二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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レッドレイヴン  —からっぽの人形—
日時: 2012/05/11 17:40
名前: 黒猫 (ID: okEdKXH3)
参照: http://www,kuroneko.cc/novel

 小説、書きまーす。
 

  

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Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.214 )
日時: 2012/07/08 12:59
名前: 黒猫 (ID: jX/c7tjl)

 アンディは部屋から出ると、外に向かった。
 ギロチンは狭いところで使えない。おまけに、あの部屋はレイの武器になるものがたくさんある。
 「ガラクタ、広くてできるだけ何もない場所に連れて行って」
 「言われなくてもやってる。だまってろ、化け猫!」
 こんな時まで言い争いをしないでもらいたい—アンディは深くそう思った。
 「それにしてもどうすんの、アンディ。レイに勝てる?」
 レイの力はかなり厄介だ。周辺にある物を、時には武器に、時には盾に、アンディの力にはない万能さを発揮する。その上、アンディの力を無視して使える。相性は悪い。
 それでもアンディはうなずいた。
 レイの力は集中しなければならない。それに比べてアンディは見るだけでいいのだ。
 「レイじゃなくて、ミラを再起不能にすればいい」
 「あぁ、なるほどね。レイは怪我人だし…うん、やれるよ」
 さすがに、判定書も出ていないミラを処刑することはできないが、再起不能にしておくことくらいはできる。
 「安心して。ここら辺は確か、リューの縄張りの近くだから、何やってもOK」
 改めてアンディはリューに同情した。

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.215 )
日時: 2012/07/08 13:46
名前: 黒猫 (ID: jX/c7tjl)

 やたらと大きな倉庫の前に着いたアンディは、レイと向き合う。
 レイの後ろにはミラがいる。
 眼帯を取りギロチンを出すと、レイも刀を出して切っ先をアンディに向けた。
 そして—
 どちらも同時に地を蹴った。
 アンディはミラを狙おうとするが、レイが下段からの一撃を放つ。
 それを“読んで”いたアンディは一歩下がって避けると、ギロチンを振り上げた。しかし、レイも“読んで”いたらしく、横に跳ねた。
 何度も衝突しあう刃物。だが、どちらも無傷だ。
 (長引かせたら、こっちが不利になる)
 レイは自分の体も操ることができた。そのことを忘れていた。
 「…っ」
 アンディは微かに顔をしかめた。
 ズグ—力が目を疼かせた。気を抜くと、暴走しようとする。
 アンディはレイの刀を受け流すと、懐に入った。いくら読むことができても、力で体を動かせようと、限界がある。レイは反応できなかった。
 アンディはそんなレイの首を掴む。くらっと体勢を崩したレイを突き飛ばすと、ミラに向かって走った。
 「詰めが甘い」
 ミラは笑いながら、そういった。
 ミラとアンディの間に、レイが入った。包帯に黒い血がにじんでいる。
 ギロチンを薙ぎ払ったアンディに、レイは刀を持っていない左手を突き出す。あわてて減速させようとするが、ギロチンは止まらない。最悪の光景を予測したアンディが顔を強張らせた。
 ギィン—ギロチンはレイの手首に当たると、弾かれた。レイの左手も反対側に弾かれる。
 黒い革手袋から、鈍く輝く鋼鉄の手枷がのぞいた。
 レイは流れるような動きで、右手に掴んだ刀に左手をそえて頭上に持ち上げる。
 





 熱い感覚が、アンディの体を走った。

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.216 )
日時: 2012/07/08 15:28
名前: 黒猫 (ID: jX/c7tjl)

 レイは呆然とした。
 記憶がないのに、誰かを斬った感覚が手に残っている。
 「ふ…ははははははははははははははは!!」
 笑い声でレイは顔を上げた。
 紅茶色の髪をした女性が笑っていた。
 「ばっかみたい。あの時、あたしに操られていた人形に手加減さえしなければ斬られることもなかったのに。まぁ、これが狙いだったから力を解いたんだけどね。これで、人形は抵抗できなくなる…ははは!!」
 


 それは—言ってはならない言葉だった。



 レイはアンディの体をどかすと、刀を握りしめた。
 無表情な顔。しかし、瞳はどろどろとした黒い感情が表れていた。
 「…黙れ」
 聞くものが震えあがるような、冷たい声。
 笑い声がピタリと止まった。
 ゆらりとしか表現できない動作で、レイは立ち上がる。
 「な、な、話と違うじゃない!」
 先ほどの態度が嘘のように、女性が青ざめた。
 レイは、それを道端に落ちているごみでも見るような目で見た。
 ゆっくりと歩きだすレイ。女性は逃げようとしたのだろう。
 ドス—短刀がその足を貫いた。
 悲鳴にも反応せず、一歩また一歩と、レイは踏み出していく。
 自分の汚い心を知っても守ってやると言ってくれた、それでいて必要としてくれたアンディ。それが居心地がよい感じていたのだ。
 なのに、自分の手で壊させられた。
 


 それで、平然といられるわけがない。
 それを、すべて自分のせいだと抱え込める人形であった自分はもういない。
 


 (許さない…許せない)
 『許してやれ』
 キャシーが死に際にはなった言葉が頭をかすめる。
 「…許せるわけがない」
 レイはそっとつぶやく。
 「…ボクは、もう人形ではないのだから」
 からだった心に感情を教えてくれた人がいたから。
 だから—人形は人間になれたのだ。
 レイは女性の正面に立つと、刀を振りかぶった。
 




 「レイ」
 訊きなれた声で、レイは手を止めた。

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.217 )
日時: 2012/07/08 15:40
名前: 黒猫 (ID: jX/c7tjl)

 アンディはレイに近づくと、刀を取り上げた。
 「それ以上のことは、やるな」
 ミラを殺したら、レイはリバースナンバーになる。
 レイは目を見開いたまま固まっていた。ひとまず、無事なので放っておく。
 「なんで、助けたのよ」
 ミラはガタガタと震えながら、アンディに訊いた。
 アンディは顔をしかめた。
 「助けた?違う、レイをリバースナンバーにさせないためだ。それに君には判定書が出ていなかった」
 良心の欠片もないアンディの答えに、ミラはさらに震え上がった。
 シャルルはアンディの肩に止まると、
 「よく、やった。危ないところだったんだぞ。とにかく、この女を本部に連れて行き情報を」
 ドッと、突然ミラの体が倒れた。こめかみから血を流している。
 (狙撃…!?)
 アンディは鋭く周りを見渡す。が、誰もいない。
 「口封じの為にやられたね」
 「俺たちも危ないんじゃ」
 「それはないと思う」
 ノアはさらっと言った。
 「火薬のにおいさえしないほど遠くにいる相手がわざわざ撃ってきたんだよ?アンディに警戒されたらそれは通用しない。もしその気があったら最初っからアンディを狙っていたはずだよ。…やっぱりガラクタはガラクタだね」
 「んだと、こら!!」
 一気に緊迫していた空気が和んだ。
 ひとまずレイを壁際まで連れて行くと、自分の傷を見た。
 とっさに下がったので、皮膚と筋肉は少し斬られた程度で済んだ。
 (包帯巻いておくだけでいい…?)
 レイがぺたんと座り込んだので、アンディは怪我でもしたのかと思った。
 正面に座ると—思わずぎょっとした。
 レイは…泣いていた。ぼろぼろと涙を流して、それをぬぐおうとせずに。
 「レ、レイ?」
 「…死んだかと」
 「え?」
 「…殺したかと思った」
 レイはうつむくと、嗚咽を漏らした。
 アンディはためらいながらも、そっとレイの頭を撫でた。
 「…血が顔にかかったから」
 「それはレイの刀を振る勢いがあったからだよ」
 レイは乱暴に涙をぬぐうと、顔を上げた。そして、コートを脱いでアンディに渡す。
 真正面から斬られたアンディの服はただの布きれ同然だったので、ありがたく受け取った。
 とたん、意識が遠くなった。
 (疲れたからかな)
 アンディはスッと眠りについた。

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.218 )
日時: 2012/07/08 16:34
名前: 黒猫 (ID: jX/c7tjl)

 目を開くと、見知った顔が見えた。
 「リュー?」
 「お、起きたか」
 リューはコップを渡してきた。アンディは受け取って、仲の液体を口に含んだ。
 「—ゴホッ」
 口の中が熱くなって、たまらずアンディはむせた。
 「何…ゲホ、アルコール?」
 「体が温まっていいだろ。文句を言わず、飲め」
 リューは悪びれた様子もなく言った。仕方なく、ちびちびと飲む。
 「ここは…?」
 「俺の縄張りの端にある小屋。いきなり連れ込まれたもんだから、応急処置程度にしかできなかったけど…その様子じゃ、大丈夫だな」
 それから、リューはため息をついた。
 「前にレイに助けてもらったから、これでチャラだ。感謝しろよ」
 「どうも」
 そっけなく答えたアンディはレイの姿を探した。
 「レイなら今外にいる。…訊いてもいいか?」
 「何」
 リューは口をへの字に曲げながら、
 「お前、レイに何したんだ」
 アンディは一瞬何を言われているのかわからなかった。
 「レイが泣きそうな目をして俺のところに来た。あいつが泣きそうになるなんて、お前いったい何を」
 「別に。ただ、話を聞いたりしてやっただけだよ」
 「そうか…あのさ、お前レイのこと好きなのか?」
 むせた。だが、アルコールのせいじゃない。
 アンディはリューをにらんだ。
 「何を突然……」
 「いいから答えろ」
 「…わからない」
 嫌いではない。ただ、こんな感情を持つのは初めてだから、好意と呼べるのかと聞かれたら首をひねるしかないのだ。
 「ふーん。ならいい。言っとくが、あいつは性格悪いぞ。人使いは荒いわ、暴言は吐くわ…悪魔だ」
 リューは遠い目をしながら言う。
 「執念深いし優しくないし、外見は儚げですごく綺麗だが、女らしくないな。体格はすごく華奢な少年みたいで!?」
 リューの頭に小石が当たった。
 「…悪かったな。少年みたいで」
 レイは無表情のまま、悪態をつく。
 リューはあわてて、
 「いつからいた!」
 「…女らしくない。…自分が男らしくないからって、人にあたるな。愚か者」
 「ぐ…表に出ろ!」
 ノアは2人の言い争いを無視して、アンディのところに行った。
 「無事でよかったよ。あの2人なら無視していい。どうせ、レイが勝つし。…それにしても、仲がいいね」
 ノアは意味ありげに言う。
 アンディは立ち上がると、少し大きめの服—リューのだろう—を着たまま、レイの手を掴んだ。
 「本部に戻るよ、レイ」
 「ちょっと待て!そいつとの戦いはまだ終わって」
 リューの声を背中で聞きながら、アンディは部屋を出た。
 (いらいらする)
 アンディはレイの手を引きながら、そう思った。
 本人は気付いてないが、それは嫉妬と呼ばれる感情だ。





 本部に戻るまでそれは続いた。


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