二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- NARUTO─木の葉忍伝
- 日時: 2012/08/01 08:31
- 名前: 近衛竜馬 (ID: fxK7Oycv)
ども。はじめまして近衛竜馬です。前書きとか書く場所見当たらなかったんで、小説と同じところに書かせてもらいます。
ここのサイトは、利用したばかりなんで、使い勝手がよくわからないんですが、まぁ、それなりに楽しんでもらえるような小説を書けたらなぁと思います。
で、この小説はNARUTOの二次創作で、『木の葉隠れのあらゆる不幸な出来事が起きていなかったら』というIFな物語です。
原作で死亡したキャラが生きてたりしますんで、そういうのに嫌悪感を示す方はお気をつけて
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では、↓が本編です。
忍五大国、火の国の木の葉隠れの里で一人の赤子が生まれた。名前はナルト。木の葉隠れの里を纏める火影、波風ミナトの長子だ。ナルトが産まれる際に妻、クシナの中に封印されている九尾が暴れだすのではないかと里の上役達は危惧したが、それは杞憂に終わった。何故なら九尾はクシナに封印されていらい、人が変わったかの様に大人しくなったからだ。九尾は何時しかクシナとミナトの身を案じるようになり、彼もナルトの誕生を祝った。
「い、痛かったってばね……ミナト。ナルトはどこ?」
「ここにいるよ。俺達の息子だ!」
『クシナ……よく頑張った。儂もナルトの誕生を嬉しく思う』
クシナはミナトと九尾にお礼を言った後、深い眠りの中へ誘われた。
三年後────
「とーちゃん!抱っこー!」
三歳になったナルトは二人に大事に育てられていた。
「ん!ナル君は可愛いねー?ほーら高いたかーい!」
キャッキャと喜ぶナルトに、思わず顔が綻んでしまうミナト。それを見てクシナも表情を綻ばせている。そんな時だった。
「四代目様!!仕事をほったらかして何息子さんと遊んでいるんですか!?職場に戻りますよ!?」
どうやら、ミナトは、仕事を放って息子の元へ来ていた様で、それを知ったクシナはナルトを取り上げた後、ミナトに拳骨を食らわした。
「ちゃんと仕事しなきゃ駄目だってばね!!もうっナルト〜?駄目なパパですね〜」
「とーちゃん仕事しなきゃ駄目だってばよ!」
「ナ、ナル君に怒られたー!!」
ミナトは瞬身の術でその場から逃げるように消え去った。
ミナトは職場に戻り、ナルトが元気に育ってくれた事を喜ぶ。親馬鹿だというのは自覚している。しかし────
「可愛すぎだよあれは!!」
親馬鹿火影は机にもたれ掛かり、暫く悶えていた。
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.6 )
- 日時: 2012/07/09 09:23
- 名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)
時刻は午後六時。火影邸は現在、宴会が行われている。その理由は単純で、ナルトの四歳の誕生日だからだ。ミナトは、自分やクシナ、ナルトの友人を家に招いて誕生日パーティを開いている。その出席者はうちはの兄弟とその両親に、ミナトの上忍時代の部下三人。そして、木の葉隠れの英雄とされている、木の葉の三忍も呼んでいる。呼ばれた大人達は、ミナトの親馬鹿加減に呆れてもいたが、素直で元気なナルトを見ると、自然と表情が綻んでいた。
「ナルト!爺ちゃんだ、爺ちゃん。言ってみろ」
「爺……ちゃん?」
ナルトにミナトの師匠である自来也が自身を祖父と呼ぶように促す。確かに弟子の子供という事で、孫、というのも可笑しくない。だが。
「ナルト、その人の事はエロ仙人って呼んで良いわよ」
クシナが余計な事を言ったせいで、ナルトの自来也に対する呼び名がエロ仙人、で定着してしまった。
その後、ナルトとサスケが二人で遊んでいると一人の女性が二人に近づいてきた。
「うふふ!君達可愛いわねぇ?私の事お姉ちゃん、って呼んでね?」
黒髪の女性はナルトを抱きかかえると頭を撫で始めた。しかし何故だろうか。女性だと言う割には背中に当たる感触が女性のそれではない。
「大蛇丸……その年でお姉ちゃんはねぇだろのぉ?それにお前は『男』だろ」
自来也が言った言葉をナルトが理解するのは時間がかった。何故なら、大蛇丸の容姿は、女のそれでしかなかったからだ。
自来也の言葉に気づいたナルトとサスケはどうしたかと言うと、それは勿論。
「ぎゃー!オカマだってばよー!!は、離せぇぇぇ!!」
「ナルトを離せ!オカマー!」
大蛇丸の腕の中で暴れるナルトと、ナルトを救い出そうとサスケが大蛇丸をポカポカと叩く。その様子は見てて微笑ましい様な、子供達を助け出さなければいけない様な、そんな感じだ。結局、ミナトによって救出されたナルトは九死に一生を得た、そんな様子で泣き出してしまった。
「い、痛いってばよぉ!!」
「だーれが、おばちゃんだってぇ?もう一度いってごらん?」
現在ナルトは妙齢の女性に頭に拳をぐりぐりと捻じ込まれ、お仕置きをされている。その理由はナルトは女性の事をあろうことか『おばちゃん』と言ったからだ。しかしそれは決して間違っていなかった。女性の名前は綱手。木の葉の三忍の紅一点である綱手は現在四十二歳。術で若い姿に変化しているが、立派なおばちゃんである。
ナルトは三忍に存分に可愛がられた後、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
「あ!カカシにーちゃん!!」
ナルトはカカシの元へと猛ダッシュして、飛びつこうとした。カカシがナルトに気づいて振り向くと同時に、その腹にナルトの頭が減り込む。
「ガフッ……ナ、ナルト……?」
カカシはそのまま倒れ、ナルトがその上に乗っかり笑顔を浮かべる。
この間の一件以来、ナルトの中でカカシの株が一気に急上昇した為に、カカシは火影邸へ来る度にこの様に飛びつかれている。その時、ミナトがカカシの事をジト目で見ていたのは、カカシも苦笑しざるを得ない。
「……カカシを押し倒すとか、君元気すぎだろ?」
二人を覗き込む様に見ていたのは左目に眼帯をした、うちは一族の青年だ。名前はオビトといって、カカシと同じくミナトの元生徒で、隣にいるリンもその一人だ。
「君がミナト先生のお子さんか。俺の名前はオビトだ。よろしくな、ナルト君!」
「私はリン。カカシ君随分懐かれちゃってるね?」
二人はナルトに自己紹介をし、暫く遊んだ後、共にミナトの元へナルトを送りに行った。
誕生日会の翌日、ナルトは両親に連れられて、里外れにある、岩山の洞窟へと連れられていた。その場にはナルトにとって見覚えのない忍び達が数名が何かの準備をしていた。今日はクシナの中から九尾をナルトの中に移す儀式が行われる日だ。本来、九尾を始めとする尾獣を封印された忍び達、所謂人柱力は体内から尾獣を抜かれると死んでしまう。だが、クシナの場合は別だ。
波風クシナ、旧姓うずまきクシナは元々うずまき一族の出身で、その一族は全員生命力が高く、一族が暮らしていた里は長寿の里、と呼ばれていた。
そして何より現在クシナの中に封印されているクラマは、クシナやミナトの事を敵として認識してない。つまりクシナに死なれるとクラマとしても後味が悪いという訳で、少しだけクシナの中に自分のチャクラを残しておくことで、クシナを死なす事なく、自分がナルトの中に移る事が出来るのだ。
「母ちゃん……」
ナルトが不安げな表情でクシナの顔を見つめる。事前に説明は受け、九尾の事も知っている。だが、それでも四歳のナルトに伸し掛る恐怖と不安は半端なものではない。
「大丈夫だってばね!九尾は見た目は怖いけど中身は良い奴だし、きっとナルトの事を大事にしてくれるわ」
口ではそう言うものの、やはりクシナも不安を隠せないらしい。普段は気をつけているのだが、興奮したり動揺したりする時に出る、口癖が出てしまっている。
九尾をクシナから取り出す儀式は無事に終わった。次はナルトに九尾を封印する儀式を行う。
『……儂の名は九尾の妖狐、クラマという。厄介になるぞ?ナルトよ』
その声は思ったより優しくて、今にも泣き出しそうだったナルトは安心し、気を強く持った。体内に何かが入ってくる違和感が、こそばゆくて、腹あたりが熱くなったが、特に拒絶反応などもなく、儀式は無事に終わった。
二年後────ナルト六歳。
「ん!ナルト。クラマのチャクラを使うのが上手くなったね!」
ミナトは手加減をしながら手裏剣をナルトに向かって投げる。ナルトはそれをチャクラを解放しながら、クナイによって弾く。ナルトは印を組んで解放したチャクラを風に変換し、術を唱える。
「ふーとん!だいとっぱの術!」
口から出る風は豪突風とまではいかないものの、ミナトの放った千本という忍具を吹き飛ばし、次の術へと移行する。
「ふーとん、しんくーれっぱ……ってあれ?」
ナルトの口から出たカマイタチはひょろひょろと宙を舞い、ぽひゅん、という情けない音共に消滅した。
「ん!その術はまだナルトには早いかな?そこは無理せずに真空波に止めるべきだったね」
ナルトは術を発動するとき。チャクラを練るのはなんの問題もない。クラマが自分の分は勿論、ナルトの分までコントロールしてくれているからだ。それでもいずれは自分でチャクラコントロールを覚えなければいけないので、現在練習中である。
問題は印の組み方だ。六歳児だから仕方ないとも思うが、印の数を覚えきれないのである。そして組む速さも、非常にゆっくりで、酷い時は途中で止まってしまう程だ。
「ん!ナルト。今日の修行はここまで!じゃあ、お父さんとどこかに遊びにいこうか?」
「ううん。今日はサスケと遊ぶ約束してるから、また今度だってばよ!」
その夜、ミナトは偶偶旅の途中に里へ帰って来た自来也と居酒屋で酒を飲んでいた。
「先生……ナルトが最近やけに冷たいんです……反抗期ですかね?」
「お前は少し子離れすべきだのぉ……ナルトはしっかり親離れしていくじゃからの……」
ミナトの親馬鹿ぶりは健在であった。
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.7 )
- 日時: 2012/07/10 10:36
- 名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)
五影会談。それはその名の通り、火の国、風の国、雷の国、土の国、水の国の“影”五名が集って行う、会議の事だ。しかし、今回火の国で行われるのはそんな大層な物ではない。精々同盟国である、火の国と風の国のそれぞれの影が話し合う程度だ。その話し合いの内容は今年行われる中忍試験の打ち合わせである。
因みに、四代目風影にはナルトと同い年の息子がいて、その子には兄と姉がいるというので、それを聞いたミナトが是非連れてきて欲しい、といったので風影の子供達も火の国に来るとの事だ。
「ん!ナルト。今日ナルトと同じくらいの子達が家に来るんだけど、仲良くできるかな?」
「おう!仲良くするってばよ!どんな奴がくるんだ?」
ナルトは目をキラキラと輝かせながらこれから来るであろう、自分と同年代の子供達とどうやって遊ぶか、というプランを立て始めた。ナルトは最近、ひらがなとカタカナだけではあるが、字を覚え始め、六歳にしては上手な字で紙にその内容を書き始めた。その姿をミナトは火の国を治める影とは思えない程、緩んだ表情で見つめていた。
「ん。風影殿。この度は遠路はるばるご苦労様です。そのお子さん達が……?」
「ええ、長女のテマリに、長男のカンクロウ。そして次男の我愛羅です」
ミナトは三兄弟に視線を合わせてよろしく、と笑顔で一言言うと、三兄弟は文字通り三者三様の反応を見せてくれた。
「よ、よろしくお願いします!!」
何故か顔を赤らめる長女、テマリ。
「あんたが火影?女みてーな顔して弱そうジャン」
とても元気がよろしい長男、カンクロウ。
「…………こんにちは」
テマリの後ろに隠れて恥ずかしがる次男、我愛羅。ミナトはカンクロウが言った事も特に気に止めず、風影を会議室へと連れて行った。
「おれの名前は波風ナルト!好きなものは一楽の味噌ラーメン!よろしくだってばよ!」
『…………』
三兄弟は別室に案内され、そこにいたのはナルトだった。ナルトは元気良く挨拶をするが、三兄弟からは沈黙という反応が帰って来た。その中でナルトに声をかけたのは我愛羅だ。
「よ……よろしくナルト君。僕、我愛羅……」
我愛羅はおずおずとテマリの後ろに隠れながら精一杯の笑顔を作る。
「おう!よろしくな!我愛羅!」
テマリとカンクロウもナルトに挨拶を終えて、四人は一緒に遊ぶことになった。その間に火影であるミナトと風影は話し合いを行なっていた。
「……あの子が九尾の人柱力、ですか?嘘でしょう?」
隣の部屋で元気に遊ぶナルトを窓越しに見て、信じられないといった反応を示す。実際、ナルトが人柱力になったのは極最近だが、風の国の砂隠れの里では人柱力になった忍は精神を一尾、“守鶴”に支配される事への恐怖から毎晩、碌に睡眠をとる事が出来ず、情緒不安定になりやすい傾向がある。しかしナルトは人懐こい、無邪気な少年で、そんな様子は少しも見られない。
「九尾は……もう悪いやつじゃありませんからね。今じゃあ私や家内、息子に協力してくれてます」
ミナトは使用人の淹れた茶を啜りながら、風影にそれに、と言葉を付け加える。
「尾獣だって、心のある生き物です。無闇に怯えたり、嫌悪したりしないで根気良く話しかけていればいつかは心を開いてくれますよ」
風影はミナトの話を聞いて少しの間黙りこくってしまった。そして、意を決した様にミナトに頭を下げる。
「どうか……ミナト殿にお願いがあります。風影としてではなく、我愛羅の父親として……」
火影と風影の会議は夕方まで続き、ナルトと三兄弟の別れが訪れた。
「カンクロウ兄ちゃんに、テマリ姉ちゃん!!また会おうってばよ!」
ナルトはカンクロウとテマリの後ろ姿に手を振ると、二人は笑顔でそれに応えた。しかし、ここでナルトはある事に気づいた。“カンクロウ兄ちゃんにテマリ姉ちゃん。また会おうってばよ”────つまり、風影の隣に我愛羅の姿は無かった。
「……あれ?」
「我愛羅君はここよ。ナルト」
クシナが、我愛羅と手を繋いでナルトの元へやってきた。ナルトはそれを見て目玉が飛び出そうな程驚き、どういう事なのか訳がわからなかった。
「我愛羅君はね、ナルトと同じで、尾獣をお腹の中に封印されているの。でも、我愛羅君はまだ尾獣と喧嘩したまんまだから、木の葉で尾獣と仲良くする方法を見つける事になったのよ」
クシナは、ナルトに分かりやすく説明し、我愛羅が暫く木の葉で暮らす事を伝えた。
「よ、よろしく……ナルト君」
期間は最長で七年間。尾獣のコントロールの訓練が長引けば、それだけの期間を木の葉で過ごす事になる。
「そっか……我愛羅の中にもクラマみたいのが入ってんのか……よし!俺が尾獣と仲良くする方法を教えてやるってばよ!」
九尾が改心したのはナルトのおかげでは無いのだが────そこは子供の言う事なのでクシナは笑顔で聞き流しておいた。
そして、我愛羅が木の葉で暮らし始めてから五日目。我愛羅の中に封印されている尾獣の守鶴、一尾は未だに我愛羅に心を開くことはないが、尾獣チャクラのコントロールと精神修行なら
既に大方完了していると言っても良い。そこはやはり風影の息子という事もあって我愛羅の筋はとても良いと、ミナトは思う。
「ん!我愛羅君はとっても飲み込みが早いね!これなら直ぐにでも砂に帰れるんじゃないかな?」
ミナトは我愛羅の頭を撫でながら褒める。我愛羅は照れているのか、えへへ、と笑いながら目を細める。
「でも……出来れば、ずっと『おじさん』や、ナルト君と一緒にいたいな……砂にいても、僕、化け物って呼ばれるだけだから……」
そういった我愛羅の表情は六歳の子供がするには、余りにも寂し過ぎるもので、ミナトは心痛の思いだった。決して、おじさんと呼ばれた事が原因ではない。
「我愛羅君がいたいと思ったなら……いつまでもいれば良いと思うよ。砂に帰りたいと思うまで、いつまでもね」
ミナトはそう言って我愛羅に笑顔を向けた後、手を繋いで、火影邸へと戻る。
最近、ナルトに構ってあげていないから、拗ねていないか心配だ。
火影邸────。
「あ!ナルト!兄さんから離れろよ!!」
「へへーん!イタチ兄ちゃんはお前だけのものじゃ無いってばよ!」
ナルトは全然大丈夫だった。むしろ、このままイタチに懐きすぎて、自分を蔑ろにされないか、という不安がミナトに過ぎった。
「あの……火影様?どうかしましたか?」
自分を気遣うイタチの言葉も、今のミナトにとっては優越感に浸っている様にしか聞こえない。重症、いや、最早末期である。
「イヤ……何デモナイヨ」
サスケと一緒にぎゃいぎゃいとイタチの取り合いをしているナルトは、見ていて微笑ましい様な、寂しい様な、そんな感情が胸の中に渦巻いたが、今のミナトには家庭内に波風が立たないようにそっとその場を離れることしか出来なかった。波風ミナトなだけに。
「あ!我愛羅!修行終わったのか?いいなー。最近父ちゃん、俺の修行に付き合ってくんねーから寂しいってばよ!」
今の言葉をミナトが聞いたら、ヘッドスライディングをしてナルトに抱きついただろうが、タイミングの悪い事に、ミナトはもう自室で書類仕事へと移っていた。
「ごめんね、ナルト君……僕のせいで……」
シュン、と居心地の悪そうに落ち込む我愛羅に、ナルトは慌てて、その代わりイタチに修行を見てもらえるから良いと、必死に我愛羅を慰める。ナルトとて、人を嫌な気持ちをさせてまで誰かに甘えたい訳ではないのだ。先程のイタチ取り合い事件は、サスケとは気軽に喧嘩を出来る仲なので、例外だ。
「えっと……なぁ、我愛羅。外いこうぜ!俺達の友達に紹介してやるってばよ!」
ナルトの言葉に落ち込んでいた我愛羅の顔がパッと明るくなって、またすぐに落ち込んだ様子になる。やはり、砂隠れでの経験から、自分の中の一尾のせいで他人を傷つけてしまわないか、という不安があるようだ。
「大丈夫じゃないか?ナルトの父さんとの修行は上手くいってるんだろ?」
「……うん、でも」
サスケの言葉を聞いて、それでも踏ん切りがつかない我愛羅の手をナルトは優しく引っ張って、外に連れて行こうとする。
「もしもの時は俺が止めてやるってばよ!俺ってば、つええからな!」
まだ忍ですらない子供に、そんな自身がどこからやってくるんだ、という横槍は入らない。イタチも、サスケも、我愛羅にもっと自身を持って欲しいと思っているのは同じだ。
「うん……行く」
やっと首を縦に振った我愛羅を連れて、ナルトとサスケ、イタチの四人はにいつも遊んでいる公園へと向かう。今の時間なら、全員とはいかないかも知れないが、ある程度は友人がいる筈だ。
「……あ」
イタチの元へ、小鳥がやってくる。この鳥は、木の葉が飼っている伝書用の鳥だ。
「すまない……任務だ」
えー!?というブーイングの嵐がイタチを襲う。だが、任務は任務。それもイタチの様な優秀な忍となると重要度が増してくる。
「許せ三人共……また今度だ」
そう言ってドロン、と音を立てて白煙と共に消えるイタチ。瞬身の術だ。
「ちぇっ。ナルト、我愛羅、兄さんなんか放っといて行こうぜ」
放っとくも何もイタチはこの場にいないじゃないか、というツッコミが我愛羅の脳内を過ぎったが、言葉にはしない。我愛羅はなるべく人を怒らせたり困らせたりする事をしたくない、優しい子だ。
その後、公園に辿り着いたナルト達は、友達に我愛羅を紹介した後一緒に遊ぶ事になった。
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.8 )
- 日時: 2012/07/11 09:59
- 名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)
鬼ごっこ。それは鬼事の意。言わずと知れた、子供の遊びの定番中の定番。だが、その実体は一切の甘えも許さない、過酷な業(ぎょう)。果てしなく走り続ける事、苦行難行。弱った獲物をじわじわと追い詰める事、悪逆無道。正に、鬼の子が行う地獄のデスゲーム────と、少し大げさに表現したが、それでも子供達にとってこの遊びは真剣勝負といっても過言ではない。特に、将来忍者を志す里の子供達にとっては。
「ひゃっほーう!捕まえてみやがれ〜!」
犬の様な姿勢で走る少年、キバは犬塚一族の子供だ。今使用しているのは四脚の術というその名の通り人間の四足歩行を可能にする術で、犬塚一族の秘伝忍術だ。二本足で走る時より遥かに速く走れるのだが、使用者が未熟だと、こうなる。
「ギャン!?」
体の速さに動体視力がついていけず、公園に生えている木にぶつかり、そのまま鬼によって捕まえられる。痛みと悔しさと恥ずかしさでキバは何も言うことが出来なかった。
「ひ、卑怯だぞ……!シカマル!お前はもう捕まっただろ!?」
「めんどくせぇけどよ。ナルト……こういう作戦なんだよ。悪(わり)ぃが、チョウジが逃げ切るまでそこにいてもらうぜ」
シカマルという少年は、奈良一族の子供だ。彼等の使う秘伝忍術は、自分の影を操り、対象の捕縛や攻撃など、多種多様の使い方が出来る、万能な術だ。しかし、術者のチャクラ量が少ないと、すぐに術が切れて、自分が不利な状況に陥ってしまう。まぁ、今回は唯の遊びなので、心配する必要はない。
「やりぃ!シノ、タッチ!」
ナルトが、サングラスを掛けた少年を捕まえて、してやったりと喜んだ表情を見せる。だが、それは糠喜(ぬかよろこ)びだと、次の瞬間に気づく事になる。
サラサラと、シノの体が崩れていき、その体を象っていたのは虫だった。
シノだと思っていたのは、実は、油女一族の秘伝忍術、寄壊蟲の術で手懐けた、虫達が作った分身だった。そして、背後に、シノが姿を現して、ナルトは即座に振り向く。
「忍びを志すなら、例えどんな状況でも油断などしない事だ……何故ならその隙を狙って罠などに掛けられる可能性があるからだ」
地面に仕掛けられていた、ブービートラップはナルトの足を縛り、近くの気に吊るす。
最早何でもありの鬼ごっこは、夕方まで続き、夕飯の時間になると、それぞれの家に帰っていった。
「ハハ……我愛羅ってば、すぐ捕まっちゃってたな……?ああいう時は、砂を使ってでも逃げなきゃ駄目だってばよ!」
我愛羅の使う術は守鶴の力を利用した、特殊な術だ。本来攻撃にしか使えないこの砂は、我愛羅に掠り傷さえも与えないようにその身を護っている。その理由は正確には分かっていないが、それは我愛羅の母親、加瑠羅の我愛羅を護りたいという願いが篭っているからだという。これは風影がミナトと会談をする際に言った言葉で、ミナトを挟んで我愛羅にも伝えられている。
「でも……僕まだ術の制御が出来ていないから……皆を傷つけちゃうかも」
自嘲気味に笑った我愛羅に、ナルトも苦笑しながらその手を引いて自宅へと戻る。
「そんな事より、今日は沢山走ったから腹が減ったてばよ!早く帰ろうぜ!」
太陽の様に、底抜けに明るい笑みは、我愛羅の心を照らし、闇を少しだけ振り払う。我愛羅が砂に帰るのは、もう少し先になりそうだ。
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.9 )
- 日時: 2012/07/12 15:28
- 名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)
我愛羅は九歳の時に砂に帰り、今、ナルトは十二歳。季節は新しい事が始まる、春だ。場所は忍者アカデミー。ナルトは十歳程からアカデミーに入り、来年で卒業する。
クラスも、一年事に変わっており、今は自己紹介の最中だ。
「うちはサスケ……です。趣味は兄さんとの修業。好きな食べ物はトマト。特技は火遁の術で、夢は木の葉刑務部隊に入る事、です」
ぎこちないながらも、サスケの自己紹介が終わり、いよいよナルトの番だ。母親に習った挨拶の仕方を頭の中で反芻し、その場で起立する。
「俺の名前は波風ナルト!趣味は父ちゃんとの修業で、好きな食べ物は一楽のラーメン!特技は風遁の術と影分身で、将来の夢は火影になって、里の皆を護る事だってばよ!」
とても元気の良い挨拶は、担任のうみのイルカ教員も満足そうに頷いた後、次の生徒の名を挙げて、自己紹介を促した。
「はぁ〜めんどくせぇ…………来年で卒業とか……死ぬわ。まじで」
昼休みに、屋上でアカデミーに入る前から仲の良かったメンバーで集まって、思い思いに話をしていた。そんな中で、ぶつぶつとぼやくシカマルに、親友であるチョウジが話しかける。片手に菓子袋を持っているのは言うまでも無い。
「でも、シカマルは頭良いから凄い忍びになれると思うよ……?」
ポテトの菓子を食べながら隣で言うチョウジにシカマルはそんな事ねぇよ、と謙遜した後で、再び溜息を洩らす。
「ギャハハ!チョウジ!そんなやる気のねぇ奴が凄い忍びになんてなれる訳ねぇだろ!それに、頭が良くたって山賊や他国の忍者と戦え無きゃ、意味ねぇって!!」
キバはそういった後、なぁ赤丸?と頭の上に乗っている自分の愛犬に話しかける。
チョウジとシカマルを嘲笑うキバの隣で、シノが盛大に溜息をついた。サングラス越しで良く分からないが、キバに向かってお前は馬鹿か?いや悪い、馬鹿だったな。とでも言いたげな視線を送る。
「名門一族の出とは思えない程、軽はずみな発言だな……忍びにとって必要なのは戦う力。それは確かにそうだ。しかしその戦いを勝利に導くのは何よりもその頭脳と言える……なぜなら戦闘時にチャクラのペース配分、そして状況の分析をしない者は、すぐに足元を掬われて痛い目を見るからだ」
シノのキバを窘める様な発言に、チョウジは良く分からないような表情を浮かべた後、シカマルはより一層面倒臭そうに表情を歪める。プロの忍びから見れば、シノの言う言葉は尤もだ。だが、忍びですらない、アカデミーの生徒からしてみれば、ただの小難しい、面倒な喋りでしかない。うちは一族の天才の例に漏れないサスケやチョウジ曰く頭の良いシカマルは理解できた様だが。そしてナルトも。
「うん……シノの言う事は何となくわかるってばよ。でも俺ってば勉強はあんま得意じゃねぇからなぁ……」
ナルトはそういうが、実際、ナルトの座学の成績は、クラスの真ん中より少し上程度だ。午前の、自己紹介の後に行ったペーパーテストは、十五問中、十一問正解という少しだけ良い結果を残していて、火影の息子としては足りないだろうが、同年代の子供の中では、平均より上の頭脳を持っていた。それでも、サスケやシノ、くの一クラスのヒナタ等は、座学で、全問正解等の好成績を収めている。シカマルは、鉛筆を動かすのも面倒だ、とテストの最中ずっと眠っていたので問題外だ。
「それは問題無い。お前は頭が悪くても、シカマル等の頭脳の優れている者が作戦を立て、体術や忍術に優れているお前やキバ等がそれを実行すれば、十分忍者としてやっていける。なぜなら……中忍や上忍の中にも、攻撃タイプや頭脳タイプがいて、それぞれに合った任務を言い渡されているからだ。偶に、サスケの様な両方が優れているタイプがいることもあるがな」
シノの言葉に、キバの口からそれは自分が頭が悪いと言いたいのか、という反論がシノの耳に届いたが、シノはそれを無視しながら、売店で買った野菜ジュースをストローで飲む。最近のマイブームは人参味との事だ。
午後の授業が始まり、その内容は木の葉隠れに伝統として伝わる忍組手だ。ルールが一々固すぎる面もあるが、それでも初代火影から、現在の代に至るまで、数多くの忍びがこれを行って力を付けた、とイルカは説明をする。
「じゃあ、秋道チョウジと奈良シカマル!前へ出ろ!」
「先生……あんまり友達を殴ったりしたくないです」
「そんじゃ……先生、俺の場外負けって事で進めてくれ……」
チョウジの弱気な発言と、シカマルのやる気ゼロの姿勢に、イルカは肩を落とす。それでも、試合の後の“和解の印”は忘れさせない。
「ったく……次は波風ナルトと、うちはサスケ!まずは“対立の印”、そして組手が終わったら和解の印をお互いにするんだぞ?」
ナルトとサスケは忍術を発動する時の印を片手でやる、対立の印なるものを、互いに行い、次に体術の構えを取る。二人は、幼い頃から父、或いは兄から忍術や体術、幻術の修業を受けていた。忍組手は、体術だけで行う組手なので、少々不満だが、こうしてお互いの力をぶつけ合うというのは、実は始めての事だ。
「いつもは……父ちゃんやイタチ兄ちゃんに止められて、やれなかったからな。サスケ!手加減は無しだってばよ!本気でやろうぜ!」
「当たり前だ……兄さんとの修業の成果、見せてやる」
両者、中央に走り出し、激しい拳と拳の押収を繰り広げる。サスケの右拳がナルトの頬を掠めたが、それは本当に掠っただけで、ナルトの右足がサスケの腹に反撃を繰り出す。だが、サスケはそれを両手でガ—ドをして、逆に足を掴む。
「ダラァ!!」
サスケはジャイアントスイングの容量でナルトを投げ飛ばすが、ナルトは空中で体勢を立て直して、見事に着地。両者一歩も譲らない戦いに、辺りの空気は静まり返り、その後は両社睨みあいが続く。両者の動きは既に下忍レベルか、それ以上。先に沈黙を破ったのはナルトだ。
「喰らえっ!」
「食らうかよ!」
ナルトは上段の蹴りをサスケに向かって放つが、サスケはそれを余裕で回避する。しかし、その蹴りは囮で、次に行う下段の蹴りこそが本当の狙いだった。
「木の葉旋風っ!!」
ナルトの左足が、サスケの腹を捉え、その身体を吹っ飛ばす。しかしサスケは痛みを堪えながら、地面に両手をついてそのまま、体操の様にバク転で後ろへ下がる。
「……はい、終了。それ以上やると怪我しかねないから、な?」
イルカの呼びかけに、ナルトとサスケは非常に不満げな表情を浮かべる。
両者共にまだ息は切れていない。実を言うと、ナルトが木の葉旋風を放った辺りからが、彼等にとっての本当の始まりだったのだが、その事をイルカは知らない。
「まぁ、お前達の体術は百点をあげても良い。あくまでアカデミー生徒として、だけどな」
実際はアカデミーのレベルでは収まらないのだが、そこはイルカの飴と鞭である。
ナルトとサスケは和解の印を行った後、生徒達の中に混ざった。
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.10 )
- 日時: 2012/07/14 12:23
- 名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)
今は忍者アカデミーの休憩時間。サスケは今、非常に困っている事がある。それは現在進行形でサスケの精神に害を与えている。だが、自分に害を与えている人物、数名のそれは悪気がなく、むしろ自分の事を良く思っての行動故に、邪険な扱いは出来ない。でも、これだけは、小さな声で良いから言わせて欲しい。
「ナルト……助けてくれ」
サスケは、くの一クラスの女子に囲まれながら、その娘達の黄色い声を一身で浴びていた。次々と自分に問いかけてくる、知ってどうなるのかと言いたくなるような質問に答えながら、どうにか逃げ出せないかと、手段を講じる。そして、女子の群れの向こうに、我が親友の姿を見つけ────それはもう、楽しそうにニヤニヤしていた。
「薄情者が……」
サスケの嘆きは、ハイテンションな女子の耳には届かない。
女子に声を掛けられる度に精神がガリガリと削られていくのが分かった。いつの世も、モテる男は辛いものだ。
「……胃に穴が開きそうだ」
一つ授業を挟んでやっとサスケに訪れた本物の休憩時間。机にもたれ掛かりながら隣にいるナルトになぜ助けてくれなかった。という意味も込めて自身の不調を訴える。サスケはアカデミー入学後一ヶ月間。毎日女子の群れに集(たか)られている。初日やそこらの時は良い。サスケだって男だし、女子に人気があるのは嬉しい事だ。しかし、好きでもない女性にいつまでもワラワラと囲まれると、寄って集って鬱陶しい。としか言えない状態になる。
「大丈夫か……?少し休んでるってばよ」
「誰のせいでこうなったと思ってるんだ……?」
決してナルトのせいではない。ナルトのせいではないのだが、自分を助けなかったのもまた事実だ。
もしも胃潰瘍になったら口から血をぶっかけてやる。という最早呪いでしかない言葉を視線に乗せてナルトを睨みつける。
ナルトは苦笑しながら、サスケをそっとしておいてやる為に、教室を出た。決して、サスケの射殺すような視線から逃れる為ではない。
「ナルト君……」
ナルトがアカデミーの修行場で手裏剣の練習をしていると、ヒナタが小さく、消えてしまいそうな声で話しかけてきた。ナルトはちょいちょい、と手招きをすると、丸太で出来た椅子に座らせて、自分も隣に座る。若干距離が空いているのは、ナルトがまだ子供だと言う事が関係している。
「そう言えば、さっきヒナタはサスケのトコにいなかったよな?女子ってば、みんな、ああいう美形が好きなんじゃねぇのか?」
『安心を隠しながらする確認』の後に、女子であるヒナタへと疑問を投げかける。傍から見れば『デリカシーの無い奴だ』と思われるだろうが、今は周りにそんな事を言うような人間はいない。
「私は……いのちゃんやサクラちゃん見たいにサスケ君じゃなくて……他に、『好きな人がいる』から」
それが誰を指しているのかはナルトには分からないが、ナルトは若干のショックを受けた。『それがまさか自分だという事は無いだろう』という『鈍感な思考』は、ナルトの口を勝手に動かしてしまう。
「へぇ、それって『どんな奴』だってばよ?『特徴だけで良いから』教えてくれ。頼む!」
知ってどうなるというのだろうか。そんな考えは思考の隅に追いやって、ナルトは気づかれない用に生唾を飲む。
「その人は……『太陽みたいに明るい笑い方をする人』で……私からしたらサスケ君よりずっと格好良い人……優しくて、『私の命の恩人』なの」
ヒナタは最後の情報を脳内で思い返して、酷く後悔する。なるべく誰だと分からないように言葉を選んだが、最後の一言で水泡に帰した。今ので絶対に、バレてしまった。『拒絶されたら』どうしよう、等と『いらぬ心配』をして、頭から血が引いた。
「へぇ。ヒナタの命の恩人か……駄目だ、心当たりが無いってばよ」
しかし、ナルトは全く『覚えていない』様だった。『自分達が三歳の時』など記憶に欠片程も残っていない様で、『それはそれで少し寂しい』が、一先ず安心した。
「そっか……それじゃ『そいつもきっとヒナタの事好き』だから、これからも仲良くしてあげて欲しいってばよ!じゃあな!」
そういってナルトは『急いで』教室へと戻るが、ヒナタはナルトの去り際の言葉の意味が分からなかった。しかし、ナルトの顔が赤くなっているのを見て、自分の顔が火山のようにボン、と噴火した。
訂正。やはり、『気づかれていた』様だ。でも。
「え……ナルト君が私の事………………キュウ」
ヒナタは動揺と恥じらいの余り、その場で気絶してしまった。その後アカデミーの教員に発見されたヒナタの顔は、どこか『幸せみを帯びていた』という。
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