二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- レッドレイヴン —からっぽの人形—
- 日時: 2012/05/11 17:40
- 名前: 黒猫 (ID: okEdKXH3)
- 参照: http://www,kuroneko.cc/novel
小説、書きまーす。
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- Re: レッドレイヴン —からっぽの人形— ( No.144 )
- 日時: 2012/05/15 12:39
- 名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)
真っ赤なホールに、バジルは顔をしかめ、少女は満足そうに、
「汚い…」
「綺麗…」
正反対の意味を持つ言葉を、同時に口にした。
「でも、もっと綺麗な物知ってる」
「どうせ汚いんだろ。…次はキーウェイに行くぞ」
少女は右手の林檎を食べる。この光景を見て食べれる人間は少ないだろう。
「キーウェイって…カッチーニの傘下に入ってる町だね。あれ、でも今ジェロルナと商談の為に町にいるっけ?」
少女はニヤッと笑った。次の仕事がわかったようだ。
「大変だね。運悪くスキャッグスと遭遇しなきゃいいけど」
「無駄口叩く暇があるなら、さっさと行くぞ」
「わかった」
少女はバジルに笑いかけた。とたん—右手の中にある林檎が腐敗した。
- Re: レッドレイヴン —からっぽの人形— ( No.145 )
- 日時: 2012/05/15 13:08
- 名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)
レイは橋の欄干に座っていた。アンディがまた行方不明になったので、ウォルターとノアとシャルルで探しに行った。ついきのうまで熱を出していたレイはここに待機させられている。
(独り…)
周りには人がいるのに何故かそう思えた。
前ならその状況に喜んだ。誰も傷つけなくていいと、傷つけられないと。なのに、今は奇妙な喪失感がある。
何も感じなかった前の自分よりましだが、前はこんな思いはしなかったと考えると複雑だ。
「…イ、レイ!そこの黒ずくめ!」
「…ノア」
前を見ると、何故か顔色が悪いアンディと同情のまなざしでそれを見るウォルターがいた。ノアは橋の上に、軽やかに乗る。機嫌がよさそうだ。
「じゃ、いこっか。…でもその前に、何か食べた方がいいかもね。レイ、何も食べてないでしょ?」
レイはうなずいたが、アンディたちのほうを見た。レイはあくまでも“補佐”なのだ。執行人の許可が必要になる。
「まぁ、近くの喫茶店で飯にするか。…アンディ、元気出せよ」
ウォルターの許可が出たので、レイはノアについていく。いつの間にか、喪失感はなくなっていたがそれすら気づかなかった。
- Re: レッドレイヴン —からっぽの人形— ( No.146 )
- 日時: 2012/05/15 13:50
- 名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)
「アンディってレイのこと好きだったんだね」
ノアはアンディを見つけた瞬間訊いてきた。ウォルターとシャルルがぎょっとする。
「何それ」
「えー、だっておととい”守ってやりたい”って言ってたじゃん」
アンディは自分の顔が引きつったのがわかった。
「その言葉…まさか部屋に」
「いたよ。糸なら僕が断ち切る…キャー、かっこいい、私もいつか言われてみたい!!」
夢見る乙女のようにノアは騒ぐ。いろいろと疑問を持つ言葉だが、とりあえず否定しておく。
「別に僕はノアが考えているようなつもりじゃ」
「…そういうことにしといてあげるよ。レイだって覚えてないだろうし、それにレイはそんな言葉もらったところでうれしくないと思うから」
シャルルは首をかしげた。
「普通、喜ぶような言葉だろそれ」
「私が知っている人に、レイのことを守るって言った人がいるの。その人はケースで殴られ川に落とされたよ」
ウォルターとアンディは、その話に引いてしまった。どこに殴られて落とされる要素があったのかわからない。
ノアはアンディに瞳を向ける。
「アンディの場合それだけではすまなさそう」
「なんでさ」
「ネーヴェのこと、レイに言ってないでしょ?あれだけのこと言われたもんね。それは言い出せないよ」
アンディは羞恥心で顔を赤くした。
綺麗でかわいくて優しくて—レイはアンディに、自分とネーヴェのことを少し話してくれた。しかし、本人であるアンディは何かの罰を受けているような気分になった。
あまりに美化されていたため、それは自分だと言い出せなかったのだ。
「ばれたらどんな目に合うだろうね。まぁ、レイは人を殺すことはしないから死にはしないよ。目が覚めたら、医務室にいたとかならあるかもしれないけど」
アンディは先ほどの会話のせいで食欲がわかなかった。
レイは小さい口でパンにかぶりつく。その一口はやっぱり小さく、鳥を連想させる。
「食う時ぐらい、フードは外せよ」
ウォルターはすでに自分の分を食べ終えて、レイが食べ終わるのを待っていた。
レイはそれを無言で返すと、カウンターのほうを見た。何やら言い争いをやっている怪しい—レイよりはましだが—がいた。
「…レイ、あの人スキャッグスを持ってるよ」
ノアの言葉が言い終わる前に男が拳銃を出した。
しかし、アンディやウォルターが動くよりも早く、
「それをこっちに渡してもらおうか」
スーツを着た少年が動いた。
- Re: レッドレイヴン —からっぽの人形— ( No.147 )
- 日時: 2012/05/15 14:22
- 名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)
(マフィア?)
アンディは少年を見た。少年と言っても、自分よりは年上で、リリーと同じくらいの年齢だが。
「…最悪」
レイは紅茶を飲んでそうつぶやいた。
「誰だ、てめぇ?」
「あー、カッチーニの知り合いってところだ。悪いがそのおもちゃを5秒いないにこっちに引き渡してもらおうか」
スキャッグスをおもちゃと言う人など、まずいない。
「ごー、よーん」
「バカか。このクソガキが」
「さんにいち。警告終了」
少年は早口で言い終わると、一歩下がる。
シュン—男の手から拳銃が消えた。
「え…」
少年は、真っ直ぐ上げていた足を下ろした。拳銃だけ蹴ったと気づくのに時間がかかった。
「アンディ、今の…見えたか?」
「残像くらいしか…」
ウォルターとアンディがこそこそと話している間に、男は逃げて行った。
「まさか、あれは」
「リュー!」
シャルルの言葉を遮りノアは少年に声をかけた。
リューと呼ばれた少年はノアを見て、そしてレイを見て、面白いくらい顔をひきつらせた。どうやら知り合いらしい。
「こっち来て座りなよ」
ノアは勝手に空いてる席を勧める。少年は恐る恐る座ると、アンディたちに頭を下げた。
「知り合い?」
「リリーの幼馴染で、シシュリュー・ジェロルナ。レイに嫌われている人だよ」
ノアはさらっとひどいことを言う。アンディは訊いたことを後悔した。
「なんでお前がここに」
「…それはこっちのセリフだ。何が悲しくて君と会わなくてはならないのだよ」
「相変わらず口の悪い奴だな」
「…君が消えたらよくなるかもしれないな」
これだけでアンディとウォルターは、2人の仲が悪いことが分かった。
- Re: レッドレイヴン —からっぽの人形— ( No.148 )
- 日時: 2012/05/15 14:58
- 名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)
ノアは笑いながら、
「リューは一応マフィアなんだ。気にすることないよ。何しにここに来たの?」
「勝手に人のことをばらすな!…商談だ。カッチーニとな」
シシュリューはあっさり教えた。
「よく教えてくれるね」
アンディはシシュリューに言う。シシュリュー(以後リュー)は肩をすくめる。
「別に隠すことじゃないからな。えっと…」
「アンディ」
「アンディか…こいつに何か弱みでも握られてんのが!?」
リューは言葉を止めて、テーブルの下を見る。アンディもつられてみると、レイの黒革のブーツがリューの足の上に乗っていた。ウォルターはノアに訊く。
「いつもこんな感じなのか?」
「そうだよ」
リューはレイをにらんだ。レイはちびちびと紅茶をすする。
「その性格どうにかした方がいいぞ。絶対お前恋人出来てないだろ」
レイは、フンと鼻を鳴らした。
「…女に逃げられているお前に言われたくない」
とんでもないことを暴露されたリューに、もはや同情以外の感情を抱けなくなってきたアンディ。マフィアと言うより、いじられている人にしか見えない。
「この…男みたいな胸してるくせに」
ピシッと空気が固まるような錯覚がした。
レイは紅茶を飲み干すと、ティーポット持って立ち上がり—ためらいもなくリューの頭の上で傾けた。
「何すッ!?」
さらにレイはテーブルの上の砂糖とケチャップをかけた。絶句する一同。黒い髪や、スーツがべたべたになっていく。
レイはケースを手に取るとフードを少し上げた。禍々しいまでに紅い目が、軽蔑で色を増していた。
「…行こう。会計ならこれがやる」
これ扱いになったリューは何も言わない。
レイは返事を待たず、歩いて行ってしまった。
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