社会問題小説・評論板

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思ってから実行するまで
日時: 2010/11/14 09:41
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: N1u19UeR)

—はじめに—
此方では、初めまして。
黒影と申します。

さて、社会問題系小説というわけですが、今回書くのは虐めはあくまで発端です。
本題は虐められて、その後のことです。
…実際、自分がロクに虐められたこともないので、おかしな点も多いと思いますが。
心理描写は其処まで得意ではありません。
故に、下手ではありますが、どうぞよろしくおねがいします。

—目次—

Re: 思ってから実行するまで ( No.5 )
日時: 2011/01/01 16:07
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: /HyWNmZ0)

04

 俺が死んで、二週間経ったらしい。

 俺、“霜村 嘉盛”はもう死人となり、病院に搬送、其処で死亡確認、家に持って帰られて葬式、火葬、埋葬。

 つまり、“俺”という存在はない。

 そうすると、今こうして話してる“俺”は何だろうか。

 まぁ、悩んでいても仕方がないので、取り敢えず話をする。

 まず、生前の“俺”。

 霜村 嘉盛。

 しもむら よしもり、と読む。

 中学二年で“自殺”した、馬鹿な中学生。

 どうせ家族も三日も経てば元通りだろうし、後悔はしていない。

 家族は、会社員の父、専業主婦の母、小六の妹。

 一般的な家庭だ。

 …とても、一般的な家庭だ。

 極普通の、元四人家族。

 現三人家族。

 …次に、死後の“俺”。

 二階の窓から、校門前のアスファルトの地面に頭から落ちて、頭蓋骨の粉砕骨折、首の複雑骨折による頸動脈の切断他諸々、即死。

 痛いと思ったら、既に死んでいた。

 誰かが救急車を呼んで、病院に運ばれ、其処で死亡が確認された。

 その後は家族が呼び出され、対面。

 妹は大泣き、母は泣き崩れ、父は茫然自失になり、突っ立っていた。

 次の日には柩に入れられて、親戚一同集めて葬式。

 火葬にされ、霜村家の墓に埋葬された。

 そして、今、“俺”が此処にいる。

 “身体”が無い為、“意識”だけでふわふわ浮いてるようなものだが、今の“俺”の状態は“意識”とは言い難い。

 そうしたら、本格的に“俺”が一体何なのか分からなくなるが、答えなど出ないので、それは置いておくことにする。

 取り敢えず、俺がしたかったのは、連中への教育だ。

 体を張った。

 ただ、「自殺するとは思いませんでした」というのは、非常に無責任な答えだ。

 自制心が無い。

 もしも、本当に虐めに悩んでいた奴が自殺したとしよう。

 それで、「自殺するとは思いませんでした」という答えが返ってきたら、遺族は何と言うだろうか。

 死んで利益になる人間など居ない。

 必ずに等しく、誰かに不利益が出る。

 現代人は兎角命を軽視しすぎだ。

「死ね」という言葉は一昔前まで禁句だった。

 それが今ではもう至る所に溢れている。

 戦場では、幾多もの人間が一度に死ぬ。

 ただ、その死んでいく兵士やテロリスト、民間人達にも親が居て、家族が居る。

 それは、利益が出る一方で不利益も出る、微妙な死だ。

 世界平和を望むわけではない。

 別に戦争を望むわけでもない。

 この国は、平和になりすぎたのだ。

 虐めが横行し、自殺をして、返ってくる答えは無責任なもの。

 現代の日本人は、命を軽視しすぎだ。

 それは、一度死んだ俺が言えることで、どうしても連中には伝えられなかったことだった。

Re: 思ってから実行するまで ( No.6 )
日時: 2011/01/22 09:00
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: /HyWNmZ0)

05

 “平等”と、簡単に言っても、“平等”にはならない。

 “平等”とは、差別が無く、皆同じであること。

 聞こえは良いかもしれないが、それは即ち全員全く同じだということ。

 個性を潰している。

 その一方で、「人間は皆違うのだから、虐めを無くそう」という意見もある。

 つまり、“個性”を尊重する意見。

 “平等”と“個性”を組み合わせると、「人間は皆違って、平等なのだから、虐めを無くそう」。

 破綻している。

 尤も、“平等”という言葉を人間に使うこと自体おかしいと思える。

 人間は全て違うのだ。

 全く同じ顔、同じ性格、同じ能力、同じ考え。

 居たら不気味である。

 全く同じ環境で一卵性双生児を育てても、微妙に異なるのだ。

 生物学的にいえば、DNAが違うからだ。

 時折ミラー・ツインなどの違いもあるが、此処では割愛する。

 一人の人間の中に、別の人格が形成されることもある。

 解離性同一性障害、即ち多重人格のこと(必ずしも解離性同一性障害が多重人格というわけではないが)だが、別におかしいことでもない。

 一人の人間の中でも複数の人格が存在するのだ(それが表に出るのが多重人格という考え方もある)。

 それが複数の人間なら尚更、違いは大きくなる。

 クローンでも、全く同じ人間の生成は不可能だ。

 幾ら同じ顔で、同じ性格で、同じ能力を持ち、考え方が同じでも、それを形成している細胞や、持っている記憶には、誤差が出る。

 つまり、虐めの理由は「自分達とは違うから」では理由にならない。

 虐めの対象だけでなく、虐める側も明らかに全員違いがあるじゃないか。

 それで言えば、非は虐める側にしかない。

 しかし、「相手が弱いから」という理由になると話が違ってくる。

 非が虐める側だけでなく、虐められる側にも僅かながら、あるのだ。

 ただし、弱いから虐めても良い、というわけではない。

 力が弱いのも一つの“個性”である。

 一方で成績が良かったり、社交性に富んでいたりする。

 人間には、それだけは世界一とまでいかなくても、一つは秀でるものがある。

 世間で言うヲタク。

 これは、言い換えれば知識に富んでいる者。

 世間で言う根暗。

 これは、言い換えれば物静か。更に言い方を変えれば冷静。

 短所は時に長所となりえるのだ。

 つまり、これらは虐める理由にはなりえない。

 また、「人種(肌の色)が違うから」というのは論外だ。

 それは虐めであり、人種差別でもある。

 人種には、大きく分けて三種類がある。

 アジア系の黄色人種、アフリカ系の黒色人種、ヨーロッパ系の白色人種。

 肌の色が違うだけでなく、骨格の形なども違うのだが、此処では割愛する。

 先述した通り、同じ人類で、それぞれの個性だと考えれば、それだけで片付く話でもある。

 日本は人種だけで戦争まで起こした国ではない為、安心しているかもしれないが、虐めは広がりすぎると戦争の引き金になりかねない。

 言いたいことだけ言うのなら、虐めなどという下らないことで犠牲者を出すより、この不況と内閣の支持率低迷の打開策を考えろ、ということである。

 別にそうしろ、というわけではないが、この国の将来を担っていく子供がこれでは日本が某大国の一都市になるのは時間の問題だ。

 なので、俺、霜村 嘉盛はこれを強く願う。

 虐めをやめれば、その問題に悩まずに済むから、その分他の問題を解決してほしい。


—後書き—
なんか途中から話が大きく脱線したような……。
私の悪い癖でしょうね。

Re: 思ってから実行するまで ( No.7 )
日時: 2011/01/21 17:24
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

初めまして、涼原夏目と申します。
前半部分から主人公でしょうかが自殺したその後から始まる、と言うのに衝撃を受けました(笑
本当に現代の日本人って命を軽視していると思います。いや、私も現代の日本人ですけど。

自殺しても「自殺するとは思いませんでした」って無責任ですよね。
……ニュースとかでもありますけど。

本当に考えさせられる物語で、続きが物凄く気になります。
執筆頑張ってください。応援してます。


………またコメントします(苦笑

Re: 思ってから実行するまで ( No.8 )
日時: 2011/01/21 18:29
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: /HyWNmZ0)

>>7
初めまして。
嬉しいコメント有り難う御座います。

一応主人公なんですけどねー……主人公は不特定です。
同意(でしょうか)をもらえて嬉しいです。…私も現代の日本人ですがw

実はその言葉は先生が皆の前で話したときに口にした言葉でして……。
その時に少し考えさせられたので、参考にと。
本来は自分で見つけだすべき答えなのでしょうが、答えを先に言われてしまったので……。

応援有り難う御座います!
更新は大分遅いですが、期待に応えられるよう、頑張ります!

涼原夏目 様も頑張って下さい。

Re: 思ってから実行するまで ( No.9 )
日時: 2011/02/06 19:00
名前: 黒影 ◆BX9zGDO0G. (ID: pDyYudP2)

06

 霜村が死んでから一ヶ月。

 奴が居なくなって、クラスは平和になったか、といえば、全く違う。

 クラスにあった勢力や関係は大きく変わった。

 男子の方は比較的穏やかになり、今の所、虐めらしい虐めはない。

 問題は女子だ。

 グループが三つから五つに増え、どのグループにも属さない、“六つ目”が虐められ始めた。

 米森 秋子、篠沢 静海、千葉 百合。

 たった三人、虐めることくらい容易いのだろうが、男子はそんなことする気にならなかった。

 女子のやり方は陰湿で、無視、嫌がらせは後を絶たない。

 そんなことに使うくらいならもうちょっとマシな使い方をしろ、と言いたくなるほどに頭を使って嫌がらせをする。

 特に無視、というのは話すのが好きな女子にとっては結構なダメージになる。

 しかし、千葉 百合の例は特殊だった。

 彼女とは異常な程に仲を良くするのだ。

 その一方で、“友達”という言葉を引き合いに出し、全てを奪っていく。

 比較的裕福だが、少し暗い性格で、自分に自信を持たない彼女はそれに縋るしかない。

 恐らく、それに飽きればすっぱりと切り捨てるだろう。

 まるで、蜥蜴の尻尾のように。

 今日も聞こえる。

「ほら、百合ちゃーん? おはよー?」

「お、お早う……御座います……」

「もう、敬語は良いって言ってるでしょー?」

「あら、これ買ったの?」

「え、あ、うん……」

「良いなぁ……ねぇ、これ頂戴? 友達でしょ?」

「あ、……うん……良いよ……」

「ありがとー! これ前から欲しかったのよー!」

「あ、はは……」

 泥棒の如き、ハイエナの如き、ハゲタカの如き。

 本人の了承さえあれば良いとでも思っているんだろうか、何でも奪っていく。

 まるで脅しだ。

 これを寄越さなきゃ虐めるぞ、という。

 千葉自身も米森や篠沢のようにはなりたくないのだろう。

 ただただ、従っている。

 最早、彼女に脱出の術はなかった。


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