二次創作小説(紙ほか)
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- 【文スト】夢から醒める
- 日時: 2017/05/12 05:53
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
夢から醒める話をしようか
初めまして、哀歌です。
今回は文豪ストレイドッグスの二次創作を書いていこうと思います。
注意
○文豪ストレイドッグス
○二次創作
○キャラ崩壊
○シリアス
○腐向け
○双黒or太中
目次
○序章…>>1
○第一章…>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
○第二章…>>8 >>9 >>10 >>11 >>12
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.8 )
- 日時: 2017/05/07 08:52
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
第二章 淡い幼き日の記憶
「姐さん、彼奴はだあれ?」
ポートマフィア本部から少し離れた所有地、尾崎紅葉の姐さんの住む家とも言える。
そこで体術から剣術、作法や女マフィア特有の色の使い方などを教わっていた俺は、桜咲き乱れる木の下で本を読んでいる包帯塗れの少年に目がいった。
少し前に本部ですれ違った時には、松葉杖をついていただろうか。
そのときには当時、ポートマフィアで医療関係をしていた森鴎外に手を引かれ、側にはQ__________もとい夢野久作が気味悪い人形を持って笑いかけていたのを覚えている。
「太宰治じゃよ。よく頭のキレると聞くのう」
太宰治。あまりパッとしない名前だったが、その時はとても魅力的だと思った。
至るところに包帯を巻いているが、それでも彼の風貌はとても整っていて、中性的で可愛らしいと言われてきた俺にとっては羨ましく思えた。
「中也、あの子が気になるかえ?」
「いえ……彼奴も異能力者何ですか?」
はっきりとしない返事に姐さんはクスリと笑う。
紅く色づけられた白く、美しい手を俺の頭にゆっくりと置き、指を絡めるように髪を耳にかける。
耳に触れるその手が擽ったくて顔を竦めると、姐さんはまた笑みを浮かべた。
「だから鴎外殿は此処に連れてきた。あの子の異能力には中也も気に入るのう」
俺はそう言う姐さんを後ろ目に、その少年、太宰治に目を向ける。
太宰は一枚、また一枚と本のページをゆっくりと進めていく。
美しい桜と美しい少年はとても絵になっていた。
「太宰、治」
俺は太宰治に魅入られてしまったのだ。
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.9 )
- 日時: 2017/05/07 16:49
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
「これから二人は“相棒“だよ」
ニッコリと微笑むのは森鴎外。
その横で愛しそうなものを見る目でこちらを見つめる尾崎紅葉。
そして俺は目の前にいる美しい少年、太宰治と相棒になることになった。
「よろしく、中也」
「こちらこそ、よろしく」
たどたどしくもこちらに差し伸べられた手をとる。
そこで俺は異能力を使おうとするが、手に力が入らず発動しない。
これが太宰の異能力“人間失格“。
「私の前では異能力は使えないよ。君のその暴走する異能力を抑えてあげよう」
妖艶な笑みを浮かべる太宰は、どことなく森鴎外と似ている。育ての親だからだろうか。
暴走とは“汚濁“のこと。
幼い俺はまだ異能力を使いこなすことができず、ふいに暴走してしまうことがある。
このポートマフィアを木端微塵にする所まで破壊したこともあった。
その時はいつも姐さんが止めに入り、俺を気絶するまで抑え込む。要するに半殺しだ。
そう迄しないと俺の異能力は止められない、止まらない。何せ死ぬまで暴走し続けるのだから。
使い方によっては強力ではあるが、無能でもあるこの能力を生かすために、太宰と俺は相棒を組まされた。
「……俺は、お前のように頭は良くない。ただ少し体術が優れているだけで、足で纏で、約立たずかもしれない……それでも、いいのか?」
ふいに問いかける。
俺は怖かった。捨てられてしまうことが。
だが、それでも彼奴は__________
「私を信じて、中也」
握られた手から体温が伝う。
暖かい、白くて角張った大きな手。
太宰の熱が、俺の熱が、お互いに絡み合って離れない。
嗚呼、どうしようか。どうすればいいんだろうか。
俺は__________
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.10 )
- 日時: 2017/05/09 05:46
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
「早く殺りなよ、それ」
太宰は至って平坦な口調で言った。
俺は目の前で横たわりながら必死に命乞いをする、傷とアザだらけになった無様な人間に銃を向けていた。
だが、その引き金を引かない。引けない。
「でも、太宰……」
初めての任務だったこれは、太宰の指揮と俺の重力操作で二時間もしないうちにターゲットを追い詰めた。
此処で目の前の此奴を殺せばそれで任務は終わりを告げる、が。
幼い俺は人を殺すことに抵抗を覚えた。
その緩い引き金を引くことができない。
「いいから」
「だけど此奴は……っ」
死にたくないと言っている。
そう言おうとしたところで刹那、後ろから太宰が俺の拳銃を握る。
そして一瞬の間で引き金を引いた。
パァンと空を切る音が鳴り響く。
それと同時に花を咲かせるように鮮やかに血が飛び散った。
「う、ぐぅ」
噎せ返るような鉄の匂いと、真っ赤に染まり動かなくなった死体に、吐き気を覚えた。
思わずそこで吐き出してしまう。
「中也が無慈悲な事で躊躇ってるから、苦しみながら死ぬことになったんだよ?きっと何もわからないまま死んだ方が楽だったろうね。可哀想に」
気持ち悪い笑みを浮かべながら、太宰は死体の胸ポケットや装備品を回収する。
するとそこで何かを見つけたのか、一枚の写真を取り出してこちらに見せつけた。
そこに写っているのはターゲットと、その隣で笑う子供と女の人。
三人とも幸せそうな表情で笑っていた。
「あーあ。君が殺しちゃったせいでこの人は大事な人には会えなくなったみたい。この女の人と子供も今頃この人の帰りを待ってるのにね」
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.11 )
- 日時: 2017/05/09 17:18
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
太宰の言葉は俺の喉を締めるように苦しめる。
一つ一つに毒がある言葉は、恐ろしく、どこか甘いような気がした。
「可哀想な中也。君は心が綺麗すぎるんだよ、それこそ__________」
そこで言いかけて、太宰は止める。
そして俺にゆっくりと近づき、オレに抱きついてきた。
太宰の甘い香りが、充満する。
それにまた吐き気を覚えたが、出てくるのは胃液ばかりで一向に苦しみがとれない。
それに気づいたのか、太宰は俺の口の中に指を入れ、喉の奥までゆっくりと通す。
「私が守ってあげる。ほら、吐いて」
「うぐっ」
次の瞬間、喉の奥をいきなり掻き回され、太宰の指と伴に吐き出してしまった。
ゲホッゲホッと肩で大きく息を吸いながら、俺は楽しそうに笑みを浮かべる太宰を睨んだ。
「死ね、糞太宰」
「酷い言われようだね。私は中也が大好きだよ」
へらへらと半笑いを浮かべる太宰についカッとなってしまう。
此奴、頭が可笑しい。
俺は思わずそう思って、太宰にその熱をぶつけるように毒気のついた言葉を吐いた。
「テメェなんか大嫌いだ」
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.12 )
- 日時: 2017/05/12 05:40
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
幼い頃の記憶なんて、正直いい事はなかった。
初めて会ったときに優しく包み込んでくれた太宰は、今はもう何処にもいない。
それでもあの日俺が太宰に抱いたこの気持ちは、今も変わらないのかもしれない。
いくら嫌いだと毒を吐いても、結局は太宰を目で追いかけてしまう。
ムカつくのに。嫌いなはずなのに。太宰は、俺を見てはくれないのに。
「この世界は、美しく、酷く醜いね」
いつの日か太宰が呟いていた言葉。
誰に言ったのかもわからず、ただその言葉は隣にいた俺にしか聞こえていなかったようで。
それに気づいた太宰がこちらを振り返って、あの日のような柔らかな笑みを浮かべて言った。
「美しく見えるのに、裏側は真っ黒焦げだ」
子供のように無邪気に笑う。
俺はそんな太宰が嫌いではなかった。
この時だけは、太宰は俺だけを見ていて、俺だけの空間なような気がして、心地がよかった。
「そうか」
俺は決まって一言そう言うだけだ。
ただそれだけで、俺たちの会話は終わって、いつもの様に嫌い合う相棒同士に戻る。
俺が太宰に抱いているこの気持ちはなんだろうか。
今もわからない。わかりたくない。
きっと知ってしまったら、この淡い幼い日の記憶は、壊れてしまう。
俺は失いたくない、あの日の記憶を。