二次創作小説(紙ほか)

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東方紅魔郷(裏)
日時: 2016/06/06 11:37
名前: スティン (ID: Ui5uT1fk)

〜注意〜
・東方projectの二次創作
・作者の投稿速度が遅め
・本家のキャラと違う性格…等々

それでも見てくれる方はどうぞ…。
裏と化した紅魔郷を見てください。





〜人物紹介〜
・博麗 霊夢
博麗神社の巫女。天才的な才能を持つ彼女は妖怪退治を主に行う。戦いには手を抜くが、本気になれば恐怖。幻想郷で勝てる者は居ない程に強い。

・霧雨 魔理沙
白黒の魔法使い。霊夢と同等の強さを兼ね備える彼女だが、実は物凄い努力家でもある。様々な呪文(主に攻撃呪文)と道具を扱って戦う。

・ルーミア
闇に生きる妖怪。物凄く冷静な判断をし、相手を徐々に追い詰めていく頭脳戦が得意な少女。普段は敬語で話し掛けてくる。妖怪の中でも強め。

・大妖精
神力の妖精。とても生意気な態度の彼女だが、物理的な力は幻想郷の最強クラスに入る。チルノを護る事に全身全霊を込めて戦う。かなり強い。

・チルノ
最強の妖精。とても大人しい少女だが、幻想郷の妖精の中で最強。氷の双刀を造りだし、相手を八つ裂きにするまで容赦なく殺しに掛かる。

・紅 美鈴
天龍の剛腕。大妖精の力を上回る門番。一秒の油断も見せない彼女を回避して、紅魔館に侵入は不可能。様々な体技が使える彼女は恐ろしく強い。

・小悪魔
冥界の悪魔。自分勝手を貫く悪魔であり、主であるパチュリーの命令には耳も貸さない。鋭い観察眼と反射神経が特徴であり、彼女からは逃げれない。

・パチュリー・ノーレッジ
終焉の魔女。幻想郷に存在する魔法使いの中で、大量の呪文を扱える。性格は明るく、紅魔館の外に遊びに出掛けていく。同時に魔法を扱う事も可能。

・十六夜 咲夜
時空の支配者。紅魔館のメイド長であるが、仕事を妖精メイドに押し付ける最悪の上司。しかし、戦闘となれば話は変わり、時間停止を駆使して戦う。

・フランドール・スカーレット
臆病な悪魔。レミリアの妹で、とても人見知り。咲夜と共に仕事をしている。戦闘は物凄く弱く、下手をすれば自滅する可能性もある。

・レミリア・スカーレット
紅の冥王。幻想郷の悪魔では最強を維持している紅魔館の主。紅魔館の者は口を揃えて、彼女に欠点が無いと言う。そんな彼女の強さは不明である。

Re: 東方紅魔郷(裏) ( No.23 )
日時: 2016/08/24 05:23
名前: スティン (ID: tCmJsotq)

停止した幻想が動いた頃、二人の最強は紅の冥王が待つ館に辿り着いた。だが、それは……博麗の本気を招き、光の霧雨を落とすまでに狂ったいくさが待っていた。二人は冥王に衝突できるか?

「おっ?美鈴は何処だ?」

「……寝てるのかしら?」

だが、それは違った。天龍の剛腕は地面に叩き付けられていた。それは、天龍が敗れたということだった。そして、ボロボロの巫女服を着た侵入者が戻ってきた。そう、天龍の剛腕を抹殺した脅威なる亡霊が。

「……!」

だが、その気配を感じた巫女は御札を手に持つ。暗い森から現れた亡霊は血で染まっていた。巫女は冷静な表情を崩さずに問う。

「貴女……誰かしら?」

「いや、聞く必要なんか無いんだぜ。彼奴は私達に敵意を持ってるワケじゃない。それに……あの門番を殺ったのは彼奴だぜ。」

そう、血に染まった巫女服が門番を殺した証。だが、彼女は弱々しい声で答えた。震える右腕を上げながら、苦し紛れな笑みで。

「いえ、彼女は殺せないわ。一時的に死んだだけなの、魔理沙や霊夢達の役に立てたのなら……私は満足よ。」

「そんな門番相手に苦戦してたら……貴女が侵入しようと目論んでいる館で殺されるわよ?悪いけど、二人は助けられないわ。」

巫女は彼女の言葉に隠された『共同戦線』を断る。だが、その断りを破壊する魔女が横から割り込んできた。

「いいや、霊夢。私達だけで戦える相手じゃないハズだぜ?この世界の美鈴だって、凄まじい力を持っていたに違いない。これは強力な助っ人だぜ?」

「馬鹿ねぇ、その凄まじい力を持ってる前提で話したのよ。そんな奴を格段に超越する奴らが居るのよ。それに…レミリアの強大な殺気も感じるわ。今までの戦いとは次元が違うような殺気がね。」

どうしても連れていくのを拒む霊夢。だが、亡霊の言葉で何かが揺さぶられた。固い記憶の扉から…光が少しだけ漏れた。

「霊夢、魔理沙…私は一緒に異変解決を達成出来なかったことを今でも後悔しているわ。あの頃だって、私は孤独だった……せめて、レミリアの戦力を削るぐらいは出来るわ。だって、私は存在しない存在だから。」

様々なキーワードから解放された記憶には、共に異変解決すべきだった彼女の姿が砂嵐に紛れて映された。魔女は巫女の肩に手を乗っける。

「なぁ、お前は多数の命と少数の命……どちらを優先する?私は断然、少数だぜ…だが、そんな意見は消えた。異変解決と共に増えていく仲間が出来たからだ。私は『未来』を望んで戦ってるんだ。」

彼女の言う未来は歴史を操り、戻れるかも分からない世界に連れ去った元凶を叩く事。巫女は彼女の決心を聞き、己も決心する。

「……好きにしなさい。」

そう、彼女は二人を信じた。大事な親友の意見、助けてくれる亡霊の意見……巫女は折れ、認めた。彼女は紅の冥王の館の門に手を添えた。

「ただ、『私』の策に従いなさい。」

激しい霊弾が砲撃と化し、館の門を吹き飛ばす。目の前に現れた広き空間に……巫女は笑みを浮かべた。それは戦の始まりだった。





「ねぇ、私の頼んだ本は?」

「えー?頼んでましたー?」

「……塵にしても良いのよ?」

「……私を甘く見てません?」

広大な図書館の中で冥界の悪魔と終焉の魔女が喧嘩をする。彼女達は異変解決に来る者達など、興味が無かった。紅の冥王が残らず葬ると思っていたからだった。だが、それは違っていた。異変解決者の一人は此方に接近していた。

「おや、道でも間違えたのでしょうかね〜?此方に物凄い勢いで突っ込んでくる何かが感じますよ〜!?まるで、パチュリー様みたいな馬鹿で…」

「私が馬鹿だとしたら、馬鹿に負けている貴女は何て表せば良いのかしらね。此処まで考えられない思考で私に喧嘩を売らない方が良いわ。」

刹那、冥界の悪魔は終焉の魔女の額に銃口を突き付ける。だが、引き金は引かなかった。終焉の魔女は驚きもせず、冷たい視線を向けるだけだった。

「戦闘経験や実力では到底、パチュリー様が低いですね♪これで、互いに半分ですよね……パチュリー様〜?」

「あら、私に勝るとでも言うのかしら?だったら、間違えて来たワケではない侵入者を蜂の巣にしてみなさい、その銃でね。」

その言葉と共に、大図書館の扉が吹き飛ぶ。そして、虹色の星を撒き散らしながら侵入者は現れた。彼女は仲の悪そうな二人を見て笑う。

「間違えて来たワケじゃない……?」

冥界の悪魔は不思議そうな表情を浮かべると共に、終焉の魔女の額から銃口を離した。目の前に現れたのは白黒の魔法使い。

「ほら、来てやったぜ?」





「さ…咲夜さん……」

「あ?何だよ?」

廊下の壁に背中を預ける時空の支配者は煙草を吸いながら、鋭い視線を従者である臆病な悪魔に向けた。臆病な悪魔は此処に立たされた意味が理解出来なかった。彼女は時空の支配者に連れてこられたのだ……この廊下に。

「私は何をすれば…!?」

刹那、臆病な悪魔の両足にナイフが刺さる。痛みで座り込んだ彼女は涙目で時空の支配者を見た。彼女は煙草を地面に落とし、勢いよく踏みつけると静かに話した。

「見てれば良いんだよ…御嬢様に愛される妹が手柄を立てたって言えば良いんだろう?てめぇは良いよな、戦いもしねぇんだからよ。」

「い…いえ、私も一緒に……」

「生憎、足手まといを護れる時間は無いんだよ。てめぇに刺したナイフは教育のナイフだ。時間を戻せば無傷になる。その痛みを噛み締めながら、今から来る侵入者共の無惨な姿を見てれば良い。」

「……はい…」

彼女は最愛の姉から好まれる幸せな妹。だが、こんな雑務に時間を費やし、痛みを味わい、罵声罵倒を浴びることに……疲れていた。無かった事にされる傷など、誰に見えるだろうか?

「ふん、来たか……」

奥の扉が開くと共に、臆病な悪魔の両足のナイフと傷と血液は消えた。彼女は何時もと変わらぬ現象に驚かずに、時空の支配者の横に立つ。

「あら、思った通りね…」

白黒の巫女服の亡霊は二人を見つけると、予想通りと言いたいばかりの表情を見せてきた。時空の支配者は優しい微笑みを向けた。

「あら、此処は危険ですよ?私達も見つけたからには、この先を黙って通すワケにはいきません。無駄な戦闘は嫌ですので、どうかお引き取りを。」

「あらあら、可哀想に。そんな汚れた心を持つ女に毎日、酷い仕打ちを受けているのね。そんな偽りの性格を見せないで…本性を出したら?」

「……!」

彼女は見抜いていた。亡霊に見えたのは…臆病な悪魔の残酷に刻まれた切り傷。時空の支配者は少し黙った後に聞き返す。

「正真正銘、これが本性ですよ?」

「えぇ、嘘を吐くのも分かったわ。それじゃあ、そんな貴女にキツい仕置きでもしてあげようかしら?」





冥王は屋上で待っている。時空の支配者には嘘を伝えたが、平気だろう。彼女は待てなかった……弱き自分の世界で頂点を司る巫女を。

「……彼女達の運命は変えられる。でも、貴女の運命だけは…変えようにも上手くいかないのよね。その強大な力が邪魔して。」

そして、夜空に浮遊する巫女を紅き瞳で見る。巫女は紅の冥王の殺気に本気を出すことを決意した。博麗の加護だけでは危ういのだ。

「貴女を仕留めれば、異変は終わるわ。」

「……そう。」

巫女の挑戦に冥王は静かに笑う。そして、天から落下する獄炎に包まれし神槍を手に取る。紅き霧で覆われた幻想郷の彼方此方に雷が落ちる。

「さぁ、遊びましょ…博麗 霊夢。」

Re: 東方紅魔郷(裏) ( No.24 )
日時: 2016/08/28 21:43
名前: 名無 (ID: jWLR8WQp)

遂に彼女の出番か

Re: 東方紅魔郷(裏) ( No.25 )
日時: 2016/08/29 00:47
名前: スティン (ID: NiQpbZW/)

高鳴る鼓動を抑える冥王。彼女は獄炎に燃やされても消えぬ神槍を握る。冥王が歩く度に起こる亀裂。巫女は彼女を見ても驚きはしない。

「その強さ……魅せなさい…」

刹那、冥王の姿が消えた。巫女は彼女が消えたことに気付く……が、それは攻撃を喰らってからだった。

「!」

紅魔館の屋上から館内に貫通していく巫女。しかし、無意識に張った結界が身体を護っている。

(速い…あの鴉天狗の何倍も……)

それは言い表せない速度。本当に速いと音が発生しないと言う。そう、その通りである。冥王が目の前に音を立てずに追撃しに来た姿も認識が遅れる。

「ッ!」

巫女は冥王を強烈な波動で吹き飛ばす。だが、巫女も冥王の一撃に吹き飛ばされる。互いに壁に衝突する……かと思われたが、両者は壁を蹴り飛ばす。そして、互いに戻ってきた。

(……遅い。)

(速いッ!?)

だが、冥王の神槍が巫女の身体を貫く。巫女は壁に釘付けにされると、苦痛の表情を浮かべて苦しむ。冥王は挑発するかのような笑みを浮かべ、指を鳴らす。すると、共鳴するかのように神槍が紅く光り爆発する。崩れる天井と共に舞い上がる爆煙。冥王は爆煙の中から戻る神槍を手にしようとする。

「……読めたつもりかしら?」

「!?」

冥王は背後から来る巫女に手を向ける。すると、紅の巨砲と共に前方が塵になった。巫女は何枚もの壁を突き破り、窓ガラスを割って吹き飛んだ。

「妖精と殺り合った時も、貴女は何かを躊躇していた。それは…『戦う意思』よ。貴女が戦う意思を見せなくても良いわ、私が…見せさせるから。」

冥王は戻ってきた神槍を手にすると、前進した。だが、冥王の右足が強力な鎖で封じられる。冥王は少しだけ驚く、可笑しいのだ……彼女に罠を仕掛ける暇なんて無かったハズ。

「悪いわね、上回ってるのよ?」

「!」

刹那、巫女の霊力を纏った踵落としが冥王の頭上に仕掛けられる。だが、その速度の遅さに冥王は防御をする。神槍で踵落としを防ぐと、霊力の波動が其処で暴発した。冥王は瞬きをせずに、次の状況を認識しようとする。

(上回っている…一体何を……!?)

「速度よ。」

冥王の背後に回り込んだ巫女は囁く。そして、冥王に強烈な霊弾を決める。冥王は吹き飛びそうになるが、蒼炎に燃え盛る霊弾を左手でワシ掴むと、横に投げ飛ばす。神槍を持つ右手に力を込める冥王。巫女は御払い棒を召喚し、強大な神炎を纏う薙刀に進化させる。冥王も冷静な表情になり、これから始まる戦いに集中する。

「言ったハズよ…最初から『本気』で貴女を倒すとね……レミリアッ!」

「ククク……笑わせてくれるわ、派手に吹き飛んだ貴女には驚いたわよッ!」

両者の神器が交わる。辺りに亀裂が入っていく。巫女は冥王の的確に狙った突きを避けていき、隙を見て地面に刃を摩擦させ、そのまま昇る月の様に振り上げた。紅き斬撃波はギリギリで避けられ、後方の壁に命中する。すると、巨大な爆発が起こった。

「ふんッ!」

「はぁぁッ!」

爆発の中でも怯まない巫女と冥王。巫女は薙刀を回転させて神炎を纏わせ、大文字斬りを仕掛けるが、冥王は地面を強く蹴って後ろに跳ぶ。そして、タンッと壁に移る。巫女は強大な波動弾を拡散させて撒き散らす。

「クククッ!」

波動弾が命中して崩壊する壁の中を走り抜ける冥王。冥王は神槍の力が溜まった事を確認すると、壁から勢いよく蹴って、巫女に襲い掛かる。

「くッ!?」

先程よりも段違いに速さを増した冥王は狂喜の笑みを浮かべながら、巫女の腹を狙って突く。見事に命中したが、先程と同様に彼女は消え去る。

「スペルカード発動ッ!」

冥王は神槍に込めた力を解放させる。この速度は光を超え、必ず命中させる究極の技だ。そう、それは……

神槍『スピア・ザ・グングニル』

究極の神槍は見事、奇襲を仕掛けようとした巫女に命中した。巫女は紅魔館から流星のように吹き飛ぶと、紅き霧の空で大爆発する。

「この速さには勝てないわ、そして…そのグングニルは避けることも出来ないのよ。つまり、貴女は何も……」

冥王は空から落下する流星のような神弾を睨む。刹那、紅魔館に大量の神弾が命中し、蜂の巣となった。

「無駄よ…」

だが、冥王は右手で巨大なバリアを張って立っていた。そして、天から落とされるグングニルを避ける。

「……ラストスペル発動。」

それは、神に対抗する為に生み出された最強の証。その名は……

「『夢想天生』ッ!!」

刹那、紅き霧が吹き飛んだ。幻想郷に落ちていた雷も吹き飛ぶ。その姿は天空の神に相応しい姿だった。蒼炎を纏い、紅きリボンを外した巫女は今からの戦いに容赦などしない。

「遂に来たわね…貴女の本気がッ!!」

グングニルを再び掴んだ冥王は、これまでにない力を解放させる。辺りの木々が一瞬で八つ裂きとなり、地割れが起こり、嵐が吹き荒れる。その姿は天地を支配する冥王。紅蓮の獄炎を纏った彼女は天空の巫女を見る。今、幻想郷が脅威に包まれる戦乱が起ころうとしていた……神と冥王の戦乱が。

Re: 東方紅魔郷(裏) ( No.26 )
日時: 2016/12/18 01:46
名前: スティン (ID: CM0t8LjG)

紅の廊下で睨み合う強者達。時空の支配者は、目の前に立っている女から感じた霊力に驚きつつも、平然を保っている。亡霊の冴月麟も警戒をする。臆病な悪魔はガタガタと身体を震わせていた。

(あの方は正気じゃない…ッ!?)

冴月麟の相手は時空を支配する者。その恐ろしさは何度も、見えない傷として残されてきた。しかし、亡霊に怯える表情は無い。

「其処の従者は元々は強いハズよ、貴女みたいな人間の内臓を粉々に粉砕する程の破壊力を持ってるんだから。」

「生物は戦いの時、一番最初に実行するのが『行動』です。しかし、その行動の間に仕留められたら…その生物は身動き取れずに死ぬでしょう。」

時空の支配者は笑った。冴月麟は二胡を構える……だが。

「言ったでしょう…身動き取れずに死ぬと。」

擦れ違い様に放たれた一言。冴月麟は立ち止まっていた。そして、持っていた二胡を落とす。首には…銀色の刃を持つナイフが刺さっていた。

「グッ………なんてね。」

彼女の生命反応を察知した時空の支配者は、時を停止させた。すると、此方を笑いながら見ている冴月麟が其処に居た。刺さったハズのナイフを投げ返そうとする彼女を見た時空の支配者。

「ククク…楽しいじゃねぇか。」

冴月麟のナイフを持つ腕に、新たなるナイフを投げる。そして、彼女は停止した時間を元に戻した。そう、停止していた時間を…。

「!?」

刹那、時空の支配者の腹に弓が刺さった。一瞬の出来事で分からなかったが、冴月麟の腕にはナイフが刺さっている。そして、持っているナイフを落としている。ならば、この弓は何なのだろうか?

「ま…さか…ッ!?」

「足で蹴っただけよ。時間停止が有効とか言うけど、結局は頭の良さが勝負の決着を分かつことになるのよ?」

屈み込んだ支配者に、冴月麟は笑う。臆病な悪魔は口を開けていた。誰もが触れることすら出来ぬ無敵の上司に、賢い一撃を命中させた冴月麟に驚きを隠せなかった。悪魔は心の片隅に出来た感情を大きくする。

(倒してくれる……?)

二本のナイフを拾い直す冴月麟。支配者は彼女の身体が無傷な事を確認すると、クスクスと笑った。最初から効かぬのだ…己の攻撃手段が。しかし、彼女には勝利への道が存在している。

「さぁ、終わりじゃないでしょ?」

「えぇ、勿論。」

刹那、冴月麟の身体に異変が起こる。カチカチと戻る時間、実体化される肉体…その姿は亡霊となる前の自分であった。支配者は笑う。

「ハンディは終わりです。」

「時空操作……ね。」

先程とは違い、己の身体は生きてる時と同様。部位に刺さるナイフによっては、一撃で仕留められる。冴月麟は少しだけ焦る。

「ア……アァ!」

臆病な悪魔は心の中で、恐怖という感情と戦っていた。冴月麟は死んでしまう…。肉体を取り戻した冴月麟、時空を操る咲夜。これ程に不利が予想される戦いが存在しただろうか?

「時空を操るまでに進化してたのね…貴女は。」

「…私に操れぬ時など無い。」

刹那、大量のナイフが襲い掛かる。冴月麟は抵抗しようとした、この絶望的な状況下でも…必死に。理由は一つ、約束したからであった。

「また…死ぬのね。」











「待ってくださいッ!」

刹那、大量のナイフは一瞬で弾かれた。床に散らばるナイフを見た時空の支配者は…裏切りに相応しい行為をした者を睨む。

「妹様…何のつもりで?」

支配者に調教されてきた悪魔。しかし、その鎖を解放する時が来た。臆病な悪魔は真っ直ぐな瞳で…上司を睨み返す。

「咲夜…彼女に手を出すなッ!」

弱々しい声は何処に消えたのか、今は立派なフランドール・スカーレットが立っていた。時空の支配者は反抗する奴隷に怒りの表情を見せつけた。

「いい加減にしてください。」

「それは…此方の台詞よ!」

冴月麟の前に立ったフランドールは、時空の支配者に拳を見せる。冴月麟は彼女の勇敢さに驚くが、同時に不安を感じた。

「逃げた方が良いわよ?」

「いえ、貴女を護りたいと思えました。私の傷を分かってくれた方は…これで二人目なのです。そんな貴重な人を殺させないッ!」

「……フフ、随分と格好いいじゃない。」

二人の会話を黙って聞いていた支配者は、一本の煙草を吸い始めた。そして、口から煙を吐いた時、彼女の瞳が蒼から紅に変わった。

「てめぇら…糞みてぇな茶番を繰り広げて……全く、気に入らねぇ。その顔面をズタズタに切り裂くぞ、糞部下と糞野郎ッ!!」

刹那、フランドールの身体に銀色のナイフが大量に刺さる。冴月麟は目を見開くが、フランドールは大声を出した。

「私は大丈夫ですからッ!」

冴月麟は頷くと、二本のナイフを支配者に投げ返す。しかし、瞬間的にナイフが戻ってきた。ギリギリで一本を回避するが、もう一本が右腕に刺さる。

「グッ!?」

「無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

終わりが見えないナイフの嵐。大半をフランドールの能力で破壊しているが、それでも飛んでくるナイフが彼女に刺さり続ける。溢れる血液を横目に見ながら、冴月麟は時空の支配者に突っ込む。

「正面からだと…笑止ッ!」

絶好の的になった冴月麟にナイフを投げる。四本のナイフが彼女の両足、腹部に刺さった。倒れ込んだ冴月麟、それを見た時空の支配者は彼女に決めの一手を投げようとする。しかし…。

「私を忘れるなァッ!!」

冴月麟の背後に隠れていた血だらけのフランドールが雄叫びを上げながら、握り締めた拳を時空の支配者の顔に命中させた。それと同時に、彼女の右目にナイフが刺さる。

「ガハッ……糞…が……」

床に倒れ込んだ支配者は静かに倒れる。ボロボロの姿になったフランドールを見た冴月麟は涙を流していた。右目のナイフを抜き取るフランドールは、痛みに堪えた表情で笑顔を見せてきた。

「私は…強くなれましたか?」

「…えぇ、本当に強いわ。」

「それ…は……良かった……。」

フランドールは冴月麟に寄り掛かるようにして倒れる。そして、そのまま安らかな顔で…死んでしまった。冴月麟は静かに泣いていた。

「!?」

だが、それは一瞬であった。大量の弾幕が、紅魔館の壁を破壊して飛んでくる。崩落する天井や床。冴月麟はフランドールを護るように抱き締める。

「もう、傷は付けさせないわッ!」

彼女に落ちてくる天井……刹那、時間停止が起こる。仰向けで倒れている支配者…いや、咲夜は口から血を流しつつも、自分を潰そうとする天井を睨む。

「こんなんで…死ねる…かよ……」

目眩のする視界で起き上がった咲夜は、目の前に居る二人の姿を見る。息絶えたフランドールを護る冴月麟。ゴミがゴミを護っているのだ。

「ざまぁねぇな……。」

彼女は背中を向けた。しかし、走馬灯のようにして突如とフランドールとの思い出が流れ込んできた。ほとんどが暴力を実行していた思い出の中、メイドとしての心得を教えている自分が居た。完璧に遂行したフランドールの頭を優しく撫でてやっている自分が其処に居た。

「……知ったこっちゃねぇ。」

彼女は独りで崩れる瞬間の廊下を歩いていった。そして、時間停止が解除された。冴月麟は今度こそ絶望を感じて…目を閉じる。

「………!」

目を開けると、頭上にあった瓦礫が粉々に粉砕されていた。そして、天井に向けた幼い手。その手には温もりを感じた。

「大丈夫ですか?」

その声を聞いた冴月麟は安心した表情を浮かべて答える。

「えぇ、大丈夫よ。」

Re: 東方紅魔郷(裏) ( No.27 )
日時: 2017/11/30 18:50
名前: 名無 (ID: 69bzu.rx)

打ち切りなのかな?


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