社会問題小説・評論板
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- 私って、生きてる意味、あるのかな。
- 日時: 2012/07/20 11:13
- 名前: 香月 (ID: OldIND5q)
<プロローグ>
どうしよう。どうしよう。
なんで私って、何をやってもこんなにだめなの?
なんで。なんでよ。こんなにがんばってるのに。
・・・こんなに苦しい思いをしてまで生きなくちゃいけない理由って、何?
っていうか、なんでこっちを見てくれないの?なんで、そっちばかり見ているの?
おねがい。こっち向いて?嫌わないで?おねがい。
もっとがんばるから、ね?それならいい?それなら、こっちを見てくれる?嫌わないでいてくれる?
死んだら、悲しんで、くれる?
・・・確かめたいよ。
私って、生きてる意味、ある?
* * * * *
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
香月です。のぞいてくださり、ありがとうございます!
駄文ですが、それでもいい!という優しい方は、どうぞ読んでやってください。
* * * * *
No.1 「苦しい。」 >>1 No.11 「教えて。」 >>17
No.2 「行かないで。」 >>2 No.12 「ひどいよ。」 >>18
No.3 「愛して。」 >>3 No.13 「もういいでしょ?」 >>19
No.4 「求める。」 >>4 No.14 「怖い。」 >>22
No.5 「やめて。」 >>7 No.15 「せめて。」 >>23
No.6 「一人にさせて。」 >>8
No.7 「何のため?」 >>13
No.8 「あなたはいいね。」 >>14
No.9 「本当の善。」 >>15
No.10 「見たくない。」 >>16
* * * * *
<登場人物>
倉藤 海湖…主人公
倉藤 秋人…主人公の弟
- Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.14 )
- 日時: 2012/04/05 09:13
- 名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)
No.8 「あなたはいいね。」
人って、何のために生きるの?
心の底からの質問だった。
究極な問い。
なのに青年は、いとも簡単に答えた。
「生きるため」
…生きるために、生きる…?
何それ。意味が分からない。
「答えになってないです」
「あはは、そうだね。なんて言ったらいいかなー…。…一日一日を生きていくことに、意味があんだよ。例えば苦しいことがあって、それを傍観するにしても、正面から向かうにしても、さっさと逃げるにしても、苦しいって思うことが大切っていうかさ」
暗い空を見上げて言う青年。
月明かりで、瞳が輝いて見える。
それを見てから、視線を下に落とす私。
…大切な訳ないよ。
だって、苦しむんだよ?傷つくんだよ?
それって、とても痛いの。
もう消えたい、って思うほど。
「苦しいことって、楽しいことを経験してるから、苦しいって思うんだよ。つまり、その逆だって言える。苦しいことを知っているから、楽しいって思える」
「………」
「そう考えると、苦しいって思うことも悪くない…って思えてこない?」
…思えてこない。全然。
だって私にはもう、楽しいと思う心なんてないもの。
傷つくことしか、できない心なんだもの。
あなたはいいね。そう思える心があって。
あなたはいいね。輝く瞳を持っていて。
あなたはいいね。
生きることに、絶望してなくて。
- Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.15 )
- 日時: 2012/04/08 11:04
- 名前: 香月 (ID: Fbe9j4rM)
No.9 「本当の善。」
「…帰ります」
急にベンチから立ち上がる私。
さぁっと、冷たい風が吹く。
「ああ、うん。また、会えるといいね」
「そうですね」
そうですね。
その言葉が、暗い夜空にむなしく消えた。
「さよなら」
さよなら、偽善者さん。
私はきっといつか、あなたのことを思い出すよ。
だってあなたは、偽善者だったから。
あなたはきっといつか、私のことを思い出すよ。
だってあなたは、偽善者だろうから。
あなたはこの後、こう言うんだろう。
「俺はあの子を救えたかな」
残念、救えてないよ。
私はまだ、死に魅力を感じてる。
「俺の声は、あの子に届いたかな」
ごめんね、届いてないよ。
私はまだ、死からの声が聞こえてる。
「俺は、善になれたかな」
善?
冗談でしょう?
あなたは装っているだけ。うわべを飾っているだけ。
あなたの『善』は、見せかけだよ。
なんで分かるのかって?
それはね、私が『悪』だから。
あなたの精一杯の誠意をつぶして、ひどいことを考えて。
私が一番、誰よりも、醜い。
だから。
だから嫌い。
『善』を名乗って『善』を語る、『悪』が。
自分の醜態を隠す人間が、嫌いなの。
何よりも嫌いなのは、自分だけど。
ねえ、本当の善になりたいの?
それなら、私を消して?
そうしたら、善になれるよ。
あなたの人生、壊れちゃうかも、しれないけれど。
- Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.16 )
- 日時: 2012/04/18 23:58
- 名前: 香月 (ID: YFfwNhg/)
No.10 「見たくない。」
家の中は闇に包まれ、静まり返っていた。
物音を立てないようにして、自分の部屋に戻る。
あの二人が起きて来たら、色々面倒だ。
パタン。
ドアを閉める。
よかった。二人とも、起きなかったみたい。
顔を上げる。
床に転がった貯金箱が、窓からもれる月明かりに照らされていた。
私はベットに倒れ込み、窓から月を見上げる。
「…明けない夜はない」
ありふれたフレーズをつぶやく。
テレビの中の歌手とかが、よく口にしているけれど。
夜の何が悪いの?
私は、このフレーズを聴くたび思う。
どうしてそんなに夜を嫌うの?
どうして夜を腫れ物みたいに扱うの?
夜が明けなくたっていいでしょ?
ずっと眠っていればいいんだから。
いつまでも、永遠に眠っていれば、さ。
いつか太陽の存在なんて、忘れるよ。
君は、夜が好きなんだね。
…嫌いじゃないってだけ。
太陽の光が嫌いなだけなんじゃないのかい?
…そんなこと、ない。求めているもの。
ただ、私には遠すぎて、まぶしすぎて。
だから、見たくないだけだよ。
- Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.17 )
- 日時: 2012/04/30 07:38
- 名前: 香月 (ID: mt080X2r)
No.11 「教えて。」
「海湖、今日テストあったでしょう。見せなさい、早く」
帰ってきた途端、コレですか。
私は心の中でため息をつく。
そしてカバンの中からテストを取り出し、『お母さん』に渡す。
「……何なのこの点数っ!何であんたはそんなにバカなの!?」
叫びだす『お母さん』の声が、なんだか遠くに聞こえた。
『62』という数字が、ひらひらと見え隠れする。
なぜか、昨日会った青年の顔を思い浮かべていた。
その顔に訴えるように、頭の中で言葉を連ねる。
…仕方ないでしょ、精一杯やってもそれしか取れないんだから。
っていうかさ、人生、四則計算と母国語知ってればやっていけるじゃん。
何で理科とか社会が、教育課程に入ってるの?
どうせならもっと、人生に役立つことを教えてよ。
友達の作り方とか、ムカつかない方法とか、楽に死ぬやり方とか、さ。
そっちの方がよっぽど、使えるでしょ?
「……ちょっと、聞いてんのっ!?」
突然、鈍い音と共に、お腹に激痛が走る。
……蹴られた?
「ゲホッ……」
……いたい。痛いいたいいたいいたい…………。
呼吸が、できない。くる、しい……。
心も体も。
もうボロボロ。
私が、頑張らない、理由はね。
もう、いないから。
どんなに頑張っても。
褒めてくれる人は、もういないから。
…もう、誰も。
誰か、お願い。
痛みを消す方法を、教えて。
- Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.18 )
- 日時: 2012/05/03 16:41
- 名前: 香月 (ID: mt080X2r)
No.12 「ひどいよ。」
「もしもし?…あら、あなた?」
その言葉に、わたしの胸が高鳴る。
お父さんだ。出張先から、電話をかけてくれているんだ。
「ええ、大丈夫よ。みんな元気。…ええ、今かわるわ。…秋人?お父さんよ」
『お母さん』が『弟』に受話器をわたす。
次は私だ。何を話そうかな?
なるべくお父さんが喜ぶようなことを話そう。
私がいい子でいれば、もしかしたらお父さんはまた、私を見てくれるかも、しれない。
「…うん、分かった。…ハイ、母さん」
『弟』が話し終わったみたいだ。
「もしもし?そう、私」
私は受話器を見つめる。『お母さん』の声が、右耳から入って、左耳から出て行く。
……早くかわってよ…。
イライラし始めたとき。
「…ごめんなさいね、今海湖いないのよ」
急に『お母さん』の声が、鋭く冷たく、私に突き刺さった。
「…え…」
何、言ってるの?
「そう、まだ部活みたいで」
私、ここにいるでしょ?
「…ええ、伝えておくわ。それじゃ、体に気をつけて」
「…待っ…やめて、切らないでよ!」
叫んだけど、遅かった。
ガチャン。
受話器を置く音が、重く響く。
「…残念ね。点数が悪かった罰よ」
『お母さん』が笑ってる。
「ハハッ、あわれ〜」
『弟』も、笑ってる。
……なんで?
なんで、笑ってるの?
なんで、切ったの?
なんで、私の幸せを奪うの?
どうしてよ……。どうして『弟』だけなの。
ひどいよひどいよひどいよ。
あなたたちは、私の全てを壊すんですね。
私の人生も、お父さんとの関係も、私自身も、全て全て。
……もう、いっそのこと、壊れてしまいたい。
永遠と直せないように。
もう二度と、壊されないように。
壊す方法、教えてあげようか?
わあ、本当?
本当さ。なに、カンタンだよ。
そうだなー…十階もあれば充分かな。
そこの屋上から、下へ飛び込んでごらん?
…どうなるの?
それは、やってみないと分からないさ。
どうだい、試してみないかい?