二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ムシウタ〜夢見るものたち〜
- 日時: 2010/11/21 01:46
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
- おはようございます、泉海斗です。 
 勢いで書いてしまいましたムシウタの二次創作です。
 4作品目になりますが、たくさんの閲覧とコメントをいただければ幸いです。
 これはオリキャラも出ます。それではどうぞ!!
 追記 一日2話ずつ投稿したいです!!
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 1 夢見始める者
 佑介PART 0
 季節は冬となり、ここ赤浜市にも雪が降り始めていた。
 少年相場佑介は赤浜市の有名進学校の赤浜第一高等学校に通っていた。
 防寒対策か黒のコートにマフラーを着込んでいる。
 それでも吐き出す息は白い。
 「おはよう佑介。今日もお早い登校だね」
 後ろから背中を叩いて挨拶してきたのは。
 「舞華か。おはよう。そういうお前も早いじゃないか」
 幼馴染の谷岡舞華だった。
 現在時刻7時30分と登校完了時刻8時30分にまだ1時間ある。
 佑介はただ近いセンター試験の勉強をしたくて早くから図書館に向かおうとしていたのだった。
 そういう舞華はすでに推薦で専門学校に合格を決めていた。
 そんな彼女は幼馴染としてまだ有名大学へと進学を目指している佑介を元気付けようと毎日一緒に登校しているのだった。
 そんな佑介はもともと勉強ができた。
 しかしそれは自分がしたいからではなく親が教育熱心だからだった。
 だからいつも逃げたいと思っていた。
 しかし彼には逃げ場がなかった。
 勉強机しか自分の居場所がなかった。
 小さい頃から勉強をしなさいといわれ続け、それが当然だとずっと思っていたのだった。
 しかしそんなある日、幼稚園のときだったか小学校への入学試験勉強をしているとき、母親からお小遣いをもらってこっそりと漫画を買いに行った。
 それが当時に彼にとっての至福の時だった。
 買った漫画は誰にも見つからないようにと屋根裏に隠していた。
 そんなある日、買った漫画を持って帰宅していた。
 するといつも通るときに見る公園で一人の女の子がぽつんとブランコに乗っていたのだ。
 そんな彼らが目が会うとその子は顔に笑みを浮かべてこちらに走ってきた。
 何事だろうと固まっていたら、いきなり腕をつかまれて公園に引き込まれた。
 それが佑介と舞華の出会いだった。
 その時お互いに自分たちのことを話し合った。
 幼かったために本当にどうでもよいこと・・・しかし彼らにとってはまた別の至福の時間だった。
 佑介にとっては親以外と話す初めての相手・・・それも女の子。
 彼女の話す外の世界にドンドン引き込まれていった。
 それからというものこっそりと外に出ては彼らは一緒に遊んだ。
 もちろん佑介は汚れるわけには行かないので遊具とかおままごとがほとんどだった。
 それから高校までは同じところへは通えなかった。
 それでも暇なときはあって一緒に遊んだ。
 そのときは舞華の友達が一緒だったり、佑介の友達が一緒だったり。
 高校は舞華が懸命に努力して合格した。
 それからは一緒に登校したり、デートまがいのお出かけなどもけっこうした。
 この登校もずっと続けられている。
 当たり前になってきた二人。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.35 )
- 日時: 2010/12/06 08:27
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
- 佑介 PART 6 
 「ふぅ・・・」
 今日も情報なしだった。
 どうやらもうここには虫憑きはいないのかもしれない。
 そう思って佑介は茜と待ち合わせしている場所へと移動した。
 夕日で赤く染まった空を見る。
 桜がほとんど散ってしまった木々が陳列している。
 夏が来るんだなっと近い未来を思い描いている。
 近くに海があった。
 そこに茜と行こうと考えた。
 そうすれば茜の水着を見られる。
 これでも男であるから女性に興味がないわけではない佑介。
 楽しみの一つが水着であった。
 「どんなのきるのかな・・・」
 そんなことを考えながら待ち合わせ場所へと急ぐ。
 つくとまだ茜は着ていないようだった。
 時間までまだ少しあるので待つことにした。
 しばらく景色を見ながら待ってると茜の笑い声が聞こえてきた。
 どうやら友達と来たようだ。
 途中で分かれて佑介のほうに走ってきた。
 しかし途中で。
 「きゃー!!」
 女の子の悲鳴が聞こえた。
 するとトラックが信号を無視して突っ込んできたではないか。
 ここで佑介が虫を使えば何とかなるが、こんなところで日常を壊したくない。
 すでに壊れてしまったが、この楽しい日々を壊したくない。
 そう思っているとドンドン近づく。
 「やばい!!」
 佑介が叫ぶと同時に。
 「いやああぁぁぁっぁぁぁ!!」
 茜の悲鳴とともに、青い光が輝いた。
 「うわ!!」
 思わず目をつぶってしまう佑介。
 数秒後目を開けてみるとそこは。
 「なんだこれ・・・。氷・・・??」
 地面が凍っていた。
 向こうには転んだ少女の前でトラックが氷付けになっていた。
 おそらく中の人は生きていないだろう。
 ピクリとも動かないからだ。
 その少女はただ一点を見据えて震えていた。
 トラックに惹かれる恐怖は去ったが、新たな恐怖が表れたのだった。
 「虫だー!!」
 少女は叫んだ。
 すると次の瞬間周りの人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
 そこにいたのは・・・。
 虫と忌み嫌われるレッテルを貼られたのは・・・。
 「どうして・・・」
 彼の目には信じたくないものが映っていた。
 彼が守りたいという笑顔を持ったものが映っていた。
 彼にたくさんの笑顔と思いでをくれたものが映っていた。
 「どうしてだよ・・・茜」
 そこに絶望に打ちひしがれた茜の呆然としている姿があった。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.36 )
- 日時: 2010/12/07 07:12
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
- 茜 PART 6 
 みんなが自分が虫憑きだということを知ってしまった。
 そして逃げ惑う人々。
 さっきまで友達だって子に近づくと。
 「来ないでよ!!」
 拒絶された。
 そんなことよりも傷つく言葉。
 「来ないでよ!!この化け物!!」
 「え・・・」
 自分は化け物??と何がなんだか分からなくなる。
 そして皆が逃げ惑っていることからもう自分の居場所がなくなってしまったことを悟った。
 そして追い討ちをかけること。
 「どうしてだよ・・・茜」
 「佑介・・・ぼく・・・」
 何もいえなかった。
 絶望に染まった瞳で自分を見ているからだ。
 茜は悟った。
 もう佑介も自分を救ってくれない。
 佑介も自分を化け物扱いする。
 家族も同じ。
 自分を忌み嫌い、追い出そうとする。
 あの澪という少女が属する特環にでも彼女を売り渡すだろう。
 そんな悲しいことをされるくらいだったら。
 「生き延びてやるもん!!」
 そう言って逃げ出した。
 「茜!!」
 自分の名前を読んでくれる大切な人。
 しかし彼女はもう信じられなかった。
 あんな目で見られたら誰でもそうなってしまう。
 走って走って走りまくった。
 彼女の近くには青い光を輝かせた虫がいた。
 それを見る人々は逃げ惑う。
 そのたびに思い出が壊れていく。
 小箱の中身がどうなっているかはそんな余裕はなかった。
 痛む胸の痛みを我慢しながら走り続ける。
 そしてついたのは廃工場だった。
 「待ってたにゃ・・・」
 目の前に現れたのは魅原木澪だった。
 「ここが君の墓場だにゃー」
 黒いコートを着込み、ゴーグルをつけた少女。
 「澪ちゃん・・・」
 恐怖に染まった声を絞り出す。
 しかし少女は指を横に振る。
 「ちっちっちだにゃー。私は今魅原木澪ではないにゃりよ」
 「え??」
 一体何のことを言っているのかわからない茜。
 「あなたを討滅するもの・・・「たまさ」だにゃー」
 そういうと彼女の方から金色の光を放つ虫が現れた。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.37 )
- 日時: 2010/12/07 07:12
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
- 佑介 PART 7 
 「茜・・・どこ行ったんだ??」
 佑介は走っていった茜を追っていた。
 しかし所々で氷付けになった道があり、走れないところがあったのだ。
 「ここで何したんだ・・・??」
 先ほどは友達を守りたいから虫が反応した。
 しかしここでは全く何も怒った形跡はなく、ただ人々が怯えているだけだ。
 どうやら何かの拍子に能力が発動したとしか考えられなかった。
 「ちくしょう・・・」
 舌打ちをしながら携帯に電話してみる。
 コール音がするが全く出る気配がない。
 何度もかけなおした。
 しかし結果は同じ。
 「何してるんだ茜のやつ??」
 電話を勢いよく切ると再び走り始める。
 「茜・・・」
 いじめに遭ってもめげない強い女の子。
 「茜・・・」
 自分が助けてあげた女の子。
 「茜・・・」
 彼女は虫憑きの自分を受け入れてくれた女の子。
 「茜・・・」
 笑顔がかわいい女の子。
 「茜・・・」
 勉強についてきてくれる家庭教師として教え甲斐のある女の子。
 「茜・・・」
 自分が今までで2度目にデートした女の子。
 「茜・・・」
 自分と手をつないでくれた女の子。
 「茜・・・」
 虫つきとなってしまった女の子。
 放っては置けなかった。
 あんなに自分に夢を叶えるチャンスをくれたのに。
 あんなに自分に思い出をくれたのに。
 これからだって楽しく一緒にいられると思ったのに。
 だから佑介は走った。
 肺が潰れようとも止まるつもりはなかった。
 しだいに夕暮れが漆黒の闇に包まれ始めた。
 そして雨が降ってきたのだ。
 なんともいやな雨だった。
 時刻は9時。
 一体どれだけ走り続けたのだろうか。
 「茜・・・」
 姿が見えない彼女の名をつぶやく。
 「あれだけ親しかった友達に化け物呼ばわりされたら辛いだろうな・・・」
 自分が言われてもいやな言葉だと思った。
 仕方なくいったん家に帰ることにした。
 家につくとそこには黒いコートを来た男たちが5・6人いた。
 クリスマスに佑介を襲ってきた男たちと同じ姿だった。
 「まさか・・・」
 茜を殺そうとしているのでは・・・。
 そう思ってしまうと胸が締め付けられた。
 中に入ると両親たちが泣いていた。
 なぜあの子が虫憑きになんて・・・などと嗚咽交じりにいっていた。
 男たちは家の中を調べていた。
 まさかと思い、自分の部屋に行くと案の定調べている最中だった。
 「あんたら何勝手に人の部屋に入ってるんだ??」
 怒気を混じらせながら言う。
 しかし彼等は全く動じない。
 「ここの娘が虫憑きだと判明した。関係者である貴様が関係しているかもしれないと考えられる場合もあるので調べているのだ」
 「貴様の意見など、ここでは通用しない」
 なんて無責任なことだろうと思った。
 彼等は虫を出して注意深くものを一つ一つ丹念に見ていく。
 中には思い出の品々があった。
 それを見終わるとそこらへんに投げたのだ。
 「貴様〜!!」
 怒りに我を忘れて殴りかかる。
 しかし戦闘に特化しているのか、カウンターを受けてしまい、その場に崩れる。
 「今の行動はすまないと謝罪する。しかしわれわれに手を上げることはやめたほうがいい。貴様のような一般人が勝てるとは思うな」
 冷たく言い渡された。
 確かに虫憑きに普通の人間が敵うはずはない。
 しかしそれは佑介が虫憑きで泣ければの話だ。
 するとしたから叫び声が。
 「各自に連絡!!中央支部「たまさ」が例の虫憑きと戦闘中!!援護に向かう!!」
 「了解!!」
 いきなり部屋から出て行く人々。
 こうして入られないと佑介も家を出る。
 すると。
 「佑介くん・・・」
 後ろには茜の両親がいた。
 「茜をどうか頼む・・・。あの子は君のことが大好きなんだ・・・」
 「だからね・・・。茜を救えるのは佑介くんしかいないの」
 涙ながらに行ってくる2人。
 怖くないはずはないだろう。
 しかし元は自分たちの娘。
 簡単に捨てることなどできない。
 「分かりました・・・俺が茜を守ります!!」
 そう言って佑介は走りだす。
 曲がり角を曲がったところで男たちの姿が見えるとすぐに肩の辺りに黒い虫を現す。
 ずっと姿を現せていなかった佑介の虫。
 それが足に同化すると化け物のような足となった。
 少し力を入れると地面が陥没し、次の瞬間大きく跳躍した。
 一気に男たちの頭上に到達した佑介。
 焦る男たちに向かってけりを入れる。
 「おらおら!!」
 人は一撃で気を失い、虫をゴミのように粉砕するとその場から墜落する。
 あっという間に2人を欠落者にした。
 「何だ、もう追ってこないのか」
 しかし安心ができなかった。
 ここにいないものはすでに茜の元に行っているからだ。
 「待ってろ茜!!今行く!!」
 再び地面を陥没させ空へと跳躍した佑介だった。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.38 )
- 日時: 2010/12/08 06:52
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
- 茜 PART 7 
 激しい戦闘が繰り広げられていた。
 たまさが金色のりんぷんを散布し、茜と虫の動きを止めようと罠をはる。
 それに対して空間を氷付けにし粉を凍らせる。
 しかしわずかに逃れた粉が触れると一瞬だけ動きが鈍る。
 そこにほかの虫たちが攻撃を加える。
 「ぐぅ!!」
 もう何度目かの攻撃受け、ぼろぼろとなった茜が立ち上がる。
 たまさの周りにはすでに2人の欠落者が出ていた。
 彼等は氷付けで、虫というとすでに氷の像と化し、風化していた。
 「にゃははは!!よく戦うにゃー。特環相手にここまでやるとはむしばねの中でもそうはいないよ〜」
 笑いながらだが、茜の獅子奮迅の戦いに敬意を表するたまさ。
 対する茜はふらふらとおぼつかない足をしっかりと地に着けてたまさたちを睨んでいた。
 あたりは陥没した地面と、氷付けになった鉄骨だらけ。
 いつ崩壊するかも分からないこの廃工場の中で死闘が繰り広げられる。
 「にゃはは〜!!一気に片をつけるよ〜」
 そう言ってさらに金色の輝きが増す。
 急いで足を引きずり、距離をとる。
 「私の思い出を奪わないで!!」
 叫ぶと同時に虫の輝きがさらに増し。青い光が広がっていく。
 その光が触れたところから一気に氷付けが始まる。
 地面から鉄骨・・・。
 たまさたちがたっていたところも凍っていた。
 「全くおっかない力にゃり〜」
 そう言ってりんぷんを撒き散らす。
 それが建物全体に広がる。味方には当たらないように操作しているようだが、一歩間違えば味方までもが巻き添えである。
 だからこそ他のメンバーは彼女に何も言わないのである。
 りんぷんから逃げる茜。
 しかし全体に回ってしまったりんぷんから逃げられるはずもない。
 後ろは壁である。
 「ああ・・・ああぁぁ・・・」
 恐怖に襲われる茜。
 一瞬立ちくらみのようなものを感じる。
 すると何かを奪われたかのように体から何かが抜けていく。
 それが何かは分からないが、とても大切なものであることには限りなかった。
 「どうしよう・・・」
 すると茜の虫が輝き、後ろの壁が凍りになる。
 それに対して茜が体当たりするとガラガラと崩れて外に出ることができた。
 「やった・・・」
 ふらふらと逃げ出す茜。
 意識は朦朧としていた。
 ジャリを踏む音がした。
 誰だろうと顔を上げるとそこには絶望の光景があった。
 黒いコートを着た男性や女性が何十人といたのだった。
 彼らこそが特環中央支部のメンバーである。
 「よく逃げたと褒めてあげるにゃー茜。でも逃げたところからあなたの死は決定しているんだにゃー」
 残酷な判決が言い渡される。
 すでに力の使いすぎで疲弊したからだ。
 虫の輝きも微弱なものとなっていた。
 こんな状態では逃げることも生き残ることも不可能だった。
 「嫌・・・死にたくない・・・」
 「大丈夫だにゃー。死というのは虫の死・・・つまり夢の終わりを意味するにゃー」
 「夢の・・・終わり・・・??」
 涙を流しながら地面に崩れ落ちる茜。
 「あなたは欠落者となり・・・一生夢を見ることはなくなるにゃー」
 「それって・・・」
 「そうだにゃー。思い出なんてないのだにゃー」
 「うわああぁぁぁっぁあっぁ!!」
 それを仰ぎながら涙する茜。
 終わりだと思った。
 もう自分の夢は終わりだと思った。
 たくさんの思い出をこれからもあの小箱の中に入れて生きたいと思っていたのに。
 それはもうかなわぬ夢。
 それは終わってしまった夢。
 「ゆうすけ・・・」
 それでも最後に会いたかった。
 最後に愛し合えた彼に。
 「もういいかにゃー??」
 じりじりと近づく特環の局員たち。
 そして満月が雲に隠れたとき・・・。
 「かかるにゃー!!」
 一斉に局員たちが攻撃を始めた。
 そして茜は目を閉じた。
 もう開くことはないと思って・・・。
 しかし一向に意識が刈り取られる気配はなかった。
 確かにまだぼんやりとしている感じはあったが。
 すると何かが耳を伝って聞こえてきた。
 「何ものだ!!ぎゃああぁぁぁlっぁぁぁぁぁ!!」
 「化け物だあぁァァァァァァ!!」
 「何やってるにゃりよ!!早く数で押し切りなさいにゃり!!」
 「そうは言ってもやつは早すぎます!!数で攻めても一気に吹き飛ばされてます!!」
 最後の力を振り絞り、戦闘が行われているほうを見た。
 すると私服姿の少年が、真っ黒な長い棒を振り回して局員を吹き飛ばしている。
 彼の右手は化け物のように異様なものだった。
 しかしその力はどの局員よりもはるかに上だった。
 虫をなぎ払い。
 りんぷんを旋風を起こして吹き払い。
 それが局員に作用してその好きに叩き潰しまくった。
 まるで。
 「死神・・・」
 月光に照らされた彼の姿はまるで漆黒の夜を跳躍し、狩をする死神同然だった。
 たまさは変わらない劣勢に顔色を悪くしていた。
 しかし茜との視線が合うと。
 「まずはあんたから欠落者になるりゃりよー!!」
 りんぷんを飛ばし、しれに続いて虫を踏み潰そうとしていた。
 彼女自身には作用しないりんぷん。
 これ以上動けない茜。
 迫るりんぷんとたまさ。
 「にゃははっははははっはははあああぁぁぁっぁぁぁ!!」
 恐ろしいほどに目を見開いたたまさが襲い掛かる。
 声も出せない茜。
 そして。
 たまさの顔が目の前に現れた。
 終わったと確信した。
 次こそ終わりだと思った。
 しかし一向に襲い掛かってこない。
 恐る恐る目を開けると。
 そこには瞳に感情をやどしていない欠落者と化したたまさがいた。
 近くにいたたまさの虫には槍が突き刺さっていた。
 真っ黒に染まった槍が。
 向こうにはそれを投擲したものがいた。
 死神がいた・・・。
 そしてその死神の周りには欠落者となった局員たちがバタバタと倒れていた。
 虫たちの残骸が散らばり、感情が皆無となった人々が倒れている。
 それらには全く目も留めずにその死神がゆっくりと茜に近づいてきた。
 しかし恐怖はなかった。
 むしろ懐かしさというか、嬉しさがあった。
 だって来てくれたのが。
 「ゆうすけ・・・」
 相場佑介が虫憑きとして茜の前に現れたのだ。
 彼の表情は彼女の無事で安堵していた。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.39 )
- 日時: 2010/12/08 06:53
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
- 佑介 PART 8 
 跳躍していくと見えてきたのは黒いコートを着たやつらの大集団だった。
 「一体何人いるんだよ・・・」
 わずかに身震いした佑介。
 しかし彼らが取り囲んでいる真ん中にいるのは確かに茜だった。
 よく見えないが崩れ落ちているようだった。
 このままではまずいと近くに落ちていた棒を持つ、そして右腕を虫と同化させると棒は黒く染まり、強度が格段に上がった。
 「待ってろ茜!!」
 そう言って一気に局員たちの後ろに位置を取った。
 さすがに気づかれたが、一気に近くにいた局員の虫から叩き潰しにかかった。
 慌てて攻撃してくる局員たち。
 しかしそれを回転させて一気になぎ払う。
 「テメエらの相手をしてる暇はないんだ!!」
 叫びながら振り回す。
 束でかかってくると一気に体を回転させて、虫たちをなぎ払い。
 「おらおらおらああぁぁぁ!!」
 りんぷんが来るとそれを望で起こした旋風で相手側に吹き飛ばす。
 それを受けた局員たちは次々に麻痺したかのように崩れ落ちる。
 まだ意識があるようで何かをつぶやいているが呂律が回っていない。
 しかしそれを全く無視して佑介は棒で落ちている虫たちを片っ端から叩き潰す。
 バタバタと欠落者と化す局員たち。
 しかし彼女の危険が迫っていることをようやく気がついたのは彼女の目の前にたまさが迫っているときだった。
 「茜!!」
 叫んでみても何も変わらない。
 「これじゃあ・・・前と同じだ・・・」
 またしても己の無力さを呪うしかないのかと思った瞬間。
 右腕から牙が出た。
 それを無意識にとりだし、それを棒と融合させ、たまさめがけて投擲する。
 槍は恐るべき速さで飛んで行き、たまさの虫を串刺しにしとめた。
 するとたまさはガクリと崩れ落ちた。
 欠落者になったのだろう。
 向こうでは茜がこちらを向いている。
 佑介は茜に向かってゆっくりと歩き始めた。
 ゆっくりと会いたかった茜の元へと歩いていく。
 彼女の顔がだんだんと鮮明になっていく。
 「ゆうすけ・・・」
 茜の前に立つと彼女は自分の名前を言ってくれた。
 「茜・・・」
 お互いの顔を見つめあう。
 自然に笑顔になっていた。
 「来てくれたんだね・・・嬉しいよぼくは」
 「当然だろ??俺はお前の彼氏なんだから」
 「それもそうだね・・・。僕たちは心でつながっている」
 そうして佑介は茜を抱きしめる。
 小さな体だった。
 しかし何にも負けない強い心の鼓動が感じられた。
 「怖かったんだよ??」
 「ああ」
 「寂しかったんだよ??」
 「ああ」
 「辛かったんだよ??」
 「ああ」
 「もう会えないかと思ったんだよ??」
 「ああ」
 「ゆうすけ〜」
 「ああ、俺はここにいる」
 小さな女の子が震えていた。
 どれだけ怖かっただろう。
 どれだけ寂しかっただろう。
 どれだけ辛かっただろう。
 それを佑介は在るがまま受け入れてあげた。
 月の光が彼らを照らす。
 土が涙で顔を汚した茜の顔と戦闘後の汗でぐちゃぐちゃな佑介の顔。
 その2人の顔が近づく。
 あと数センチ・・・。
 しかしそれを無常にも引き裂く銃声。
 緑色の弾丸が茜の虫を木っ端微塵に吹き飛ばした。
 一瞬にして感情を失った茜が無常にも佑介の横を通過していく。
 ばさりと地面に倒れた茜。
 一体何が起きたのか分からないという佑介。
 キスしようとしたらいきなり銃声がして茜の虫が吹き飛び茜が欠落者となった。
 銃声・・・。
 虫が死んだ・・・。
 だから茜は・・・。
 「欠落者になった・・・??」
 茜の目には涙があった。
 それが嬉涙だったのか。それとも・・・。
 それを知るすべはない。
 後ろでは立ち去る音がする。
 茜はもう・・・しゃべっても笑顔を向けてもくれない・・・。
 「誰だ貴様ああぁぁぁっぁぁぁ!!」
 激高する佑介。
 走っていくとそこにはぽつんと少年が立っていた。
 どこにでもいるような少年。
 特徴的なのは絆創膏ぐらいだろうか。
 手には煙が出た自動式拳銃。
 方には緑色の虫がいた。
 特環の局員だとすぐに分かった。
 少年の瞳は分からないが表情には感情がない。
 ただ任務を完了させたというだけだった。
 それに対して佑介の顔には怒りが表れていた。
 しかしそれを何とか抑えている。
 今戦っても意味はない。
 怒りに任せても刃がぶれるだけ。
 だからゆっくりと低い声で。
 「テメエは誰だ・・・」
 ワックスでいじられた佑介の髪が風でなびく。
 そして少年は口を開いてこう言った。
 「かっこう」
 (完)
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