二次創作小説(紙ほか)
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- 七色の人形師は蛇寮で何を学ぶのか
- 日時: 2018/04/11 19:12
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
七色の人形師は蛇寮で何を学ぶのか 目次
第一章 アリスは外の世界の魔法が知りたい
いつもの幻想郷 >>01
魔法界調査? >>02
ホグワーツからのの来訪者 >>03
ハリーポッターとの遭遇 >>04
グリンゴッツ魔法銀行は顧客満足度が低い? >>05
マダム・マルキンの洋装店と純血主義者発見 >>06
オリバンダーの店 魔法史と道具熱? >>07
118冊のリスト >>08
薬問屋と陰気なコウモリ >>09
一時帰宅とさようなら >>11
種の無い手品 >>12
- 薬問屋と陰気なコウモリ ( No.9 )
- 日時: 2018/04/04 17:47
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
アリスは、金属製の杖の持ち運びにくさに辟易としながら薬問屋に向かって歩いていた。ミス・マコグナガルは相変わらず背筋を伸ばしたまま歩みを進めていく。
店の前に着くと、様々な大きさの秤やビーカー、フラスコ等の器具、グロテスクな見た目の素材が店頭に並んでいた。いきなりイアリングから聞きなれた声が響いてくる。
「なんとも言えない所だな。本を借りに来たらパチュリーがイアリングに向かって話しかけていたんだが。レミリアのを見てると、魔法の森の方がきのこの質がいいな。聞こえてるか、アリス。」
アリスは思わず声を潜めることも忘れて言った。
「げっ、魔理沙。何の用よ?」
魔理沙はからかう様に言う。
「何だよ、酷いな。用が無いと駄目なのか?それより、面白そうな所に来てるじゃないか。そっちでは店に材料を買いに行くのか?」
アリスは返す。
「調査で入学する学校では薬学があるのよ。毎回材料を買えば劣化するでしょうし、リストにあるのは器具だけね。使う道具もあまり規定があると他に研究する時不便でしょうに。」
魔理沙が返す。
「全くだな。それより、休暇になったら戻って来いよ。レミリアが宴会をするそうだからな。パチュリーもああ見えて、外がかなり気になってる。」
ミス・マコグナガルは不思議そうにアリスを振り向いた。
「どうしましたか。」
アリスは咄嗟に取り繕う。
すると、薬問屋から男性が出てきた。
ミス・マコグナガルが男性に言う。
「珍しい。セブルス、買い出しですか?」
男性はアリスを一瞥した。アリスも見返す。ホグワーツの教諭だろうか。喪服かと思うくらい全身真っ黒のローブを着ている。不健康そうな印象を受けた。
「左様。」
魔理沙が感想を述べた。
「なんか、陰気なコウモリみたいな奴だな。」
アリスは心の中で苦笑いする。表情は微動だにしていなかった。
- 一時帰宅とさようなら ( No.11 )
- 日時: 2018/04/06 10:02
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
アリスは薬問屋を出ると、漏れ鍋まで戻った。
ミス・マコグナガルが言う。
「ここで暫くお別れです。それでは、ホグワーツでまた会いましょう、ミス・マーガトロイド。」
「ええ。」
アリスはミス・マコグナガルが見えなくなるまで待った後、漏れ鍋の暗い隅へ移動した。イアリングを押す。
「買い物は終わったのかしら。では、今から貴方の所にスキマを開きます。ちょっと待ってくださる?」
紫の声がして、空にリボンが浮かぶ。すうっとスキマが開き、闇の中からぎょろぎょろと蠢く無数の目が覗く。
相変わらず何度見ても気味の悪いスキマね。
アリスは思いながら周りの目が無い事を確認し、スキマに入っていった。
スキマから出ると、そこはアリスの家の中だった。短時間の間に外の世界では忙しなく人が動いているのが見えたけれど、ここは何も変わっていないのね。
アリスは思い、上海に声をかける。
「上海、お茶を煎れて頂戴。」
すると、ドアがどんどんとノックされて声がした。
「アリス、いるか?」
魔理沙だ。アリスは教科書類の紙袋を置くと、扉を開けた。
「ええ、今帰ってきたところよ。」
魔理沙は紙袋を覗く。そして長い錫の杖を見た。
「あっちの世界では杖を使うのか。何とも不便な理論なんだな。面白い物はあったのか?」
アリスは返事する。
「ええ、子鬼を見たわ。銀行員なのだけれど、何だか滑稽だったわね。」
魔理沙は相槌を打って言う。
「ところで、いつから行くんだ?」
アリスは少し考えた後、手紙を取り出した。
「そうね、二日後かしら。一旦荷物を纏めて、紫がスキマで送ってくれるそうよ。ロンドンで宿泊するんですって。」
アリスは言うと、紅茶を一口飲んだ。
魔理沙は驚いているみたいね。
「そうなのか?随分と忙しいんだな。まあ、何か帰ってきたら土産でも買って来てくれ。じゃあな、本当はきのこを試してもらおうと思ったんだが。」
アリスは魔理沙を睨んだ。
どうして私が実験台にならないといけないのかしら。先にきのこの成分を確かめて欲しいわね。
魔理沙が帰ると、アリスは紅茶を飲み干して立ち上がった。
「さて、準備しましょうか。蓬莱、トランクを持って来て頂戴。」
- 種の無い手品 ( No.12 )
- 日時: 2018/04/11 19:07
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
紫と珍しく自ら出て来たパチュリーに見送られ、アリスはスキマからキングズ・クロス駅へ着地した。辺りは11時という微妙な時間にも関わらず混み合っている。
「先に行きなさい、フレッド!」
「そりゃないぜママ!俺はジョージだぜ?」
「ごめんなさい、ジョージ!パーシーも!」
「冗談だ!、俺はフレッドさ!」
「茶番もいい加減にしなさい!さあ、急いで!」
燃えるような赤毛の家族が忙しなく叫んでいるのを冷静に観察しながらアリスは考える。
あの家族は服装からして魔法族ね。カートや鳥籠も担いでいるもの。さて、どこからプラットホームに行くのか確かめましょうか。それにしても騒がしいわ。彼女は好きになれそうにないわね。
すると人混みに飲まれそうになりながら小柄な黒髪の少年が赤毛に近づいた。
「すいません!僕、どこからホームに行くのか分からなくて。」
あら、ハリーね。そういえば彼は非魔法族の社会で育ったと書かれていたわ。本で読んだ方が本人に聞くより手っ取り早いなんておかしな事ね。そんなにヴォルデモートが脅威なのかしら。理屈が妖怪退治よりも理不尽よ。
「あら、お坊ちゃんもホグワーツ?うちの子もそうなのよ。行き方が分からないのね?実は簡単なのよ。そこの柱と柱の間を通り抜ければもう着くわ。怖いのなら目を瞑っておけばいいわ。さあフレッド、お手本を見せてあげなさい。」
フレッドと呼ばれた少年はふざけた仕草で敬礼すると荷物が山積みのカートを押して柵に突っ込んだ。そのまま少年の身体は柵をすり抜け、消えていく。
イアリングから魔理沙の声がした。
「私でも分かるくらい大雑把な幻術だな。それと人避けの簡単な応用か?なんだか、期待して損したぜ。」
パチュリーが興味無さそうに言う。
「魔理沙でさえ見限るくらい、魔法族っていうのは酷いみたいね。どうやら研究もせずに魔法を道具として見ているみたいだもの。なんて嘆かわしい、魔法使いを名乗る者として恥じゃないのかしら。」
魔理沙が憤慨したように言う。
「魔理沙でさえっていうのは頂けないけど、本当に酷いもんだぜ。」
アリスは人混みの中を縫うように歩き、最後尾まで来てやっと開いているコンパートメントを見つけた。思わずほっと溜息をつきたくなる。
主に人形たちの入ったトランクを棚に上げ、アリスはドレスに仕舞っていた上海人形と蓬莱人形のメンテナンスを始めた。分解して、部品の位置を確かめ、丁寧に磨き、時々油を差して、最後に魔法の糸の魔力の通じ具合をチェックする。
試しに上海に杖を媒体にして魔力を送ってみましょうか。
「そういえば、こっちの魔法は呪文がいるのね。」
アリスは呟いて杖を手に取った。
その時、ガラッと勢いよくコンパートメントのドアが開いた。豊かな栗毛色の髪に少し出っ歯の少しきつめの顔つきの少女が立っている。
「こんにちは。ここ、良いかしら。魔法を使うのね、見せてくれる?私、マグル生まれなの。だから沢山本を読んで勉強したわ。勿論教科書も全て暗記しているし。それだけで足りるかしら、とても不安だけれど楽しみにしているの。何しろ私にとって魔法って全く新しい分野だもの、頑張らなくちゃね。貴方は見た所魔法族の様だけれど、魔法はどれくらい使えるの?あら、貴方の杖ってとても長いのねえ、おまけに金属製だわ。杖が短い人には何かが足りないそうだけれど、貴方はとても満ち足りているのね。すごいことだわ!金属と、芯は何なの?とても綺麗だけれど、持ち運びにくそうね。私、杖についてもかなり本を読んだの。それぞれに合う杖があるってとても素晴らしい事だわ。そう思わない?」
「ラテン語ね...ヴェイーグプーパ!」
アリスは早口で自慢と取れるような長ったらしい言葉を無視し、呪文を唱えた。
上海が杖の動きで操れるようになったわね。だけれど直接操った方が効率的だしタイムラグも無く簡単ね。やっぱり期待外れだわ。この理論を根っこから変えないと魔法技術が停滞したままの理論では同じことをしても非効率なだけだもの。
「ねえ、貴方、聞いているの?無視するのはいくら何でも失礼なんじゃない?」
アリスは無表情のまま心の中で呆れていた。彼女は少女の態度に怒ることさえしない。ただ彼女らの間には圧倒的に経験の差が有ったというだけ。第一アリスはあまり感情の起伏が激しくない性質なのだ。
「じゃあ聞くけれど。ノックもせずにコンパートメントに押し入って居座り、自己紹介もせずに人に文句をつけることは失礼じゃないのかしら。貴方は他人には文句をつけるけれど自分は何をしても良いと言うのね?」
少女は苦虫を噛み潰したような顔で言う。
「だって貴方...私はハーマイオニー・グレンジャーよ。貴方は?それと人形を使って何をしているの?」
アリスはすぐに大して反論もしないハーマイオニーに興味を失ったが、丁寧に答える。
「私はアリス・マーガトロイドよ。勘違いをしている様だけれど、私は魔法族ではないし、マグルでもないわ。今は杖を使って人形を操ろうとしているの。」
ハーマイオニーは興味を持ったのか目を輝かせた。
「その呪文、何に載っているの?ヴェイーグプーハなんて聞いたことが無いのだけれど。」
アリスは冷めた態度で言った。内心、質問の多いハーマイオニーを招き入れたのは失敗だったと後悔している。
「それはそうね。私が作ったもの。」
ハーマイオニーは首を傾げて言った。
「あら、貴方魔法族でもマグルでも無いんでしょう?どうして魔法が作れるのよ?魔法を作るにはかなり知識が必要なはずよ。」
アリスは苛立っていたが、無表情のまま言う。
「私が何年魔法を研究していると思っているの?私は魔法族よりもずっと魔法を心得ているわ。」
ハーマイオニーは不服そうに言った。
「貴方がそんなに賢いと言いたいのならどうしてどこにも載っていないのよ、おかしいじゃない。近代で一番偉大な魔法使いだと言われているのはアルバス・ダンブルドアの筈よ。」
「忙しないわね。私はダンブルドアと違って彼が有名になっている間も魔法の研究を続けていたの。偉大な魔法使いは自分の魔法の知識を大っぴらに見せないもの。彼は魔法の真理ではなく名声や、教育者としての道を選んだ、ただそれだけ。彼は偉大でも何でもないわ。魔法使いとしての本分を発揮していないもの。」
ハーマイオニーは怒っていた。
「貴方はたかが11歳じゃない。ダンブルドアよりも偉大だなんてあり得る訳ないわ!貴方はダンブルドアを侮辱しすぎよ!私、出て行くわ。ネビルの蛙を探す約束をしているの!」
そう言うとハーマイオニーはぷんぷんと怒りながらコンパートメントを荒々しく出て行った。
「人の探し物をする約束をしておきながら、コンパートメントで呑気に話しているなんてとんだ魔女ね。彼女、どうやら見栄っ張りの様だったし。私たち魔法使いとは合わないわね。」
パチュリーが魔法使いの本分を理解しない彼女に怒っているのか辛辣な口調で言った。
「全く嵐の様な奴だぜ。私たちは伊達に魔法使いをやってる訳じゃないんだ。それにあいつはダンブルドアとやらばかり信じすぎだ。いつかきっと痛い目に合うぜ。見れば、ダンブルドアってのは偽善者で、称えられてるけど若い頃は随分と滅茶苦茶じゃないか。」
魔理沙がパチュリーに賛成した。
「その言い方だと、私の家からまた本を盗ったわね?調査用に読んでいるのだから、返して頂戴。」
アリスはそのままホグワーツに着くまで3人で話し続けた。
- 車内販売員の謎 ( No.13 )
- 日時: 2018/05/12 22:47
- 名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)
「車内販売よ、お嬢ちゃん。飲み物はいかが?大鍋ケーキもあるわよ。」
如何にも魔法使いといった風貌の魔女が大きなカートを押して歩いて来る。ふとアリスは違和感を感じた。
彼女は一体何者なの?魂の状態が不自然ね。怨霊かしら。それとも半人半霊という可能性もあるけれど、何らかの理由で地縛霊に変化したというのも考えられるわ。
「どうかしたの、お嬢ちゃん?」
魔女は人当たりの良い笑みを浮かべながらアリスを覗き込む。アリスは念の為開心術の対策に魔法を起動した。
「大丈夫よ。そうね、かぼちゃジュースを頂こうかしら。お幾ら?」
相変わらず愛想の良い対応に得体の知れない気味悪さを感じながら、アリスは金庫から引き出した銀貨を手で弄ぶ。
ふと窓を覗くと、丁度穏やかな田園の風景が途切れ、雑然とした荒野が見えてきた。
「じゃあ13シックル23クヌート丁度ね。」
魔女はにっこりと笑みを浮かべて去って行った。
「まもなくホグズミート駅に到着します。足元にご注意ください。」
違和感について、パチュリー達の覗いている水晶玉からは察知出来ない事を話し終え、一段落した頃に車内放送が流れ、窓の外を流れる景色が段々とくっきりしてくる。
「Bon voyage(良い旅を)」
パチュリーが面白そうに言う。アリスは肩を竦めた。微かな揺れと共に汽車が動きを留める。
「他人事ね。私としては、紫に嵌められた気分よ。」
上海達を引き連れ、トランクを降ろすとアリスは目を細めてホグワーツ城を目に留めた。他の生徒たちは賑やかに、それでも何処か緊張して喋っている。
漏れ鍋で会ったハグリッドが生徒を引き連れ森を歩いていくのが見えた。新入生が一人居ないことに気づいていないらしい。
「わざわざ森を通ってまで城を見る必要は無いわね。」
アリスはふわりと飛び上がると、城をぐるりと大きく一周し、ミス・マコグナガルの立っている玄関ホールに直接降り立った。途中で森を歩いていたハリー達が目を見開いて眺めていたが、アリスは別に気にした風でも無い。
「ミス・マーガトロイド!どうして貴方だけ集団から外れているのです?おまけに一年生が杖だけで滑空するなんて...。貴方は自分がした事の危険性を理解しているのですか?まだ組分けが行われていませんから減点はしませんが、後でお話を伺いますよ。」
やがてハグリッドがハリー達を連れて来た。ハリーの隣にいる赤毛の男子が興奮した様に言う。
「君...あー、アリスって呼んでも良いかい?最高にクールだったよ。それに一年生で箒も使わずに空を飛ぶなんて君は一体何者なんだ?ハリーが言うには人形も操ってるっていう事だったし、凄いんだな。」
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※一部ハリーポッターと呪いの子の話が入っています。
- ゴーストと幽霊の違い? ( No.14 )
- 日時: 2018/08/28 15:12
- 名前: 未碧 (ID: 6Nc9ZRhz)
「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです。それからお前さん、列を離れたら危ないだろうが。」
「善処します。」
ハグリッドに返事したアリスは、上海と蓬莱が追い付いているか確かめ、ミス・マクゴナガルの方へ向き直った。
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう。」
ミス・マコグナガルは厳格な顔つきで言い、玄関扉を大きく開く。アリスは品定めする様に目を僅かに細め、玄関ホールへ踏み込みながら周りを見渡した。
「…。」
少し不安そうにしながらも、一年生は無言でホールに圧倒された様だった。
紅魔館と違って、決して目が痛くなるような内装では無かった。むしろ時の流れを感じる、荘厳とした大理石の階段が正面にあり、延々と、高く続く石の壁と床がホールを囲んでいた。
アリスはしっかりと杖を握り直し、生徒を案内するミス・マクゴナガルについて行く。
この壁を照らしている松明は、着火に魔法が使われてはいるかもしれないけれど、魔法的な炎では無さそうね。あら、あそこの部屋は随分と人が集まっているようだわ。あれは大広間かしら?
何の説明も無しにいきなり、大広間に入れる様な事は無くても、この部屋は生徒に説明するには狭い気がするのだけれど。まあ、良いわ。上海と蓬莱は仕舞った方が良さそうね。
「ホグワーツ入学おめでとう。」
アリスが人形を仕舞い、他の生徒達が不安気に立っていると、唐突にミス・マコグナガルが話を始めた。生徒達は一斉に注目する。
「一年生の歓迎会がまもなく始まりますが、その前に皆さんが入る寮を決めなければなりません。寮の組分けはとても大事な儀式です___
アリスはミス・マコグナガルの話を聞き流しながら周りを観察していた。部屋の隙間から僅か1センチの偵察用人形を飛ばし、右目の視界を同期させて大広間を見渡す。
なんともまあ、一般的に魔法を思い浮かべる様な光景ね。幾本もの蝋燭が空に浮かび、5つのテーブルにかけた、三角帽子にローブ姿の魔女や魔法使い達が詰め込まれている。きっちりとローブの色で分けられた生徒達が退屈そうに、或いは空腹だからか苛立った様子で、ざわざわと話している。
ふと、上座に座った老人の魔法使いと目が合った。本当は人形から覗いているだけなのだが、とにかく目が合った様に思えたのだ。長く白い髪と髭に、水面の様にゆったりとした青い瞳と、半月型メガネ。そう、ホグワーツの校長、アルバス・ダンブルドア。
やはり、典型的な魔法使いといった格好だわ。そう、彼が近代で最も偉大な魔法使いなのね。人形を通して心を読まれるかは分からないけれど、念のために開心術防止を掛けておいて損は無いでしょう。
「…あら?」
思わず声を漏らす。魔法界のゴーストがこの人達なのね。生徒をすり抜けるという事は、やはり実体が無いのか、それとも…?西行寺幽々子と違って、半透明といった感じかしら。
(感覚的にしか分かりませんが、私達とは違いますね。)
珍しい。この声は、妖夢かしら?
(あの血だらけのゴーストなんか、良い趣味だな。)
やはり魔理沙も居るのね。つまりパチュリーも、ということでしょう。
ああ、あのゴーストは好きじゃないわね。どのゴーストも死んでから相当の年月が経っている様だけれど。私だって幻想郷で魔法の研究を初めて1000年程だけれど、銀色に生々しい血を付けたままずっと居るなんて流石に嫌だわ。
そういえば、このゴースト達は、成仏するのよね?ここは西洋だから、死後の世界も当然幻想郷とは違うのでしょうけれど。
ここは、魔法研究としては今のところ期待外れだけれど、珍しさで言えば面白い所なのかもしれないね。