二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【BLEACH】鬼事——onigoto——
- 日時: 2009/12/05 20:35
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: naBKxD7x)
悲しい事に復活そうそう消去にあってしまったようで…
再び復活させますね^^;
内容などは変えませんのでこれからも読んでやって下さい!
新しく覗いてみてくれた方もこれからお暇なときに読んでみて下さい!!
- Re: 【BLEACH】鬼事——onigoto—— ( No.5 )
- 日時: 2009/12/05 20:38
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: naBKxD7x)
—————Prologue—————
少女は暗い押入れの中からただ息を殺して僅かに開いている襖の隙間から外の様子を窺っていた
少女の目に映っているのは白髪で長身の男と、茶髪で白い羽織を着ている男
そして、床一面は赤い色
その赤色は少女の親類のものだった
男達はいきなり現れて少女の家族を次々に斬り捨てていった
押入れに逃げ込んだのは幼いながらの知恵を振り絞った防御策
それでも、この砦がいつまでももつ物でない事は分かりきっていた
覗いている部屋の向こうで白髪の男が口を開いた
「藍染隊長ー、後始末はボクがやりますから先に出とって下さい」
「うん、分かったよ…ギン」
暢気な口調の白髪の男の提案に不思議そうな顔をしながらも茶髪の男は素直に同意して部屋から出ていった
足音と一緒に気配も消えた事を確認して少女は少しだけ安堵した
次の瞬間白髪の男の言葉に少女は凍りつく
「さぁて、藍染隊長もいなくなったことやし
始めよか?ボクとキミの鬼事を」
「死神舐めたらあかんで?」
笑いを含んだ声音で明らかに少女へとかけられた言葉に恐れをなした少女は押入れの奥の壁へと背中をつけた
——————————このままでは殺される
そう頭では分かっているのに体が言う事を聞かず自分の意思でピクリとも動かす事ができない
暫く少女のいる押入れに一歩も近寄ってこない男に、少女は諦めの思いを浮かべた
——————————あの人は、自分の居場所を知っている
誰にでも分かる結論に辿り着き体の力が抜けた
「あれぇ?ここにはおらんみたいやねー」
わざとらしい口調でそう呟くと白髪の男は何故か家から出ていってしまった
嘘と分かっていてもその言葉に少しだけ安堵してしまう
少女は一つ溜息をついた
「みぃつけた…可愛い子猫ちゃん」
ゆっくりとした声に全身に鳥肌が立つ
溜息と共に下に落ちた視線を上げれば襖の隙間から細い目をした白髪の男と確かに目が合った
「何もせぇへんから…こっち来ぃ」
襖の隙間を少しだけ大きくして男は細く白い指を少女へと差し出す
少女は首を振って押入れの奥へと逃げた
あの手に掴まれば命が散る事が分かっていたから
少女の反応に困った様子の男に外から声がかけられた
「何をしているんだい、ギン?」
「早く出ておいで、今から屋敷に火をかけるよ」
静かな口調で紡がれる恐ろしい言葉
茶髪の男と白髪の男は少女の家に火を放つつもりらしい
「後ちょっとだけ待っといて下さい」
少し大きな声で茶髪の男に言葉を返した白髪の男はまた、少女に目を戻して諭すような口調でこう言った
「ほれ、はよせぇへんと…キミ、焼けてまうで?」
「いくらボクでもこない幼い子を手にかけたくはないんや」
生きたまま焼かれる
その恐怖に少女は思わず男の手を取ってしまった
そのまま勢い良く押入れから引きずり出され、部屋の真ん中で男と対峙する
部屋には隙間だけでは見えなかった家族の体が点々と散らばっていた
どれも一カ所や二カ所、急所を刺された痕だけが赤く染まっている
それを目にしても全く表情を変えず少女は目の前の以外に長身である白髪の男を見つめた
その視線に若干驚いた様に眉を上げた男はすぐに気を取り直し少女と目線を合わせるように屈んだ
「これから家族の敵を討ちたい思うんなら、ボクを殺したいと思うんやったら」
「キミ、死神になりぃ」
そう告げてにっこりと笑うとスッと少女の頭に手を伸ばし綺麗な黒髪をくしゃ、と撫でた
「じゃ、とりあえずさよならや……また会えるんを期待しとるで、黒猫ちゃん」
少女の乱れた髪を直して立ち上がると背を向けて歩きだしながら男は言葉をかけて部屋から出ていった
少し遅れて少女も窓から屋敷を脱出する
後ろを振り返れば少女の家は紅く燃えていた
人通りのある道へと、死神になるための学校に行くための道へと辿りつくため足を闇雲に進めながら少女は一言呟いた
「ありがとう、狐さん……私をあの牢獄から出してくれて」
「いつかかならず、会いに行きます」
- Re: 【BLEACH】鬼事——onigoto—— ( No.6 )
- 日時: 2009/12/05 20:39
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: naBKxD7x)
【第一夜】———新入隊員・壱———
「はぁ…一体どうなってるんだか」
隊長の執務室で吉良イヅルは大きな溜息を一つ
今日は今期の新入隊員が顔見せに来る日だった
しかし、肝心のその新入隊員がいつまでたってもやって来ないのだ
時計を見ればすでに約束の時刻から半刻程過ぎていた
しかも顔見せ相手である隊長もどこかへ行ったっきり帰ってきてはいない
「市丸隊長…早く帰ってきて下さいよ」
思わず隊長への愚痴が出てしまう
あの自由奔放な隊長に、吉良はいつも振り回されてばかりだった
「吉良副隊長、遅れて大変申し訳ありません——————新入隊員を連れてきました」
やっと扉の向こうから隊員の声がかかり、開いた扉から一人の少女が入ってきた
美しい黒髪を長く伸ばし、背中に流している強気な瞳をした少女
口を堅く噤んでいるのは緊張しているからだろうか
生憎、まだ隊長は戻ってきておらずとりあえずこの場を保つために吉良は微笑を浮かべて少女に問いかけた
「初めまして…君の名前は?」
「名前?さっき捨ててきました」
あまりにあっさりとした少女の返答にあぁそうなのかと頷きかけて思いとどまる
——————————捨てた?
そんなはずはないだろうと思い、初対面の上官相手に冗談を言えるとはなかなか度胸のある子だ、と怒るより先に感心してしまい苦笑を浮かべて少女に関する記述のあった書類へと目を通す
名前がなかった
本来名前が記入されたいるはずの欄には一文字も書かれておらず真っ白で吉良を困惑させた
少女が手を加えたわけでもなく、本当に最初から何も書かれていなかった
「君、これはどういう…「悪かったなぁイヅル、今戻ったんや」
吉良の言葉を遮るように市丸ギンが執務室へと入ってきた
苦笑を浮かべながら頭を掻き、詫びれる様子もない声音で謝りながら
「お?キミが新入隊員の子やね、よろしゅう」
吉良の横に並んだ市丸はやっと少女に気づいたような反応で笑顔を向け、手を軽く振って言葉をかける
「宜しくお願いします」
少女は相変わらずの無表情で市丸に頭を下げた
「市丸隊長、この子…」
「あぁ。名前、ないんやろ?」
少女を気遣う様に小声で話しかけた吉良の心遣いを無に帰すように市丸は笑顔で頷いて普通の声量で先に答えを言った
市丸は少女を見下ろすと笑顔のまま少女の綺麗な漆黒の髪を指さした
「そうやね…綺麗な黒髪をしとるから黒、瞳が猫みたいな形しとるから猫————黒猫でどうや?」
吉良にとっては訳の分からない言葉を並べて市丸は少女に首を傾げた
少女は市丸に首を傾げ返して尋ねる
「名字は?」
「市丸、市丸黒猫…それがキミの名前や」
少女の疑問にあっさりと答え、少女の名前をさっさと決めてしまった
呆気にとられている吉良を置いてけぼりに二人の間で話は進む
「市丸黒猫…オレの、名前」
「そう、それがキミの名前や…イヅル、ちょうそれ貸して」
市丸は少女の呟きに満足そうに頷くと吉良から書類を受け取り名前の欄にたった今ついた名前を綺麗な字で書きしるした
「改めまして。よろしゅうな、黒…ボクの名前は市丸ギン、こっちは副隊長の吉良イヅルや」
少女の事をさっそくあだ名で呼んで、改めて自己紹介をする
ついでのように吉良の事も紹介して頭を下げさせた
少女はさっきと別人のような、華が咲いたような笑顔を浮かべて二人を見、頭を下げた
「これから宜しくお願いします、ギン隊長、吉良副隊長」
吉良は二人の間に漂う初対面ではないような不思議な雰囲気に気づいていないようだった
- Re: 【BLEACH】鬼事——onigoto—— ( No.7 )
- 日時: 2009/12/05 20:40
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: naBKxD7x)
【第二夜】———新入隊員・弐———
「イヅル、今何席が空いとった?」
「確か…三席が最近引退したばかりです」
それは執務室で黒猫をとりあえず椅子に座らせた後の市丸と吉良の会話だった
最近、三席は老化のためその座を退いたばかりだった
なので、今、三席の座は空席になっていた
てっきり四席の者を上げるものだと思っていた吉良は市丸の質問の意図が分からず首を傾げて市丸を見た
市丸は吉良の視線を無視するように黒猫だけを見つめ、にっこりと笑うと黒猫にある提案をした
「黒、お前三席にならへんか?」
「えっ、正気ですか?市丸隊長!」
市丸の言葉に驚いた吉良は間抜けな声で市丸の言葉に口を挟む
その言葉を無視するように市丸は涼しい顔で黒猫の返答を待った
「ギン隊長がオレに向いていると思うなら、引き受けます」
「いや、市…黒猫くんそれは…」
少し考え込んでいる様子の黒猫が出したとんでもない答えに、吉良は今度黒猫の方を向いて制止を求める
うっかりいつもの癖で名字にくん付けをしようとして慌てて名前に言い変えた
「ん、黒がえぇ言うんやったらそれで決まりやな。イヅル、書類出しといてなー」
話しについていけていない常識人の副隊長を残し、勝手に話を終結させた隊長は三席となった部下を見下ろし笑顔を向ける
「じゃ、さっそく隊舎の案内したろうか?」
椅子に座ったままの黒猫に歩み寄り、頭を柔らかく撫でながら問いかける
黒猫はその仕草に戸惑う事なく嬉しそうな表情を浮かべ頷いた
「ほれ、何ボーっとしとるん?イヅル。置いてくでー」
吉良が市丸の言葉に我を取り戻した時には既に二人の姿は執務室から消えようとしていた
「待って下さいよっ市丸隊長!」
慌てて追いかける吉良も、どこか不思議な雰囲気の新入隊員黒猫も
これから起こる惨劇は予想もしていなかった
まさか、市丸ギンがいなくなるなんて思ってもいなかった
- Re: 【BLEACH】鬼事——onigoto—— ( No.8 )
- 日時: 2009/12/05 20:41
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: naBKxD7x)
【第三夜】———隊舎案内———
「えーと、ここが書庫であっちが浴室…この先が隊員の私室や」
黒猫と吉良を後ろに従えて市丸は張り切っているような楽しそうな表情で隊舎の中を案内していた
その後ろから吉良の冷静な訂正が入る
「……書庫と浴室の場所が逆です…私室への廊下はあと一つ先のここです」
半ば呆れたような口調の吉良と、めげずに案内を続ける市丸が面白くて黒猫はニコニコしていた
本当は黒猫が嬉しそうなのにはもう一つの理由があるのだがこの場で吉良だけはそれを知らなかった
愉快な案内を受けながら黒猫は思う
——————————ここまで本当によく辿り着いた、よくこの人は自分の事を覚えていてくれた
てっきり忘れられているものだと思っていたのに
最初に目が合った時に口にはしなくともはっきりと言われた言葉
『ようここまで来れたな…偉いわ』
優しい眼差しに少しだけ憂いが混じっているのは市丸は恐らく、黒猫が自分を恨んでいると思っているから
そうではないと早く言いたかった
恨んでなどいない、ただただ感謝している、と
市丸は案内するたびに入る訂正にさすがに悲しくなってきていた
「んー…いつの間に隊舎の中模様替えしたん?イヅル」
「何言ってるんですか、市丸隊長。隊長が勘違いしてるだけですよ」
「ボクがしょっちゅう別ん部屋に遊びに行っとるのがあかんのかな?」
「関係ないと思います」
苦し紛れの冗談も、真面目な部下は正論しか返してこない
その硬さが可愛いのだが今回ばかりは少しだけ恨めしく思う
適当に隊舎の案内を終え、執務室に戻ろうとした市丸は大切な事を忘れていた事を思い出した
「黒。忘れとったけど、部屋どないしょ?」
そう、肝心の黒猫の部屋を決めるのを忘れていた
それを聞いた吉良が難しそうな顔で市丸を見る
「今、隊舎の私室は満員です…どうしましょうか」
吉良の言葉に暫し、市丸は考え込む
そして浮かんだ解決策は随分と奇天烈なものだったが中々イケる気がした
にっこりと笑って両手をパンッと合わせると吉良と黒猫の方を振り向いて口にする
「ボクの部屋、一緒に使ったらえぇやん…そしたらイヅルの部屋も近いやろ?」
市丸の提案とは、彼の部屋に黒猫を同居させると言うもの
元々隊長格の部屋は広く、一人で過ごすには何となく寂しかった
自分の部屋ならば吉良の部屋も近いため、何かあった時の対応もしやすいだろう
だなんてことはただの付け加えにすぎなかった
ただ、一人で過ごす夜がなくなるならそれでいい
「オレは別にいいですよ」
「市丸隊長が良いのなら、お好きに」
戸惑いながらも帰ってきた二人の言葉が決定打となり黒猫の部屋は市丸の部屋という事になった
吉良の部屋はその隣
何だかおかしな組み合わせになりそうだ
- Re: 【BLEACH】鬼事——onigoto—— ( No.9 )
- 日時: 2009/12/05 20:42
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: naBKxD7x)
【第四夜】———再会———
とりあえず、一旦隊舎の案内も終わったので各自の部屋へと戻る事になった
「黒、ついてきぃ」
にっこりと笑って市丸は黒猫に手を振り背中を向けて歩き出す
その後ろから少し小走りに黒猫は後を追って隊舎内を歩いた
「ここがボクの部屋、今日から黒の部屋でもあるんや」
襖を開けて見せてくれた部屋はなかなか大きくて、奥にもまだいくつか部屋があるようだった
「この部屋、一人で使うには広すぎるんや…だから黒が来てくれてよかったわ」
適当な小部屋を一つ黒猫へ案内しながら市丸は優しく囁いた
部屋を案内してから吉良とは合流する事になっていて、それまでは広い部屋に二人きり
黒猫は堪え切れなくなって背中を向けている市丸の背中に抱きついた
「よく…オレの事覚えててくれましたね」
涙声になりながら黒猫は市丸に言葉をかける
とっくに忘れていると思っていた五十年以上も前の話
小さな自分をこの人は覚えていてくれた
「何泣いとるん?……あかん、ボクが泣かしてもうたみたいやないの」
優しく黒猫の腕を解き、向かい合うとあの日のように市丸は目線を合わせるように屈みその小さな頭をクシャリと撫でた
流れ出る涙をそっと指で拭いながら市丸は少し困った様な顔で黒猫を見る
「自分の事、女の子が『オレ』なんて言うたらあかんで?」
「だって…女だと舐められるから」
市丸の言葉にしゃくりあげながらも黒猫は強気な瞳で見返して言葉を返した
女だから手加減した
同期の男達に負け惜しみのようにそう言われるのが嫌だった
だから一人称を『オレ』にした
決して性別を強みにも弱みにもしないように
黒猫の意思が分かったように市丸は優しく頷いて最後に頭をポンッと叩くと、立ちあがって入口へと歩き出した
まだ、お礼を言っていない
慌ててその事を思い出し、市丸を追いかけた
恨んではいないと言わなければならない
「ギン隊長っ「しぃ…イヅルが来とる」
大声で名前を呼び、言いたい事を叫ぼうとしたら入り口で市丸が黒猫に制止をかけた
唇に人差し指を当てて、悪戯っ子のような表情で吉良が来ていると忠告する
どうやら、自分と市丸の関係は知られてはいけないものらしい
敏感にそう察知すると静かに頷いてそのまま外へ駆け出していった
少し離れた所に立っていた吉良に
「あ、吉良副隊長。五月蠅くてすいません…」
そう言って苦笑を浮かべ、頭を掻く
市丸はその後ろ姿を見ながら黒猫に声をかけた
「黒。ボクの事名前で呼ぶんやったらイヅルの事も呼んだって」
黒猫は市丸に言われて自分の呼び方に違和感がある事に気づく
市丸は『ギン隊長』、吉良は『吉良副隊長』
確かに、どちらかにしなければおかしいものがある
吉良に窺うような視線を向けて口を開く
「あの…イヅル副隊長って呼んでもいいですか?」
一瞬キョトンとしたような表情を浮かべた吉良だったがすぐに質問の意味を理解すると少し気恥ずかしそうに頬を染めて頭を掻き、頷いた
「黒猫くんの好きでいいよ」
「じゃあ夕飯にでも行こか?イヅル、黒」
お互い照れ臭そうに笑っている部下二人にそう声をかけて市丸は二人の背中を押して歩き出した
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