二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 響け、僕らの北宇治サウンド【響け!ユーフォニアム】
- 日時: 2017/12/29 10:38
- 名前: Asterisk (ID: XgzuKyCp)
『響け!ユーフォニアム』の二次創作小説です。
中3の夏にこの作品を手に取って以来好きなシリーズだったので、
二次創作を書いてみたいと考え投稿に至りました
この小説の視点は2年生のオリジナルキャラ
ユーフォ担当の 朝倉司/あさくらつかさ で進行します。
方向性はまだ未定ですが、
彼と同学年で同じパート所属の誰かを好きになる
……というのも考えています
話を書くにあたって、
不自然な関西弁表記がある可能性があります(関東在住なので)。
「何ですか、これ」な書き方を見つけたらそっと教えてください。
吹奏楽わからない人向けに
用語まとめも作っていきたいと思います(吹奏楽を少しやっていました)
それでは長くなりましたが、どうぞお楽しみください
>>1-17 (第1章)
- 1-3 ( No.3 )
- 日時: 2017/12/26 17:47
- 名前: Asterisk (ID: 3KvV.ocm)
校歌の演奏が終わると入学式が始まった。僕達は楽器を下ろしてその席で指揮に参加する。
それにしても、さっきのあの演奏はあまりに酷すぎる。不協和音に不揃いなリズム、まばらなテンポ。こんな状態でよくまあ、演奏しようと思えたものだ。恥ずかしさから俯きがちになりながら、僕は式の流れを見続けた。
「続きまして、新入生代表の言葉です。新入生代表 高坂麗奈さん」
「はい」
その凛とした声と共に壇上に上がってくる女子生徒。その姿と名前に見覚えがあった。
(あの1年生は……トランペットの、高坂さん?)
高坂麗奈。僕の卒業した北中学校の吹部でトランペットを担当していた一つ下の後輩。
演奏技術はあの中でずば抜けていて、勉強もできる……という話をいつかに聞いた記憶がある。
高坂さんの実力なら聖女中等学院や立華高校、洛秋高校などの京都府内の強豪校から推薦をもらっていても間違いないのに、何故このような学校へ進学してきたのだろうかという疑問が湧き上がった。
そんなことを考えているうちに入学式が終わってしまったのだった。
- 1-4 ( No.4 )
- 日時: 2017/12/26 10:10
- 名前: Asterisk (ID: 3KvV.ocm)
その後部長の指示で3つのグループに分かれると楽器の撤収、譜面台、会場の片付けをすることになった。
数少ない男子部員として僕は駆り出され、楽器の運搬、会場の片付けにと忙しく駆けまわり、
片付けが終わる頃にはへとへとになってしまっていた。もう少し体力があればと思いながら力なく壁へと寄りかかる。
「疲れたー、あんなんやって意味あるん?」
そんな声を上げたのはトランペットパートの吉川さんだった。彼女はパートリーダーの香織先輩を慕っていて、常日頃から行動を共にしている。
吉川さんの言う、あんなのとは入学式の演奏のことだろう。彼女は「あんたはどう思ってるん」と話を突然と振ってきた。
『どうだろうね。鎧塚さんはどう思う?」
「……わからない」
鎧塚みぞれ。部内唯一のオーボエ奏者だ。彼女の担当するオーボエはギネスに世界一難しい木管楽器として認定された楽器らしい。
今僕達がいるこの教室は普段、トロンボーンパートの練習部屋として使われている教室で、ミーティングまでこの教室で待機するように指示が出されているのだ。
やがて音楽室に移るように言われて僕らはそちらへと移動した。ミーティングの内容は明日松本先生が新しい顧問の先生を紹介してくださるというものだった。
- 1-5 ( No.5 )
- 日時: 2017/12/26 10:11
- 名前: Asterisk (ID: 3KvV.ocm)
その後ミーティングが終わり解散となったので、自主練習のためにユーフォを持って帰ることにした。
練習できる場所を探しつつ川沿いの道を歩いていると詰め襟姿の少年とセーラー服の少女が前を歩いていくのを見かけた。
「あれは……黄前さんと秀一君?」
二人もまた高坂さんと同じく、僕の中学時代の後輩で彼女の方は直属の後輩だった。秀一君はホルンをやっていたみたいだけど、高校はどうなるんだろう。
二人も演奏が上手だし、仮に北中の三人が吹部に入ったら宝の持ち腐れになってしまうかもしれない。
「二人とも吹部に来てくれるかな……」
二人の後ろ姿を見送ったあと、しばらく歩いたところにちょうどいい場所を見つけたので、そこでユーフォを吹くことにした。
『ただいま』
それから僕が家に着いたのは7時過ぎのことだった。
「おかえり」
出迎えたのは僕の兄だった。司が帰ってきたよとリビングの方へと声をかけ、早く上がれと手を招いた。北宇治高校の卒業生もある兄は今、京都市内にある大学へと通っている。
「何やってたんだ?」
『ユーフォの練習』
「そうか。練習すんのは構わないけど、あんまり遅くなるなよ」
母さんも兄も、あまり部活に対して口うるさくない。それは多分、母さんは去年の出来事を知っているし、兄はその現状を知っているからなんだと思う。
- 1-6 ( No.6 )
- 日時: 2017/12/26 10:13
- 名前: Asterisk (ID: 3KvV.ocm)
「司、入るぞ」
夕飯を食べ、風呂にも入り明日の準備も済ませ、いつでも寝れる状態の時に兄が部屋へと入ってきた。どうかしたの、と訊くと何だっけなとすこし考えて、そうそうと要件を述べる。
「お前がユーフォの自主練した話聞いて思い出したんだけど、今年の吹部どうなりそうよ?」
兄は北宇治吹部のコンバス奏者でもあった。だから、単刀直入に部はどんな感じかと僕へ度々聞いてくることがあった。
正直、僕が入部してから1年が経とうとしているけどいい報告はできていない。
『相変わらずってとこかな。サボる先輩はいるし、部の空気は緩いままだよ』
そうか、と兄は複雑そうな表情をする。
「北中の後輩いたりするのか」
『うん。ユーフォの後輩と、あの高坂さんと秀一君……ペットとホルンの』
兄と後輩達は5つも年が離れているので全くの接点がない。けれど、時々僕が名前を挙げているのでその3人のことだけは知っていた。
「あー、あの人ね……って、はあぁ⁈」
『そうだよ? どうかしたの、兄ちゃん』
「強豪から推薦貰えるはずなのに北宇治? はぇー、推薦蹴ってまで北宇治選ぶとか……お前もそうだったけど何を考えてんだ北中の後輩は」
しばらく話した兄が部屋から出て行ったあと、どっと疲れが出たのか普段寝つきが悪い僕が、珍しくすんなりと寝てしまったのだった。
- 1-7 ( No.7 )
- 日時: 2017/12/27 10:57
- 名前: Asterisk (ID: PBOj5esF)
その翌日の放課後、入部希望者の1年生が音楽室に集まってきた。ざっと見てその数は30人弱で、中には見知った3人の姿があった。
「部長、もうこれ以上来なさそうです。」
「えー、皆さん初めまして。うちはこの吹奏楽部の部長、小笠原晴香です。
担当楽器はバリサクなんで、サックスパート希望の人は関わることも多いと思います。
うちの吹奏楽部は歴史のある部活で、十年くらい前は結構名のしれた強豪校でした。全国も出たことがあります。
………まぁ、今は見る影もないって感じやけどね」
自傷気味に笑う晴香先輩。壁にかけられた写真に添えられた一言にはあまりいいとは言えない成績が残されていた。
「それでえーっと、実は今年から顧問が変わりました。
昨年は梨香子先生という人が顧問だったんですが、今年から産休に入られました。
代わりに新しい顧問の先生が来てくれたんですが、うちらもまだその先生についてあんまりよく知りません。
始業式で挨拶してくれた滝先生って人なんやけど、今日はちょっと遅れてきはるそうです」
5組の担任になった先生の名字が、滝という名前だったけど、おそらくその先生なのだろう。それと、と部長が続ける。