二次創作小説(紙ほか)
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- 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟
- 日時: 2018/02/10 17:24
- 名前: わよーん (ID: E9wFY3OE)
「パパラチアサファイアの弟」
パパラチアニキとルチルの関係が好きすぎてやった。後悔はしていない。
ストーリーは原作基準。
※この作品のルチルはマジマッドサイエンティスト。パパラチアのためなら他の宝石も襲う。
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プロローグ
夜の医務室で、二つの声が聞こえた。
「んんーっ....ふわぁ」
「パパラチア」
何十年、何百年ぶりだろう。
「おはようございます______。」
彼の声を、こうして聞くのは。
「ルチル。」
それなのに、
「...__なんですか?」
「俺は」
ゴトッという重い音をたて、パパラチアは再び眠りについてしまった。
「あ...」
たった数秒、やっとパズルを解けたのに。
「そんな...」
あまりの結果にルチルは顔を歪める。
「こんなことじゃいけない。もっと技術を磨かないと。パパラチアの体質を克服できるようにしないと。」
「そうでなければ私は、」
何の為に居るんだろう。
「パートナー失格です。」
夜の医務室に、一つの声が響いた。
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主人公はオリキャラです。まだ出てこない。
《目次》
第1話 >>1
第2話 >>2
第3話 >>3
第4話 >>4
第5話 >>5
第6話 >>6
第7話 >>7
- Re: 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟 ( No.10 )
- 日時: 2018/02/11 15:33
- 名前: わよーん (ID: E9wFY3OE)
第9話「欠落」
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ぱちり。
目が覚めて、最初に見えたのは天井だった。そうだ、『私』はゴーストとラピスと一緒に、月人と交戦して.....ゴースト、そうだ、ゴーストは無事なのか?
「ゴースト?」
部屋の中を見回すと、隣の診察台にゴーストが寝ていた。良かった。どこも無くしていないようだ。あんなにバラバラにされたのに、完璧に繋がれている。ルチルにお礼を言わないと。
そう思い、ルチルを探す為立ち上がった。
ん?立ち上がった?
そういえば、私は先程の戦いで両足を無くした筈だ。なのに何故、足があるのだろう。
「あ、れ?」
頭がとても軽い。そして、言い知れない喪失感があった。
「髪が」
背中に手を持っていくと、そこにある筈の長い髪が無くなっていた。そうか。ルチルの手伝いをしている私だからわかる。この足は私の髪の毛で出来ているんだ。
宝石が体の一部を無くした場合、それと同質のインクルージョンが住んでいない宝石で補う必要がある。ただ、髪の量が多い場合などは、それを使うことも出来る。
「そっか...」
もう、毎朝髪を纏める必要も無いのだ。そう思うと、少し寂しく感じる。
「レッドベリルに叱られてしまうかも」
ぱりん。
向こうの方で、何かが割れる音がした。誰かが割れてしまったのかも。そう思い、急いで音がした方へ向かうと、誰かが怒鳴る声が聞こえて、家具の影に隠れた。
そこから覗くと、口論していたのはルチルと赤い髪の宝石だった。
「...___なんで___の_を___には聞いたのか!?」
ここからでは話が一部しか聞こえない。
「しかしっ....____が目覚めると思って!それに、髪にはインクルージョンがほとんど住んでいませんし!」
「髪?ほんとにそれだけなのか?まさかお前....!すぐ返せ!」
「嫌です!現に____はこうして動いています!今までで一番長い時間っ!なのに、なのに貴方がまた眠ってしまうなんて...」
「俺だって嫌さ。だけどな___..!」
「あの、」
勇気を振り絞って声をかけると、二人がこちらを見た。
「ごめんなさい。なんでルチルは顔が欠けてるの?それに__....」
私は赤い宝石の方を向いて言った。
「貴方は誰ですか?」
そう言うと、赤い宝石の顔がみるみるうちに暗くなった。
「そんな、お前。」
「ルチルっっっっっ!」
バキッと嫌な音がして、ルチルの顔が崩れた。赤い宝石がルチルを殴ったんだ。
「ひっ!」
ルチルは膝から崩れ落ち、何やらブツブツ呟いている。
赤い宝石はこちらにフラフラと近づいて来る。
「あ、や、」
どうしよう、ルチルを助けないと。この宝石が怖い。新しい足が動かない。
「ごめんな。」
私が何も出来ずに固まっていると、宝石は私に抱きついた。
「え」
宝石の手が、私の体の中を触っているのがわかった。するり、と変な感触がした。
「あれ?」
自分の胸をみると、蓮根のように大きな穴がいくつも空いていて、そこにはめられていたであろう円柱状の宝石を、赤い宝石の手が抜いていた。
次の瞬間、私は床に倒れ伏した。とても眠たい。
「なんで。」
頭をなんとか動かして上を見上げると、赤い宝石が自分の胸からオレンジ色の宝石を抜き、私にはめているのが見えた。
カチリ、カチリ。
そうされるたびに足りなかったものが満ちていく。ラピスのこと。フォスのこと。先生のこと。
でも、最後まで、目の前の宝石のことは思い出せなかった。
「貴方は、誰なの?」
「俺は、×××××だよ。お前の、兄さんだ。」
「そっか。良かった。初めまして_______...『パパラチア』。」
「ああ、すまない。オレンジ。これは、返すから。」
「今は、おやすみ。」
駄目だ。眠ってしまったら、もう二度と、彼に会えない気がするんだ。
パパラチア、
パパラチア、
パパラチア、
貴方の名前、ちゃんと覚えたよ。
- Re: 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟 ( No.11 )
- 日時: 2018/02/17 19:17
- 名前: わよーん (ID: E9wFY3OE)
第10話「誰も悪くない」
すみません。更新遅れました。
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「おはよう」
「......先生。」
目が覚めて最初に見えたのは、金剛先生の心配そうな顔だった。
「そうだ、先生ラピスは、ラピスはっ!」
月人が放った矢がラピス・ラズリの首を貫く様を思い出し、先生を問い詰めた。
「すまない。ラピス・ラズリは月へ行ってしまった......私の、せいだ。」
「そんな.....」
それを聞き、ガクンと力なくその場に膝をついた。ああ、そういえば足があるな。
「あなたの足は髪で作りました。」
「ルチル。」
後ろから声が聞こえて振り替えると、ルチルが壁に寄りかかって立っていた。髪の毛を足の形に整形するのは大変だったのだろう。少しくたびれたような顔をしている。
「ありがとうございま__....」
お礼を言う前に、ルチルは奥の部屋に入ってしまった。
「あれ?」
冷たいルチルの態度に、少なからず不安を覚える。
「先生、『私』はルチルに気のさわるようなことを言ってしまったでしょうか。」
「オレンジ、覚えていないのか?」
先生は困惑した顔で、私に尋ねた。
「何を、ですか?」
何のことだろう。本当に覚えがない。足を失ったせいだろうか。
「それも、仕方のないことかも知れないな。オレンジ、落ち着いて聞きなさい。」
その後、私はルチルが私に冷たい態度をとる理由について聞かされた。ルチルとパパラチアの中を悪くしてしまったことに、罪悪感を感じた。
「そのことを、ルチルはお前のせいだと思ってしまっているようだ。」
「そんな。」
私は、ルチルのことを尊敬していて、生まれたばかりのころから面倒を見てもらっていて。彼のことが大好きなのに。
「......あ、うああああああ!」
酷く悲しい気持ちになり、私は先生にすがりついてしばらく泣き叫んだ。古代生物はこんな時涙という液体を流したらしい。きっと私が古代生物だったら、先生の服を濡らしてしまっていただろうな。
「落ち着いたか?」
「....はい。」
「ルチルも今大変な思いをしている。許してやってほしい。」
「...はい。」
他になんと答えたら良いかわからなくて、私はただ頷いていた。
しばらくして、向こうからゴーストクオーツが走ってくるのが見えた。
「オレンジ、目が覚めたんだね。」
「ゴースト!無事で良かっ.....」
「ごめんなさい。」
ゴーストは、突然深々と頭を下げた。
「ゴースト?どうして謝るんだ。」
「あのとき、僕が勝手な行動をとらなければ、君の言うことをちゃんと聞いていれば良かったのに。」
確かに、ラピスの体をゴーストが連れて逃げていれば、ラピスは今ここにいたかもしれない。しかし、そのことで彼を責めることは出来ない。ラピスが居なくなって一番辛い思いをしているのは彼なのだから。
「ゴースト、頭を上げてくれ。」
「それに、君の両足まで__....」
「ゴースト!」
まだ謝り続ける彼の肩をつかんで、無理矢理頭を上げさせた。
「何か、訳があるんだろ?」
ラピスに負けず劣らず、彼も普段から冷静に物事を見極めることができる宝石だ。そんな彼が、ラピスのことを深く愛しているとはいえ、あんな行動をとるとは考えにくい。むしろ、ラピスを失わない為に、ラピスの体を持って逃げた筈だ。
「...う、ん。」
ゴーストは、悲しげに顔を歪めて、ぽつりぽつりと話はじめた。
「僕が、二重構造になってるっていうのは、知ってるよね。」
「ああ。中に、別の人格が居るんだろ?」
彼は、『ゴーストクオーツ』という宝石の中に、別の宝石が入っているらしい。
「ラピスが月人に砕かれたときにね、彼が出てきちゃったの。それで、僕が体を動かせなくなっちゃって。」
「何度もやめってって叫んだのに、聞いてくれなくて。」
「そ、それで、ラピス連れていかれちゃって。」
「僕、この子がいなければって、この子のせいでラピスは__...」
「ゴースト!」
今にもひび割れそうなゴーストの手を掴んで、話を止めさせた。
「君も、中の子も、誰も悪くないんだ。悪いのは全部月人だ。」
「だから、自分を責めないで。」
「......うん。」
ゴーストと別れてから、乾いた笑いが漏れた。こんなことを言いながら、自分を一番責めてるのは私じゃないか。
「あの子に、会いたいな。」
私は、少しふらつく新しい足でフォスフォフィライトの部屋に向かった。
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テスト終わったので更新スピード戻します。
感想等ありましたら励みになります。よろしくお願いします。
- Re: 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟 ( No.12 )
- 日時: 2018/02/21 20:36
- 名前: わよーん (ID: E9wFY3OE)
第11話「冬の始まり」
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「ふ、ああ......ふーっ」
眠たい。とにかく眠たい。
私、オレンジサファイアは今恐ろしい危機に直面している...!
「頼めるか?」
「は.....スヤァ」
「寝ちゃダメ」
そもそもなんでこんなことになったんだっけ。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ちょっと前。
「...ンジ、.....オレンジ、起きなさい!」
イライラした様子のルチルの声で目が覚めた。目が覚めた?ということは私は寝ていたのか?
「全くもう、治療の途中何ですよ!」
そうだった。私は今、寝ぼけたボルツが割った宝石の治療をしているんだった。
目を開けると、ほぼ半目のルチルの顔が見えた。
「すみまふぇん...もうほんとねみくてえ...眠さが眠くてー...」
眠さでぼーっとした頭を必死に働かせ、なんとか口を動かす。
「私だって眠たいですよ...ボルツのあの寝相は治せないのでしょうか。」
うんざりしたご様子のルチルに、「無理でしょうねー」と返す。
「あーもう本当駄目です。パパラチアと一緒に寝ます。」
「やめてください!仕事増やさないでくださーい!」
ルチルとは、さすがに数百年もたち、元の関係に戻った。一時はどうなることかと思ったが、久しぶりに目覚めたパパラチアと仲直りしたらしく、私とも仲直りしてくれた。
っと...仕事のこと考えよ。
ペタペタと糊を塗り、黄緑色の欠片をぺちゃっと張り付けた。
「これがフォスだったら粉々だったからなー、まだましでーす。はーい、終わりましたよう...アクアマリンちゃん....」
「違うよ!ウォーターメロン・トルマリンだよう。」
と怒られてしまった。
「あー、そっすか...まあ、トルマリンでもタンザナイトでもなんでもいーれすよう。」
「次の方ー」
「おはよう、オレンジサファイア。」
なんだか違和感ある声だな...と思って見ると、そこにいるのは金剛先生だった。
「あーはいはい金剛せんせーですね。どこが割れましたかっと....」
「ん?金剛先生?」
少し頭がはっきりしてきて疑問を覚える。金剛先生が割れたとか聞いたことないわ。
「オレンジ、冬眠期間中悪いが、頼みがあるんだ....冬の間、アンタークチサイトの補佐についてほしい。」
「え」
「眠いだろうが、耐えてほしい。代わりに春も寝ていいから.....」
「アイエエエエエーーーーーーーーーーー!?」
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
どうやらまだ眠れそうにない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー今回はほんわか息抜き回。短かったねえ。
- Re: 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟 ( No.13 )
- 日時: 2018/03/20 17:49
- 名前: わよーん (ID: E9wFY3OE)
第12話「低硬度と高硬度」
息抜き。
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「オレンジサファイアです。宜しくお願いします、先輩。」
透明な髪、白い服と全身真っ白なアンタークチサイト先輩に挨拶をする。何事も最初が肝心だ。
「先生、では彼が私と冬の担当を....?」
アンタークチサイトは先生に少し戸惑ったような視線を向ける。
「ああ、そうだよ。」
先生が頷くと、アンタークチサイトはこちらの方に向きなおして手を差し出してきた。
「アンタークチサイトだ。宜しく頼む。」
私も手を出しておずおずと握手した。
.............沈黙が痛い。
「あっ、手袋お揃いですねー!」
とりあえず話題を振る。
「そうだな。」
沈黙再び。
なんだろう。彼は会話が苦手なのか....?冬担当といったらずっと一人だからな...。
「ところで、なんで今年は補佐が付くことになったんです?今まではそんなことなかったのに...」
ずっと感じていた疑問を振る。
「情けない話なのだが、今年は気温がまだ高くてな。体が本調子ではないんだ...それに今までも時々あったことだ。お前若いだろう?だから知らないんだと思う。」
「アッソウナンデスネシツレイシマシタ」
ぐわー!そうだったのかーっ!先輩は特異体質だからな....。
「じゃあ、早速仕事だ。」
これが、私の過酷な冬の幕開けだった。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「お、れ、ん、じ、さ、ふぁ、い、あっと!」
この仕事専用の恐ろしい程とんがったヒールで氷に穴を空けていく。
「そいっ」
最後に思いっきり鋸形の剣を降り下ろした。
ビキキッッッと割れる嫌な音がして、私が今まで立っていた流氷は轟音と共に海に沈んでいった。沈んだといっても、上のほうは残っている訳だが。
「よーし!なかなかいい線行ってるぞー!」
向こうの方で風景と一体化したアンターク先輩が叫んでいる。
「ほんとですかーっ!?うれしーでーす!」
私も叫び返す。
「ふぉ、す、ふぉ、ふぃ、ら、い、と!」
これは変な癖だ。グ○コみたいな。
冬の仕事はハードだな...
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
1日の仕事を終え、記録をつけている先輩に話しかけた。
「先輩...いつもありがとうございます。」
「どうした急に。」
「いやあ、先輩はいつもあれを一人でやってるんですよね。そう思ったら...」
「....気にするな。仕事だ。」
先輩は、私よりずっと硬度が低い。けれど、私よりずっとかっこいい。いつか、こんな宝石になりたい。そう思った。
- Re: 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟 ( No.14 )
- 日時: 2018/06/24 02:02
- 名前: わよーん (ID: 278bD7xE)
第13話「春眠」
お久しぶりです。短いです。深夜にこれを書いているので眠たい文章です。
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「おはよおー!オレンジっ!」
「わっぷ、フォス!?」
春になり、私が一番最初に会ったのは、意外や意外。いつも最後まで寝ているはずのフォスフォフィライトだった。突撃してきた薄荷色を咄嗟に受け止める。なんか、前にもこんなことあったな。
「なんでもう起きてるんだ…」
「えへへ!だってオレンジがもう寝ちゃうって聞いてさー?ばっちり目が冴えちゃった!」
そう、私、オレンジサファイアは今年は皆と違い春に眠る。アンタークチサイトの補佐の為に冬も起きていたからだ。
「ごめんな、寂しい思いをさせるかもしれないが…」
「そうだよ!僕すっっっごく寂しいんだからね!ほんとは起きてて欲しいんだからね!」
それはさすがに体が持たない。
「ごめんって…そうだな、何をしたら許して貰える?」
「……じゃあ、夏になったら、いっぱい遊んで?」
なんだ、そんなことか。可愛い可愛い末っ子の頼みなら、何だって訊いてやるさ。
「わかった。良いよ。」
私がそう答えると、とたんにフォスは表情を明るくして跳ねた。
「良いの!?約束だよ!絶対絶対、約束だよ!」
「ああ、約束な。」
そう言うとフォスは「やくそくー!」と叫びながら走って行ってしまった。
その姿を見送りながら、私は夏のことを考える。
「…忙しくなるなあ。」
レッドベリルが作ってくれた可愛い寝間着の裾を引き摺りながら、私は自分の部屋へ向かった。