二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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目安ボックス・・いやめだか箱
日時: 2012/02/04 15:48
名前: 栖樺 啼 (ID: ZEjsU2TR)


めだかボックスでいうところの
才能、つまりは 能力 スキル の究極でも探そうとか思って、
とりあえず試してみる、ぐらいの感じで書きたいなと・・。

勝手な内容にも程があり
創作の内容すら変ですが

確かなのは
話が荒唐無稽で支離滅裂の非散惨状となっています。
話に飽きてしまえば、不都合が悪く中味も中味も変わりますが

とりあえず、見ていただければ公営、いや光栄なのです。

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最終章 第6箱ー大好きだぜっー ( No.65 )
日時: 2012/11/08 21:41
名前: 栖樺 啼 (ID: 16/cv9YI)


ー球磨川訃音ー
その名は遠い昔に置き去りにされた名前だった。
人を殺し続けた彼女は、当然のように、人から殺され続けた。
そのたびに彼女は死んだ。兄を想うあまりに何度も死んだ。
死に飽きることもなく、ひどいときは毎日のように死んでいた。
さて、話だけで判断すると、球磨川訃音は訃隙より前に創られたように
感じるし、実際そうなのだが、その当時はすでに使い分けがされていた
そもそも、当時の訃隙は戦闘タイプというわけではなく、
ただ単に私生活を生きる上で、義務を果たす上で、兄を探す上で、
必要となった、主人格なだけだった。
つまりは、戦闘というより、むしろ人殺しは訃音が担当していた。
今でこそ、球磨川恋愛が創世されてしまい、訃隙の居場所がなくなった
そのため、訃隙と訃音の立場が入れ替わり、訃音は置き去りにされた。
ややこしくなるようだが、訃音は置き去りにされただけであり、
厳密に言えばまだ、『球磨川訃隙』の中にいる。
実際、球磨川訃隙は球磨川禊と合った後は、
人殺しにためらいを持つようになっていた。
今でも、人を傷つけるときは若干訃音の性格が入っている。
最近で言うと、
『追子森編』のときが一番近い。
昔と変わったのは螺子を持ち始めたことくらいで、
殺し方や、話術、頭の回転の速さ、直感はかなりのもの。

最初に話した通り、彼女はー訃音はー何度も死に、そして、
かつての【安心院なじみ】に何度も会っていた。
あのどこかもわからぬ教室のなかで訳もわからぬ制服を着て、
当時はまだ小学生であろう彼女は安心院なじみと話をした。
しまくった結果、今のようになった。
訃音を置き去りにしたのは、安心院なじみからそうされただけであり
球磨川訃隙事体が置き去りにできた訳でもなかった。
ことの理由は簡単。
球磨川訃音が誤って、安心院なじみの端末を殺したことからだった。

「どうしてキミはそうなんだろうね。」
安心院なじみは溜息をつきながら言う。
制服姿のままで、おおよそ何兆年と生きてるようには見えない。
「僕だって、端末を殺されれば少し悲しいし怒るさ。
 ま、新しい僕を作ればいいのかもしれないけれど、ね。」
「『・・・・・。』」
黙ったままの少女、いや、幼女とも呼べる球磨川訃音の頭を
チョップする。脳天に、軽く。
「えい。」
さすがに痛いらしく、涙目になる。
「僕が言いたいのはキミのこれからのことさ。
 めだかちゃんとキミ達を接触させるためには、キミの人格は
 いささか危険なんだよねぇ。創っといてなんだけど。」
「『悪いことをしたつもりなんてないよ。なーちゃん。』」
安心院を[なーちゃん]呼ばわりし、楽しそうに笑う。
けたけたと笑う。安心院は顔をしかめる。
実のところ安心院もこの子は苦手だった節がある。
「つまり、キミにはここにいてもらうよ。
 僕のことは親しみを込めて安心院さんと呼びなさい。」
「『ここって・・。この教室に?』『ヤダよ。人を殺せない。』」
「今まで散々殺しただろうに・・。
 キミはどこまで狂っていくのかね。見てみたい気もするよ。」
「『いーじゃんっ!ぶっちゃけオレにはお兄ちゃんとか』
 『黒神?とか不知火とかもどーでもいいよ。』
 『オレは、人が殺せるから、訃隙の体に生まれてきたんだ。』」
安心院は人差し指を立てる。
そしてそれを訃音へ。
「『人を指差しちゃいけねーよ。なーさん。』」
「ぐっ・・。(なーさんときたか。)
 指してはいないさ向けているだけだ。」
「『へぇ〜。何のために?まさかオレを殺すの?』」
「交渉さ。」
「『?』」
首を傾げる。
その動作だけを見れば、年相応にしか見えない。
何人もの人間を殺そうと、彼女の人格はブレない。
到底人間とは思えない精神を持っていた。
「ここには、[死]がたくさんあるよね。球磨川君も来たりするが。
 僕はキミをここに置いておくよ。そして、ココにいる間は、
 僕が作るのに失敗したキミ達の人格を[殺せ]。得意だろう?」
「『!?』『マジで・・。』」
少女は俯く。
肩がふるえている。
「あぁ、好きなだけ殺すといいさ。」
「『やったっ!好きにしていいんだよねっ!』
 『だったらここに何年でもいてやるよ! なー様!』」
親しみは無くとも、敬意はあるらしい。
嬉しそうにはしゃぐ、跳びまわる。
どうやら肩の震えは武者震いだったらしい。
いい笑顔で喜んでいた。
彼女にとって最高だった。
そして、少女が安心院にお礼を言おうとしたとき、安心院は
遮るようにやや大きな声で言った。

「ただし、条件がある。」

冷やかな目で訃音をみる。
本人はまったくひるまない。
「『何だよ。殺し方に条件でもつけるきかっ。』」
少女はあくまでも殺人にしか目を向けない。
安心院は呆れつつも続ける。

「もしも僕がピンチになったら、助けてくれ。
 例えば、あの二人が共闘してきたときとかね。」

「『んー。それぐらいなら、いいよっ!』
 『オレならどんな奴でも殺せるし、なー様を助けるのは楽しそうだ』
 『あー、                     はだめかな』
「・・いいさ。うん。頼むよ。」

そんな会話を思い出す、安心院なじみ。
時は現在。
二人が安心院に向かう瞬間、安心院は創った。
また、恋愛は意識を失い倒れた。
「「『!?』」」
「えっ・・・。」
本人も驚く、そして、思い出した。
「ふー、保険かけといて正解だったぜ。なぁ、『訃音』ちゃん。」
安心院は笑いかける。
そして、少女は変わらず、笑いながら言う。

「『えっ何!?オレがこいつら殺していいのっ!
  てかあいつらが大好きなお兄ちゃんじゃんかっ!』」

「あぁ、好きなだけどうぞ。」
「『よっしゃ。黒・・・なんとかと、禊?くん!』
 『失敗品しか殺せなくて暇だったんだっ!』」
目を輝かせ、螺子もなしに少女は二人に襲いかかる。
めだかでも追いつけないスピードで。
もちろん、背後からの攻撃となる。
そして、少女はバカだった。
自分の腕が球磨川禊の腹部に貫通してから気付く、
あのときの、約束を。

「『あー、訃隙達を困らせるような人殺しはだめかな』」
「・・・いいさ、うん。頼むよ。」
「『あぁ!オレらは仲良しだからなっ!大好きだぜーっあいつら!』」

思い出したのは、悲しくも、困らせた後だった。
「球磨川ァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
乱神のままで興奮状態にあるめだかは叫んだ。
球磨川禊は
     悲しそうに微笑んだ。


お兄ちゃん、ごめんなさい。
訃隙ちゃん、誤解してたよ。
訃音ちゃん、私も大好きですよ。
最終章第6箱終幕です。
私なんかが、希望を持ってはいけないのです。

最終章 第7箱ー限界を超えるんだぜー ( No.66 )
日時: 2012/11/09 19:02
名前: 栖樺 啼 (ID: 16/cv9YI)


ー訃隙、恋愛、訃音ー

「・・・・安心院さんとそんなことを?」
恋愛、訃隙、訃音。
同じ肉体の中にいるとはいえ、彼女達は全くコミュニケーションが
とれないわけではなく。
「『あぁー。なんかオレが安心院さんを守る代わりに』
 『オレに好きなだけ人を殺していーってよぉ。』」
訃音がそういうと恋愛は驚く。
訃隙が続ける。
「『あぁ、あの頃はボクと訃音しかいなくてね。』
 『ボクはあの頃今よりずっと大人しかったからね。』」
会話からわかる通り、この会話は球磨川恋愛という人格が出来上がって
からである。
「でも、そんな約束してしまって良いんでしょうか・・。」
「『あー。あいつらが二人で共闘とかありえねーだろ。』」
「『そうだね。』『ボクもそう思うかなーっ。』」
心配する恋愛をよそに訃音と訃隙は笑っていた。
もともとは一つの人格だったふたりはそれなりに息が合う。
「『まぁ、どっちにしてもオレはお前らを困らせたり、』
 『傷つけたりするような人殺しはしねーよ。安心しろよ。』」
人を殺すことに安心をしろというのも
変な話だが、訃隙と恋愛は頷いた。
「私達にとってお兄ちゃんは一番大事ですからね。」
「『そうだね。』『禊お兄ちゃんはボクらが生きる意味でもあるし。』」
二人の言葉を聞いて訃音は胸に拳を当てて堂々という。
なけなしの胸を張る。

「『おう!ようは黒なんとかは殺してもいいけど。』
 『お兄ちゃんは殺すなってことだろ?』
 『さすがのオレでもお兄ちゃんの区別はつくぜーっ。』」

「いや、黒神さんもできれば・・・。」
「『恋愛はお人よし過ぎるんだよ。』『いい子に育ったもんだな。』」

そんな約束をした。
球磨川禊とよく似た、黒神めだかの裏を演じ続ける。
そんな彼女達の会話。けれど、ひとりの少女の不注意で
その約束は絶たれてしまった。

そして現在ー

球磨川訃音の右腕が球磨川禊の腹部を貫通した。
かなりの量の血肉が飛び散る。
訃音の顔が青ざめる。
めだかは叫ぶ。安心院は微笑む。
「『嘘・・・だろっ。なんで・・。』」
さすがの球磨川訃音も約束の全てを忘れていたわけではなく、
球磨川禊を殺してはいけないことくらいは覚えていた。
そして、失念していた。
黒神めだかの背後を狙って、腕を存分に振り切って、
めだかを殺せるハズだった。
殺せなくとも、せめて致命傷は負わせたハズだったのだ。
しかし、

「なんで、貴様が私をかばったのだっ!!!
 球磨川!!おい!しっかりしろっ!返事をしろ!」

球磨川禊をたたきながら、ゆすりながら、めだかは大きく叫ぶ。
「『なんで・・・・。お兄ちゃんが・・そこに・・・。』」
球磨川訃音のスピードは球磨川禊が追いつけるようなものではなく、
確実にしとめられるハズだった。
球磨川訃隙のスピードにも勝てない球磨川禊が、
訃隙よりも戦闘能力が上の訃音に勝っていた。
二人には圧倒的力量の差があるはずなのに。
愕然とする訃音の前に倒れる球磨川禊はかすかに笑いながら
弱弱しく言った。

「『圧倒的力量が・・あったとしても、』
 『好きな女の子のためなら、男子は限界を超えるんだぜ。』」

「『そっ、そんなものに・・。』『オレがっ!』」
「≪オレ≫?・・貴様は球磨川恋愛でも訃隙でもないのか。」
球磨川禊が喋ったことで少し冷静さが出てきたのか、
めだかは訃音に目を向ける。
「『さすがの観察眼だめ。黒なんとか。そうだよ。オレは』
 『さっきなー様がいっていた球磨川訃音だよ。』」
安心院を指差しながら、もとい、指を向けて言う。
安心院が複雑そうな顔をする。
(いやがらせか?僕に対する精神攻撃か?さすがは球磨川君の妹だ。)
「なー様・・・?安心院さんのことか?」
「『おうよっ!』」
めだかと球磨川禊が笑いをこらえているところに
安心院が言う。
「さて、と。話を続けようか。球磨川君ならめだかちゃんが
 治せるだろ?できないなら僕がやるけど・・・。」
「・・・わかった。洗いざらい話してもらおう。これからのことを。」


「ん?不知火ちゃんはここで退場かい?」
「・・・これ以上は私の話をしないでください。
 そして、私のことなんかより、もっと大きな話をしてください。」
ずっと放置状態だった不知火は、
残念そうに去って行った。
その表情は少し、悲しんでいるように見えた。

「よし。具体的に言う。・・ということで、
 話やすいように、恋愛ちゃんたちには、それぞれの体を創らせて
 もらったよ。みんな同じ容姿で悪いね。」
「いいですよ。早く話して下さい。」
「『いいから。さっさと話してよ。』」
「『うぅ・・・ごめんな、二人ともぉ〜』」
「キミ達って三人揃うと面白いよなぁ。」
四人の会話を聞きながら、
地面に体育座りをするめだかと球磨川禊。
二人ともだまってなりゆきを見守る。
安心院と戦った後のことは何も考えていなかったらしく、
めだかいわく、
「倒せばなんとかなると思った。」だそうだ。
そんなこんなで、安心院による。
≪これから≫の話が始まる。


「さて、めだかちゃん。戦闘に入る前に君は僕に訊いたよね。
 ≪球磨川恋愛をどうするつもりか。≫と。あってるかい?」
「あぁ。」
むすっとしながら答えるめだか。
かっこいい戦闘シーンから一転してしまったのが気に食わないらしい。
「それに、今答えるよ。」
ようは簡単なことさ。と安心院は言う。
「というかさっきも言ったろ。
 【裏・フラスコ計画】はここからが本番なんだよ。」
めだかを指差し安心院は続けた。
「いいかい?めだかちゃんキミは≪あること≫を通して、
 格段に成長するんだ。ほぼ完璧にね。そして、
 そのほぼ完璧になってしまっためだかちゃんの【裏】の義務は
 ほぼ亡くなってしまうんだ。わかるかい?」
「・・・恋愛同級生達の生きる義務がなくなる。
 だから、殺すということか? 安心院さん。」
睨むめだかを安心院は軽くあしらう。
笑いながら。
「殺す、か。半分当たりだ。舞愛、恋愛、訃隙、訃音には。
 ≪一度だけ死んでもらう≫」
「−!!」「『・・・。』」
めだかと球磨川禊が反応する。
「まぁ、待てよ。それからが大事だ。
 これから僕が、前にも言ったように『五人目』をつくる。」
「?」「『?』」「『二人ともごめん・・。』」
二人は首を傾げ、1人は謝罪を続ける。

「いや、正確に言えば、正式的に、新しい。僕の端末として、
 4人の性格を合わせた人格を創るってとこさ。全く新し奴をね。」

「五人目?」「『僕達が・・一つに?』」「『オレも?』」
安心院の計画は執行されるのかっ!??

私に希望がなくとも、私達には希望がありました。
そして、私達は1人の【僕】になります。
私達4人を合わせたらどんな人格が出来るんでしょうね?
なんだか楽しみで眠れなそうです。
最終章第7箱終幕です。

最終章 第8箱ー謝りたかったー ( No.67 )
日時: 2012/11/13 19:10
名前: 栖樺 啼 (ID: 16/cv9YI)


「ん?僕の端末ってのは若干違うなぁ・・。
 まぁ、今や人類は人間が人間を作れるらしいからね。
 人外が人間を造れたって問題はないと思うけれどね。」
1人でにおかしそうに笑う安心院に5人(めだか、禊、恋愛、その他)は
呆気にとられてしまう。
それもそのはず、安心院なじみが人間を創ると言い出したのだ。
この人外は一体何を言っているのか、何を思っているのか。
「なんだよ。嬉しくないのかい?キミらを一つにしてやるって
 僕からの提案さ。ま、もっとも君は、
 球磨川恋愛だろうと、球磨川訃隙だろうと、球磨川訃音だろうと、
 初めからほぼ人造人間だったわけだけどね。」
もはや隠すつもりがないらしいこの安心院なじみという人外は
こともあろうか人造人間を言い始めた。
改造人間が身の回りにいる彼女達の前では笑えない冗談でもある。
「嬉しいも何も・・・・。」
恋愛は驚きが大きいらしく、いまいち感情がわからない。
「『ボクらをひとつにして、安心院さんに何のメリットが』
 『メリットとは言わなくても・・何の意味があるんだよ・・。』」
眉間にしわを寄せながら、訃隙が安心院を睨む。
安心院は軽く受け流すだけだ。
「メリットねぇ・・。あえて言うなら君たちは≪危険因子≫だから。
 その危険物を除去できるだけで、僕にとってはメリットだろ。」
安心院の言葉に訃隙が追及する。
こういうときに働くのは恋愛よりも訃隙らしい。
「『《危険》・・・?何に対して危険って意味?』
 『訃音の人殺し?ボクの人でなし?恋愛のお人好し?』」
めだかと球磨川禊がお互いの顔を見合わせる。
そしてお互いを指差して言う。

「安心院さんが言っているのは、私と球磨川のことだろう。」
「『心配しなくても、僕とめだかちゃんは仲良しじゃないよ。』」

「どういうことですか?」
「『二人が仲良くなるかもしれないってことだろ。』
 『球磨川禊の妹であり、黒神めだかの裏である。僕らがいれば。』」
「『それって、二人の結束をさせないため?』『オレらが?』」
5人が安心院なじみを見る。
いつも通りの、なじみがある口角の上がった安心院なじみ。
封印が解かれ、今では両方使える両の手を、組んでいた両の腕を
はずして、手を叩いて言った。

「・・・。性格に言えば、僕は物語上、君たちふたりを、というより、
 『球磨川禊の妹』という存在をかてにして、≪三人≫が
 同盟を組んでしまうことを、僕は、恐れていたんだろうね。」

意味のない拍手をしながら、圧倒的な存在であるはずの人外は
若干悔しそうでもあった。
「自分で創っておいて変だけど、僕は恋愛ちゃん達は大成功作品だ。
 僕はたくさんいるけれど七億人いるどの【悪平等】よりも
 キミら三人は強いよ。そして、だからこそ、憎かったぜ。」
安心院なじみは俯きがちに安心院なじみは言う。
「安心院さん。私達があなたに反乱をおこすと思っているんですか?」
「・・・・・。」
黙っていた恋愛が安心院に問いかける。
立ち上がり、安心院との距離をつめる。
「めだかさんとお兄ちゃんと手を組んで?」
「・・・・。」
今の恋愛の状態ははっきり言って悪い。
泣きじゃくったせいで、目は赤いし、頬も真っ赤だ。
涙の跡すら残っている。
声も鼻声ぎみになっている。ダダをこねた後の子供のようだった。
「私が、私達が、あなたを、人外を?」
「・・・・・・そこまでは、思ってなかったよ。」
「じゃあ、どこまで思っていたんですか?」
静かに、冷たく、冷静に淡々と、安心院に詰め寄っていく。
安心院は顔をあげて複雑そうな顔をする。
先程までの余裕はなくなっていた。
「・・・僕は、キミ達の人生を台無しにした。いや、している。
 台無しどころか、人でなしなこの僕が、キミ達にしたことは
 正直、許させるものではないよ。平たく言えば、人体実験だ。」
一度軽く呼吸をして、
「だから、何をされても仕方が無いとは・・思っていたよ。ずっと。」
「そうですか・・・。」
「でも、キミが球磨川君を探し当て、この学園にたどり着いてからは、
 その考えは、より明確になった。怖かったんだよ。情けない。」
嘲笑して、恋愛を見る。
恋愛、気付けば訃隙と訃音も隣にいる。
そして、
「あなたは、安心院さんは、どうしたかったんですか?
 どうすれば、私達があなたに歯向かわないと思ってますか?」
手を握り締めて安心院に問う。
訃隙が、訃音が左右からその手を包む。
そしてその二人をさらにめだかと球磨川禊が包み込む。
恋愛は、また泣きそうだった。
安心院の次の言葉は、それくらい、衝撃的でもあった。

「僕は、君達に、一度、ちゃんと謝りたかった。」

安心院なじみが、最強とまで言われる安心院なじみが。
世界に七億人もいるという安心院なじみが、あの人外が。
自分意外の【悪平等】の端末意外に負わせた傷は、
わりと、多いわけではなく、一般人とも呼べた彼女を、彼女達を
この学園まで引き入れた。
それを、ずっと後悔していたという。
ずっと、自分を憎悪していたという。人外と名乗る彼女にも、
人間らしい情を、あたたかいものを、持っていた。
不器用ながらも、精一杯言った彼女の言葉はおおよそ
あの安心院なじみの言葉とは思えない、よわよわしい言葉だった。
球磨川禊でも、驚くぐらいには。
それに対する、恋愛の言葉は、



・・・。安心院さんに誤ってもらえるとは、謝ってもらえるとは、
思ってもみないことです。
私に、私達に。複雑ですね。
最終章第8箱、これにて終幕です。

最終章 第9箱ーこれが重要っー ( No.68 )
日時: 2012/12/05 18:16
名前: 栖樺 啼 (ID: 16/cv9YI)


「安心院さん、私達はあなたに謝ってほしいわけではありません。」
恋愛はまずそう言った。そして、自分でもある二人を見る。
二人も恋愛を見る。
めだかと球磨川禊の方はあえて見なかった。
見たら、また泣いてしまいそうだから。
「私たちは、いえ、正確に言えば訃隙としての私、・・ボクは
 お兄ちゃんに見つけてもらうまでは、普通の幼児でした。
 私達には、ボク達には、【可能性】という異常は持っていたけれど、
 その異常はいまや、過負荷として使っています。」
安心院を見る恋愛。
視線を上げる安心院、その表情には若干ながらも余裕はあった。
決断を受け止める、余裕が。
「そして、あなたに造られて、私にはすでに3人の人格がいました。
 1人は親からも親族からも世間からすら見捨てられたただの幼女。
 1人は造られて、人殺しを続けて誰よりも明るく振る舞う少女。
 また、1人は新たな名前を恩人からもらい、恩人を探し続け
 そこでまた新たな名前をもらい、新たな人格の裏で暗躍したマイナス
 そして、私は黒神さんから名前をもらい、主人格として能力も
 使わないまま、優しい人に囲まれて平和に暮らす女子高校生。」
まとめのように恋愛は指を折って話をする。
安心院は無言で見ているだけだった。
「あなたから造られて、あなたから利用されて、完璧な人間を造って
 未完成な自分たちは切り捨てられて、残った人格を上手く
 使いこなして、能力を使わないまま、何も失わないまま、
 それでも、私達のために戦ってくれる仲間がいて・・。」
訃隙と訃音は神妙そうな様子で黙って座っている。
めだかと球磨川はときおり「なるほど」と言っている。
「そんな、不安定な私達を一つに、1人に、できる、いや、
 してくれる、そう安心院さんは言ってくれました。
 だから、私達はそれに従いたい、すがりたい、願いたい、
 感謝したい、困惑したい、遠慮したい、でもなりたい。
 なったらどうなるのかを考えるだけで、ワクワクします。」
恋愛は、
    従うと、願うと、感謝すると、困惑すると、遠慮するー。
なによりも、  なろうとする。
そう、言った。言いきった、言いつくした。
「−、それじゃあ・・。」
安心院が口を開く、
けれど恋愛は人差し指を安心院に〈向ける〉。
「『『ただし、条件がある。』』」
3人の声があった。
二人は立ち上がる。手をつなぐ。恋愛を中心に。
「なんだい。言ってごらん。」
安心院はほっとした様子で喋る。
少し、表情が明るくなった。

 「一つ、私から。
  1、全員の人格を考慮すること。」
「『ニつ、ボクから。
  2、みんなの記憶のマインドコントロール。」
「『三つ、オレから。
  3、今の能力、および身体能力も同じに設定すること。』」
 「四つ、私から。
  4、一つ、よりも合わせる、ことを大事にする。」
「『五つ、ボクから。
  見た目は自由、安心院さんのセンスで。』」
「『六つ、オレから。
  6、合わさっても、ココは離れない。この学園に滞在する。』」

息を吸う。

「『『最後に3人から。これが重要。
   7、お兄ちゃんの妹!妹!妹!(11歳)』』」

「・・・・・・。」
めだか、球磨川禊、安心院なじみ。
唖然。茫然。
「そこかよ・・、ホントに面白いな君らは。」
「・・・安心院さん。これは、相当難しくないか?」
「『人殺しと人でなしとお人好しを一つに・・・。』」
それぞれ呟く。
「んー、方法はないわけじゃない。むしろ、ある。
 3人、いや4人を合わせる方法が。ただ、スキルがなぁ。」
「スキルか・・・・。」
「・・・無理ですかね?」
恋愛が小首を傾げて安心院による。
二人もあわてて後に続く。媚びている。
「めだかちゃんが協力してくれるなら、なんとかなるかな。
 ボクのスキルの一つ『移し写し』を使うから。」
「まぁ、よかろう。球磨川、女子高校生5人で密室に行くから
 小一時間ほど待ってろ。もしくは、また明日、ココで。」
「『状況だけ言えば天国だよね。』」
「小一時間で終わるわけないだろ。明日の朝10時くらいかな。
 一年十三組の教室前廊下。君と・・名瀬ちゃんにはコントロールを
 かけないで、状況だけ説明しとくから、彼女を連れて来てくれ。
 古賀いたみも連れて来てもいいよ。あと、鵆も。」
パシリのような扱いにも文句ひとつ言わず頷く球磨川禊。
「『OK、家に帰って漫画でも読むよ。』」
相変わらずの台詞を吐いた後、
ズボンの砂を払って消える球磨川禊。

「さ、教室に行こうか。」
「このまま、3人に分解したままですか?」
「分裂といえよ。せっかくシリアスムードが消えたんだ。
 ラフに行こうぜ。バラバラの方が合わせやすい。」
歩き始める女子達。
話している内容は残念だが、様子は楽しそうだった。
「・・楽しみだな。」
「『ボクはちょっと怖いかな。』」
「『オレは、なんか申し訳ないな。』」
舞愛に、と付け足す訃音。
「・・・舞愛の分は私が受け持つよ。・・・他のみんなの分もね。」
「キミらを合わせればめだかちゃんと球磨川君と僕を
 ごちゃ混ぜにした感じになるんじゃないかな?」
「「「・・・・・。」」」
「! いやなのかっ!?」
めだかが驚く。
(どう考えても悪い方向にしか想像できない。)
そうこう言ってる間に教室に到着。

「さ、始めようか。人外による化け物女と人殺し女と
 螺子刺し女と見捨てられ幼女と親切女のための、併合を。」

名前だけきけば、ものすごくバランスの悪そうな集団だった。
そして、併合、合併、融合、縫合。
なかなか大変な作業であり、そこそこの時間がかかり、
大層な仕上がりとなった。
そして、その結末はあまりにあっさりしたもので、
「なら初めからそうすればよかったじゃねぇかっ!」
というツッコミがこどましそうなものである。
というか、実際に名瀬夭歌はそう言った。古賀いたみも頷いた。
安心院は舌を出して「テヘ☆」といったとか・・・。
できあがった人格は確かに個性を合わせたもので、
誰ひとりとして、犠牲はなく、消えることもなく、
置き去りにされることも、−なかった。


さぁ、いよいよおひろめですよー。
文句は安心院さんに言ってください!!
黒神さんも頑張ってくれました。ネーミングセンスが変ですよ
安心院さんもなかなかの残念センスですね。
盛り上がってまいりました(個人的にですよ。)
最終章第9箱、これにて終幕ですよ。 球磨川レント

最終章 第10箱ーもしもしもしー ( No.69 )
日時: 2012/12/19 17:39
名前: 栖樺 啼 (ID: 16/cv9YI)


朝9時半ごろ。
安心院の指示通りに名瀬と古賀を30分前に球磨川は呼びだしていた。
「どーいうことなんだろうなぁ。古賀ちゃん。」
「んー、そうだねぇ。どういうことだろうねぇ。」
二人は待ち合わせ場所ー、箱庭学園一年十三組教室から
50メートル程離れた場所。あまり近づくのは危険だと、
名瀬は音から察した。状況がわからないまま時間が流れる。
「名瀬ちゃんは球磨川から何も聞いたりしてないの?」
「・・・・してねぇな。オレがあいつから受けた電話は・・。」
名瀬は昨日の放課後を思い出す。

あんな場面を見せられて、名瀬自身もあまり芳しい状況では
なかったが、球磨川からの電話を無視はしなかった。
携帯電話の画面を見て若干嫌そうな顔をして、
しばし悩んだか、球磨川なら何かを知っているかもしれないと思い、
電話に出て、そして後悔した。テンションは低かった。
「・・はい。」
『あ、もしもしもし。名瀬さん?名瀬夭歌さん?
 動物好きで、めだかちゃんのお姉ちゃんで、お兄ちゃん大好きな
 名瀬夭歌さんの携帯電話ですか?球磨川禊ですけれどー、』
ピッ。
つい電話を切ってしまった。あまりのうざさに。
ていうかそもそもなんでお前が自分の番号を知っているのだ。
着信音が鳴る。愉快な音に直すとこんな音。
ピリピリピリっ。
「・・・・。はい、名瀬夭歌だけど。」
『えぇ?携帯なんだから言わなくてもわかってるよ、名瀬さん。
 面白いね。君はいちいち名前を言って電話に出るのかい?
 ひょっとして誰かと共有して使っているのかい?面白い。』
「てめぇ、切るぞ。」
本気でうざかった。
切るどころか、どっかのガキのように携帯をまた潰すところだった。
これが球磨川禊か。実に鬱陶しい。知っているが。
『はは、ごめん。ごめん。怒らないでよ怖いなぁ。
 さっきもいきなり切っちゃうしさぁ、つれないなぁ・・。』
「・・・・おい。」
『あぁ、ごめんね。ホントに本題に入るよ。しっかり聞いてね。
 メモを取った方がいいかもしれないよ。待たないけど。』
「またねーのかよ。勝手だな。それでなんだよ?
 あれか、お前の大好きな妹のことでか?それとも雑談か?」
『じゃあ言うよー』「聞けよっ!」
なんて奴だ。
自己中にも程がある。
『サクッというけど。僕の妹の、義理の妹の球磨川恋愛のことだよ。』
「(義理を強調すんな)・・・多重人格がどーこーの話か。
 オレらは訃隙には訃隙の過去があるってとこまでしか聞いてねー。」
『そこまでしってりゃ上出来さ。さ、説明するよ。
 その、訃隙の過去の子も含めた≪球磨川恋愛≫は全員を併合、
 つまりは〈合わせる〉ことになったんだよ。』
「・・・・はぁ?」
『安心院さんがサービスでね。色々あって、明日の10時に
 完成する予定なんだ。そこに名瀬さんを連れて来て欲しいって
 安心院さんに頼まれちゃってね。9時半でいいかな。よろしく。』
「はぁ?!わかんねーよ。合わせるも何もあいつらは
 そもそも何人いるんだよ?!」
『知らない。』
「じゃあ、どうやるんだ。例えめだかちゃんのスキル使っても
 厳しいところがあるぞ。そんなのオレでも微妙だ。」
『わからない。』
「そもそも今もうやっちまってんのか?それならオレも手伝いにー、」
『ところでさぁ、名瀬さん。』
話を遮って球磨川は楽しげに語りだした。
名瀬としては状況がわからずあわてるばかりである。
「なんだよ、行けばわかるってか?」
『はは、そうそれ。それを言いたかった。
 説明は安心院さんに聞いてよ。あと、お友達も連れて来てね。』
「友達って古賀ちゃんか? つーかそれよりも!
 オレはそれを止めに行かないと・・・・って。」
ツー
ツー。
電話がキレた。いや、切れた。
ひとの改造、改良が関わるこの場面で自分が置いてきぼりを
食らうとは・・・・。名瀬は古賀に電話をかける。
そして思った。
どうにしてもあいつの妹ならとんでもない性格になるに違いない、と。

「とにかく、ここへ来て、恋愛ちゃんの変貌を見届けろってこと
 くらいしかつかめなかった。しかも、・・・。」
「しかも?」
「球磨川は来ねぇしよ。・・・遅刻とかありえねぇ。」
古賀は苦笑いをする。
「とにもかくにも、球磨川恋愛は、球磨川恋愛という人格は
 耐えきれなくなったんだろうさ。あいつのなかには単純計算で
 少なくとも4人の人格がいただろうし、安心院さんの
 失敗の数も含めればもっといたはずだ。それを・・・。」
「それを、1人の主人格が抑え込むのは無理があった・・。」
名瀬は頷いて、話を続ける。
「抑え込む、ていうか、おそらく、安心院さんはあいつに何か
 あいつが何かになることで、その【裏・フラスコ計画】ってのを
 続けていたんだろうさ。でも、その必要がなくなって・・・。」

『さっすが名瀬さん。でもちょっと曖昧だねぇ。』

背後から笑ってやってきた、球磨川禊。
ちょっとホラーだった。
「遅ぇよ。結構時間たったし。」
『いやぁ、名瀬さんの推測を聞いておきたくてね。』
「推測にもなってねーよ。それで?
 安心院さん達は?どこでその作業をやってるんだ?」
球磨川が少しキョトんとする。
その表情すらうざい。
『あぁ、待ってね。あと、10分くらい。安心院さんは
 恋愛ちゃんの併合作業で忙しいから。説明どうしようね。』
「はぁ!?じゃあ、オレ達は誰から状況説明うけんだよっ。」
「名瀬ちゃん、落ち付いて、ペースに巻き込まれてるよっ。」
「そうですよ。落ち付いてください。」
「そうそう、って・・。」
1人、声が多かった。そこにいたのは。
「僕がおおかた説明します。」
追子森 鵆。 安心院なじみの端末でもある少年。
「・・・・球磨川よりはましだろうな。」
「はい。」
名瀬が理解するまで3分。古賀の理解は40%くらいのまま、
時間は、10時を回っていた。
いまか、いまかと、球磨川禊は焦っていた。
外には出さないまま、内心はものすごく、焦っていた。


「さて、と。仕上げに入るよ。いいかい?」
『・・・うん。』
「安心院さん。さすがに私も疲れたぞ・・・。」
「ははは、終わったら肉でもバカ食いすればいいだろ?」
『時間、ないみたいだけど?』


いよいよ次回っ
おひろめ〜お楽しみに〜
結構長かったですねすみません! 栖樺 啼


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