二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 学園アリス 絆
- 日時: 2013/07/06 15:18
- 名前: かりん (ID: wXpuLz/E)
こんにちは!学園アリスなつみかんファンのかりんです!
これから学園アリスの小説を書きたいと思います。
この物語は、蜜柑が母親・柚香との学園脱出に失敗したのち、
初校長が志貴の出した4つの条件をすべて飲み、
蜜柑がみんなと平和な学園生活を送っているという設定で始まります…。
- Re: 学園アリス 〜第一章 いつか逢えるその日まで〜 ( No.19 )
- 日時: 2013/07/06 15:55
- 名前: かりん (ID: wXpuLz/E)
〜第二話 始まり〜 (続き)
志貴は蜜柑に説得され、中校長代理に就任していた。
しかし、彼には分っていた。
初校長は、決して引き下がったりなどしないことを。いずれ、以前の権力を取り戻すために、手段を択ばない強硬姿勢をとるだろうと。
先日、中校長からも忠告を受けていたのだ。
「——雅近」
「気を付けるのだぞ」
「あの男は決して油断ならぬもの」
「何もせず引き下がったままとはゆめゆめ思わぬことじゃ」と。
これからも初校長を倒すまでは気を緩めるわけにはいかない。
志貴は、他の先生方と会議を開き、これからの方針について話し合った。
初校長側のスパイだということが判明した五島聖がいまだに生徒会長となっているため、監視役として今井昴(蛍の兄)と櫻野秀一を生徒会にまわすことを取り決めた。
そして、志貴は、他の先生方にこれからも気を引き締めて事に対処するようにと、注意を促し、会議を終えた。
まだ、戦いは終わってはいない。
新たな戦いの始まりだった。
- Re: 学園アリス 〜第一章 いつか逢えるその日まで〜 ( No.20 )
- 日時: 2013/07/06 15:36
- 名前: かりん (ID: wXpuLz/E)
〜第三話 再会〜
学園にもクリスマスの季節がやってきた。
生徒たちは、クリスマスパーティーの準備でおおわらわ。
その頃には、蜜柑もB組のみんなのおかげもあって、すっかり元気になっていた。
蜜柑は、今年も蛍や棗とともにケーキ班になった。
蛍は去年と同じく飾り付け班も担当していたが。
棗は、すぐにオーブンの調節にまわり、蛍も飾り付け班の手伝いに行った。
蜜柑は、一人でケーキのスポンジをひっくり返す作業を手伝いに行こうとしたが、後ろから明るい声に呼び止められた。
「あっ!蜜柑ちゃん!蜜柑ちゃんもケーキ班に来たんだ!」
蜜柑が振り向くと桜とのばらが駆け寄ってきた。
「あっ!桜にのばらちゃん!二人もケーキ班なん?」
「うん、まあねー。」
すると、突然蜜柑は、申し訳なさそうな顔をして、のばらに謝る。
「のばらちゃん、あの時はごめんな。巻き込んで、ウチのせいでいろいろと無茶させてもうて…。」
すると、のばらは首を横に振る。
「いいの。蜜柑ちゃんのせいじゃないから。私が自分で決めたことだもの。それに、蜜柑ちゃんのおかげで、私助かったんだもの。だから、謝らないで。」
「そう?そんならええんやけど…。」
蜜柑は、ほっとして微笑んだ。安堵の笑みだった。
「さあさあ。いつまでも落ち込んでないで行きましょうよ、手伝いに。」
「うん!」
桜に促され、蜜柑は、二人と一緒にスポンジのところまで行った。
「「やったーーーー!!!」」
「すっごーい!」
棗がオーブンの調節をしていると、突然大きな歓声が聞こえてきた。
蜜柑とのばらが一年前の時と同じようにアリスを使ってスポンジを冷ましていたのだ。
そして、どうやら成功したらしい。
棗は、少しの間、驚いて見ていたが、また、オーブンの調節に戻った。
棗はあの事件以来、蜜柑とのばらが仲良くしていようと別に気にしなくなったのだ。
パーティーの準備もそろそろ終わりに近づいてきたころ・・・
「みなさん盛り上がっていらっしゃいますねー。そろそろお開きにしてくださーい。」
その場にはいないはずの先生の声が聞こえてきた。
(えっ… のだっち…)
そう。野田先生は、事件の際、殿にスパイではないかと疑われ、タイムトリップで時空間に行かされ3か月間ずっと行方不明になっていたのだ。
「あっ、今、過去から帰ってきましたー。みなさーん、お開きですよー。」
フラフラになりながら生徒たちに声をかける野田先生。
そして…
(バタンッ)
(…………)
本当に倒れてしまった。
病院・野田先生の病室・・・
「失礼いたしました、野田先生。決して忘れていたわけではなかったのですが、こちらもバタバタしており激動の3か月でしたので…。」
「時空間にいらっしゃるということで連絡手段もいまいち手間取り、まさかあのまま時空間で風紀隊と待ちぼうけしていたとは考えもせず…。」
「いえ…。」
神野先生は必死に説明しているようだが、要は完全に忘れていたのだ。
「のだっち、無事でよかったーーー!!」蜜柑はすぐに駆け寄った。
「佐倉さん、あなたも無事でよかった。」野田先生も蜜柑の無事を喜んだ。
が、すぐにあることに気付く。
「佐倉さん、なぜあなたがここに!?柚香さんと学園を脱出したはずでは…?」
それを聞くと蜜柑は急に悲しい顔になった。
「死んだんだよ…。安積柚香は。」蜜柑の代わりに棗が言った。
「えっ…。死んだって、どうして…?」
野田先生は、信じられないというように聞き返すが、
棗と神野先生がすべてを説明した。
「そうですか…。柚香さんや…志貴さんの中校長代理就任以外にも、この3か月の間に本当にいろんなことがあったんですね…。」
一人、思いにふける野田先生。
すると、突然志貴は、話がある、と言って蜜柑たちを寮に帰らせた。
帰り道・・・
「どうして言わなかったんだ?お前の危力系残留のこと。隠したってすぐにばれることだろ?」
殿は怪訝な顔で翼に問いかける。
そう。翼は、事件以後も危力系に留まっている。
目的は、有事の際にすぐに動けるようにしておくことと、そして、棗の暴走を止めること。
「あいつらには余計な心配かけたくないだろ?」翼は答える。「あいつら」とは、もちろん蜜柑たち初等部生のことだ。
しかし…
蛍の発明品であるゾウの耳型イヤホンをしている蛍と桜には丸聞こえなのだが。
翼の決断は、棗と美咲にぼろくそに言われ、あわてて美咲を追いかける翼に向かって殿は言う。
「寒い中、いちゃついてんじゃねーよ、くそボケ」
しかし、なんだかんだとけんかをしながらも仲のいい翼と美咲。
棗がそんな2人を見つめていると…。
「なーっつめ!何やってんの、はよかえろ!」
後ろから明るい声が聞こえたかと思えば、突然抱きつかれた。
もちろん犯人は蜜柑である。
「うわっーーー。なんだよ、蜜柑。いきなり抱きつくな。」
棗はしどろもどろになって蜜柑に言う。
「別にええやんかーーー。棗が遅いからやろー。みんなもう寮に帰ってもうたでー。」
蜜柑は明るい声で言う。
どうやら、蜜柑には先ほどの話は聞こえていなかったようだ。そのことにほっとしつつも辺りを見回すと誰もいない。確かにみんな帰ってしまったようだ。
ふと、蜜柑は翼たち3人に気付き棗に言う。
「なつめー、もしかしてあんた、また翼先輩とけんかしてたんちゃうやろうな?あかんで。もっと素直にならな。」
「べっ、別にそんなんじゃねーよ。」
棗は顔を赤らめ否定するが、実際は、当たらずとも遠からずだった。
「まあ、ええわ。ほら、かえろ?」
蜜柑は棗の手を引っ張り、歩き出す。
「わかったよ、分かったから引っ張るな。」
「ほんと、蜜柑の前では素直だよなー、あいつ。」
迷惑そうにしながらも仲良く帰っていく2人を見てふと翼は言った。
「まったくだ。」「だな。」
それには、2人も同感だった。
棗は、蜜柑の前では本当に素直だ。
まるで、穢れを知らぬ子供にでも戻ったみたいに。
いろいろな事件に巻き込まれながらも、しっかり前へと歩み続ける2人。
これからどんなことが起こるかわからない。
しかし、あの2人ならば、必ず乗り越えてゆけるだろう。
生まれる前から惹かれあい出会うことが定められていたあの2人なら。
帰っていく2人の後姿を見つめながら、3人は、ふとそんなことを考えていた。
「実は、皆さんにお話があります。」
生徒たちのいなくなった病室で志貴は話を切り出していた。
「先日、初校長側で動いていたルナとペルソナから、
初校長を裏切り、我々の側につきたい、という申し出がありました。蜜柑を守りたいと…。」
- Re: 学園アリス 〜第一章 いつか逢えるその日まで〜 ( No.21 )
- 日時: 2013/07/06 15:37
- 名前: かりん (ID: wXpuLz/E)
〜第四話 二人の心、結ばれる〜
生徒たちのいなくなった病室で、志貴は話を切り出していた。
なんと、あの初校長の手駒として動いていたルナとペルソナが、初校長を裏切り学園側につきたいと言ってきたのだという。
「ルナと…、ペルソナから…?」驚く一同。
「はい…。」志貴はうなずく。
「しかし、仮にもあの二人は、初校長の側近。裏切るなど…。もし、これが罠だったら…?」心配する野田先生。
それは、志貴も同じだった。
「私もそうやすやすと二人の言葉を信じるつもりはありません。
あの二人が今までどれほど多くの人を傷つけてきたのかくらい分かっていますから。
ですから、皆さんの意見をお聞きしたくて…。」「「「「………。」」」」黙り込み、考える一同。
しかし、高校長は静かに口を開く。
「信じて…、いいと思いますよ。」
「「「えっ!?」」」
志貴を含めた他の先生たちは、高校長の言葉に驚いた。
すると、高校長は言葉を選びながらゆっくりと話した。
「柚香とルナは、もともとは親友だった。その親友を目の前で殺されたのです。彼女が自分の間違いに気づかないわけないでしょう。」
「それに、初校長が、柚香が殺害された現場に現れた時、ルナは、初校長に必死に言っていたのでしょう?」
「この爆破は、あなたが起こしたものなのか、と。」
志貴は黙ってうなずいた。
「きっと彼女は、自分の間違いに気づいてますよ。」
「しかし、ペルソナは?ペルソナはどうなんです?高校長!」
神野先生は、納得がいかないのか声を荒げている。
「神野先生。あなたは、茨木のばらという生徒をご存知ですね?」
高校長は、なおも冷静さを保って神野先生に問いかける。
「…ええ。確か、危険能力系の生徒で、佐倉蜜柑の友達だったかと…。」
「はい、そうです。彼女が…、彼女が止めたんですよ。ペルソナの暴走を。そして、危力系の生徒たちの暴走を。」
「茨木のばらがペルソナと危力系の暴走を止めた?
それは本当ですか?高校長!」神野先生は驚きの声を上げた。
「ええ、本当です。先日、危力系の周ルイ君と八雲はじめ君からその時の詳しい状況を聞きました。真実というものを…。」
高校長は、語り出した。
のばらがペルソナの暴走を止めようとしてペルソナのアリスを体に受けながらも必死にペルソナと対決していたこと、ペルソナを初校長に渡すまいと必死に風紀隊に抵抗していたこと、それを見て、自分たちも間違っていたことに気付いたのだということ、今は自分たちもやっていたことを後悔しているのだということ…などなどルイと八雲が自分に話していたことを高校長はありのままに神野先生に話した。
「………そんな…ことが…。」
「………わかりました。それでは、彼らを信じてみましょう。」
神野先生も納得がいったようだ。
命を捨ててでものばらはペルソナに間違いを気づかせようとしていたのだ。そこまでされて気づかないほど、ペルソナも馬鹿ではないだろう。
神野先生は志貴に向かってうなずいた。
「では、申し出を受けましょう。」
志貴が言うと、またもや高校長が口を開く。
「申し出を受け入れて、もしもその時まだ二人の裏切りがばれていないようなら、二人には、今後、スパイとして動いてもらうというのはどうでしょう?初校長の側近である二人なら、初校長に関する情報をより早く正確に知ることができるはずですから…。」
「はい、わかりました。では、そのように。」志貴は他の先生たちとうなずきあい、言った。
クリスマスパ−ティ—当日・・・
今年のクリスマスパーティーは去年までのクリスマスパーティーとは違っていた。
蛍は、何一つ隠し事をしなくてもよくなった兄・昴と一緒に仲良く出席していたし、事件後、中等部校長預かりとなった危力系の生徒たちも他の生徒たちと同じようにパーティーに参加していたのだから。
もちろん蜜柑も棗とともにいた。ときどき棗と話をしながらクスクスと笑い合っている。
そして、その夜・・・
「好き…。大好き…。」
「俺も、蜜柑、お前が好きだ。この先ずっと、だれよりも……。」
星が瞬き真っ白な雪が降り積もる澄み切った聖夜に、蜜柑と棗は結ばれた。
そして、そんな二人を満月が優しく照らし出していた。
まるで、二人の幸せを願うかのように。
- Re: 学園アリス 〜第一章 いつか逢えるその日まで〜 ( No.22 )
- 日時: 2013/07/06 15:41
- 名前: かりん (ID: wXpuLz/E)
〜第五話 月とペルソナが学園側のスパイに〜
星が瞬き真っ白な雪が降り積もるクリスマスの夜、クリスマスツリーの上で、蜜柑と棗は結ばれた。
しかし、そんな二人の様子をパーティ—会場からはるか遠く中等部の校長室から二人の様子を見ている者があった。
志貴だ。
志貴は、窓から外の景色を見るフリをして、持っているコーヒーカップの中に蜜柑の姿を映し出して蜜柑の様子を見ていたのだ。もちろん他の誰かが見ないようにカップには結界を張って。
初校長がいつ蜜柑に手を出すかわからない今、蜜柑の身にいつ、何が起こってもすぐに対応できるようにと24時間体制で、蜜柑を監視していたのだ。
なぜ、初校長ではなく蜜柑を監視していたかというと、初校長の周りには特殊結界が張られているため、アリスで初校長を監視することができないからだ。
しかし、今日は蜜柑を監視するべきではなかったと後悔した。こんなプライベートなところを見るべきではなかったと。
蜜柑と棗がツリーの上で何をし、何を話していたのかは、志貴には、丸見え丸聞こえ状態だったのだ。
「それで…、話というのは何でしょう、中等部校長代理。」
なかなか話をはじめない志貴にしびれを切らせたルナが志貴に問いかけた。
その声に、志貴ははっとして振り向いた。
志貴は、中等部の校長室にルナとペルソナを呼び出していたのだ。
志貴はあわててコーヒーカップをデスクの上に置き、二人に向き合った。そして、話し始める。
「先日伺った申し出の件なんだが…」
それを聞くと、ルナとペルソナは顔を強張らせた。
自分たちがしてきたことを考えれば、決して信じてもらえるはずがないと思っていたからだ。
しかし・・・
「私たち学園は、君たち二人の申し出を受け入れることにしたよ。」
志貴の言葉に、二人は耳を疑った。
「ほ、本当ですかっ…!私たちを信じてもらえるんですかっ…!」
ルナは、勢い込んで志貴に聞く。
「ああ、本当だ。」
志貴は、静かに答えた。
「「ありがとうございますっ!本当に、ありがとうございますっ…!」」
ルナとペルソナは、何度も何度も頭を下げ、志貴にお礼を言った。
「二人とも、顔を上げるんだ。」
志貴はそう言って二人の顔を上げさせ、話を続ける。
「そこで、君たち二人には、聞きたいことがある。
初校長にはまだ、君たち二人の裏切りは気づかれていないだろうか?」
すると、二人は顔を見合わせうなずいた。
「はい。まだ、我々の裏切りは初校長には気づかれていないかと。」
ペルソナは志貴に答えた。
「そうか…。それなら、君たち二人は、このまま初校長の下に留まり、我々のスパイとして動いてほしい。危険な任務は承知の上で、どうか引き受けてほしい。初校長に近しい君たちなら、初校長に関する情報をより正確に得られるはずだ。その情報を得て、それを我々学園側に密かに伝えてほしい。この役目は、君たちにしか頼めない。蜜柑やこの学園のために力を貸してもらいたい。」
志貴は、二人をまっすぐに見据えはっきりとした口調で言った。
「はい、覚悟はできております。喜んで、引き受けさせていただきます。」
「同じく。全力を尽くします。」
ルナとペルソナはそれぞれそう言って、うなずき合った。
「では、二人とも手を出しなさい。」
志貴はそう言って、おもむろにデスクの引き出しを開き、アリスストーンを取り出した。二人は不思議に思って顔を見合わせながらもそれぞれ手を出した。
すると、志貴は二人の手のひらに一つずつアリス石を置き、言った。
「櫻野君のテレポート・直感・テレパシーのアリス石だ。何か分かれば、それで連絡してほしい。今日のように直接会っていたら、すぐに君たちの裏切りがばれてしまうだろうから。」
「今日はもう下がりなさい。君たちがずっと会場に行かないでいると初校長が怪しむだろう。」
志貴はそれだけ言うと、再びコーヒーカップを手にしてカップに目を落とし、外を眺めるフリをした。
「はい、今日はありがとうございました。」
ルナはそう言って、ペルソナとともに深々と頭を下げ、志貴からもらったアリス石を使って部屋を去った。
「本当の戦いは、これからだ。」
二人が去った校長室で、志貴はふとつぶやいた。
まるで、自分に言い聞かせるかのように。
- Re: 学園アリス 〜第一章 いつか逢えるその日まで〜 ( No.23 )
- 日時: 2013/07/06 15:47
- 名前: かりん (ID: wXpuLz/E)
〜第五話 穏やかな日々〜
「中等部入学、おめでとう!」
桜が咲き乱れる春、蜜柑は棗・蛍・ルカたちとともに、無事に中等部へ進学した。中等部への入学を歓迎する者、初等部を去ることに寂しさを感じる者など様々な人間が蜜柑たちの中等部進学を祝っている。
「なあなあ、桜!写真とってーな!」
そう言って、蜜柑は桜にカメラを渡す。
「いいわよー!じゃあ、四人とも門の前に立って!」
「「「「はーい!」」」」
言われたとおりに、蜜柑・棗・蛍・ルカは、門の前に立つ。
「じゃあ、とるわよー。はい、チーズ!」
(パシャッ!)
「ありがとう!」
蜜柑は桜からカメラを受け取り、お礼を言った。
中等部に進学してまもなく、蜜柑はダブルに昇格した。
そして、あの事件以来、棗を含めた危力系の生徒たちは、月に一度程度の軽い任務を任されるだけになった。そのため、棗は体調を崩すことはなくなった。
棗と蜜柑が付き合っていることは、クリスマスの次の日には発覚していたため、中等部に進学してからは、もうすでに全校生徒が知っており、学園内では知らない者はいなかった。それもそのはず、クリスマスの次の日も蜜柑にプロポーズした時のことを思い出し打打漏れだった棗の心を心読み君が勝手に読んで、初等部の生徒全員にチクったから。そしてそれが、中等部や高等部にまで広がったのだ。
おかげで、中等部に上がってからの蜜柑は気苦労が絶えなかった。棗のファンの女子生徒に嫉妬や嫌がらせをされて大変だったのだ。
蜜柑や棗のことをよく知る者たちはそんなことはしなかったが、二人のことをあまり知らない者たちは皆、蜜柑のような平凡な女の子が棗と付き合っていることに納得がいかなかったのだろう。
だが、蜜柑がこうもひどく嫉妬の嵐にあっているのは棗のせいでもあった。中等部に上がってから初めてのアリス祭の後夜祭の日に、棗は取り巻きの女子に向かって断言したのだ。
「お前ら、うぜえ。俺がラストダンスを踊る相手は、佐倉蜜柑ただ一人だ。お前らなんかと踊る気なんてさらさらねえよ。」と。
そのため、蜜柑に対する嫉妬はだんだんとエスカレートしていったのだ。
「まあ、相手が棗だからなー。仕方ねえんじゃねーの?それより俺は、小学生の時にもう恋人同士になったことの方が驚きだわー。」
「ホント、出会った当初は二人とも天敵同士だったてーのに、いつの間に恋人同士になったんだ、お前ら?」
翼や美咲に相談するたびに、そんな風にからかられる。
しかし、そんな時、蜜柑はここぞとばかりに言い返すのだ。
「翼先輩と美咲先輩にはそんなこと言われたないわー。先輩たちだってお互いに付き合ってるくせに。」
これには翼も返す言葉が見当たらなっかった。
「蜜柑!それとこれとは話が別だろ!」
美咲は真っ赤になって蜜柑に言うが、蜜柑は、そうかいな、と言って顔をそむけるだけだった。
しかし、蜜柑がそんな嫉妬の嵐に負けるはずもなく、嫉妬や嫌がらせを受けるそのたびに相手と真っ向から向き合い、そして、心から友と呼べる存在へと変えていった。
二年生に進級するころには、蜜柑と棗の関係は学園の誰もが認める仲となっていた。
ただただ、平和で穏やかな日々。このままずっとこんな幸せな毎日が続いてほしい。皆がそう思っていた。
しかし、そんなみんなの願いとは裏腹に、初校長は確実に動き出していたのだ。
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