社会問題小説・評論板
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- 人間なんて、大嫌い
- 日時: 2012/11/02 23:34
- 名前: 凛 ◆DsGFCj9jkQ (ID: mJV9X4jr)
こんにちは、もしくははじめまして。
凛といいます。
社会問題系ははじめてですが、
よろしくおねがいします。
コメント、アドバイスは大歓迎です。
荒らしなどはやめてください。
文才ないですが、
それでもOKな方はどうぞ、よんでください。
- Re: 人間なんて、大嫌い ( No.7 )
- 日時: 2012/11/06 22:02
- 名前: 凛 ◆DsGFCj9jkQ (ID: mJV9X4jr)
菊谷秋目線
その日以来、私と沙弥香は夏香をいじめた。夏香は少しずつ笑顔を失っていった。そして、私は笑顔を取り戻しつつあった。しかし、夏香は死んだ。自殺と言われている。それは遺書が見つかったからだ。確かに夏香の字だった。あたりまえだ、私が夏香に無理やり書かせたものが残っていただけなのだから。あれは冬と秋の間みたいな日。私は夏香をいじめていた。
「ねぇ。葬式ごっこしない?」
「それいいね!」
沙弥香といつもと特に変わりのない話をしていた。私たちがいじめをしていることを知っているのは、私と沙弥香と真奈と夏香だけ。つまり、夏香をいじめていたグループの人間と、いじめられていた本人だけ。
「まず、夏香には遺書を書いてもらわないと!」
「ってことで、書いてね。遺書」
強制的に夏香に遺書を書かせ、私たちは葬式ごっこをした。内容は、夏香が死んだという設定で葬式をする遊びだ。
「この遺書、家に保管しておこ!」
「それがいいよ!」
そう言って私の机のひきだしには夏香の書いた遺書をいれていたのだ。その遺書は、夏香が死ぬまで存在を忘れてしまっていた。
- Re: 人間なんて、大嫌い ( No.8 )
- 日時: 2012/11/06 22:31
- 名前: 凛 ◆DsGFCj9jkQ (ID: mJV9X4jr)
菊谷秋目線
昨日、夏香が家に帰ってこなかった。お母さんは必死に夏香を探した。しかし、見つかった頃には夏香はとても冷たくなっていた。顔には涙のあとがあり、その上から血で真っ赤になっていた。血が抜けて真っ白になった肌が血の赤を引き立たせていた。お母さんは声を出して泣いた。うらやましくてたまらなかった。先生も悲しそうな顔で涙を流していた。
「どういて夏香がこんなことに!‥‥‥‥‥先生、どうしてですか?」
「わかりません」
「秋、何か知ってるの?」
「し、知らない‥‥‥‥」
震える声で嘘をついた。理由はわかっていた。いじめのせいで自殺__________などではない。本当は、私が殺した。あの時、屋上で夏香と話していたのだ。風がとても強かったことをよく覚えている。
「ねぇ、もうやめてよ。なんで私をいじめるの?」
「あんたがムカつくから」
「‥‥‥‥‥‥それならいいよ、私‥‥‥秋のこと嫌いなの。だから、いじめのこともお母さんに言ってやる!そしたら、秋はまたお母さんとお父さんからひどいめにあわされるわ!いいきみよ!あんたなんて、死ねばいい!」
私は頭が真っ白になった。お母さんにバレるわけにはいかない。恐怖、絶望、怒り、嫉妬。私の中の感情を、止めることはできなかった。
「あんたが死ね!」
背中をドンッと押すと、夏香は屋上からおちて、死んだ。こんなことをする気はなかったが、もう遅い。私は自殺に見せかけた。遺書はある、何かあっても双子だからごまかしやすい。
「自殺、ですね」
警察官の言葉に笑顔になりそうだった。笑ってしまいそうだった。人をだますのはこんなにも簡単なのだ。
- Re: 人間なんて、大嫌い ( No.9 )
- 日時: 2012/11/10 17:27
- 名前: 凛 ◆DsGFCj9jkQ (ID: mJV9X4jr)
秋の話に返す言葉が見つからなかった。秋は夏香を殺したのだ。夏香を殺して、親さえもだましたのだ。そして、私も聞いてしまったからにはこの事件に関わることになるだろう。
「秋‥‥‥‥これからどうするの?」
「真奈の家に行く」
「同じことはなすの?」
「‥‥‥‥‥まさか、話すのはたよれる人だけ。沙弥香は私の親友だもん」
親友と言葉を聞くと、胸を締め付けられるようなかんじがした。うれしいという気持ちがあふれ出た。もちろん私も秋のことを親友だと思っている。同じように辛い毎日を過ごしてきたのだ。だから、秋のことだけは何があっても裏切らない。
「わかった、行こう!」
私たちはまた走った。秋は靴ひもがほどけていることに気がついたようだが、そんなことは気にもせず、ただ走った。真奈の家はすごく大きい。3階建てで、敷地は普通の家の4倍ほどある。
「真奈、夏香のこと知ってるかな?」
「わからない、でも。行くしかない」
「‥‥‥‥‥‥‥うん」
「あら?秋ちゃんと沙弥香ちゃん。どうしたの?」
声をかけたのは真奈の母親だった。とてもやさしそうな人、実際にやさしいらしいその人は、秋を見て驚いた顔を見せた。秋は泣いていたのだ。涙を目に溜め込んで、すごく悲しそうな顔をしていた。
「どうしたの秋ちゃん!」
「夏香が、夏香が!」
「夏香ちゃんがどうかしたの?」
おばさんはあたふたしていた。私は秋のやっていることがわかった。怪しまれないためだ。まわりには私たちのいじめを気づかせないために、秋と私と真奈と夏香は仲がいいということにしている。夏香が死んで、真奈にそれを伝えにきたと思わせたいのだろう。しかし、いつ見ても完璧なうそ泣きだ。
「夏香が‥‥‥‥‥自殺しました」
私がうつむいて言うと、おばさんは持っていたかばんを地面に落としてしまった。秋は顔を上げると声を上げて泣いた。
「‥‥‥うああぁぁぁぁぁ‥‥‥‥‥‥‥な‥‥夏香!‥‥‥‥夏香が‥‥‥‥‥うああぁぁぁん‥‥‥‥‥」
「秋、落ち着いて」
「でも、夏香‥‥‥‥‥‥なんで!?な、なんでなの‥‥‥」
秋はずっと泣いた。目をまっ赤にして、うずくまって。おばさんはわたしたちをリビングへつれて行くとあたたかい紅茶を出してくれた。私は紅茶を一口飲むと秋に視線を向けた。秋はゆっくり紅茶を飲んでいた。その横顔はとても悲しそうだった。
「秋、沙弥香。どうしたの?」
「真奈‥‥‥‥‥」
真奈はソファーに座ると、出されていたクッキーをのんきに口に運んだ。まだ知らないのだろう。
「‥‥‥‥‥」
秋はまた泣き出した。何度も涙をふいた服のそでは、びしょびしょになってしまっていた。私は秋がしゃべれなさそうなのを見て、真奈に伝えた。
「あのね。夏香が、死んだの」
「え‥‥‥‥?」
真奈はクッキーを取ろうとした手を動かすことなく、かたまってしまった。私は秋の背中をさすった。秋は真奈のお母さんがいないことを確認してから、真剣な顔になった。
「聞いて、真奈。これは親友の真奈にだから話すの。夏香は自殺した、遺書を残して。その遺書にはいじめのことが書かれていたの、でも私たちの名前はでてなかったみたい。だから、いじめのことは黙っててほしいの。真奈だっていじめをしてたなんてみんなにバレたくないでしょ?」
「うん。わかった」
真奈はうなずいた。私たちは真奈の家をあとにした。帰り道、私は秋に話しかけた。
「ねぇ。遺書って、前に書いたのだから私たちのこと書いてないでしょ?」
「あたりまえじゃん。でも、ああ言わないと真奈、母親に言いそうだし」
秋はそう言って笑った。さっきまでの涙はどこかへ消えてしまっていた。私は秋と一緒に笑った。
- Re: 人間なんて、大嫌い ( No.10 )
- 日時: 2012/11/10 17:48
- 名前: 凛 ◆DsGFCj9jkQ (ID: mJV9X4jr)
翌日は学校があった。教室に入るとみんな夏香のうわさをしていた。夏香の机の上には花が飾られていた。私が自分の席に座ると、秋が教室に入ってきた。クラスメイトは秋へ同情の目を向けた。それもあたりまえだろう、秋の双子。菊谷夏香が死んだのだ。秋は今にも泣きそうになっていた。先に学校に来ていた真奈も泣きそうだった。
「秋、大丈夫?」
「夏香、自殺って‥‥‥」
「バカ!今聞ける状況じゃないでしょ?」
女子たちが秋のまわりに集まる。本気で悲しんでいるのかはわからないが、泣いている人もいた。そこに青達勇気は来た。青達は夏香の彼氏だ。しかし、いじめのことは知らない。
「菊谷、夏香が自殺って‥‥‥‥本当か?」
「‥‥‥‥‥‥うん」
「どうして夏香が‥‥‥‥」
秋は泣いた。すると青達も泣き出した。朝日がまぶしい教室で、何人もの生徒が泣いている。そんなところに担任が入ってきたが、担任も泣き出してしまった。私はうそ泣きなどできないので、ただうつむいた。不自然ではないか、心配で心配で。壊れてしまいそうだった。
- Re: 人間なんて、大嫌い ( No.11 )
- 日時: 2012/11/10 18:27
- 名前: 凛 ◆DsGFCj9jkQ (ID: mJV9X4jr)
体育館での緊急集会には、秋の親が来ていた。涙を溜め込んだ顔でうつむいている。
「えー。皆さん、知っていると思いますが、1年2組の菊谷夏香さんが自殺しました」
校長の言葉に驚く人はいない。もうみんな知っているのだ。私はマイクの響く音が耳障りで顔を歪めた。そして、秋は泣いていた。何回泣くのだろうと思いながらも私は秋の背中をさすった。
「大丈夫?菊谷さん」
担任が秋に話しかけたが、秋は泣くだけで答えなかった。
「先生、秋をつれて保健室行ってきてもいいですか?」
「ええ。2人で行ける?」
「はい」
私たちは保健室へ歩いていった。秋は何もしゃべらなかった。だから私も何もしゃべらなかった。
「あのね、沙弥香」
「なに?秋」
「お母さんが‥‥‥‥‥‥‥」
「大丈夫だよ、まだ体育館にいたから」
「ちがうの!」
秋は満面のえみで私を見た。本当に、うれしそうだった。