社会問題小説・評論板

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天国と地獄
日時: 2016/09/27 20:32
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

天国と地獄、選べるならばどちらに行きますか?

そんな質問を、昔されたような気がする。今思えばなんて残酷な質問だろうか。

私は迷わず天国を選ぶ。地獄では舌を抜かれるとか、針の山を登ることになるとか、そんなことばかり聞くけれど、そんなのちっとも理由じゃない。


もう、地獄なんてたくさんだ。

Re: 天国と地獄 ( No.8 )
日時: 2016/10/05 21:55
名前: ゆり (ID: yW/8TsYW)

次の日、神原は学校を休んだ。
何故かは誰も知らない。あの後、るりが一人で神原を空き教室に引っ張っていったまま解散となったからだ。るりは、取り巻きに来ないでと言ったらしい。

「なんだぁ、神原休み〜?」
るりがつまんなーい、と欠伸をする。
「るりるりっあの後何したの!?」
「見たい?写真。」
「見たい見たい!!!」
いいわよ、と笑い、るりはスマホをいじる。私は少し、少し見たかったけれど、取り巻きたちが邪魔で見ることができなかった。
「わーっヤバ!!」
「これるり一人でやったの!?すっげー」
「アハハ、すっごく楽しかったよ。神原も楽しんでくれてたのに…つまんないの。」
スッとるりの瞳から光が失われ、それに気付いた取り巻きはワタワタとご機嫌を取る。

「──あ〜あ、ほんとにつまんないなぁ。玩具ってさぁ、遊ぶ時は楽しいけど、いつか壊れちゃうよね。」
るりは一人で喋り続ける。
「昨日もね、神原すぐ狂っちゃって。でも、あの様はなかなか綺麗だった」
「神原もすぐ気付くと思うの。私たちに逆らったらどうなるか…アハハッ、明日はきっと神原来るから、そしたらまたみんなで遊んであげようね?」
るりがこちらを向き、私たちは笑顔を作って頷く。神原沙緖里は…きっと、相当るりを怒らせた。

今まで、るりが「いじめ」に自ら手を染めたことなどなかったから。

Re: 天国と地獄 ( No.9 )
日時: 2016/10/05 22:27
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

標的──…言い改め、神原が来ないといじめる相手がいない。るりは不機嫌だった。
「あ〜もう!!なんで神原休むの−、腹立つ」
「るりるり落ち着いて〜!!!」
「余計なこと言うようで悪いけど、明日も来るかわからなくない?神原のヤツ」
取り巻きの一人の言葉に、るりは飛び跳ねながら言った。
「そうだ!脅そうよ!!」

昨日るりが撮った、神原の「ハズカシイ写真」がLINEによってクラス全員の手に渡る。それを確認するとるりは声を張った。
「みんなちゃんと文章打ったー?じゃあこれから一緒のタイミングで神原にLINEするよー、せーのっ」
るりのかけ声に合わせ、全員が一斉に神原へLINEを送信した。
『神原、明日も休んだら、この写真ネットに晒してやる。風邪でもなんでも、絶対来いよ』
ハズカシイ写真と共に。

Re: 天国と地獄 ( No.10 )
日時: 2016/10/06 06:44
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

──目が冷めると、体のあちこちがズキズキと痛む。その痛みを我慢し、私はスマホの電源を入れた。

私の名前は神原沙緖里。昨日、るりの「奴隷選挙」によって、いじめの標的になった。
媚び売ってるつもりなんてなかったんだけどなぁ。ただ、るりが好きだったから、ついていこうと思っただけなのに…。

すると、その瞬間LINEの通知が一斉に押し寄せてくる。
「え、な、なに…」
開いてみると、クラスのみんなからだった。みんな同じメッセージ、そして──…。
「これ、昨日の私…」
メッセージには、『神原、明日も休んだら、この写真ネットに晒してやる。風邪でもなんでも、絶対来いよ』と書かれていた。
私は今日学校を休んだ。るりに会うのが怖かったし、体中痛い。そんな状態であんな地獄に行くのは嫌だった。

絶対に休むな──文面から、強い憎しみが表れているような気がした。きっとこの文章を考えたのはるりだろう。
その時、るりからLINEが来る。
『神原さん、みんなのLINEは届いた?
 あなたの写真、みんなの手元にあるから
 だから、私たちに逆らっても無駄だよ^^』
既読をつけてしまった以上仕方ないと思い、「わかった」とだけ送る。



もう、学校めんどくさい。
どっか違うとこに行きたい。
誰も私のこと知らない場所で、
人生をやりなおしたい。

Re: 天国と地獄 ( No.11 )
日時: 2016/10/06 07:04
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

次の日になり、教室に入ると神原沙緖里はいた。
相変わらず蹴られている。

「なんで昨日休んだわけ?」
「るりがどんだけ悲しんだかわかってんの〜?」
「ごっごめんなさいごめんなさい…」
呪文のように何度も「ごめんなさい」を繰り返す神原を、るりが踏みつける。そして言い放った。
「神原、今日の放課後、暇?」

────

「神原ーっいくよー」
るりの声が聞こえる。全身の震えが止まらない。私はこれから何をされるのだろうか。
「は…はい」
浮かない気分のまま、カバンを背負ってるり達についていく。るりの取り巻き2人、るり、そして私という、至って少人数だった。
私もよく行くファッションブランドのお店の前でるり足を止める。
「神原、あのカーディガン素敵じゃない?」
「あっはい!」
「あれ欲しくてね。買ってくれない?お金持ってるでしょう」
「えっあっ…」
財布を確認すると2000円しか入っていなかった。
確かあのカーディガンは3700円…お金が足りない。
「ごめん…足りないです」
「そう」
残念そうにため息をついたるりだったが、何かを思いついたのかパアッと顔を明るくする。
「お金ないんでしょう?なら盗めばいいじゃない」
盗む?…それは、
「万引きしてきなさいよ」

Re: 天国と地獄 ( No.12 )
日時: 2016/10/07 23:23
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

明らかに怯えながら店に入っていく神原沙緖里を見ていると、笑いが止まらない。
私は本郷るり。1年A組の、女王。
自分で言うのもなんだけれど私は綺麗だし、正直こんな下衆共と勉強なんてアホらしかった。
だから私はこの遊びを始めた。そこまでドハデなことをしなければ先生は何も言わないし、そもそも言えるわけがない。私のお父様を誰だと思ってるの?学校長なんかより、ずうっとずうっと偉いんだから。

まあつまり、こんな学校で私が暴れたところで誰も何も文句は言えない。それどころか、1年A組の生徒以外は本当の私を知らないものだから、いつも憧れの目を向けられる。
そんな人達に、私の本性がバレたらどうなるかしら?貶す?見下す?罵る?
そんなのバレたところで問題ないわ。この街に私の敵はいないんだから。
担任すらもこの「奴隷選挙」を知らない。いじめがあるとはうすうす気付かれているものの、まさか私が犯人だとは思われていないみたい。ほんと、教師って無能。

今回のターゲットは神原沙緖里。別に、特別コイツに腹を立ててるわけでもなければ心の底から憎んでいるわけでもない。クラスの人達は私が相当怒っていると勘違いしているみたいだけど、そんなことない。ただ、私もたまには遊びたかっただけ。

神原沙緖里はただの玩具。あんなヤツに感情など抱くわけがない。


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