二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】
日時: 2010/04/22 22:42
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: vUpeRMxD)

貴方のその背中を目指して走ってきただけなのに

いつの間にか貴方の背中以外のものが私の視界を埋め尽くしていた

綺羅々々した綺麗な沢山のものたちが私の世界の色を変える

私が目指すものは貴方しかいない

そう思っていたはずなのに

あの日私は貴方と道を分かつことになる

それは貴方以外の正義を私の中に見つけたから

私の正義と貴方の正義は違いすぎて今は別々の離れた世界にあるけれど

いつの日か再び貴方と同じ方向を向けるように

同じ場所で他愛なく笑いあえるように

今の私はただひたすらに己の信じる道を進みます

貴方と離れて他のたくさんのものに触れ

人に触れて心を感じ

力を添わせて新しい世界を切り開く

そうすることで貴方の信じる正義というものが見えればいいと思うから

相手を知ることでその人と同じ方を向けるから

分かち合えばまた笑いあえるから




それまで待ってて下さい

私が貴方の横に並べるくらい強くなったら

己に自信が持てるようになったら


今度こそ貴方の袖を捕まえます

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Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.9 )
日時: 2010/04/22 22:51
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: vUpeRMxD)

【第五話】真っ赤な嘘で君を囲う



黒猫はルキアと初めて会った時のことを思い出して暫くボーっとしていた
その様子を見ながら市丸は苦い思いが胸を占めるのを感じていた
無垢な彼女の沈んだ顔など見たくないのだから

やっと我に返った黒猫が市丸へ視線を向ける
その瞳にはもう戸惑いの色はなくて、どこか納得しているようだった
首を傾げた黒猫はそのまま疑問の色を瞳に浮かべて口を開いた

「ギン隊長は…何でルキア姉様のことを俺に教えてくれたんですか?」

如何なる時でも変わることのない笑顔のまま市丸は言葉を返す

「だって、黒はルキアちゃんのこと大好きやろ?だからルキアちゃんのことは何でも教えたった方がえぇかと思うて」

その言葉に目を見開く黒猫の素直な反応を見ながら市丸は胸の内で顔を歪める
まるで彼女のことを一番に考えているかのような言葉
それは真っ赤な嘘
本当に黒猫が大事なのは確かだけれど
今の自分の言葉はただ静かに彼女を囲っているだけ
あの人の理想へ近づくため黒猫を手の内に入れる
自分のために使うことはしないと決めたはずなのに、結局はその決意も折れてしまった
あの人の前ではどんな決心も意味を無くす
黒猫でさえあの人にとってはただの捨駒にすぎないはずだ
そんな人についていくことを決めて、何でも従う自分が時に恨めしい


市丸の言葉を聞いて黒猫は驚きに目を見開きながら嬉しさに心が温かくなっていた
ルキアのことを大事に思っている自分のために教えてくれたという市丸の言葉が酷く嬉しくて
喜ぶ内容ではないと分かっていながらもただ彼の心遣いが嬉しかった
無意識に囚われて都合良く動く人形にされ始めているとは気づきもせず
市丸を微塵も疑うこともなかった
不意に浮かんだ疑問を何気なく口にする

「ルキア姉様は…どうして罪を犯したんですか?」

一瞬きょとんとした表情を浮かべた市丸だったが、思い出したような顔をして苦笑を浮かべながら頭を掻いた

「あぁ、それなんやけど…ルキアちゃん、現世で死神能力の譲渡してもうたみたいでな?そんで捕まったわけ」

人間への死神能力の譲渡
それは黒猫でもわかるほど重い罪
さっきよりも大きな衝撃にうたれたように顔を歪める黒猫は更に口を開いた

「何で…誰にそんなことを」

わざとらしく苦い顔をしながら市丸も言葉を止めることはない

「何や事情はよう知らんけど、人間を助けるためやったみたいやね」

弱き人間を救うために己が大きな罪を犯す
その選択は短い間だったが慕い続けているルキアの最もやりそうなことだった
自分を犠牲にしてでも弱い者を守り抜く
それは黒猫が一番尊敬しながらも、一番恐れていたことだった

黒猫の悲しみと戸惑いと何かへの憎しみを混ぜたような暗い色になった瞳を見下ろしながら市丸は苦しげだった
無垢な彼女を悲しませることはしたくないのに
この言葉が彼女を闇へと嵌らせることは分かっているのに
それを止めることのできない自分が嫌になった

Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.10 )
日時: 2010/04/22 22:52
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: vUpeRMxD)

【第六話】子猫も憎悪で獅子と化す



ルキアが白哉と恋次に尸魂界に連れ戻されて数日後
丁度、一護達が尸魂界に侵入した頃
黒猫は未だルキアと会うことはできずにいた
市丸も会わせたいのはやまやまだったが他隊の牢まで忍びこむことは容易ではない
毎日塞ぎこんだように笑みを浮かべることも言葉を発することも少なくなった黒猫は市丸を落ち着かなくさせる
その瞳は元は金色と翡翠色という澄んだ輝くもののはずなのに、今は闇のように暗い色をしていた
ルキアが罪を犯したという絶望と戸惑いと守れなかったという己への怒りと嘲りと奪った人間へ対する憎悪で光を失った瞳で世界を見る
そんな黒猫に市丸はさらなる追い打ちをかけなければならない




「ルキア姉様から力を奪ったのはどんな人間なんですか?」

ある夜にふいに黒猫に尋ねられた言葉
それはあの人の予想通りの言葉
暗い瞳に目を向けて市丸は苦笑を浮かべる

「橙色の髪を持つ男なんやて」

その聞き慣れない容姿に黒猫は首を傾げる
しかし、その瞳には僅かな光が浮かび始めていた
それはあの人が望んでいるもので、市丸は望まぬもの
理想へ近づくためならば私情は捨てなければならない
そう自分に言い聞かせて市丸は言葉を続けた

「そんでな。その男、今こっちに向かっとるんやって」

予想外のその言葉に黒猫は眼を見開く
僅かに唇を開けて声を出す

「どうしてですか?何の目的で…」

黒猫の言葉を遮るように市丸も言葉を返す

「ルキアちゃんを取り戻しに来るんや」

人間の元へルキアを渡す=自分の元からルキアを手放す
そう脳裏で解釈した黒猫の瞳は更に鈍い輝きを増す
絶対に自分の方が一緒にいる月日は長いのに、それを無視して大切なものを奪われるのは納得がいかない
子供らしい我儘で黒猫の心は怒りに染まる
けれどその怒りのはけ口が見つからなくて胸が苦しかった

「その男は、橙色の髪を持ち身の丈ほどもある大刀を背負っている。現在旅禍として侵入を果たしており、彼らの討伐を命ずる」

前置きなく言われた市丸の言葉に黒猫は伏せていた目を上げる

『彼らの討伐を命ずる』?

討伐、それは倒すということ
相手を消してもいいということ
復讐の機会が与えられるということ

黒猫の瞳に浮かんでいた光は今や強い輝きとなっていた
このどうしようもない怒りを向ける場所が見つかったことで安堵する
正義を片手に復讐を果たすことができる
黒猫は、久しぶりに満面の笑みを浮かべて市丸を見上げた

「旅禍が来たら絶対俺もつれてって下さいね!俺、ちゃんと戦えますから」

その瞳に浮かぶ無邪気な輝きは狂気と呼ぶのに相応しい




藍染の手から逃がしたくて、あの日黒猫を救った
けれど今、彼女は結果的に彼の駒となっている
計画を進めるために、邪魔なものは排除できるよう
仕える駒が必要だった
夜に一人で眠れなくなるほどのトラウマを抱えさせてでも
素直に無邪気に生きられればと思ったのに
狂気を芽生えさせた幼心は時に大人さえも凌駕する
旅禍を倒す時には自分もつれて行け
満面の笑みで言われれば断ることはできない
黒猫の頭を撫でながら市丸は頷いた

「えぇで?でも、危ないことしたらあかんよ」

きょとんとした表情を浮かべる黒猫の鼻先に指を当てて苦笑した

「ボク、黒が怪我するの見るん嫌やもん」

納得したような穏やかな笑みを浮かべる黒猫を見下ろしながら市丸は思う

十の言葉の内、九は嘘で一は本音
それくらいはいいでしょう?
だって自分は無邪気な子供の光を壊せるほど
まだ鬼畜にはなれないから



Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.11 )
日時: 2010/04/22 22:53
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: vUpeRMxD)

【第七話】猫の瞳は橙色の影を追う


「旅禍の少年が卍解を得たそうだね」

「そうみたいですなぁ…まぁ大したことあらへんでしょう」

「そろそろ…あの子を使おうか」

「あの子?」

「キミの大事な部下に経験を積ませてやるといい」

「………はい、分かりました」

「とどめを刺せとは言わないよ、足止めをするだけだ」

「ちょっとだけ遊ばせてきますわ」




時は変わり
既に旅禍が瀞霊廷に侵入して数刻
早くも様々な所で被害の情報が入っていた

十一番隊の三席と五席の負傷
八番隊三席の敗北
十二番隊隊長の敗北
六番隊副隊長の敗北

十一番隊隊長、更木の敗北には流石の黒猫も言葉を無くした

市丸は何故か守りの位置には付かずどこかへ出かけている
何処にいるのかも分からなければ何故なのかも分からない
近くに信頼できる人がいない心細さに黒猫の精神は均衡を欠いていた

まだその姿を見たことはないが勝手に尊敬している更木
彼がただの人間であるはずの橙色の髪の死神に負けたことは黒猫にかなりの衝撃を与えた
しかし、同時にその死神への新たな憎悪にも似た闘志も生まれる
自分の大事なものをまるで次々に奪っていくように思えたから

一応三席とはいえまだ幼い黒猫は大した仕事を与えられることもなくただ巡回のため道を歩いていた
惨劇の残りで瓦礫が転がる道を歩きながら己の中の血が騒ぐのを確かに感じる
生まれ持った戦いへの執念が覚醒し始めていると悟る

これが憎しみなど持たない頃の黒猫なら恐れに我を恐怖したかもしれない
けれど憎むべき対象を持ってしまった今はその衝動に喜んでいた
血が覚醒すれば人間など自分に勝てないと確信していたから

「橙色の、死神…身の丈ほどもある大刀を背負っている」

市丸から聞いた情報を口に出して呟く
その口元は歪んだ笑みを湛えていて
瞳は獲物を探す獣のように爛々と輝いていた



「…黒」


道を歩き続けていると懐かしい声が聞こえる
振り返ればそこにいたのは大好きな隊長

「ギン隊長…今までどこに」

開口一番に文句を言おうとして市丸の言葉に遮られた


「黒…ルキアちゃん堕とした死神くんの相手してくれへん?」


市丸の言葉に言葉を無くす
さっきまであてもなく探していた死神の相手をしろというのか
叶いもしないと思っていた願いが達成されるのは目前
黒猫は確認するように慎重に口を開く

「何処にいるのか知っているんですか」

その言葉に頷く市丸の笑みはいつも通りで迷いなかった
黒猫に手を差し出して市丸は口を開く


「ほら、行くで…黒」


その大きな手を取りながら黒猫は今までにないほど嬉しそうに微笑んでいた

市丸はその表情を悲しげに見下ろした

黒猫を連れて歩きながら思い出したかのようにいきなり言葉を付け加える


「その子、殺したらあかんで…遊んだるだけや」


「はい、分かりました」

不満そうな様子も見せずに素直に頷いた黒猫を市丸は少しだけ恐いと感じていた
自分はもしかしたらとんでもない化け物の目を醒まさせてしまったのではないだろうかと
己に問いかけても答える声はなかった

Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.12 )
日時: 2010/04/23 12:36
名前: 風 (ID: rJoPNE9J)
参照:  

お久し振りです。
君が居ない間にHN変えました(元秋空及び哭辿ですvv

えっと,再開嬉しいです^^
若しかしたらもう二度と君の作品を読めなくなると思って居ましたから……
お暇が有れば私の作品にも寄って下さいね?(注意として作成者名は昔のHNの秋空になってるです!

Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto——【再始動】 ( No.13 )
日時: 2010/04/23 18:22
名前: 天蘭 ◆ejbmdJp5o. (ID: AuRKGmQU)

鬼姫様†


初めまして^^
同じくブリーチ小説、「光と影」を書いている
テンランと申します(´∀`●)
レベル高すぎて、PCの向こうで口をあんぐりとさせているくらい上手ですね(´皿`☆)ノ
黒猫とギン、相性良いですね〜ww
私ギン大好きなので、すごく応援しています^^♪
頑張ってくださいねっ(・ω・♪)


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