複雑・ファジー小説
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- キリフダ
- 日時: 2011/09/09 18:39
- 名前: モンブラン (ID: izFlvzlp)
『近未来神話謎解きアクション』、始動!((
どうも、モンブランです。
この度コメディ・ライト板から、この板に移行して来ました。
プロローグ・人物紹介に若干の修正を加えた後、更新します。
◆注意事項◆
・複数並行小説ですので、更新が滞ることが多々あるかと思われます。そんな時は生温かい目で見守ってやってください(作者がMという訳ではありませんのであしからず……)
・文章、設定など、厨二臭全開となる可能性が非常に高いです。そんな時も生温かいm(ry
これからもよろしくお願いします。
プロローグ>>1
登場人物・用語>>2
第一幕『ソロモン七二柱編』
第一話『依頼』>>3
第二話『捜索』>>4
第三話『もうひとつの依頼、ほんとうの依頼』>>5
第四話『ソロモンコロシアム』>>6
第五話『始動』>>7
第六話『結託』>>8
第七話『鬼』>>9
第八話『動向』>>10
第九話『発信源』>>11
第十話『柱人』>>12
十一話『奇妙な惨劇』>>13
感想コメ募集してます♪
- Re: キリフダ ( No.4 )
- 日時: 2011/05/03 20:46
- 名前: モンブラン (ID: z2nqgfVA)
第二話『捜索』
次の日、朱炎から三人についての情報が届いた。
三人の住所と生年月日、それから頻繁に訪れる場所が書かれていた。
とりあえず、青草蓮の捜索から始める事にする。
調査開始からものの数十分で、彼は見つかった。頻繁に訪れるという公園で、ご丁寧にベンチに座っている。
確認のため、といっても奇抜な格好なのでそうする必要も無いのだが……話しかけて見る。
「君の名前、もしかして青草蓮っていう?」
「そうだけど、………ああ、焔が言って…・・・・・・いや、なんでもないや。」
何か言いかけたが、すぐに口をふさいだ。無理に聞き出そうとしてもきっと話さないだろう。
それにしても、朱炎は本当に彼の事を探していたんだろうか。
彼、青草蓮は現在十四歳。とはいってもその年齢よりかなり若く見える。俗に言うショタっ子というタイプの人間だろうか。
住所は、郊外の小さなアパート。他の二人が同じ住所であるところを見ると、恐らくこの三人と朱炎は同居をしているとみられる。
続いて、白金鋼の捜索を行う。
彼女は東京某所のメイド喫茶で働いているらしく、早速その店舗に足を運ぶ。
店員に彼女の事を話すと、数分後彼女とおぼしき人物がこちらにやってきた。
写真で見たとおり髪は真っ白で、どうやらかつらなどではないようだ。また写真ではあまり解らなかったが、こうして近くで見るとかなり胸が大きい。
「あら、貴方が指名してくれた方?」
どうやら仕事と間違えているようだが、人探しの依頼を受けた旨を話すと納得したようだ。そのまま俺は店を出ようとしたが、彼女が呼びとめる。
まさか人生初のキスをこんな形でするとは考えもしなかった。
彼女は振り返り様にいきなり抱きつき、そのまま口付けをしてきたのである。
俺は彼女を思い切り突き放すと、その顔をじっと見つめた。
「あれ?私が“こういうの”だって焔から聞いてないの?」
きょとんとした表情。どうやら嘘はついていないようだ。
「私ね〜、キス魔なんだよね〜♪。あとバイセクシャル☆」
唖然とした。
多分この時の俺の顔は真っ赤だったのだろうが、恥ずかしさよりも驚きの方が圧倒的に大きい。俺はその足で、残る一人……玄雪雹の捜索に向かう。
彼は、いつも自宅の書斎で読書をしているらしい。恐らく彼もそこにいるのだろうと考え、電車を乗り継ぎ彼らの住む家に向かう。
朱炎から借りた合い鍵を使い、中に入る。階段を上り右に曲がると、その書斎に着いた。
ドアを押してみる。が、開かない。
鍵がかかっている様子は無いが、押しても引いても開かない。
スライド式かと思い左右に押してみたが、開かない。
もしやここに来て何かやばい事になっているのか、と考えたが、その答えはすぐに出た。
ドアが開き、中から和装の男が出てきたのである。
書斎の扉の周りには氷が落ちていたが、彼はそれを気にするでもなく通り過ぎる。
「君、焔が呼んだ探偵だよね?僕が最後だと思うんだけど。」
思わず振り向く。
まるで俺の今までの行動を見ていたかのように。振り向きもせず、瞬き一つせず、彼はそう言った。
「それじゃあ、僕もちゃんと居たって事を伝えておいてよ。」
成程、僕『も』か……。
「そうかい、じゃあそうしておくよ。」
事務所に戻ると、朱炎が待っていた。
ソファーに寝転んで、近くの自販機で買ったのであろう缶コーヒーを飲んでいる。
「全員無事だったよ。」
「ああ、そうだろうな。」
予想通り、とでも言いたそうな口調で朱炎はそう言った。
第二話『捜索』 終
- Re: キリフダ ( No.5 )
- 日時: 2011/05/04 20:44
- 名前: モンブラン (ID: z2nqgfVA)
第三話『もうひとつの依頼、ほんとうの依頼』
三人の居場所を伝えると、朱炎は満足そうに微笑む。
「で、金はいくらかかる?」
「要らない。」
俺は首を横に振る。
「……何が目的だ?」
その言葉を聞いた朱炎は肩をあげ、腕を左右に広げる。「解らない」というジェスチャーのようだ。
「俺はただ人が居なくなったから探偵に探してほしいと頼みに来ただけだ。何もおかしいところは無いだろ?」
「そうじゃない。依頼してきたまでは良かった。でも三人とも公園やらメイド喫茶やら家の書斎やら、ちょっと探せばすぐ見つかる所にしかいなかった。しかも玄雪雹は「僕もちゃんといたって伝えてくれ」と言ったんだぞ?何を企んでる?」
朱炎はしばし下を向くと天井を見て、大声で笑い出す。
「ハハハハハハ!!流石探偵だよ、君に依頼して良かった!もう出てきていーぞ、おめーら!」
そう言い終わらない内に、物陰から先程会った三人が出てくる。
玄雪が文霧の前に立ち、一礼する。
「文霧正治さん、我々の余興に付き合って頂きありがとうございます。もうひとつ依頼をしてもよろしいでしょうか?」
余興と言われれば確かにそうかもしれない。最も次の依頼は真面目なコトなのだろう。
「ああ、よろしく。」
玄雪が朱炎の方を向くと、朱炎が話し始める。
「二日後、この国の離島であるゲームが行われる。俺たちと共にそのゲームに参加して欲しい。」
「ゲーム?……まあいいさ。報酬はどうなるんだい?」
朱炎は不敵な笑みを浮かべ、口を開く。
「十五年前に四国と本州間の海峡に架けられた橋で起こった死亡事故『瀬戸大橋乗用車転落事故』に関する、我々の持ち得る全情報を提供しよう。」
刹那、文霧の顔が強張る。膝は震え、目が見開かれる。視線が定まらない。冷や汗が頬を伝う。
突如現れた嵐のような頭痛に耐えきれず、俺の意識は精神の底に沈んでいった。
意識が戻った時、俺はソファーに横たわっていた。額に濡れタオルが置かれている。
起きあがると、朱炎がすっとんきょうな声で言う。
「お、息を吹き返したぞ!」
「何言ってるのよ、あんた。気絶してただけでしょ?」
すぐさま白金がツッコミを入れた。傍から見るとなんとなく夫婦漫才のようにも見える。
「で、大丈夫かい?」
「……ああ、大丈夫。まだ頭はくらくらするけどな。」
また気絶すると困るので、ソファーに座っておく事にした。
「『瀬戸大橋乗用車転落事故』。対向車線から乗り出して来た大型トラックと乗用車が激突、乗用車は海へ落下し、乗っていた家族は男児一人を除いて全員死亡………あんたが唯一の生存者だったからな。当時は結構な有名人だったろ?」
朱炎は簡単に言ってくれるが、正直この“発作”はかなりきつい。事故の後数年はほぼ毎日起きていたし、今でも思い出す度にこうなる。
「あの事故は謎が多いことでも知られてるしなぁ……多分、当事者のあんたでも知らない情報がてんこもりだと思うぜ?どうだ、この話乗らないかい?」
確かに……あの時の情報隠蔽は酷かった。もしもそれに関する情報を持っているとすれば、あるいは…………………。
不敵な笑みを浮かべ、俺は朱炎を見つめる。
「了解した、引き受けよう。」
第三話『もうひとつの依頼、ほんとうの依頼』 終
- Re: キリフダ ( No.6 )
- 日時: 2011/05/08 23:36
- 名前: モンブラン (ID: Oof0JpPa)
第四話『ソロモンコロシアム』
それから二日後、俺達は“ゲーム”の会場だという島に来た。
周囲数キロメートル程の島で、深い森に覆われている。港こそあるものの民家は見当たらず、どうやら無人島のようだ。
夕暮れに包まれた港に、船が接岸した。船から降りると、中世の舞踏会で身につけるような仮面の男女に連れられ、真っ白の卵のような形状のホールに着いた。
中に入ろうとすると、ネームプレートと番号の書かれた板を渡される。番号はランダムなようで、朱炎は08番、青草は39、白金は66、俺は72、玄雪は20番だった。
ホールには既に何十人も集まっており、俺達が入るとこれまた蝶のような仮面をつけた女性が出てきた。司会を務めるようで、どうやら俺達が最後に到着したらしい。
「皆様、このたびはこの“ソロモンコロシアム”会場に集まって頂き誠にありがとうございます。皆さんにお渡しした番号の書かれた板の裏面をご覧ください。」
指示の通りに裏を見てみると、そこには“裁定者『アンドロマリウス』”と書かれている。
朱炎の札には“狩人『バルバドス』”、青草は“建築家『マルファス』”、白金は“騎士『キマリス』”、玄雪は“魔王『ピュルサン』”だった。
「そこに書かれているのは、貴方が使役できる『堕天使』の名前です。このゲームでは、そこに書かれた堕天使の力をあくまで擬似的な物ですが使うことができます。」
よく見ると、大きな文字の下にうっすらと小さな文字が見える。この堕天使の紹介文なのだろう、『罪を犯した者を裁く堕天使』と書かれている。
そこから長々とした説明が続く。
このゲームの要点を纏めると、下のようになる。
①ゲームは全てこの島の中で行われる。
②島中に小型の隠しカメラが取り付けられており、このホールのプロジェクターで参加者の動きが確認できる。
③それぞれのゲームで手に入れたポイント数を競う。
④カードに書かれた堕天使により、ゲームでの損益が生まれる。例えば01番の“覇王『バエル』”は、全ゲーム中で一度だけポイントを二倍にすることができる。但し全てにおいて得をするわけでもなく、時にはマイナスに働くこともある。
⑤各堕天使の情報は、仮面をつけた人物“サポーター”に聞けば教えてもらえる。
⑥ゲームに参加する者の中でチームを組むことは自由。
⑥ゲームのルールを破ると罰則が与えられる。
⑦このホールの地下には宿泊施設が備えられている。参加者は自由に利用してよい。
⑧ゲームから脱落した者は、この島の港から船で送り返される。
説明が終わると司会者が男性に変わる。早速ゲームの発表が行われるようだ。
「それでは第一のゲームを発表致します。第一ゲームは……!!」
その場に居る全員が固唾を飲んで司会者を見つめる。
「“鬼ごっこ”です!」
鬼ごっこ。そう、誰もが一度はやったことがあるであろう、鬼ごっこだ。
「範囲はこの島の全域でございます。“鬼”は島を巡回し、参加者を捕まえます。彼らは皆『鬼』と書かれた仮面を身につけておりますので、すぐに見分けがつくと思われます。捕まった方は即脱落となりますのでご注意下さい。」
基本的なルールは普通の鬼ごっこと同じようだ。
しかし、次のルールは圧倒的に違っていた。
「参加者の皆さんには、一日おきに予め携帯食料と水、そしてこの島の地図をお渡しします。時間は午前9時から夕方5時までの八時間行われ、昼食は各自で取って頂く形となります。」
『一日おきに』という言葉が使われているところを見ると、どうやらこのゲームは何日か行われ、サバイバル的な要素も絡んでくるようだ。特に水は計画的に利用しなければならないだろう。
「ゲームが終了するのは、二日以上誰も鬼に捕まらなかった場合と、現在集まって頂いた方々七十二名の三分の一、二十四名が脱落した場合となります。また、ゲームをクリアした方全員に、50ポイントが与えられます。ゲームは明日開始されますので、今日は地下の宿泊施設でごゆっくりお過ごしください。」
そう言い終えると男性はステージから降りる。
とりあえず、地下の宿泊施設とやらに行ってみるとしよう。
第四話『ソロモンコロシアム』 終
p.s.重要なことを書き忘れていたので、修正しました;
- Re: キリフダ ( No.7 )
- 日時: 2011/05/22 20:25
- 名前: モンブラン (ID: Oof0JpPa)
第五話『始動』
地下は個室に分かれており、それぞれに洗面所と広いバスルームが設置されていた。
食堂もあるようだが、恐らく今日は使わないだろう。
一通り見て回り、ホールを出て港へ足を進める。
この島は、正に『絶海の孤島』であった。
真っ暗になった空と海には、水平線以外の物は全く見えない。
さざ波の音のみが響き渡る海岸は真っ白で、まるで淡く光っているように見えた。
初夏の風が心地よくふいている。
次の日、食事を終えるとホール一階に行く。現在八時三十分なので、もうすぐ鬼ごっこがはじまるだろう。
他の四人と合流して少し経つと、司会者と思われる男性がステージに立つ。
「皆様、おはようございます。私はこのゲームのメインサポーターを務めさせて頂きます、ワラキアと申す者です。以後お見知り置きを。」
お決まりの挨拶を終えると、追加ルールとやらの説明に入る。
鬼はゲーム開始の10分後に動き出す、制限時間が過ぎるとサポーターが参加者を迎えに行く、暴力行為は禁止、堕天使の能力を使いたいときは板を掲げてその堕天使の名前を言えばいい、とのことだ。
「それでは、ソロモンコロシアム第一回戦“鬼ごっこ”、スタートです!」
食料や水、地図は全て背負うタイプのリュックに入っていた。
水は500mlのペットボトル二本。食料は乾パン一缶とサンドイッチが五切れ。合わせると結構な重さだ。肩から掛けるタイプのリュックだったらまず走れないだろう。
地図には、この島の全体が描かれている。
俺たちのいるホールの北と西には崖があり、島の中心辺りには廃村がある。この絶海の孤島に村があるとなると、地下水があったのだろうか。
島の殆どは森に覆われているが、いざ入って見ると陽の光が差し込み明るい森だった。視界が不明瞭でないのはありがたい。
森の中を五人で歩いていると、上空から大きな音が聞こえる。
見上げれば、空には大きなヘリコプターがホバリングをしている。
どうしてこんな場所にヘリコプターが静止しているのか、それを考える間も無く、なんとその中から人が落ちてきた。
その瞬間、ソレが何なのかが解った。ヘリコプターは鬼を乗せていたのだ。
参加者を狙ったわけではないのだろうが、俺達は運悪く鬼の降下場所のすぐ近くに来てしまったらしい。
全速力で森の中を駆け抜ける。とにかく遠くへ行かなくてはならない。
鬼は幸いこちらに気づいていないようで追って来ないので、一度ひらけた場所に出る。
「全員捕まってないよな?」
と言いつつ後ろを振り向くと、青草がいない。
「おい、青草は何処に行った?」
「「「大丈夫でしょ、あいつ飛べるし。」」」
いやちょっと待て。人が飛べるわけがないだろう。
いよいよ頭がおかしいのだろうか、そう思った矢先。
青草と思しき少年がふわふわと浮きながらこちらへやって来た。
そういえば、玄雪の家に行ったときにもドアに氷が付いていたっけ………彼らは何か変な能力でも持っているのだろうか?
「あ、そうだ。お前にはまだ俺らの事教えてなかったけか。……………教えてほしいか?」
第五話『始動』 終
- Re: キリフダ ( No.8 )
- 日時: 2011/06/12 20:52
- 名前: モンブラン (ID: Oof0JpPa)
第六話『結託』
何かは解らない。だが、彼等は何かを持っている。そういう勘のようなものが、文霧に対ししきりに警告を送っていた。
ソレを知ってしまうと、開けてはいけない箱を開けてしまうような——。
「あ、ちょっと待って。鬼来たから後で話す。」
俺の前に居た朱炎がそう言って走り出す。後ろを見れば、額に“鬼”と書かれた仮面を着けた二人組がこちらにやってくる。成程、確かに見れば解る“鬼”だ。
ひたすら、森の中を走る。重い荷物を持った相手になかなか追いつけない辺り、荷物をハンデにするつもりは主催者には無いのだろう。
だが、ここで俺はある事に気がつく。
陽光の差し込む森と言うのは、当然ながら明るい。
明るいということは、視界が良好だということだ。
そして、鬼は仮面を着けている。
つまり、このステージは参加者が鬼を見つけやすくする為だけの物ではない。無論、鬼からも参加者が見つけやすいということだ。
しかもここにたっている木々には枝が殆ど無いうえ、低木は全く生えていない。隠れる場所もそうあるわけではないので、必然的に体力勝負となってくる。
なんだか、何かが矛盾しているような……。
鬼を振り切り、俺達は地図にあった廃村に着いた。
ぼろぼろになった木造家屋がいくつも立ち並ぶ。かなり前に人が去った様だ。
ところどころ床が腐り落ちており、つんとした腐臭が鼻をつく。
玄雪が、なんだか懐かしいな、と呟く。
白金、青草も、なんだか安心したような表情を浮かべている。なんでこんなカビ臭い所でそんな表情ができるのだろう?
だが、朱炎だけは違った。
他の三人を余所に、まるで壁の向こうの何かを見ようとしているような、あるいは何もない虚構を見つめているような……。
「……おい、大丈夫か?」
「え?………ああ、平気平気。」
それに気付いた玄雪が声を掛けると、朱炎はしばし我に返った様な顔をし、いつもの表情に戻る。
すると、物陰からガサガサと音がする。
五人が身構えると、そこから参加者と思しき青年が出てきた。背はあまり高くなく、少し不健康そうな顔つきをしている。
「あんた誰?」
いきなり朱炎が聞く。何言ってんのと白金がツッコむが、その青年は朱炎の方へ進み一礼する。
「美濃竜彦。堕天使は44番“侯爵『シャックス』”。」
俺達の顔を見ると、彼は来た場所から戻ろうとする。
「ちょっと皆さん来て下さい。他の参加者も集まってます。」
表に出ると、だいぶ人が集まっている。ざっと見渡したところ、三十人ほどは居そうだ。何をするつもりなのだろう。
美濃が奥に行くと、リーダー格らしき人物が出てくる。
背の低い男だ。年齢は三十代半ばほどだろうか。笑みを湛えたその顔は、あどけない少年とも、年老いた老人のようにも見える。
「はじめまして。安部真也と申します。カードの番号は17番“ボティス”。」
低く落ち着いた、よく通る澄んだ声だ。
「こんなにたくさん人を集めて何をするつもりだ?」
「今から話します。」
安部は後ろを向き、俺達をその方向へ行かせる。
「新たに五人の方が加わりましたので、もう一度確認をします。私たちは、十人程の集団で動きます。一度に多くの視点で周りを見ることで、一人でいるときより死角をなくすことが目的です。」
成程、確かにそうすれば鬼の発見はし易くなる。だが見つかった時は……?
「ハイ、それではだいたいでいいので分かれて下さいねー。」
……何の説明も無かった。それにしても、何故こんな開けた所に鬼は来ないのだろう。
しばらくして全員が幾つかのグループに分かれると、それぞれのグループが分かれてその場から去っていく。
「なあ、この作戦、成功すると思うか?」
隣にいた玄雪が聞いてくる。
「さあね。着眼点は良いんだろうけど、やっぱり穴が有るように見える。」
「ふうん、流石幾多の修羅場を潜り抜けた探偵さんはここが違うな。」
皮肉のような口調と共に、人差し指で頭をトントンと叩く仕草をする。
「……で、お前の…“ピュルサン”の効果は何だ?」
それを聞くと、玄雪は懐に手を入れる。
「あ、それもう話そうと思ったんだけど……コレだ。」
手に持っていたのは、小さな液晶画面のある小型の機械……GPSであろう。
島の全体図の中に、幾つかの点が光っている。
第六話『結託』 終