く熱いです!
凄く熱くてなんだか、、い、色々とヤバイです
それにこれ、ちょっとなんか、、気持ち良く、、?」
「……い、言わなくていいから!?
そ、それ以上言ったら、わ……分かってるわよね!後輩君……!?」
 言論の封殺は本来的な私の信条とは異なっていても、こればかりは言わせてはならない。
 禁則事項だ。
 後輩君の内気ーープラーナが今度はこちらへ逆流してくるが、他者の身体を媒体とした通力循環は幸いにも上手くいっている。
「はぁハァ……私も何だか……。
身体が熱くなってきたのだわ……?」
「せ、先輩!?
、、それ以上は駄目です!?
おれ、、おれも何だか色々と力が溢れて
とにかくヤバイです、、!?」
「……わ、分かってるから落ち着いて!?
へ……平静を保つのよ?そう……。
……ゆっくり、ゆっくりでいいから……」
「は、はい
こ、、こうですね?」
「そ……そうよ?
上手に出来てるわね……?
何だか凄く……良い、イイのだわ……?」
「せ、先輩ぃ!?
も、戻ってきて下さい、、!?先輩っ、リン先輩ぃ!?」
 周りも頭に入らず、後輩君ーーヒラト君に呼ばれる度にズキュンとしてきた。
 その際、腰掛ける箒の他方からボソッと聞こえてくる声をーー今は気にする余裕も無い。
「イチャついてやがんなァ、、」
「、、うぅ
、、怖いです、ぐスン、、」
 最早、誰の目を憚ろうともこの時の私は気にならなかった。



次話、>>10

Re: 転移後即日死した後輩君を魔女先輩は甦らせたい!? ( No.10 )
日時: 2023/04/02 14:32
名前: hts (ID: OHC2KpRN)

1章〜〜第1幕、4話ーー副題(未定)



 一線を越えてしまったーー。
 この場合、一線というのは生身が介在したかどうかは関係ない。
 つまり、私と後輩君との間には既に見えない繋がりが出来てしまったのだーー。
 気恥ずかしさのあまり、彼の顔をまともに見れない。
 向こうもどうやら同じ気持ちらしく、嬉し恥ずかしそうな反面ーーどこか申し訳無さそうに俯いている。
「せ、先輩、、
、、な、なんかごめんなさい」
「い……いいのよ?別に
わ……私だって後輩君に居なくなられたら、ほら……?
こ、困るじゃない……?」
 そう言って、しまったーーと思わないでも無かった。
 何故か気を利かせたらしいテツヲと沙梨亜ちゃんは居ないが、傍目から今の発言を聞けば、どう聞いても遠回しな告白に聞こえてしまう。
 図らずも胸の内の一端を晒してしまった私に対して、後輩君はーーまるで何かを決心したように口を開く。
「おれ、、実を言うと最初は遊び半分のつもりだったんです
リン先輩はおれ達一年生が入学した時から有名でしたから、、
はっきり言っちゃいますけど、頭のオカシイ変わった先輩が居るって、、」
 そうなのだ。
 私こと、真島リンの評判は我が母校において芳しく無かった。
 近隣に威名を轟かせる不良二人ーーテツヲとひよ子に上手く取り入って、何やら怪しげな活動をしてるとか、実はヤクがキメられてどうたらとかーー。
 私に纏わる噂はひょっとすると不良二人以上に出回っていて、他の生徒達からは気味悪く思われていたに違いない。
 そうした中で、一学期に我が〈ワルプルギスの集い〉に入ってきた一年生二人の加入がどんな理由だったとしても、それが僥倖だと思わなくてはならない程にーー。
 後輩君は、包み隠さず続ける。
「リン先輩には色んな噂話が付き纏ってましたからね
それを全部、おれは暴いてやろうと最初は思ってました
でも、違ったんです
真実は小説よりも奇なり、って言いますよね?
先輩方の活動に触れて、一つ一つ事実を確認して、リン先輩の記憶から得られた知識と現実の擦り合わせは思いの外、上手くいっているように見えました
その時おれは、既に夢中だったんです
〈ワルプルギスの集い〉の活動と、その、、」
 一瞬、彼は言い淀む。
 億したような気配を私は感じ取ったがそれもすぐ打ち消され、後輩君はーーヒラト君はこちらを真っ直ぐ見詰めてきた。
「リンさんに、、おれ、自分でもおかしいと思うんですけど、夢中なんです」
「あ……え?
あ、うん……ありがとう
……な、なんか、て……照れちゃうわね?嫌だわ……?
……ニヤけが止まらない……」
 顔が熱くなるのを感じ、両手で覆った。
 彼も少しぐらいは私に気があるかもと思っていたが、本当にーー。
 本当に、今は顔が上げられない。
 そうした事は前世においても今生においても、無縁だと思っていた私にとってーー。
 今の彼の破壊力は強烈過ぎる。
 いけないーー。
 脳ミソが沸騰しそうだった。
 もう沸いているのかもしれないーー。
 この先彼との仲が深まるにつれ、あんなコトやそんなコトまでーー。
 そう、彼氏だ。
 休日に二人でお出掛けしたり、沙梨亜ちゃんみたく弁当攻勢を仕掛けてみたり、イベントの際はサプライズ・ナイトに励んでみたりーー。
 これ以上はイケない。
 それが、歳頃の女子にとっての禁断の彼氏なのだ。
 我が人生の中で無意識の内に封印していた禁則ワードの一つにも該当する。
 信じられないーー。
 今にも爆発させられそうな頭と心臓の鼓動が落ち着き切らない内に、彼ーーヒラト君から言葉が降りてくる。
「最初は遊び半分で近付きましたけど、おれ、、真剣ですからね?
今はまだ役立たずで何にも出来ませんけど、いつかリン先輩にとって欠かせない存在になれたらその時に、、
、、この気持ちに応えて貰えますか?」
「え……?あ、そ……そうね」
 何故か、会話が思わぬ方向へ流れた。
 すぐに反応を示さなかったーー私が原因だ。
 冷静な彼は私からの返事が無かった事で脈有りと判断しながらも、今はまだーーと考えたのだろう。
 痛恨のミスーー。
 いや、今ならまだ挽回出来るのだろうかーー?
「こ、後輩君……!」
 咄嗟に呼んだがしまった、と気付いた。
 彼の名前を下の名前で呼ぶ絶好のチャンスだったのだ。
 そういえばさっき先輩抜きで、リンさんーーと呼ばれていたから、今ヒラト君と呼んだなら然程不自然な状況では無かったのだろう。
 気付くのが遅過ぎるーー!
 少々混乱してしまった私は、適当な事を口走ってしまう。
「そ……そろそろお腹空いたわね!?」
「はい、そうですね
おれが作りますよ!
別に料理得意ってわけじゃないですけど、たまに自分で作ったりしますし?」
「そ、そう……?期待するのだわ……!」
 口から出た発言はもう戻らない。
 私は千載一遇の好機を逃したのだ。
 彼がもう荷袋を漁り始めたのを見ると、そう返すより他に無かった。



 それ程時を置かずに、テツヲと沙梨亜ちゃんが戻ってきた。
 まさかとは思うが、草葉の陰から見守っていたなんて事はーー。
「、、ふぅ
、、リン先輩、ファイトですよ!」
「アア、ヒラトは良くやったがなァ?
及第点だよなァ、、ギリギリ辛うじて」
 見られてたーー!?
 周囲には確かに、覗き見ポイントが幾らでもあるのだ。
 背後にあの断層ーー。
 綺麗にくり抜かれた円柱のような筒型突起地勢がこちらを見降ろしている以外は、周辺一帯森の中だった。
 頭上の木々の枝の隙間から陽光が僅かに漏れているが、辺りはやや薄暗い。
 身を隠す地点には事欠かず、会話も全部聞かれていたかと思うと、気恥ずかしい。
 先程の余韻で、まだ顔から火が出そうだーー。
 私は二人の励ましーー?
 には囚われず、話題を変える。
「ご、ご飯食べるわよ……!?」
「はいよォ、、
、、近くにモンスターとかは居ねェらしいなァ?」
 ただ覗いていただけでは無かったらしく、テツヲは言った。
 沙梨亜ちゃんは小さく頷き、言葉を引き継ぐ。
「、、です
まだ異世界と決まったわけじゃねーですけど」
 それについては、私も同意見だ。
 現状、異世界かどうかを判断出来る材料は少ない。
 あの箒型の導器具ーーフィフィーロカネンが感応したのは何か別の要因ーー。
 例えば、異世界を前世に持つ私の影響なども考えられ、プラーナの濃淡だけでは判断が付かないだろう。
 元居た世界が必ずしもプラーナの薄い場所ばかりとも限らないし、事例は色々と考えられるのだ。
 思考に沈みかけた私の想念を中断させたのは、香ばしい匂いだった。
「オゥ!ウマそうな匂いだなァ、、」
「、、すんすん
、、チャーハンの匂いです」
 二人に釣られ、私も後輩君が有り合わせで調理してる方へ向かった。



次話、>>11


Page:1 2 3 4 5



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。