二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 東方怨崎録【ハーメルン様へ引っ越し】
- 日時: 2016/04/28 20:29
- 名前: こんにゃく春風 (ID: 2qFw4l..)
プロローグ
「はぁ、もういやだ…」
少年のため息が通学路に一つこぼれる。
少年は今でいうDVをうけていた。 それも、実の親から。
『ここにいたくない』という思いが、その幻想郷へのとびらを開けたのかもしれない。
そして、次の瞬間 そこに少年の姿はなかった
「ふふふ、幻想郷は『来る者拒まず』さあ、いらっしゃい。」
少年のいたところから、女性の声が聞こえてきた。
——少年、後の名を、『怨崎 信』といった……
さあ、始まりました。東方怨崎録!! この作品は、東方Projectの二次創作に当たります。主人公はDVを受けている少年です。至らないところがあると思いますがよろしくどうぞ!!
あ…後コメントもしてください!!大歓迎ですよ〜
怨崎信登場! 幻想郷の日常篇
第1話 対面 >>01
第2話 幻想 >>02
第3話 4話 5話 紅魔館『内』異変 前 中 後篇 >>03 >>06 >>07
第6話 雷鳴 >>08
第7話 CRIMSON BOYの来訪 >>11
第8話 猛者達の決闘 >>12
第9話 人生に必要なものは笑顔と危険の香辛料 >>14
第10話 執事長の1日 >>15
第11話 墨染め桜の木の下で >>20
第12話 13話 14話 温泉旅行に行こう! 前 中 後篇 >>22 >>23 >>27
覚醒、英雄伝へのプロローグ篇
To be continued
特別篇
異世界の探偵は依頼をこなしたい >>17
数えたら眠くなりそうな雲の下で >>18
イラスト
怨崎信 >>16
キャラ資料集
怨崎信 >>21
番外篇
Ⅰ 紅魔館生活はやめられない >>24
〜すぺしゃるさんくす〜
暁様作【東方探偵屋】より鍵宮蓮様
- Re: 東方怨崎録 ( No.14 )
- 日時: 2016/03/17 18:04
- 名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)
09 人生に必要なものは笑顔と危険の香辛料
ある晴れた日、信は昼寝をしていた。
「あれ、フランちゃんは?」
「ん?ああ、あいつなら紅魔館に帰ったよ」
それを聞いた早苗が笑う。
「わぁい!じゃあこれからとうぶん信さんと二人っきりなんですね!!」
「わっ、こら抱き着くな!!だいたい神奈子と諏訪子はどうしたんだよ」
「神奈子様も諏訪子様も布教しに行かれています」
そりゃよかった、と言いながら信は読んでいた本に目を戻した。
「しっかし、暇だなー。早苗なんかやることないか?」
それを聞いて、
「あの、お使い頼めます?」
と言った早苗は、ある種の間違いを犯したことになるだろう。 と、言うのも信は幻想郷にきてまだ一か月足らず。この世界の地理すら、頭に入っていないのだ。
「わかったよ、どこに行けばいい?」
しかも彼は、自分でそのことを理解していない。
「では、命蓮寺というお寺の聖さんにこの包みを渡してください」
「了解、じゃ、ちょっくら行ってきますかねーっと」
立ち上がる信が、『ドーレミーファソーラシード』という鼻歌を歌っているように早苗には聞こえた。 そしてそれは、当たっていたのである。
三時間後—————
「どうしてこうなった」
簡潔に言うと、信は道に迷っていた。皮の水筒も底をつきかけている。周りを見わたしても、あたりは知らない道だらけであるのは、至極当然のことである。
「(しまった、地図もらってない)」
ここでごく初歩的なことに気づけたのは、彼の進歩である。
ここで餓死するのを待つか———と、考えた彼を動かせたのは一人の女性の悲鳴であった。
「うあぁぁぁぁぁっ、妖怪じゃ、妖怪が出おった!」
「んだよ、妖怪ぐらいいつでも見るだろうが!!」
女性の悲鳴にいら立ちながら、信は駆けつけて、妖怪を斬った。
当然の事であり、彼の体に染みついていることの一部だったのだが、女性はそうは思わなかったらしい。信に三度ほど礼を言い、自己紹介をした。
「われは物部布都と申す、いや、そなたには危ないところを救われた。ぜひ我らが信霊廟に参るといい!」
「いや、別に俺は……」
そこまで言いかけ、信はおや?、と思った。物部。どこかで聞いたことのある名字だ、と
「そうと決まれば善は急げ、じゃ!」
そういうと少女は、高速に走り出した。 しばらくする頃にはもう信霊廟についていた。
「太子様〜すみません、面目ないです。 妖怪に襲われてしまって〜」
布都の視線の先には、金髪でヘッドホンをかぶり、錫杖を持っている女性がいた。
「まったく、布都。あなたのオッチョコチョイも、程々にしてくれないと—————おや?」
そこでその女性は、初めて信に気づいたようだ。 そして信も、そのことに気づいた。
「お初にお目にかかります。私は厩戸神子と言います。あの、あなたは?」
「ああ、俺は信。怨崎信、よろしく」
「よろしく、信」
「太子様、いかがなされました?」
ふすまの奥のほうから声が聞こえ、烏帽子をかぶった、足のない女性が入ってきた。 抹茶色の髪をしている。
その女性は、布都を見るなり、笑いをこらえるような顔をした。
「なんじゃ物部、薬草を取りに行くと言って今帰ってきたのか!」
「すまんな、屠自古。その途中で妖怪にも襲われた」
屠自古は信を見て不審そうな顔をしたが、神子から紹介され、表情が和らいだ。
「ありがとう、怨崎殿。私は蘇我屠自古。 ここで物部といっしょに太子様を守っておる」
「あんたらのご先祖、蘇我氏と物部氏だな?」
信のその質問には、神子が答えた。
「ええ、そのとおりです。ところで—————すみません、帰っていただけませんか? この後聖と会う約束なので」
そういわれて、信は包みのことを思い出した。
「あの、ごめん。 これ、聖さんに渡しといてくれ! じゃあな!!」
そういって疾風のように去って行った。 残された三人はただ、呆然とするしかなかった。
守矢神社
「ごめん、すまない!! 遅れた!!」
「遅いですよ信さん、もう晩御飯のお鍋できてますよ!」
神社に帰ってきた信は、今日あったことを早苗に話した。
なんでもない、普通の1日。
- Re: 東方怨崎録 ( No.15 )
- 日時: 2016/03/19 13:34
- 名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)
10 執事長の1日
紅魔館の朝は早く、夜は遅い。 主であるレミリアと、その妹のフランが吸血鬼だからだ。
数日前に来た新入りの(新入りながら執事長の職に就いている)望月紅も、例外ではない。
朝四時
彼は相部屋の住人であり同職の十六夜咲夜に起こされ、料理の後片付けや洗濯物などを、ほかの妖精メイドと分担してこなす。
「まったく、ここの人使いの荒さと言ったらないと思わないか、メイ?」
「うーん、どうなんでしょうかね? 私たちはこれが普通だと思ってやってますから、常人の紅さんには、難しいかもしれませんね」
「あ、お前バカにしたね!?」
などと、くだらない会話をしながら。
「あはは、ところでそれ、お嬢様のお皿ですよね。どうしてそんなしかめっ面してるんです?」
「あいつ、またピーマン残してやがる」
紅がそう言った刹那、銀色のナイフが紅めがけて飛んできた。 紅はそれを瞬時に、タロットの『塔』のカードで弾き返す。
紅にナイフを投げたのは、咲夜だった。
「お嬢様をあいつ呼ばわりするのは、最高職の人間としていかがなものかと思うわよ、紅」
「そうかい。ま、俺としてはお前に下克上でもしてもらったほうが、気楽で親しみやすいと思うがね」
それを聞いた咲夜は、少し頬を赤らめた。
朝五時
とくにやることもないので、私室に戻ってベッドに寝転がり、大図書館で借りた魔道書を読んでいる。
「(しかし、この部屋———————)」
紅はあたりを見回す。
「(どこか悪意を感じるな。 相部屋だし、ついたてもないし、何よりダブルベッドだし)」
このおかげで紅は、咲夜が着替える時など外に出ていなければならなくなった。
「紅、朝ご飯の支度、今日は主にあなたの担当じゃなかったかしら?」
「すまん咲夜、素で忘れてた。すぐ行くよ」
扉の外で咲夜の声がしたので、廊下に出た。
朝六時
レミリアが寝室から降りてくるころには、紅茶の香りが辺りに漂っていた。
「今日の朝ご飯は、パンに目玉焼きにベーコンのフライドにアールグレイか。なかなかいいセンスしてるわね、紅」
「ありがとうよ」
「なかなかいいセンスしてるんですって。よかったわね」
そう咲夜が言うと、紅は太陽のようににっこりと笑った。
この違いはなんなのかと、ひそかに考えないメイであった。
朝食を終えると、紅は庭に出て草木や花の手入れをする。 手入れをしながら門に目をやると、門番の美鈴が相変わらずの体勢で眠っていた。
「おーい、美鈴! 起きろー」
「むにゃ……? 」
朝八時
やることが無いと、しばらく紅は妄想にふける。
「(えっと……このポーンをAの五に、でもってこのナイトをEの三に動かして……Zzz……)」
しかし、朝四時に起きているので、しばしこういう事にもなりえる。
執事長の一日は今日もこうして過ぎてゆく。
- Re: 東方怨崎録 ( No.16 )
- 日時: 2016/03/17 20:03
- 名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)
- プロフ: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55859858
のれりさん画 怨崎信
まさにこんなヤツです
- Re: 東方怨崎録 ( No.17 )
- 日時: 2016/04/20 18:53
- 名前: こんにゃく春風 (ID: 2qFw4l..)
特別篇 異世界の探偵は依頼をこなしたい
その男の名は鍵宮 蓮と言った。
職業は探偵。最も、人気がないので依頼はほとんど来ない。
そんな彼はここ数日とても忙しそうに働いていた。
「はあ、今日も収穫なし、か」
「蓮さん、そろそろお腹もすきましたし、妖怪の山で昼食にしませんか?」
隣である事件で知り合った白狼天狗の椛が聞いてきた。
「おお、いいですねぇ! そうしましょうか」
本当はそんな場合ではなく、失踪した豊郷耳神子を探さなくてはならないのだが、今この男の頭の中からはそんなことは消えていた。
——探偵食事中——
食事を終えた蓮は、妖怪の山の景色を楽しむために、椛と別行動をとった。 前述したように、今この男の頭の中からは、失踪事件の事は消えていた。
そんな蓮に罰が当たったのか、はたまた偶然なのか、蓮は足を滑らせてしまい、谷底へと落ちて行った。
「うあぁぁぁぁぁ!!」
そして落ちた先は、幻想郷だった。
なぜ自分が幻想郷にいるのかということを、蓮は考える羽目になった。
いや、幻想郷ならまだいい。 なぜ自分は妖怪の山から落ちたのに、妖怪の山にいるんだ?
自分の頭がおかしくなったということを、疑わざるを得なかった。
が、しかし今はそんなことを考えている時ではない、と自分に言い聞かせた蓮は、椛を探すべく山頂を目指した。 と、そこである看板が目に留まった。
『守矢神社 この先』
「(たしか、霊夢さんとよく異変を解決した巫女、早苗さんがいる神社もここだったな)」
そう思った蓮は、向きを変え、守矢神社に向けて歩き出した
時を同じくして、守矢神社にいた信は、向こうから妙な男がやってくるのが見えた。
「(首もとぐらいの白髪、黒いベストとスーツ、胸元には赤い紳士ネクタイ、そして、黒いズボンと靴————まっくろくろすけだな。歳は二十歳ぐらいか)」
信は一見『ヤ』の付く自由業の人間にも見えなくもない男を見ながら、信は研いでいた日本刀、冬木立を置いた。
「(ま、早苗に害をなすようなやつだったら、斬るだけさ)」
などと物騒なことを考えながら。
登ってきた男は、信に向かってこういった。
「あのすみません、私、妖怪の山にいるんですけれども」
「はぁ?」
奥にいた早苗と諏訪子、神奈子も加えて話を聞いていると、その男は足を滑らせて妖怪の山か落ちたのに、気が付いたら妖怪の山にいた、ということを言ってきた。
「よしわかった」
「信さん、何がですか?」
早苗の問いには答えずに信は黒電話のある廊下に行き、紅魔館に電話を掛けた。
「あ、メイか。執事長いるか? そうそう、あいつ。———あ、相棒か? 単刀直入に用件を言うぜ、『変な奴が来た、力を貸してほしい』」
それだけ言うと、信は電話を切り、早苗たちに向かってこういった。
「よし、紅魔館で事の真偽をはっきりさせようぜ」
紅魔館内大図書館
「なるほどなぁ」
「な、おかしいだろ?」
大図書館にいた紅に事のすべてを話した信はこう尋ねた。
「いや、そうとも言い切れんぞ。 だいたいアンタ、名前は?」
「あ、私は 鍵宮蓮と言います。 あの、信さんでしたよね? こちらの方は、御兄弟ですか?」
それを聞いた信と紅は、苦笑のような表情をした。
「あー、それはな〜」
—————少年等説明中—————
「………なるほど」
「do you understand?」
紅が見事な発音で蓮に聞いた。
「いや、正直まだわかってないです。まさか、幻想郷の隣にもう一つ幻想郷があるなんて………」
「だよな、で、俺が言いたかったのはそれだよ、兄弟」
「…………………あ、なるほど!」
信は喉のつかえがとれたような顔をしてポンと手を打った。
「「えっ、どういう事です?」」
まったくわからないという顔で、早苗と蓮が聞いた。
「つまりだな、蓮さん。アンタは別の幻想郷の人間ってわけだ」
「でも、紅さん。あなた方の話だと私のいた幻想郷はどこです?」
「パラレルワ−ルドはいくつもある。俺たちがいない世界、白麗の巫女が巫女じゃない世界————まあ、いろいろだ」
それを紅が言い終わるのを待って咲夜が言った
「あの、そろそろ帰っていただけませんか?」
その日から数日、蓮の守矢神社居候生活が始まった。
- Re: 東方怨崎録 ( No.18 )
- 日時: 2016/03/18 23:30
- 名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)
特別篇 数えたら眠くなりそうな雲の下で
正直言うと、信は蓮のことをあまり好いてはいなかった。理由は、早苗とすぐに打ち解けたという一点のみである。
「(それに、あの人のいい感じの笑顔も気に入らねぇ)」
常人ならすぐに嫉妬と気付いただろうが、信はそういう機会が一度もなかった故に弾幕の『力』、『怨み』の感情のみが増幅して弾幕が無駄に強力になってしまった。
「(まぁ、新しいスペルカードを使えるようになったのはありがたいか)」
そう考えながら、皮肉に笑った。 そんな時である、二つの依頼が舞い込んだのは。
「連続放火犯?!」
最初の依頼は連続放火犯を懲らしめてほしい、というものだった。
どういうものですか、と蓮が聞くと依頼者はこういった。
「ここ三日前から、イの村の街道、ロの村の商店街、ハの村の富豪の家に、放火が起きるのです。それも、きっかり十二時に」
「そうですか。じゃあ今夜の十時に、場所の見当は付きますか?」
依頼者は首を横に振り、礼を言って出て行った。
「信さん、早苗さん、場所の見当は付きますか?」
「いいえ」
「俺も、答えはノー。まったくわかんねぇ。でもさ、現場に行けば何かわかるんじゃないか?」
その直後、二つ目の依頼が舞い込んできた。
「妹紅を探してほしいの」
依頼主は八意永琳。永遠亭の医者だ。
聞くと、藤原妹紅は永琳の主、蓬莱山輝夜のライバルであり、輝夜は犬猿の仲である妹紅がいなくなったために、生気を失ったような顔をしているのだそうである。
「お礼は必ずするから」
そう言って、永琳は帰って行った。
「……困るんだよなぁ、私のモットーは『なんでも無料』なのに……」
そういいながら蓮は、現場に向かった。
しかし、現場で得られたものはごく僅かだった。
焼け跡のすべてから、鳥の焦げ跡が出てきたという事と、足理猿白髪の人間を見た人がいるというだけ。
そんな中だった紅から連絡が入り、狙う場所が分かったといわれた。
「地図を買ってきてな、放火のあった場所に線を引いてみたんだ」
大図書館に、紅、信、早苗、咲夜、そして蓮の五人が集まった。
「三つじゃ訳が分からねぇが、四つ目を入れるとこうなった」
「………これは、北斗七星!!」
「お、鍵宮さん、勘がいいね。 そう、北斗七星だ」
そして五人が五人とも、目的地であるハの村の役場に向かおうとしたが、時刻を見ると午後十時、間に合いそうにないと、思った時だった。
「私ならあそこまで瞬間移動できますよ」
そう言ったのは蓮だった。
「マジか、じゃあ頼む!!」
人里役場前
「あんたか、藤原妹紅」
『ふん、まさか貴様のようなガキに見破られるとはな』
そう、この放火事件の首謀者は妹紅だったのである。
『名を聞いておこう』
「怨崎信」
すると、妹紅はにっと笑いこういった。
『そうか、信。貴様の運命は、死のみだ!!!』
勝負は、一瞬だった。
「ありがとう、蓮」
「いや、いいんですよ信さん」
すべてが終わった後、蓮が帰れる道を見つけた信は、帰りに鹿撃ち帽と黒パイプを蓮に渡した。
「いや、あんたが鳥の焦げ跡を見つけてくれなければ、犯人はわからなかった」
「………じゃ、また会いましょう!」
「ああ」
「————さん、蓮さん!」
「あれ、椛さん?!」
気が付いたら、蓮は野原で寝転がっていった。
強い風が吹き、蓮の帽子を———信からもらった鹿撃ち帽をとばした。
その様子を、椛は不思議そうな目で見ていたが、やがてこういった。
「じゃ、捜索を続けましょうか!」
「ええ、椛さん!」
その日の空には、数えたら眠くなりそうな雲が浮かんでいた。