二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ムシウタ〜夢見るものたち〜
- 日時: 2010/11/21 01:46
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
おはようございます、泉海斗です。
勢いで書いてしまいましたムシウタの二次創作です。
4作品目になりますが、たくさんの閲覧とコメントをいただければ幸いです。
これはオリキャラも出ます。それではどうぞ!!
追記 一日2話ずつ投稿したいです!!
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1 夢見始める者
佑介PART 0
季節は冬となり、ここ赤浜市にも雪が降り始めていた。
少年相場佑介は赤浜市の有名進学校の赤浜第一高等学校に通っていた。
防寒対策か黒のコートにマフラーを着込んでいる。
それでも吐き出す息は白い。
「おはよう佑介。今日もお早い登校だね」
後ろから背中を叩いて挨拶してきたのは。
「舞華か。おはよう。そういうお前も早いじゃないか」
幼馴染の谷岡舞華だった。
現在時刻7時30分と登校完了時刻8時30分にまだ1時間ある。
佑介はただ近いセンター試験の勉強をしたくて早くから図書館に向かおうとしていたのだった。
そういう舞華はすでに推薦で専門学校に合格を決めていた。
そんな彼女は幼馴染としてまだ有名大学へと進学を目指している佑介を元気付けようと毎日一緒に登校しているのだった。
そんな佑介はもともと勉強ができた。
しかしそれは自分がしたいからではなく親が教育熱心だからだった。
だからいつも逃げたいと思っていた。
しかし彼には逃げ場がなかった。
勉強机しか自分の居場所がなかった。
小さい頃から勉強をしなさいといわれ続け、それが当然だとずっと思っていたのだった。
しかしそんなある日、幼稚園のときだったか小学校への入学試験勉強をしているとき、母親からお小遣いをもらってこっそりと漫画を買いに行った。
それが当時に彼にとっての至福の時だった。
買った漫画は誰にも見つからないようにと屋根裏に隠していた。
そんなある日、買った漫画を持って帰宅していた。
するといつも通るときに見る公園で一人の女の子がぽつんとブランコに乗っていたのだ。
そんな彼らが目が会うとその子は顔に笑みを浮かべてこちらに走ってきた。
何事だろうと固まっていたら、いきなり腕をつかまれて公園に引き込まれた。
それが佑介と舞華の出会いだった。
その時お互いに自分たちのことを話し合った。
幼かったために本当にどうでもよいこと・・・しかし彼らにとってはまた別の至福の時間だった。
佑介にとっては親以外と話す初めての相手・・・それも女の子。
彼女の話す外の世界にドンドン引き込まれていった。
それからというものこっそりと外に出ては彼らは一緒に遊んだ。
もちろん佑介は汚れるわけには行かないので遊具とかおままごとがほとんどだった。
それから高校までは同じところへは通えなかった。
それでも暇なときはあって一緒に遊んだ。
そのときは舞華の友達が一緒だったり、佑介の友達が一緒だったり。
高校は舞華が懸命に努力して合格した。
それからは一緒に登校したり、デートまがいのお出かけなどもけっこうした。
この登校もずっと続けられている。
当たり前になってきた二人。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.45 )
- 日時: 2010/12/15 07:20
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
魅車 PART 1
魔神・・・否魔人と形容しても差しさわりがないほどに力強さがあふれている目の前の少年。
彼に睨まれると拒否する言葉がなぜかのどから出てこない。
言った瞬間どうなっているか決まっているからだ。
しかし彼女にとってそんなことは関係ない。
彼とは部下と上司の関係。
何を言っても地位的な権力を使えばなんとでもなる。
まあそう何度も通用するようなやつではないが。
「まずはじめに最近になって話題に上がっている謎の虫憑きについてよ」
ハルキヨとウメに対して資料を渡して説明を始める。
資料は後で見ればいいという感じで2人とも魅車を見ている。
「その虫憑きは去年のクリスマスから現れ始めているわ」
「去年のクリスマスって言ったら赤浜市での虫憑き殲滅作戦がありましたね。僕たちは行きませんでしたが東の方々がむしばねと抗戦したそうじゃないですか」
ウメが指を顎につけながら天井を見上げ、思い出しながら言う。
ハルキヨはというと全く興味がないという雰囲気だった。
「その虫憑きはその日に気配をかぎつけた局員2名を欠落者にしているわ。まあ、虫憑きになりたてだったようね。あたりがクレーターだらけだったらしいわ。暴れたのでしょうね」
淡々とあったことを言葉にして彼らに伝えていく。
それを彼等は音として聞いていく。
そんな単調なことが続けられる。
「その時局員のゴーグルに移されていたのがこれだ」
そう言ってポケットから小さなリモコンのようなものを操作する。
大きなスクリーンに映されていた局員たちから送られてくる数多くの映像が切れ、大画面に映し出されたのは黒い影が動き回り、局員に襲い掛かっているところだった。
影の主の顔は分からなかった。
あまりに速さ過ぎて局員の目が追いついていないのだ。
すると後ろに立ったのか、局員の背中の辺りから崩壊して振ってきた瓦礫を踏む音がした。
しかし局員は振り向くまもなく崩れ落ちたのだった。
虫を殺され、欠落者となったのだった。
「早いですね〜ハルキヨさん」
ウメが笑顔でハルキヨに話しかける。
「あれくらいは俺達1号指定でもできる。珍しいことじゃねえ」
あっさりと切り捨てる。
「そんなこといわれてもぼくから見ればハルキヨさんたちはすごっ過ぎるんですよ」
ある意味憧れの視線を送るウメ。
しかし本心はいかがなものかとハルキヨはその視線奥にある瞳を見つめる。
その瞳にはかげりは見えないがさらに奥には何があるのだろう。
それ以上は深読みは予想とハルキヨは視線をはずし、再び魅車を見る。
魅車はようやくかという雰囲気を持っていた。
実際何分彼らはお互いを読みあっていたのだろうか。
「そんなわけで彼は確実に上位に食い込む力を持っているわけね」
再びリモコンを操作しながら言う魅車。
「次は最近のものだけれどもその虫憑きが狩間市に現れたの」
「ああ、かっこうさんが借り出されたって言うあれのことですね〜。あの人がこんな任務に借り出されるなんてびっくりですよね。ハルキヨさん」
「なまってるんだろ??」
またあっさりと切られる。
「そして最終的に殲滅標的はかっこうが殲滅したわ」
「ほかの局員はどうなったんですか??」
かっこうが借り出されたのはあくまでも保険だった。
近くの赤浜市での事件があったためにもしかしたら近くに現れるかもしれないと思われていたからだった。
そして案の定現れたというわけだった。
「局員が全滅したわ」
感情のない表情で言う魅車。
それを聞いてウメの笑みは引きつり、ハルキヨもわずかに目を細める。
「相当な人数を送り込んだと聞いてますが・・・」
ウメの声がわずかに震えていた。
彼もできないわけでもないが、なりたての虫憑きが実践豊富な局員たちを全滅させた。
それだけでも十分に恐怖を与えていた。
そしてそのときに映像が流される。
彼らの目に映るのは虫たちが次々と叩き潰されたり、突き殺されたりする様子。
なぎ払われ、粉々になっていく虫たち。
それと同時に崩れる局員たち。
月明かりがあっても十分な蛍光量には足りなかった。
速さに追いつけない局員たち。
月光によって映る影はまさに死神だった。
「それでこいつをどうすればいいんだ??」
ハルキヨが聞いてきた。
「殲滅の前に彼をこちら側に引き込むというのが上層部の考えよ」
答えをあっさりと出す魅車。
まあそんなもんだろうという風に肩をすくめるハルキヨ。
「それで・・・??」
ハルキヨが口を開く。
まっすぐに魅車を見て言う。
「次の話題ってのはなんだ??」
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.46 )
- 日時: 2010/12/15 07:21
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
ハルキヨ PART 1
「珍しく食いつきがいいわね・・・ハルキヨ」
そんなハルキヨを見上げるウメもまたものめずらしそうにしている。
そんな彼らの視線を無視して睨みを強める。
静かなくらいここ中央本部は沈黙を守っていた。
「魅車さん、そろそろお話お願いします。ハルキヨさんの我慢が切れそうなので」
顔に出さなくてもウメにはそれが分かるのだろうか。
表情ひとつ変えないハルキヨを見ても魅車には分からなかった。
しかしウメが笑顔でさあ、早くと催促しているので始めることにした。
「あなたの新しい任務になりそうよ・・・ハルキヨ」
「ほお・・・」
なにやらようやくかと喜びが見えないオーラでひしひしと伝えていた。
痛いくらいの殺気。
そんな殺気を肌でじかに浴びている魅車。
ちりちりと肌を触るこの感じは殺気。
ここまで感じさせるのは一体どれくらいの虫憑きがいるだろうか。
「新たな虫憑きが生まれたという連絡が入ったの。ここから西に位置する獅子奥市にね」
獅子奥市・・・東に位置しているのは東中央支部がある桜架市。
なぜここから遠く離れたい地にあるところに彼が送り込まれなければいけないのか、ハルキヨには意味が分からなかった。
それはウメも同様であって、怪訝そうな顔つきだった。
「あそこは桜架市のほうが近いだろう。なぜ俺様がそんなところまで脚を運ばなきゃならない??」
「そうですよ魅車さん。桜架市にはかっこうさんがいるし、かっこうさんが行くとしたらあさぎさんだってくっついていくじゃないですか??」
かっこう・・・その名を聞いただけでハルキヨの表情に変化が生まれたのを魅車は見逃さない。
彼らが共通で抱えている問題・・・。
「確かに彼らが行けば簡単だけれども最近あさぎはかっこうとはともにいないために彼らを起用するわけには行かないのよ。それにそこで監視に当たっていた局員が数日前から音信不通になっていてね、もう10人を超えているのよ。だから今回の虫憑きは少しばかり厄介そうだから上からの命令で殲滅部隊を起用することになったってこと」
彼らが行動できない理由は分かった。
そして自分が出なければむしばねの勢力が拡大してしまうことも分かった。
「それで??かっこうのやつはどうして??」
「彼のことが気になるの??」
にやりと含みのある笑みを作る。
別に彼とは特別親しいわけでもなく、お互い自分の夢を守り続けている。
しかしあれがあったことから彼とは以前よりも距離が開いているように感じていた。
別に気にしているわけではないが。
「彼はまた別の任務で桜架市を離れているのよ。ほら、桜架市でむしばねと特環の戦闘があったでしょ??あれでかっこうは任務に飛ばされたわけ」
あれは昨年の冬のことだった。
桜架市に現れた欠落者から蘇生したふゆほたる。
彼女を捕獲するという命令が出ていた。
そしてその最中にむしばね率いるレイディー・バードがガーデンのある葉芝市での戦闘を起こしそこにかっこうが向かった。
その戦いでレイディー・バードは成虫化した虫をかっこうに殺されさらに虫に夢を喰いつされ亡くなった。
あそこで彼らに何があったのかは詳しいことは分からない。
ほかの局員たちは全滅し、東中央支部支部長土師は危篤状態で詳しい情報が聞けない。
かっこうもまた魅車に対してそのときのことを全く話そうとはしない。
彼女自身は最重要視されていたふゆほたる捕獲が成功したために聞く必要はないと踏んでいた。
実際に上の者たちもそのことについては糾弾することはなかった。
「そんなわけであなたたち殲滅部隊に頼みたいわけよ。やってくれるわね??」
まっすぐと笑みを浮かべながらハルキヨの事を見る魅車。
「しかたねえ・・・」
背を向けながら言うハルキヨ。
そして彼の周りには赤い火の粉が舞っていた。
ウメそれを見ながら後に続く。
殲滅部隊ハルキヨに課された任務。
「2匹の虫憑きの殲滅か・・・」
薄暗い通路を赤き魔人が闊歩していた。
美奈・香奈 PART 0
「お姉ちゃ〜ん??朝だよ〜」
妹の香奈が二段ベットの上でまだ眠っている姉の美奈を起こしにかかっている。
姉美奈はうめき声を上げながらゆっくりと起き上がる。
そんな普通の高校生の彼女たちは双子なのである。
「おはよう・・・香奈」
まだ眠いまぶたをこすりながら伸びをする美奈。
昨日の夜も大変な重労働だったのだ。
睡眠時間が短い彼女たちの目には大きな隈ができていた。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.47 )
- 日時: 2010/12/15 07:22
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
したでは着替えを始めた妹香奈がいた。
思い体を酷使して美奈もベットを降りて着替えを始める。
下に降りると母が朝食の準備をしていた。
「「おはようお母さん」」
「おはよう二人とも。またそんなに大きな隈作っちゃって・・・。ホントに大丈夫なの??そんなに夜遅くまで勉強して体壊したら元も子もないんだからね」
心配そうに言ってくる母。
そんな母に大丈夫だといっておく二人。
彼女たちには普通の人々には言えない顔があった。
いつものように学校に向かう。
「おはよう、美奈さん・香奈さん」
教室にはいると後ろから声がかかった。
そこにいたのは中肉中背の少年だった。
際立って特徴的なところはない街中であっても覚えていないようなどこにでもいる少年だった。
「あ、おはよう薬屋くん」
「おはよう薬屋くん。そんなしけた顔してたら幸せが逃げちゃうよ??あ、それはいつもか」
普通に挨拶を返す美奈と余計なことを言ってくる香奈。
言われた薬屋大助という少年は苦笑いだった。
彼がこの学校に来たのは今年の5月ごろだった。
突然の転校だったのだが、両親の諸事情だったらしい。
人柄がいいためかすぐにクラスのみなとなじむことができた。
「く〜すりや!!」
「うわ!!」
後ろから大助の背中を叩いてきたのは同じクラスの滝沢だった。
「痛いな〜滝沢。少しは手加減してくれよ」
涙目で言う大助。
そんな彼を見ながら笑っている滝沢。
いつものように中がいい二人。
そうこうしながら自分たちの席に座る。
「知ってる??近くの裏山にある館に出るお化け」
後ろから向日川が言って来た。
学校の裏にある山にもう何十年も昔から誰もすんでいないという古びた館があった。
彼女が聞いた話ではそこには結構なお金持ちが住んでいたらしい。
しかしある嵐の日にとある強盗が警察の追っ手から逃げてきて迷い込んで館に入ってきたらしい。
彼らを見た館の住人たちを一人残らずに惨殺したということだ。
そんな恐ろしいことがこんなのどかなところで起きていたなんて皆聞いたときは青ざめていた。
その犯人は結局捕まらずに時効を迎えているようだ。
いまさら彼が出てくるわけではないがその館にはあるうわさがあった。
それが向日川が先ほど言っていた館に現れるお化けである。
なんでも夜中になると悲鳴が上がるそうだ。
それも男のときもあれば女のときもあった。
警察などが現場検証をしたものの何も残っていなかった。
それは毎日ではないが週2・3回のサイクルだった。
「そんなことで知りたくないか??」
「何を??」
滝沢の発言に?を浮かべる大助。
それを聞いた滝沢が顔を命いっぱいに近づけていった。
「館のお化けの正体を暴こうといってるんだ〜!!」
「はああぁぁっぁぁ!?」
滝沢の突然の思いつきに思わず叫んでしまう。
乗り気ではない薬屋だが向日川は言ってみたいという。
しかし。
「私たちは・・・」
「ちょっとね・・・」
なぜか双子もまた生きたくないに票を入れていた。
なにやら表情が暗くなっていた。
そこに何か嫌な思い出もあるのだろうかと皆思った。
しかし彼女たちはそうではないという。
しかしそれならどうしてだというとなんとなくあそこは危ないということだった。
「それだからこそ冒険魂は燃えるのだぁぁぁっぁぁぁ!!」
相変わらずのテンションで言う滝沢。
そんな滝沢を押さえ込んでいると担任教師がやってきてホームルームが始められた。
泉海斗です。コメント・アドバイスお願いします。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.48 )
- 日時: 2010/12/16 06:27
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
ハルキヨ PART 2
ハルキヨとウメの2人は暗い裏山を歩いていた。
木々が所狭しと映えていて光がほとんど差してこない。
全く手入れがなされていないようだ。
「こんなところに本当にいるんでしょうかね〜??ハルキヨさん」
ウメがは供が作るような笑顔を見せながら言う。
そんなハルキヨはウメの言葉にまったく聞く耳を貸さない。
どうでもいい話しに付き合うつもりはなかった。
無視されたがいつものことなのでウメは気にしていない。
魅車から聞かされているのは殲滅対象が二人だということだけだった。
その二人が日中はどう動いているのかハルキヨにはまだ情報がなかった。
昨日は雨が降ったのか地面は泥だらけだった。
二人の靴は泥で汚れて、さらにあるきづらかった。
木々を飛んでいけばらくだが肝心の枝が光が差さないためか成長しておらず、細く昨日の雨で脆くなっていた。
そんなわけで苦労してついた館。
大きく歴史を思わせるものだった。
「すごいですね〜。こんな森の奥にあるんなら隠れ家にぴったりじゃないですか??たとえばむしばねとか」
しかしすぐに口をつむぐ。
むしばねとの抗戦でレイディー。バードとの戦いでしとめきれなかったのだ。
それをまだ気にしているのかウメをぎろりと睨んできた。
ウメの笑みはわずかにこわばっていた。
中にはいる。
腐った戸のとってはすぐにくずれてしまった。
「何だこれ腐ってるじゃねえか」
少しいらだちながらハルキヨは中に入っていく。
それに続いてウメも入っていく。
中はつたが仲間で侵入していて、コケもびっしりと生えていた。
「これは・・・」
ハルキヨが発見したのは特環の局員が欠落者となって発見されたところだった。
そこだけきれいになっていたのだ。
「うわ!!」
ウメが変な声を出して倒れた。
どうやらコケが下にも生えていたようでそれに足をとられたようだ。
ハルキヨは視線こそ向けたが何も言わなかった。
しかしその視線がさめたものだったためにすぐにウメは壁に手をかけて立ち上がる。
そのときだろうか、壁にあった電気をつけるスイッチを押してしまったのだ。
しかしもう何十年も使われていない館である。
つくはずがないと思われたが。
バチバチっと火花が散ってから明かりが全体につけられたのだ。
「これは一体・・・??」
ウメが困惑気味に言う。
まさか何十年も遣われていないものがつく筈がないからだ。
電線も通っていないここの館。
一体何の怪奇現象であろうか。
「こいつは面白いことになってきたな」
にやりと笑みを浮かべるハルキヨ。
「こいつらの能力は電気だ。“C”と同じだな」
同じく局員の名を出す。
しかしそれだけでは局員たちが次々と欠落者になる理由にはならない。
彼らは戦いに特化したエキスパートである。
そんな彼らが一方的にやられているのだ。
たかが二人の虫憑き。
「それにしてもそんなに争った形跡ってないんですね。一瞬でやられちゃったとか??」
確かにウメのいうとおり、館の中はそれほど争った形跡はなかった。
一瞬で虫を殺せるならば不可能ではないが、それほどの虫憑きなのだろうか。
もしそうならばハルキヨと同じ1号指定の虫憑きになってもおかしくはない。
そんな時、館の置くまでうろうろ歩いていたウメが。
「ハルキヨさん??変なうわさなんですが、ここって夜になるとたまに何者かの悲鳴が聞こえるらしいですよ」
ウメはハルキヨが顔は上げつとも聞いていることを感じ取った。
「男のときもあれば女のときもある。それの統計取った資料があるんですけれども」
なぜそんなものを持っているのかと疑問に思うが今は関係ない。
それをウメから奪い取り、見てみる。
そこには案の定局員の性別に合わせて聞こえてくる悲鳴の性別がぴったりとあっていた。
ここでの幽霊のうわさは局員たちが戦闘中に上げる悲鳴だったのだ。
しかしその虫憑きたちの正体が分からなければ彼らには手出しができなかった。
それになぜここでだけ局員が欠落者となるのだろうか。
ほかのところではまだ連絡は入っていないようだ。
一体彼らはどうやって局員たちをここに誘い込んでいるのだろうか・・・。
ハルキヨとウメはその場に立ち尽くしていた。
- Re: ムシウタ〜夢見るものたち〜 ( No.49 )
- 日時: 2010/12/16 06:27
- 名前: 泉 海斗 (ID: B240tmf4)
美奈・香奈 PART 1
放課後帰り道だった。
いつものように美奈は香奈と共の帰宅ではなかった。
一人繁華街を歩き、はずれにある工事現場に来ていた。
今日はもう終了しているようで関係者はいなかった。
はずれなために一般の人たちにはほとんど見られない。
それに彼女がここに来たのには理由があった。
「来たわよ」
いつもの明るい彼女と打って変わって冷静な声だった。
工場の影からは数人の男たちが現れた。
その皆が仮面をつけていた。
「来たか・・・紅蓮」
仮面をかぶった男が言う。
「最近面倒になるくらい特環が来てるわね。そっちでは何かあった??」
すると男たちはとたんに顔色を悪くする。
どうしたのかと思い、聞いてみる。
男の一人が搾り出すように言った。
「レイディー・バードが・・・」
悲しそうな顔だ。
「一体どうしたというの??」
異変に気がつき聞いてみる。
「葉芝市で・・・ガーデンでの戦闘で・・・レイディー・バードがかっこうに殺されたんだ」
「え・・・??」
それを聴いた瞬間自分たちの支えがなくなったことを知った。
美奈・香奈 PART 2
「そんな・・・」
まさかの情報だった。
あれだけ自分たちの支えとなっていたレイディー・バードが殺されただなんて。
しかも彼女を殺したのが自分たちの敵・・・悪魔・・・かっこう。
あいつは自分たちからどれだけのものを奪えば気が済むのだろうかと唇から血が出るほど強く噛んでいた。
それに最近の特環の活動も活発化してきている。
自分たちの正体がばれてしまっているためにスパイなどが送られているかもしれない。
あの館で一般人には被害が出ないようにはしてきたが、逆に心霊スポットと認識されて、面白半分で見に来るものも増えてきた。
「俺達はほかの地区のやつらにも知らせにいく・・・お前らも特環に捕まらないようにしろよ」
「なんたってお前ら姉妹は特環に対する戦力の1つだからな」
仮面をかぶった男たちが姉妹の力について言う。
連日特環局員を打ち破る力。
虫憑きとして、むしばねの仲でも力のあるほうである彼女たち。
彼女たちはここにいるむしばねたちをまとめるリーダー的存在である。
しかし仲間たちと会うのは本当にたまにしかなく、特環の局員の集団と戦うとなればここでは食い止めることは難しかった。
「私たちはもう少しここにとどまるわ。また厄介なやつらが入り込んだようだからね」
「やるのはお前の勝手だが、死ぬことだけは編めてくれ。これ以上の戦力ダウンはかんべんだかな。そうでなければスノウ・フライを支えるものがなくなる」
「スノウ・フライか・・・」
レイディー・バードがなき今のむしばねの新しいリーダー。
かつての特環を壊滅状態に追い詰めた最強の虫憑き。
しかしそんな彼女もかつては虫に夢を食い尽くされそうになり、その前に悪魔・・・かっこうに欠落者にされたようだ。
しかし彼女はそこから欠落者から蘇生した。
それは自分たち欠落者になることに対して恐怖しているものたちからすれば希望だった。
夢は思い出せる。
「彼女ってどんな人なの??私たちはまだ顔も見たことないから」
実形はここから出たことがないためにスノウ・フライがいる現在地に向かうことができないのであった。
「はっきり言ってあんな女の子が最強の虫憑きなのか・・・。はなはだ疑問に思うな」
そこまで弱弱しい姿なのだろうか。
力があっても使いこなせない虫憑き。
彼女の・・・正確に言えば彼女たちの蒸すも確かにそのようなものだ・・・ものだった。
今はそうでもなくなった。
しかしそんな彼らの周りに不穏な空気が流れる。
「誰かに見られてるわね・・・」
ちりちりと肌をこするこの空気。
否殺気だった。
顔を見られるのはまずいと思い、すぐに美奈も仮面をつける。
そして後ろからゆっくりとジャリを踏む音がした。
彼らは一斉に戦闘に構える。
ごくりとつばを飲み込み、緊張が走る。
そして鉄鋼の影から現れたのは特環の黒いコートを着て、ゴーグルをつけた少年だった。
髪は立てられ、その顔は至って普通。
特徴なのは頬の絆創膏だけであろうか。
「な・・・!?」
彼らは皆絶句する。
そこに現れ少年が一体誰なのかを知っているからだ。
「いつからいたのかしら??」
仮面をつけて顔は見られない美奈が尋ねる。
「お前がここに来るときからずっとだ」
「まさかね・・・」
自分が気づかなかったことに疑問を覚える。
これくらい目立つ姿なら気づかないはずもないはずなのにここに来るまでに彼のことを見つけられなかった。
少年はゆっくりとホルダーから自動式拳銃を出す。
その肩には緑色の虫がふわっと止まっていた。
「任務を遂行する」
冷たく冷酷に宣告する少年。
緑色の虫が拳銃と同化する。
「まさかこんなところであなたと戦うことになるとはね・・・」
美奈はそういうものの、妹の香奈がいなければ力の半分しか出せない。
そんな状態で彼と戦えるとは思っていなかった。
だから何とか美奈がなるべく傷つかない状態で逃げられないかと思考をめぐらす。
そして目の前の少年の名を言う。
「かっこう」
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