社会問題小説・評論板
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- 思ってから実行するまで
- 日時: 2010/11/14 09:41
- 名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: N1u19UeR)
—はじめに—
此方では、初めまして。
黒影と申します。
さて、社会問題系小説というわけですが、今回書くのは虐めはあくまで発端です。
本題は虐められて、その後のことです。
…実際、自分がロクに虐められたこともないので、おかしな点も多いと思いますが。
心理描写は其処まで得意ではありません。
故に、下手ではありますが、どうぞよろしくおねがいします。
—目次—
- Re: 思ってから実行するまで ( No.10 )
- 日時: 2011/02/12 09:15
- 名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: pDyYudP2)
07
電車に揺られながら、その少女は窓の外を眺めていた。
月光形電車の異名を持つ、この寝台特急は、年末の寒さにも負けず、走っている。
少女は、ただ無言で、窓の外の流れる景色を眺める。
彼女の旅荷物は割と少な目で、旅行客には見えない。
今年の冬、日本には大寒波が押し寄せていた。
日本海側の地域では、大雪が降り、大晦日を動かない車の中で過ごす人は少なくなかった。
しかし、彼女には関心がない。
彼女が向かっているのは東京であり、その東京は太平洋側、山脈によって雪害から守られている地域なのだ。
そして、彼女が向かう理由は、転校だった。
麻薬の常習犯、即ち異常者に両親が殺害され、偶々、友達の家に泊まっていた為に難を逃れた彼女は、仕方なく、親戚の家に行くことにした。
彼女も高校生で、自炊も洗濯も掃除もできる為、一人で暮らしても良かった。
それでも行く理由は、彼女の甘えでもあった。
そしてなにより、彼女の心には大きな傷があった。
彼女の初恋は、目立たないが何処かクールな、一人の男子生徒だった。
彼女は次第に想いを寄せていき、ある日、その想いを伝えた。
しかし、その想いは踏みにじられることとなる。
強姦、という形で。
何故、自分ばかりこんな目に遭わなければならないのか。
すっ、と目を伏せる。
過去のことが、目に浮かぶ。
目頭が熱くなり、頬を水滴が伝い落ちた。
そして、いつの間にか、少女は眠りに落ちていた。
『——お前、俺のこと好きなんだろう!?』
『そう、だけどっ……あんっ!』
『ほら、じっとしてろ! 嬉しいんだろ!?』
『——君の、ご両親が、今日……』
『そんな……!?』
『犯人は麻薬に頭をヤられた異常者だそうだ……君だけ、……生き残った』
嫌な思い出が頭を過ぎり、彼女は目を覚ます。
ロクな思い出がない。
また、これから行く東京でも、こんな思い出が増えるのだろうか。
少女は、不安になり、膝の上に置いていた色紙——クラスの友人達がメッセージを書いてくれた——をそっと胸に抱いた。
そして、これから住むことになる家も、不幸だということを、彼女は知っていた。
- Re: 思ってから実行するまで ( No.11 )
- 日時: 2011/02/26 08:46
- 名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: MDpJUEHb)
08
冬休みが明けて、転がり込んだ霜村家の生活にも段々慣れてきた頃だった。
此方の高校に行く準備が整った。
三学期になってからの転校。
あまり珍しいことではないが、彼女にとっては初の体験。
慣れた鞄、慣れない新制服、何時も通りの風邪予防用に着けるマスク。
新しい担任に促され、新しい教室の戸に手を掛ける。
少し滑りが悪くて重かったが、片手で開けた。
新しいクラスメイト達の視線が集まる。
「はい、着席ー!」
彼女を押し退けるように担任が教室に入り、声を掛ける。
少しざわついた教室が静かになり、生徒達が自分の席に着く。
「明けましておめでとう! 今年も良い年になると良いな! さて、新年早々、未だ正月ボケが抜けてない奴も居る中、転校生だ!」
教室内で小さく笑いが起こり、一部の生徒が後ろの方の席で居眠りしている男子生徒の方を見た。
「自己紹介は……自分で出来るな?」
担任の言葉に彼女は軽く頷いた。
「愛知の岡崎から来ました、うさ……霜村 恵琉(しもむら える)です」
“霜村”の名前が出た直後、教室内が騒がしくなった。
「静かにしろっ!」
担任が叫び、静かになる。
「君は席に着いてくれ」
恵琉は小さく頷き、事前に教えられていた席、前から4列目の窓際の席に着いた。
隣は妙に巨乳の、清楚な感じのする女子生徒だった。
担任が何かを話し始める。
前の学校から使い続けることにした鞄を机の上に置く。
中の真新しい教科書類を机の中に移し、一息吐くと、既にHRは終わっていた。
教室が騒がしくなるのと恵琉が新しく買った小説を開いたのはほぼ同時だった。
読書中に質問攻めを受ける。
「誕生日いつ?」「血液型は?」「部活は何入るの?」「スリーサイズは?」「何でマスク着けてるの?」「好きな色は?」「特技とか趣味は?」
取り敢えずスリーサイズ訊いてきた男子生徒に一発拳を叩き込み、撃沈させると、恵琉は本に目を戻し、その質問に丁寧に答えていった。
「12月15日、B型、帰宅部、風邪予防、紫、七並べ」
辺りが一瞬、沈黙に包まれる。
恵琉はその小説を読み続ける。
「…それ、なんて本?」
後ろの席から男子生徒が尋ねる。
「告白」
「良い物語だよね」
「…まだ読んでないから分からないわ」
「そっか」
辺りは沈黙している。
男子生徒と恵琉だけの会話が続く。
やがて、一時限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
生徒達が散る。
栞を挟んだ本を閉じ、ふと後ろを見ると、少し長めの黒髪に眼鏡の男子生徒が居た。
男子生徒が笑顔を浮かべたのに釣られて恵琉も口元に笑みを浮かべる。
マスクがあるので、相手には分からなかったかもしれないが、すっと前に向いた。
教室に現国の担当教諭が入ってくる。
学級委員が号令を掛け、授業が始まった。
結局、隣の巨乳女とは話さなかった。
- Re: 思ってから実行するまで ( No.12 )
- 日時: 2011/03/06 08:04
- 名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: sycQ9msz)
09
翌日、後ろの席の男子生徒が来ていない為、昨日出来た友達に訊いてみた。
「恵琉ちゃんの後ろ? 確か空席だよ?」
「…え?」
昨日、確かに見た筈だ。
終わりのHRにも居たし、微笑んだのに微笑み返したし、何より朝の質問攻めを終わらせたのは彼ではなかったか。
恵琉の中でその男子生徒の顔が浮かぶ。
「それよりさ、恵琉ちゃん。神子とは話した?」
友達に言われてふと思い出した。
まだ隣の女子生徒と話していない。
首を軽く横に振ると友達は笑いながら言った。
「隣なのにねー。ちょっと話しにくかったりする?」
「…少し、ね」
「そっか。じゃあ、ちょっと話しかけてみよっか」
友達は隣の巨乳女と少し何かを話した後、恵琉に手招きした。
恵琉と巨乳女が対面する。
「初めまして、千秋 神子(ちあき みこ)です。10月15日生まれのO型で、スリーサイズは上から98.59.64で、身長165cm体重51kg、右利きです」
「当てつけかっ」
友達が突っ込む。
恵琉は思わず笑った。
(途中保存)
- Re: 思ってから実行するまで ( No.13 )
- 日時: 2011/03/06 12:44
- 名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc (ID: 2N4onKWr)
これは良い小説。出会ったが最後、コメントするまで十回読み返しました黒紅葉と申す者です。初めまして。
命、人の心。それらと向き合う言葉を、わかりやすく、真剣に紡ぐこの小説は、今の人々に必要なものだと。読ませるべきものだと、そう感じました。
唐突ですが、私は心を描いてる割にはそんなに多くの痛みを持ってるわけではないのです。
よって、私の書く小説は、隙だらけです。いつどこでだれの傷を抉ってるのか、心当たりが多すぎてどうしようもないような小説です。
本当に、伝えたいことは何なのか。明確でない、抽象的な文章。
最近は、多分、おそらく少しはマシになったかな、と思うのですが、如何せん私は文章力も人生経験も知識もそして学習能力も足りぬ未熟者。
黒影様の小説を、これからも読ませて頂いても宜しいでしょうか。あわよくば相互、別の形で「現代人に必要な小説」と、広めても……。
……ごめんなさい、初めましてで図々しいにも程がありますね。
でも、それだけ訴えかけてくるものが大きな小説でした。
首がおかしくなるほど見上げ、それでも見上げるのをやめようとしたくない、そんな。
長々と失礼いたしました。深く深く、潜り込めるような小説、ありがとうございました。
応援しております。
では、
- Re: 思ってから実行するまで ( No.14 )
- 日時: 2011/03/06 17:29
- 名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: sycQ9msz)
>>13
初めまして。
コメントがきて、歓喜しております、黒影です。
お褒めいただき、光栄です。
元々、書きたいことが沢山あって、それをまとめようとしたら、こうなりました。
なので、拙いところも多いのですが、読んでもらえて、喜んでいます。
抽象的な文章には抽象的な文章の良い点があります。
それに、あまりストレートに書くと、逆に人を傷つけることもあります。
貴方の人生経験と知識、学習能力がどの程度のものなのか、私は知りませんが、文章力は素晴らしいと思いますよ。
どうぞ、どんどん読んで下さい。
そして、何かあれば指摘して下さい。
広めても結構ですよ。
……少し恥ずかしい気もしますが。
いえいえ、レベルの高いコメント、有り難う御座いました。
貴方の小説も探してみたいと思います。
では。