二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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夏目友人帳 —分かち合うのは—
日時: 2012/05/03 18:43
名前: フウ ◆vauozlQS2w (ID: 4djK7y3u)

ほとんどの皆様にははじめまして! 大昔にここで小説を書かせて頂いてました、フウと申します。今回は夏目の二次にチャレンジです!

○アテンション
・この小説は、フウが別の投稿サイトでアップしていたブツであります。
・オリキャラ、オリ妖が相当でしゃばります。
・文章が長い割には展開が遅いです。
・最初は投稿スピード速いですが段々と落ちていきます。
・超間接的にではありますが、他作品とのコラボがあります。コラボ元を知っていなくても全く問題ありませんが、「クロスオーバーなんて見てられっか!」という方はご遠慮ください。
・荒らし、中傷などはおやめ下さい。辛口の作品評価は大歓迎です。

ではでは、御了承された方々はどうぞ。

オリキャラ紹介  >>17
第一話  >>01 >>02 >>03 >>04
第二話  >>05 >>06 >>07 >>08
閑話   >>12 
第三話  >>13 >>14 >>15 >>16 >>18 >>24 >>25

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Re: 夏目友人帳 —分かち合うのは— ( No.12 )
日時: 2012/04/10 20:59
名前: フウ ◆vauozlQS2w (ID: 4djK7y3u)

急きょ足したエピソードでございます!
やっぱり、短くてもいいから藤原家with白瀬は書いといた方がいいかなあと思いましたゆえ。
今はただ、のちのちやっぱいらなかったじゃねーか的なことにならんことを祈るばかりです。


————……


 流し台に並び立ち、せっせと皿を洗いながら談笑のひと時を過ごす二人がいた。
 藤原塔子と白瀬未幸である。
「ごめんなさいね。お客様を使っちゃって」
そう塔子が例えようもなく優しげに目を細めながら言えば、
「いえ! 一晩お世話になるんですもの。これくらいはお手伝いしないと!」
 ぶんぶんと勢いよく首を振る。その子供じみた動作が可愛くて、塔子はまたくすりと笑うのだった。
 遅い帰りに心配して戸口で待っていたら貴志が見慣れない女の子を連れて来たので、まさかと思いこちらの方が赤くなってしまったが、結局自分の早とちりだった。なんでも、彼女は以前貴志が住んでいた家のご近所さんだったらしい。たまたま今日は、名取周一主演ドラマの聖地巡礼、とかでここに来たそうだ。
 ところが旅館の方で手違いがあったらしく、未幸が申し込んでいた部屋にはすでに他の人が止まっていたらしい。余っている部屋もないので再手続きもできず、半ば追い出されるような形で宿を出た時、貴志と出会ったのだそうだ。
 二人して遠慮気味に、ここに一晩泊めて(もらって)いいかと尋ねてきたのだが、塔子はあっさりと、二つ返事で未幸を迎え入れたのだった。日が出ている今はともかく、夜に女の子が一人で歩き回るような事になれば本当に危ないし、貴志が連れてきた子だ、悪い子ではあるまいと思ったが故のことであった。
 実際、未幸はいい子だった。今のように家事を率先して手伝うし、夫の滋を交えての夕食ではご飯を呑みこむ間もないほど笑ってしまった。
「手際がいいわねえ。お母さまの躾の賜物なんでしょうね」
「えへへへ。あ、洗ったお皿は吹いていきますね」
「まあ、ありがとう。……あら」
 濡れた手をふく未幸の頬に、飛び散ったらしい洗剤の泡がついていた。当人は気付いてないらしい。
 手早く自分も水気をふき取る。
 向かって右の頬に手をあてがい、そっと親指で拭った。
「ほっぺたについていたわよ。気付かなかったかしら?」
 微笑みと共に、そう言った。

 するとなぜか。

 未幸の表情が少しだけ、強張った気がした。
 引きつって、震えた気がした。
 その表情は、思いもよらぬところで小さな怪我をした時、一瞬だけ形作られる痛みの表情にとてもよく似ていて、
「二人とも。風呂が沸いたぞ」
 居間に入ってきたのは滋だった。その後ろには貴志もいるようである。未幸に触れている手が自然に下りる。
「先に入るといい。泊まっている身だからと思わず、ゆっくりつかってきなさい」
「あ、いや、滋さん! 白瀬は腕に怪我を……!」
「だーじょうぶだってー! ちょっとこずえで引っかいただけって言ったでしょー? 心配性だねえなっちゃんは!」
「へ、変な名で呼ぶな!」
 軽やかに笑うその様子には、ほんの少しだけ見せたあの表情の名残は一つもない。未幸は戸惑う塔子にも笑顔を向けた。
「じゃあ、お言葉に甘えて入らせてもらいますね。すみません、お手伝い途中なのに……」
 申し訳なさそうに未幸が笑む頃になって、ようやっと自失状態から立ち直る。彼女が刹那の間に見せた面持ちに、目を奪われるあまりぼうっとしていたのだ。
「え、ええ。いってらっしゃい、未幸ちゃん」
「はい!」
 天真爛漫な笑みを浮かべ、流しから走り去る。右耳より上で結んだ黒髪を弾むようになびかせながら。


————……


 後ろ手にドアを閉め、もたれかかった白瀬の顔は、うつむいているせいで髪に隠れていた。……故に、その表情から笑顔が剥がれ落ちていく様は誰にも見えない。
 重い吐息は長く長く、尾を引く。彼女に似つかわしくない、薄暗いものを吐き出すようなため息だった。
 ずるずると、崩れ落ちるように床にへたり込む。背は丸まりこうべ両腕は力なく垂れ、嘆息と共に生気までも抜け出てしまったのか、微動だにしないまま短くない時が過ぎる。
 皮肉げな笑い声が上がる。
 それはむしろ喉元のけいれんによって発生した音のようで、あれだけ鮮やかに笑んでいた姿はどこへやら、見るも無残な有様だった。
 ぐいっと勢いよく天井を仰ぐ。
 さっぱりとした寂しさがにじむ素朴な笑みが、そこにあった。
 体はさらに沈んでいき、しまいには完全に仰向く形となった。
 乾いた笑い声をもう一度、そして交差させた両腕をまぶたの上に乗っける。
 

 誰にも届かぬむせび声は、夜闇をより深くした。

Re: 夏目友人帳 —分かち合うのは— ( No.13 )
日時: 2012/05/12 10:12
名前: フウ ◆vauozlQS2w (ID: 4djK7y3u)

第三話

 視界が回る。
「ぐっ……」
 瞬間、もやしを思わせる細い杉に手をつくと、見た目に似合わずしっかりと夏目を支えてくれた。こんななりでも、地中に深く潜り、土を掴む根があるのだろうか。
「また立ちくらみか! おい夏目、これを機にお前はもう少しパワーをつけろ!」
 先を行くニャンコ先生は首を曲げ、細く釣り上げた猫目できつく睨みつける。そのさらに上の方で大分小さくなっている白瀬は包帯を巻いた右手を腰、左手を口の横へ当て何事か叫んでいた。
 しかし、間隔がだいぶ空いているからかセミの合唱がうるさすぎるからか、夏目の耳は彼女の声を拾えない。それでも、口の動きから言っていることは大体理解できる。
 ——しっかりしろー、なっつーん。
 誰がなっつんだ。
 うっとおしいと思うと反面、妙に気恥ずかしく胸がむず痒い。
「まだ半分しか来ていないのだぞ! ちゃきちゃき歩かんか!」
 そうニャンコ先生は言うが、このペースは自分じゃなくても速い方だと思う。先生や、塔子さんが用意してくれた原型が崩れるくらい飲料水が詰まったリュックを背負って歩ける白瀬の方がおかしいのではなかろうか。

Re: 夏目友人帳 —分かち合うのは— ( No.14 )
日時: 2012/04/12 22:02
名前: フウ ◆vauozlQS2w (ID: 4djK7y3u)

 試験終了後、あれだけ来るなと強く頼んだのに門前で待機していた白瀬と合流。まさかの校門前で女の子を待たせるという伝説のシチュエーションが成立してしまい、夏目のあとを追ってきた北本、西村、田沼や多軌は前振りもなく現れた見知らぬ少女に言葉も出ない状態だった。
 ……その時、彼女が塔子さん達にしたのと同じ説明をしてくれればよかったのだ。普通に。淡々と。
 なのになぜあんなことをしたかったのか、背後の皆がガン見している中、頬をうっすら赤く染めはにかみながら「夏目くーん、やほー☆」などと言ったので場は一気に修羅場に。
 程度だけでも説明するとすれば、基本冷静な北本と田沼が息継ぐ間もないほど夏目を詰問するくらい、並々ならぬニャンコ先生愛好家である多軌が白瀬の足元に気付かなかったくらい、西村が意味不明な叫び声をあげながら夏目の襟を掴んで激しく揺さぶり続けたくらい、とでも言おうか。
 何とか友人達を振り切り、笑いをこらえて小刻みに震えている白瀬に声を荒らげて問い詰めたがのらりくらりとかわされ、丁度良い時間帯にあった二両電車に乗り込んだ頃にやっと怒りの炎は沈下してきた。降りた先の五ヶ峰村で食事をとったのち、店頭から一歩も引かなくなった先生の為に抹茶味のアイスもなかを買っていると、もう二時を回っていた。それから若干焦り気味で山を歩いているのだが、それでも先生の言う通りまだ半ばなのかと思うと気が重い。

Re: 夏目友人帳 —分かち合うのは— ( No.15 )
日時: 2012/04/13 17:53
名前: フウ ◆vauozlQS2w (ID: 4djK7y3u)

 木々の葉が日光をある程度遮断してくれているが、それでも首筋をあぶる紫外線はすでに熱さを通り越して痛みを感じる。苔むした石造りの階段は気を許せば足を滑らしそうだし、山の入り口に踏み入った瞬間から周りを飛び回っている蚊は追い払うのさえ疲れてしまい、今となってはむき出しの腕等々食われ放題である。

「ちょ、ちょっと休憩……」
「なぬう!? お前は天邪鬼か! 歩けと言った途端にこれか!」

 返答する気にもなれず、たまらず石段に座り込んで長い息を吐いた。膝小僧の上に両腕をのせ、そのさらに上に汗に濡れた額を押しつける。
 ぽてんぽてんとマリのように弾みながら降りてきた先生が、自分の脇を何度も前足で叩く感触も、どこか他人事のようだ。熱で溶けてしまった意識が眠気を感じ、誘惑に負けかけ目蓋が降りていく。

「とおりゃっ!」

 ぺチッ

 首筋に当てられた冷たい何かが脊髄に電撃のような刺激を与えた。
「うわあああぁああ!?」
 反射的に飛びのく。身を反らすといつの間に距離を詰めていたのか、半分以上が空になっているペットボトルを後ろ手に持ち、もう一方の手には湿った水色のおしぼりを握っている白瀬が笑っていた。右と左、頭の高い位置で二つにしばってある長髪が横へ揺れ動く。右耳のイヤリングの石が青く光る。
「どうせ全部は飲みきれないだろうし、冷たいうちに使った方がいいんじゃないかな〜と思って。どう? 気持ちいいでしょ」
 よいしょと夏目の隣に座り込んで、今度は額に押し付ける。さっきは不意打ちだったので驚いたものの、こうしてその冷たさに感じ入るとため息が出る程に気持ち良かった。
「トンちゃんの分も作るからね〜。ちょっと待ちなよ」
 夏目におしぼりを持たせて、下ろしたかばんの中をかき回しながら言う。
「ぬ? 何だ、その珍妙なあだ名は」
「深い意味はないよー。猫ちゃんなのにブタみたいだからさ、豚《トン》ちゃん」
「なっ、……何をぉおおー!?」
 飛びかかってきたトンちゃん、もといニャンコ先生の右フックを大げさな身振りでかわす白瀬が弾けるような笑い声を上げた。
 ……きっと、内心は先を急ぎたいと思っているのだろうに、こうやって先生と戯れながら自分を待っていてくれている。そのちょっとした気遣いが胸に染みた。

Re: 夏目友人帳 —分かち合うのは— ( No.16 )
日時: 2012/04/14 19:23
名前: フウ ◆vauozlQS2w (ID: 4djK7y3u)

少し遅くなりましたが、参照100アクセス突破しました!見に来て下さっている皆様、本当にありがとうございます!


「……白瀬。少し聞きたいことがあるんだ」
「はいよー。私が答えれる範囲でいいならなんでもどうぞー」
 先生の右フックを事もなげにかわしながら、白瀬は夏目へと視線を流す。
「依頼でおれに会いに来た、って言ってたな」
「うん。言ったね」
「……一体どんな仕事なんだ? 妖の頼みを引き受けるなんて、聞いたことがないんだが」
 祓い屋ではまずないのだろう。かといってそれ以外妖に関する仕事は思い浮かばないのだが。
 んん〜と顎に手を当てながら、先生のタックルをお辞儀する形で回避する白瀬。背後からの攻撃に即応するあたり、背中に目があるかのようだ。
「強いて言うなら何でも屋かなー。だから仕事の内容ってーとまちまち。答えになってないけど、どんな感じっていったら、願いを叶えてもらいに来た客をアルバイトとしてこき使うようなとこだね。もー、本当にひどいんだから」
 つまりはへんてこな店ってことか。
「店長ってば本っ当に人使い荒いんだよー!? 血反吐吐きながら仕事終わらせたらすぐはい次あっちー、んじゃ次こっちーって! おかげで東奔西走、南船北馬と走りっぱなし! たまには休日くらい与えろー!! あ——くっそおおぉお!」
 天に向かって白瀬は悔しげに叫ぶ。その様子に少し引いている夏目に代わり、彼女へのアタックを断念した先生が負け惜しみのように口の端を吊り上げた。
「ふん。おうちに帰れない程しごかれているということか。さぞや親が恋しいことだろうな?」
 あはははははははは。
 白瀬は笑う。
「そうだねー。恋しいねー。もう帰れないからねーあそこには」
「何だ。家出でもしておるのか?」
「うんにゃ。そういうのじゃなくてね」

「父さんと母さん、もう私のこと覚えてないから」


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