社会問題小説・評論板

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僕の物語
日時: 2013/01/30 20:32
名前: Q ◆eN9KdBg3KY (ID: WR6BJnUH)

初めまして。
ここで小説を書かせていただくのは初めてです。
至らない点もあると思いますがよろしくお願いします。


感想をもらったら滅茶苦茶嬉しいのでできれば感想をよろしくお願いします・・・。
批評でもいいです。

Re: 僕の物語—第3章— ( No.20 )
日時: 2013/02/09 21:44
名前: Q ◆eN9KdBg3KY (ID: WR6BJnUH)

「……僕、オカマなんかじゃないよぉ……」

今までじっと黙りこんでいた桜井が、ようやく反論をする。がしかし、

「その話し方のどこがオカマじゃないんだよ!気持ち悪いから黙れよ!」

と片瀬の口撃に肩をビクッと震わせ、再び黙りこむ。

「なぁ、皆だって、そう思うだろう!?」

突然片瀬は、両手を広げながらこちらを振り向く。
両手を何故広げるのか完全にはわからないが、たぶん格好いいと思っているのだろう。

片瀬の突然の問いに、皆も黙りこむ。
皆、なんと言っていいのかわからないのだ。僕も含め。
「そうだね」?
「いや、それは違うと思う」?
「概ね僕もそう感じているよ」?
何が正解なのだろうか。

「なぁ孝太!」

突然、僕の名前が呼ばれる。なぜ僕の名前を読んでしまうのだろうか。

「……え」

それに咄嗟の反応ができなかった僕は、そう言うしかなかった。

「お前、言ってたよな!?桜井って気持ち悪いってさ!」

僕は、そんなことを言っただろうか?全然覚えていない。
が、もしかしたら話しを取り繕うためにそのようなことを言ってしまったのかもしれない、と思い「そんなことは言ってない」と言うのは避けた。

「孝太もな、お前のことが気持ち悪いって思ってんだよ!バーカ!」

その時、桜井の表情が強張った。

「……そ、そんなぁ」

「黙れ!オカマ!」

桜井が口を開いた途端、片瀬がそれを牽制する。

「孝太も俺もな、お前のことが大嫌いなんだよ!」

遂に、そう決めつけられてしまった。

「お前らはどうなんだよ!?桜井の事、どう思ってんだよ!」

片瀬は、また皆に問いかける。

本来片瀬のみが、桜井を嫌っていると判明したところで、「自分も」と言う人は少ないと思われた。
しかし、片瀬のいう事が本当ならば、とクラスメイトが判断した場合。
あの孝太も桜井が嫌いなのだったら、と思ってしまう場合。


自分で言うのもなんだが、僕はクラスの中心人物だ。


「…まぁ、俺も桜井は正直ちょっと……」
とあるクラスメイト兼僕の友達がそう言ったのを皮切りに、桜井への不安という名のダムが、決壊した。

「私も、桜井君はちょっと気味が悪いかな……」

「桜井って、何考えてるかわかんねーしな」

「あいつ、いっつも空気読めないし……」

「桜井って、フケまき散らしてんの?きたねー……」

声を小さくしながらも、みんな口々に言いだす。
たとえ小さな声でも、それが集まったら大きくなっていく。

誰も、決壊したダムを直そうとは考えない。

遂には「私桜井君と席が隣同士だけど、実は嫌だったの……」と泣き出す女子まで現れる。

女子の涙というのは、絶大な効果を放つ。
女子を泣かせた男子は、女子全員から嫌われ、悪口を言われ、嫌がらせをされる。
時には、そのほかの男子までもが女子と結託し、その男子を追い込もうとする。

この女子の涙により、皆から鋭い視線が桜井に飛んでいく。

誰も、決壊したダムを直そうとは考えない。

「桜井!お前のせいで裕子が泣いたぞ!」

片瀬が、桜井を非難した。
そうだ、あの泣いた女子は裕子、という名前であった。

「僕は、なにも……」

「お前のせいに決まってんだろ!お前、障がい者でオカマで女子泣かすとか、サイテーだな!謝れよ!」

片瀬の謝罪を求める発言により、クラスメイト達も口々に

「謝れ!」
「そうだぞ!」
「桜井の所為だ」
「謝りなさいよ!」
「そうだそうだ!」

「「「「「謝れよ!」」」」

桜井健太は、ほとんどのクラスメイトから『敵』と認識された。



この日、僕らのいつもが変わってしまった。



Re: 僕の物語 ( No.21 )
日時: 2013/02/12 20:57
名前: Q ◆eN9KdBg3KY (ID: WR6BJnUH)

 翌日、僕はいつもより遅い時間に学校に到着した。理由は単純、朝寝坊だ。
なんとか朝のSHR前に学校に到着し、急いで教室へと駆けていった。
教室の前に着く、時間にはまだ少し余裕があったので、少し息を落ち着かせる。
息がだいぶ落ち着いた頃、僕は教室の扉を大きくも小さくもないような音を立てて開けた。
すると、一斉にクラスメイト達が僕を見る。
一瞬、たじろいでしまう。今までは、誰かが教室に入ってきても、皆あまり気にしなかったのに、今日はどういうことなのだろうか。
とりあえず僕は皆に「おはよう」と言っておくことにした。

すると片瀬が

「なんだ、孝太かー」

と言ってきた。クラスメイトの皆も、ホッと、息をついたようだ。
なんだとは一体どういう事かと考えるが、先生が聞いたらまずい話でもしていたのだろうと思い

「なにか、誰かに聞かれたら不味い話でもしていたの?」

と聞いた。

「うーん、まぁそんな感じかな」

と笑いながら片瀬が答えた。
笑いながら、と言ってもその笑い方は爽やかと家うようなものではなく、むしろ不快感しか感じなかった。
そして、片瀬が「おい、見ろよ」と言うかのように、僕に目配せをする。
一体なんなんだ。そんなことを考えて目を向けた先には、……桜井健太が立っていた。
いや、立っていた、と言っても自主的に立っているのではない。

『立たなければいけない状況』になっているのだ。

桜井は、桜井の椅子と机が『あった』場所に立っていた。
つまり、今このクラスに桜井の椅子と机がない、ということだ。
この光景を見て僕は大きく目を見開いた。

(こいつらは……いや、クラスメイトの皆は桜井の椅子と机を隠したのか?)

そう考えていると、片瀬が声を上げた。

「おい桜井、お前自分の椅子と机どうしたんだよー?」

まるで、というかまるっきり、「俺がやったんだけどね」というニュアンスを含んだ声だった。

「…どこかに、行っちゃったみたい……」

桜井は少し間を開けて、あの独特な喋り方で、そう答えた。

「はぁ?馬鹿じゃねーの?椅子と机が勝手にどっか行くわけないだろ」

桜井を嘲るように片瀬は言う。クラスメイトの皆も、クスクスと笑っている。

「第一、お前の椅子と机なら、あそこにあるじゃねーか?」

そう言って片瀬が指差す先を見ると、教室の隅っこに椅子と机があった。
そこは、いつもなら椅子と机がないところであった。どうやら、僕は勘違いをしていたようだ。先ほどは『このクラスに桜井の椅子と机がない』と思っていたが、本当は、すぐそこにあったのだ。

そして僕は、なぜそんなことを?とも考えた。こんなことを考えるのもどうかと思うが、どうせなら、すぐには見つからない場所に隠せばよいのではないか?と思ってしまった。
しかしその疑問はすぐに解決された。片瀬の言葉によって。

「お前、すぐそこに自分の椅子と机があるのに、分らなかったのかよ?」

そう、桜井を罵倒するために。

「お前は、本当に馬鹿だな。それとも目が見えないのか?」

「……目は、見えるよぉ」

桜井は傷ついたような声で、そしてあの独特な声で、そう答える。

「おい、喋るんじゃねぇよオカマ。その声聞くと、こっちまで障がいとオカマがうつるじゃないか」

クラスの皆が、クスクスと笑う。皆、楽しんでいるようだ。

「………」

それに対し桜井は黙ったまま、椅子と机を元ある位置に戻した。
その直後、上野先生が教室に入ってきた。
上野先生は僕と桜井に

「おい、何つっ立っているんだ。座りなさい」

と言った。
僕は座ることも忘れ、ただ茫然と立っていたようだった。

Re: 僕の物語—第3章— ( No.22 )
日時: 2013/02/19 18:36
名前: Q ◆eN9KdBg3KY (ID: WR6BJnUH)

 そして朝のSHRが終わり、そのまま一時間目の授業が行われた。一時間目の授業は算数であり、上野先生の担当であった。
最近の上野先生は、暑さでいつもイライラしていたが、今日は比較的涼しかったため、いつもより穏やかだった。

この日の授業は退屈だった。プリントを一人3枚配られ、

「今日はこのプリントを皆にしてもらう。この時間内までに終わらなかったら、宿題になるので早めに終わらしといたほうがいいぞ」

と言うと、上野先生は何の本かは知らないが読書を始めた。

(先生に、今日の事を話すべきだろうか)

と僕は思った。桜井はたぶん、いや確実にいじめに遭っている。
僕は、あの時どうすればいいかはわからなかったが、いじめがいい事か悪い事かぐらいは知っているつもりだ。
しかし、僕が先生に話したのがばれる恐れもある。それに、やはり桜井がいじめられているなど関係ない。無視してしまえ。と思ってしまう自分もいるのだ。悶々とした時間がしばらく続いた。
その時、僕は現状を思い出した。こんなことを考えている場合ではない。一刻も早くこのプリントを終わらせなければ、宿題が増えてしまう。片瀬だって、しばらくしたら飽きるだろうし、僕には関係ないのだ。関わらなければいい。と勝手に折り合いをつけて、
なんとかこの時間内で終わらすため、僕はせっせと問題と向き合った。

それから、20分ぐらいしてからだろうか。
片瀬と、その他3人ほどのクスクスという小さな笑い声が聞こえた。
僕は、きっとプリントをなまけてやらずに、4人でおしゃべりでもしてるのであろう、と考えていた。
そう予想を立てたものの、やはり少し気になり、後ろを振り返るとそこには消しゴムの切れカスを投げる片瀬が目に入った。
投げられた方向を目にやると、桜井がいた。




僕には関係がない、とさっき決めたばかりであったのに、胸がじんわりと痛んだ。

Re: 僕の物語—第3章— ( No.23 )
日時: 2013/02/28 23:08
名前: Q ◆eN9KdBg3KY (ID: WR6BJnUH)

 それから、毎日桜井へのいじめは続いた。
ある時は、桜井が傍を通ったら「なんか臭くね?」と言い、またある時は桜井が触れたりしたものがあると「オカマ菌がうつるぞー!」と騒ぎ立てる。
今はまだ大丈夫だが、これから桜井が給食当番になったら、誰も桜井のよそったものを受け取ろうとしないだろうな、と容易に想像ができた。
そしてこれだけではなく、桜井の机に罵倒の言葉をこれでもかと言うほど書かれていたり、桜井の上履きに画鋲を入れたり、テレビや漫画などでよく見るような陳腐ないじめを繰り返していた。
しかし、いくら陳腐と言ってもやられたらやられたで、結構堪えるものなのだろう。桜井はいつも下を向くようになり、休み時間になるとすぐにどこかに行くようになった。
しかし片瀬はそれを許さず、昼休みになると桜井がどこに行ったか探し、見つけると「よぉ」と声をかける、という行為を繰り返していた。
それをやると桜井は顔を青くし、そこからすぐに逃げるらしい。片瀬は、皆の前でそれのモノマネをして、笑いを取っていた。

こんなことを思っていた僕だが桜井のいじめにはまぁ、付き合い程度には参加していた。
誰かが桜井が傍を通った後「臭くね?」と言ったら「そうかも」と言い、誰かが「オカマ菌がうつるぞ!」と言ったら「うわ、オカマ菌だオカマ菌だ!」と囃し立てたりした。
最初は、少し胸が痛んだが、慣れてしまえばそれほど痛みも減っていった。
桜井には悪いと思っているが、僕は桜井をかばうような行動力や正義感も持ち合わせていなかった。
心の中では「悪く思うなよ。でも、仕方がないだろう?」と弁明するように言い、皆と一緒に桜井を罵倒した。
たぶん、クラスメイトの何人かは僕と同じような心境だろう。

僕が悪いわけではない、片瀬があんなことを言うから、後戻りができなくなってしまっただけだ。だから、仕方がなくやっているだけなのだ。

仕方がなく、仕方がなく、付き合っているだけ。そう、本気で思っていた。

Re: 僕の物語 ( No.24 )
日時: 2013/03/04 16:21
名前: 恵梨香 (ID: C.IWX95H)  

初めて読ませて戴きました

主人公の心境が染々と伝わってくる現実感のある小説ですね(^∇^)

これから周りの雰囲気がどうなっていくのかが楽しみです!!


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