二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ONEPIECE -海姫- 建て直し!!
- 日時: 2012/03/13 12:58
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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海に愛された不老不死の少女
700回目の夏を迎える時
海への道は開かれる
海に嫌われる悪魔の実
ただ1人海に愛されるその実を
〝ウミウミの実〟と呼ぶ
その実を食べた者は海に攫われて、
700年目の夏まで老い、死ぬこともできずに
——直に海に攫われる少女
海に愛されたせいで
人とともに死ぬ事が出来ぬ、
哀れな海の姫—
√建て直し完了
一度更新は止まりましたが立て直しという形でまたスレをたてさせていただきました。
更新を待っていた人たちには頭があがりません。
どうかまた、この物語とセナ、そして私を宜しくお願いします。
√本編【未完】
微原作沿いだがほとんどオリジナル。
少しエース寄りだけどエース〝落ち〟ではないので恋愛要素ほぼなしな連載。
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一度に読みたい方はこちら【>>1-43】
√前スレでお世話になったお客様
・。*星空姫*。・様/氷兎様/なまくら将汰様/ゆえ様/凪様/ハノ様/ランランルー様/葵様/何でも様/Aerith様/星兎様/霧火様/月那様/白樫様/莉央様/Dr.クロ様
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- Re: ONEPIECE -海姫- 建て直し!! ( No.39 )
- 日時: 2012/03/11 15:56
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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「リ、ル……?」
視界が、真っ暗になる。返り血が、私を染める。
ぐて、とリルが私に倒れて来た。
「……セ、ナ姉……無事、なの?」
「私は無事よ!そんなことより手当を…っ」
「………、ごめんね…。ぼく、…戦争、起こしちゃった…」
「そんなのいいわ!いいから、はやく、…手当を…っ」
リルは微笑みながら私に抱きつく。
血がついちゃうけど……と呟いて、リルは私の背中にぎゅうっと手を巻き付けた。
「ねえ。ぼく、セナ姉がすきだよ…」
「……っ私も好きよ………だから死なないで……」
「ぼくに、死んで欲しくないって言ったよね…?ぼく、嬉しかった」
リルの名前を、呼ぶ。
涙が流れて来る。
「泣かないで………。ぼく、死んじゃうけど……泣かないで」
「死ぬなんて言わないでよ…!!死なないでよ!お願いだから…ッ」
「…ぼくを好きでいてくれて、ありがとうね………」
「ぼくは、幸せだったんだ。本当に。」
リルが、ゆっくりと目を瞑るのが肩越しに見えた。
死なないで、と願った。けれど願いは届かずに。
「…リル?……リル、いやよ。いや、死なないでよ…」
涙が次々と零れ堕ちる。
ただ、重力に逆らわず。
「いや、いや…!いやだいやだいやだ…!
いやああああああああああああああああああああああああああ!」
私の、せいだ。
私が、リルを、
この灰色の猫を。
————————殺した。
私が、
私が殺した。
私があの時後ろの男に気付いていたら。私がリルを停めていれば。
私が代わりに死んでいれば。
リルは、死ななかったのに。
ずっと規則正しい心臓の音をならして、
今を、未来を。生きていたはずなのに。
ごめんね。痛かったね、恐かったね。もっと生きたかったよね。まだ15歳だよね。
もっと幸せになりたかったよね。
奴隷なんかやめて、幸せに暮らす未来を描きたかったよね
「リル……ッ」
私の声は、リルと同じ色をした灰色の屋根に吸い込まれ、やがて消えて行く。
ごめんなさい、
ごめんなさい、と何度も謝るけど
一生リルは生き返る事なんて無い
私 が リ ル を 殺 し た
だって、そうでしょう?
その時突然、視界が暗くなる。くらくらと、体が揺れる。
必死に瞼を開けるけど、まだ辺りは暗い。
ずん、と暗闇が私を包んだ。
***
「———っ、」
「————〜〜」
「お姉ちゃんッ」
「セナ姉っ」
「……え」
果てしない暗闇が、すうっと避けて、シャボン玉が弾けるように眩い光が私を支配する。
—今さっきのは、夢?
—そうよ、きっと夢だわ。
目の前には、私とよく似た顔をした少年と、ふわふわとした紙を一つ括りにした猫のような少女が居た。
——セラ、と・・ミル?
まだ覚醒しきっていない頭で、ぼや〜っと考える。2人は私が起きたことに、喜んでいるようだ。
「大丈夫?お姉ちゃん…っ」
「よかったぁ〜……心配したよ?」
朧げに揺れる視界に移る2人は、心底安心した様な顔を見せる。
まるで、さっきまで私が死んでしまいそうになっていた、と言うように。
—死んでしまいそう?
—・・死ぬ?
「そうだ!リルは!?リルはどうしたの?!」
すぐに飛び起きて、あの灰色の猫の事を尋ねる。しかし2人はその言葉を聞いた途端、顔を伏せた。
「……ねえ?嘘でしょ?あれは、夢だったんでしょ!?そうにきまって……」
「お姉ちゃん。」
「…………!!」
「夢じゃ、無いよ。リルは———・・」
嘘、嫌だ。聞きたくない、と耳を塞ぐ。
セラは私をじっと見つめると、そっと耳を塞いでいる手をのけた。
「聞いて。リルは、……死んだよ。」
「嘘、でしょう。だってあれは夢で……!ねえっ、リルは何処なの?リルを見せて!」
ミルは沈んだ顔をして、「……セナ姉、こっちに来て」と私の手を引く。
その行動に、セラは反抗している。
「ミル!まだ駄目だよ!今見せたら……!」
その言葉もまるで聞こえていないようにミルはセナを誘導する。
ぎいいい・・と開けられたドアの間を覗くと、白い部屋があった。
白い布を被った人が眠っている。
ミルは、手をそっと合わせて一礼すると、白い布をそっととった。
「…………っ」
リ、ル。
青白い顔をして、眠っている。堅く閉じられた目は、二度とあきそうにない。
顔にそっと触れると、驚くほど冷たくて、手をすぐに引っ込めた。
起きて、と身体を揺らしても、リルは目を開けない。
「起きてよ」
起きて。そう願うけど、リルはついにおきる事は無かった。
知っていた。夢じゃないと、現実だと。
だけど、信じたく無くて。
「……ごめんなさい、…ごめんなさいっ」
でも、立ち止まってはいけない。
此の子が求めた自由を、私達がつかみ取りたい。
「私、行かなきゃならないの。」
リルの瞼にそっと唇を重ねる。
「ミル、ごめんなさい。私、守れなかった」
唇をそっと話して、ミルに向かい合って謝る。
ミルは、淡く微笑んで、
「いいの。セナ姉のせいじゃない…。
あたし、セナ姉を守った姉を誇りに思うわ」
こう言った。
ミルの声は少しかすれていたけれど、何処か堅い決意をふくんでいた。
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- Re: ONEPIECE -海姫- 建て直し!! ( No.40 )
- 日時: 2012/03/11 16:00
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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白い部屋を出ると、セラが私を待っていた。
血だらけの床に裸足で足をつく。
「……行こう、セラ」
「お姉ちゃん、渡したいものがあるんだ」
「・・・・?なに?」
セラは私に蒼い刀を差し出す。
蒼い昇り龍が描かれているそれには、ただならぬ力があることが読み取れる。
「——〝水龍〟。昔、貰ったんだ。黒いマントを被っている男の人に、戦う時が来たら、お姉ちゃんに渡せって…。」
「…綺麗、だね」
「うん。とっても綺麗。ね、お姉ちゃん受け取って」
「……うん、ありがとう。」
水龍。海を感じさせる。私の髪と同じ色をした刀を、すうっとぬく。
綺麗な、直刃。
滑らかで、それでいて切れ味もよさそう。
「行こう!」
「……うん」
私は、知らなかった。
黒いマントの男の正体を。考えていれば、分かったはずなのに。
セラは、走りながら考えていた。
(そういえば、お姉ちゃんに1つ言うの忘れてた。…まあ、いいか…)
——〝我が名は、ジン。この世界の権力者〟……
***
蒼色の刀が、空を切り、緋の中を舞う。ぼろぼろになる身体も気にせずにただ一審に刀を振るう。
——私は、緋の中に居た。周りに屍が増えていく。心は痛むが、私は此処で立ち止まるわけにはいかなかった。
「やめてくれっ!おれには、せがれが……」
顔を青ざめて私に謝罪する奴もいた。子供がいる、と言う人もいた。
私にだって、故郷があった。帰る場所が、在った。
——蒼ノ国、が。
なのに、なのに。蒼ノ国を滅ぼしたのは、沈めたのは。
「……貴方達じゃないの。」
ザシュッと音がした。緋色が私を囲んだ。目を、静かに瞑る。
「…………運命は、残酷ね。」
また走り始める。ミルは情報収集に、セラは別の場所で出口を探している。
気づけば、もう周りには敵が居なかった。
「……ね、きみ」
「…………!?」
急に、声をかけられる。低くて、まるで鐘の様な重い声。
ばっと振り向くとそこには、黒いフードを被った少年が居た。
「誰、」
「まあ、そんなことはいいでしょう?きみさ、強いんだね。けれど……もっと強くはなりたくない?」
「…え?」
「灰色の猫を失くしてしまったから、せめて自分と瓜二つの少年を、亜麻色の猫を助けたい。そうでしょ?」
「な、んでそれを……」
そう聞いた瞬間、男の唇はにいっと弧を描く。ぞくっと寒気が走る。
「ふふ。ぼくは、知っているよ。世界のすべてを」
「!?」
「この実を、食べて御覧。皆を救えるような力が手に入る。ほら、きみの目を同じ色でしょう」
蒼い、ぐるぐる模様の入った林檎のような実を渡される。
強くなれる。守ることが出来る。恐る恐る手をつけると、ひやりとした。
ちゃぷちゃぷと音を立てる不思議な林檎を手にとる。
「食べてごらん?力が欲しいんでしょう」
フードの中で、紅い目が私をギラギラと見つめている。
時々見える濃藍の髪の毛。私の蒼より、暗くて沈んだ色。
藍色をさらに濃くした、濃藍(のうあい)。
「……ほんとう?これを食べれば、強くなれる?」
「うん。なれるさ絶対に。……信じるか信じないかはきみ次第だよ」
少年は私の頬に口付けをしてから、何処かへ消えた。
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- Re: ONEPIECE -海姫- 建て直し!! ( No.41 )
- 日時: 2012/03/11 16:01
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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信じられなかった。こんな奇妙な実を食べて強くなれるわけがないと思っていたし、初めてあった少年、——しかも怪しい——の言う事なんて聞けるわけがなかった。
——今までの私ならば。
だけど、何故だろうか。あの少年から不思議な力が出ていた。
オーラというのだろうか、その力は私をその気にさせたのだ。
——少年は信じれる。何故か、なぜかそう思ってしまったのだ。
私は、林檎をまじまじと見つめると、歯を立てた。
そしてそのまま力を下に流して、噛み切る。
———白雪姫は、魔女から貰った毒林檎を一口かじりました。———
しゃく、とそう音がしたかと思うと、その実はまるで力が無くなったかの様に、しゅうっと萎む。
————すると、なんということでしょう。———
あまりの不味さにすぐにごくりと飲み込むと、急に蒼い光が私を覆った。
———白雪姫はその場に力が無くなったかのように、———
「なに、これ…」
———倒れたでは、ありませんか———
急に眠気が襲って、目の前が真っ暗となった。
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- Re: ONEPIECE -海姫- 建て直し!! ( No.42 )
- 日時: 2012/03/11 16:04
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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少年は、フードを脱いだ。後ろで人———セナ———が倒れた音がしたのもお構いなしに、ふふっと笑う。
無造作な濃藍の髪が揺れ、血の色をした目が面白そうに細められた。
「知ってる?白雪姫は、王子様の口付けで目を覚ますんだ……」
望みの終焉は、すぐ其処に。少年は、口角をあげて頬を持ち上げる。ああ、面白い。
「ねえ……、海姫様?」
少年は振り返る。
視線の先は、セナの手の先に転がった、蒼い実だった。
少年は、水に囲まれて姿を消した。
はやく、はやく
あの姫を此の手のうちに。
ぼくのものに、
何としてでも。
***
夢を、みた。
蒼い光が私を指すようにきらきらと光る。その中に私は居た。
「此処、何処……?」
そう呟くと、ふわりと私を水が包んだ。
少し香る潮の匂いに、海水だと分った。
何故か、とても懐かしい。この匂い……
ああ、そうだ。蒼ノ国の、海の匂い……
涙が零れてきた。
この匂いに、もっと包まれていたい。海の、懐かしいこの匂いに。
〝そうは、いかぬよ。海帝の、次期 妃よ……貴様は選ばれたのだ。海帝に〟
その声は、セナに聞こえてはいなかった。
***
〝きゃははは♪起きた?〟
少女の、笑い声。
朦朧とする意識の中、視界に黒い髪の少女を捕らえる。
黒いゴシックロリータにツインテール。
ブラウンのアイシャドーに紅い目。唇は、綺麗なローズピンク。
——お人形さんみたいだ。そう、思う。
〝次は貴方がフィーの主ね♪〟
「……!貴方は、誰……?」
少女はローズピンクの唇の端をにいっとあげた。
目も細めて、心底、楽しそう。
ぞくりと背筋に冷たいものが走ったけれど、そんなこと、どうでもいい。
〝きゃははは♪睨まないでよ♪〟
「答えなさい……!」
〝こわーい♪フィーは貴方の食べた悪魔の実に宿る悪魔よーん♪〟
「あく、まのみ……?」
それって確か、食べればたちまち能力が得られるが
そのかわりに海に嫌われるって言う……!
そんなもの、私は食べていない。
〝滑稽だねぇ♪食べたじゃんか、悪魔の実♪〟
少女は私のおなかを指差す。
——……「もっと強くはなりたくない?」
も、しかして。
あの蒼い海を連想させる実は。
膝を、つく。がくがくと、腕が震えた。
もう、遅い。わたしは実を食べてしまったのだ。
〝やぁっと思い出してくれたァ?〟
「じゃ、じゃあ私もう、泳げないの?」
〝んーん♪貴方が食べたのは海を操るウミウミの実。何千年前からある此の世で一番尊く、恐い実♪ヤミヤミの実をも凌ぐ最強の、実♪〟
「ウミウミ、……海を操れるから関係ないのか……」
さっすが!物分りがはやーい、と、少女は笑う。
少女は深い、漆黒を揺らして唇に弧を描く。
最強の実、正直恐い。そう思っても、もう遅いのだけれど。
〝だけど、ひとつだけ欠点があるの♪それは歳がとれ……〟
ドガアアアアアアンン!
少女の声を遮って、爆音。
少女は笑みを深めた。「もう、さよならの時間だ♪」
そういいながら軽やかにステップを踏む。
すると、狼が私の前に現れる。
〝それはハクって名前の神狼♪此れから貴方の使い魔になるわ♪〟
「——…貴殿が次の主であるか。名をなんと言う。」
「……!せ、セナよ!」
「そうか、主。我は貴殿の使い魔のハクである。」
「……ハク、ね……。わかったわ。」
〝きゃははは♪じゃあねぇ♪あっ、ちなみにフィーの本名は…!〟
——ラビリンス・シーナ・ラフィネ♪貴方の中に潜む悪魔♪
その刹那、辺りが光に包まれた。
意識が遠のく中、思う。そういえば、私は。
〝だけど、ひとつだけ欠点があるの♪それは歳がとれ……〟
あの言葉の続きを。
聞いていない。
(今気づいていれば)
- Re: ONEPIECE -海姫- 建て直し!! ( No.43 )
- 日時: 2012/03/13 12:57
- 名前: 朔良 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)
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暗闇から、明光へ。
目を開ければ、私の周りには相変わらず屍が落ちていた。
それに驚きもせず、私は立ち上がる。
すると、ふと違和感を感じて足元を見る。そこには水となった自らの足だったもの。
ああ、これがウミウミの実。その、能力。
「……行かなきゃ」
強くなりたい。この能力で、セラ達を助けたい。
セラから渡された刀——水龍を手に取り、鞘をぬいた。
どこまでも青い、刀身。ひやりとしたそれは、まるで今の私の心。
自嘲気味に笑って、歩み始めた。
***
「お、姉ちゃんッ……!来たら駄目だ!」
建設途中である塔の最上階。
セラが叫び狂った。セラの足元には血が広がっている。
その血の持ち主は、——ミル。
ミルが荒く息をしながらセラに寄り添っている。
ぼんやりと焦点の定まらない目には光など映っていない。
「ミル、如何してこんなことに……!」
「僕だよ」
ミルの元へ駆けつけた途端、低く重い声がした。
あのときの、声。私に実を授けた男の、声。
「僕がやったんだ。本当人間は脆くてすぐ壊れちゃうからつまんないな。そう思うでしょ?セナ」
「貴方がやったの……!?貴方が、ミルを…!」
「そうだよ。何か、異議があるみたいだね。」
男はにっこり笑った。気味が悪いほどに口を歪めて。
ミルのわき腹から、大量に血があふれ出してくる。
リルは死んだ。ミルも?ミルも死んでしまうの?
恐ろしくなって、ただミルの名を呼んだ。涙が零れ落ちる。
「セ、ナ姉……泣かな…、いで」
「ミル!しゃべっちゃだめ!こんなところさっさと出てお医者さんに!」
「い、いよ、いらない。あ、たし…どうせ死ぬ、な…ら、セナ姉、が見てくれ…ると、ころで……死にたい…」
「死ぬだなんて…!ミル、駄目!死んじゃ駄目!お願いだから…」
セラが目を伏せながら蹲った。
相変わらず男はにやにや笑ってる。殴りたくなったけど今はミルが先。
涙が止め処なく零れ落ちる。ミルはそれに対して微笑んでいる。
血がドクドクと噴出すのもかまわずに、私の頬に手を添えた。
「セナ、姉……あたしの、こ…とは、も、う、いい…から。逃げ、て?」
「いやよ!私はミルのそばに…!」
「嬉しい、な。そう、いって……もら、えて。あたし、本当……幸せ。けど、ね、セナ姉に…は生き…てて、欲しい。だか、らは、やく、はやく、逃…げて?あたし、セナ姉が生……きててく、れ、たら何も、要らない。」
どうしてそんなこというの?
こぼれる涙も拭わずに、ミルを見つめた。
命のともし火が、弱くなってるのは、医者じゃない私でもわかる。
「ずっと、いえなかった……けど、あたし、セラ、の……こと、好きだった。……もう心残り、はない……よ。セナ姉、セラ。あり、がとう……ありがとう…!!」
ミルの手が、だらりと落ちた。
セラが嗚咽をあげながら泣いている。どうしてなんだろう。
どうして私は何も救えないんだろう。
けれど、にくいのは、あの男。
どうしてミルを殺した?どうしてどうしてどうして…!
「あああああああああああああ゛!!!!殺してやる…ッ!アンタなんて死ねばいいんだ……!!」
歯を食いしばれば、鉄の味がした。
馬鹿みたいに叫び続ける。死ねばいい。オマエなんか、死ねばいい。
水龍を手に取った。体に水を纏い、そのまま海水を男に打ち付ける。
男は海水に包まれてながらもクスクスと笑う。
「効かないよ?」
男はにっこり笑ってこちらを見た。
今度は水龍に海水を纏わせて、男に投げる。
すると、男はクイッと指を曲げた。
そうすると、海水を纏った水龍は———
「がはッ……」
セラを、貫いて、突き刺さった。
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