複雑・ファジー小説
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- ジアース 〜沈んだ大陸外伝〜
- 日時: 2011/11/11 21:28
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
どうもどうもどうもどうもハネウマです。こんにちは。
ここでは「ジアース 〜沈んだ大陸〜」の外伝を書いていきたいと思います。
「沈んだ大陸」の後日談がほとんどなので、「沈んだ大陸」を読んでからこっちを読んでくださると嬉しいです。
でも用語や設定なら解説するので読んでなくても大丈夫だと思います。・・・多分
参照は毎日更新中の僕のブログです。気が向いたら覗いてやってください。
▼用語解説
ジアース:ネルア地方、ルディア地方、ラフロル地方で構成される世界
レゼラ帝国:ジアース全土を支配する国家
レゼラ帝都:レゼラの都
レゼラ城:帝都の中心部に位置する王城
魔人:魔力と呼ばれる不思議な力を持った人間
第二次魔力爆発:“勇者”と“魔王”と呼ばれる存在が引き起こした、魔力の性質が相反するものが強く衝突した時に起こった現象。希少な存在だった魔人を大量に発生させる原因となった
では物語へ。
- Re: ジアース 〜沈んだ大陸外伝〜 ( No.1 )
- 日時: 2011/11/09 22:24
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼隻眼隻腕(シムンシクレ)のリレイ 1
「この帝都で一番強い奴は誰かって?」
俺は旅装に身を包んでいた。レゼラ城を囲んだレゼラ帝都で適当な酒場に入り、その主人に挑戦的なその質問をぶつける。主人のオヤジは髭の手入れがなっていない顎を撫でて思案する。
「うーん、この前、魔人が暴走する事件があってな。その魔人は滅茶苦茶強くて地面を操って亀裂を作るとかして街を破壊してたんだが、ああ、そいつはもう逮捕されて牢獄だったな」
「逮捕?」俺は強者の匂いを嗅ぎつける。
「そうだ。チーム・シムンのリーダーがそいつとサシで戦って倒したのさ。俺はそれを見てたんだが、カッコよかったなぁ、のたうつ地面を走り抜け、迫る岩の塊を華麗に避け……」
「そいつは何者なんだ」抑えても僅かに高揚感が発言に滲み出る。
「皇帝に仕える魔人騎士さ。その中でも選りすぐりの魔人騎士集団が、チーム・シムンだ。そこの連中なら十分強いと思うぞ。腕試しなら止めときな、あんたの強さは分からんが、並大抵の奴はボコボコにされるだけ」「黙れ」
俺が求めているのは情報だけだ。あんたの推測など訊いていない。席を立つ。「おい、酒は飲まねぇのか」オヤジの言葉を無視して俺は扉を開け、木の軋む音と鈴の音を聞きながら帝都の喧騒に身を放り込む。
僕は今日も自己の鍛錬と騎士への指導でせわしい日々を送っていた。
「リーダー、今日もチームに加わりたいと志願してきた男がいるぜ」「分かった。僕が話を聞く」
最近は騎士になる人が増えてきた。何故か。あの「第二次魔力爆発」により急激に増えた魔人、その中でも戦闘に使える能力がある魔人はその能力を持て余し犯罪に走るケースが多く、それを未然に防止するため帝都の住民一人一人を検査し戦闘力のある魔人を騎士として採用し生活を優遇しているためだ。帝都の人口は多く、検査には非常に時間がかかるが、もう少しでそれが完遂される。今よりあと少し、騎士が増えるだろう。
僕がリーダーを務めるチーム・シムンは、高レベルな魔人騎士をかかえている。人数は僕を入れて七人。人数は少ないものの、一騎当千、並の騎士より遥かに強いと認知されている。シビやアレンとロゼッタもチーム・シムンの一員だ。
僕はそのリーダーだが、実は能力を持たないただの剣士だ。だが上の人間は僕に人望があると思っているらしく、僕をリーダーに据えた。僕は全盛期と比べて力は遥かに劣る上、左目は失明しており左腕が無い。それでもまだ剣術には自信がある、が、リーダーなんて僕には荷が重過ぎると最近は感じている。
いや、荷が重過ぎるという思いは当初からあった。そのため、騎士達には僕と会話する時に丁寧語を使わないようにと伝えてある。リーダーとはいえ、皆と同じ位置に立って話がしたいから、というのもあるが一番の理由は「照れくさいから」だ。
そんな事を考えながら面接するための兵営に足を運ぶ。
俺は端から言葉を交わす面接などする気は無かった。
チーム・シムンに入りたいという虚言を口実にし、俺は酒場のオヤジが言っていたリーダーを呼び出した。
そこで俺は拍子抜けする。
「こんにちは。待たせた。あ、丁寧語とか使わなくて良いから、気軽に話して」
これが魔人騎士の選りすぐりのチーム・シムンのリーダー? 随分と優男じゃねぇか……。傷のある左目がワイルドさを醸し出してはいるが、それ以上に眩しい笑顔が見る者の警戒心を解く。緑のさらっとした髪に、青く澄んだ瞳。上品な性格がその表情から見て取れる。
「『チーム・シムン』か……。あんたの左目を見て思い出した。『シムン』は古代ヒラル語で『隻眼』の意味だったな」
「御名答。立ったままで申し訳ないけど、面接を始める。まずは」「待った」ここでストップをかける。
「面接もいいが、まずは俺の実力を見てからにしねぇか? どうせ最後は戦いで決めるんだろ?」思わず顔がにやつく。戦いは俺の大好物だ。
「……まぁ、それでもいいか。じゃあ、木刀を用意する」「いや、真剣でやろうぜ」
リーダーはうろたえる。ハハッ、真剣での勝負は怖いってか?
「わかった、ただ、僕には木刀を使わせてもらえないか」ああ?
「何言ってんだ、殺伐とした、生きるか死ぬかの瀬戸際を駆ける真剣同士の勝負ってのがイイんだろ。生死の境を体感しながらの剣戟、それが楽しいんじゃねぇか。あんたリーダーなんだろ? 最強の魔人騎士集団のよ。それならそれなりにもっと俺を楽しませてくれよ。俺は戦いを限界まで楽しみてぇんだ」
まくし立てた。リーダーはぱちくり俺を見る。笑顔は既に消えていて、俺を見つめる右目は微動だにしない。
しばらくの沈黙の後、リーダーはこう言った。
「駄目。若者に一生の後悔をさせるわけにはいかないから」
その時俺はぶち切れ寸前の表情だっただろう。
- Re: ジアース 〜沈んだ大陸外伝〜 ( No.2 )
- 日時: 2011/11/09 22:23
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼隻眼隻腕(シムンシクレ)のリレイ 2
俺とリーダーはそれぞれの得物を持って対峙する。勿論俺の武器は真剣だ。
「あんたの武器が木刀だからといって手加減する気はないからな」「こっちだって手加減される気はない。本気で来い」
動きやすい服に着替えたリーダーには、左腕が無い事が分かる。「隻眼かつ隻腕かよ。ハンデありすぎてつまらねぇ戦いになりそうだ」
俺の挑発を無視し、リーダーは木刀を構える。「きみの名前を聞いていなかった。名乗って」
「俺はヒューゼン。あんたも名乗れよ。それを戦闘開始の合図とする」
「隻眼で隻腕を意味する古代ヒラル語に僕の名前をくっつけたもの、それが僕の異名」リーダーは言う。
「『シムンシクレのリレイ』」
ざわっ。
リーダー、リレイの体から放たれる底知れぬ殺気。その殺気はあらゆる不吉な事象が発生する可能性を孕んでおり、思わず後ずさり身を震わす。こいつ尋常じゃない、と俺の全ての細胞が告げている。なんだこれは……こいつ本当に人間か!?
瞬時に間合いを詰められ、殺される! そう思った時、俺の持つ剣が弧を描いて吹き飛び遠くの地に刺さる。木刀で剣が弾かれた事に気付き俺は慌てふためく。
「どう?」リレイは口元だけに笑みを作る。「ハンデがあっても『つまらねぇ戦い』にしない自信はあるつもりだけど?」
「なるほどな……」俺は遠くの地面に突き刺さった剣の方へにじり寄りながら情報を整理する。「あんた、前皇帝を倒したっつー勇者か」
「能力はもう失ったけどね」俺はその言葉に衝撃を受ける。先程の殺気、あれは能力による幻術の類ではないという事だ。能力なしでそこまで強いのか。畏怖の念を抱く。最強の魔人騎士集団、そのリーダーだという事に俺は深く納得した。
「正直舐めてたぜ」俺は思わずにやつく。強者と出会えて、戦える事、それがなんと嬉しい事か。「全身全霊でいく。じゃなきゃ、あんたに失礼だからな」
能力を発動する。
地面が砕ける音とともに砂ぼこりがもうもうとまき上がり、僕の視界を遮断する。かつての能力さえあれば、こんな砂ぼこり吹き飛ばせるのにな。そう思いながら僕は神経を研ぎ澄ます。
微妙な砂ぼこりの動きを察知し、僕は飛んできた何かを避け続ける。木が砕ける音が聞こえる。恐らくヒューゼンはこちらが見えていない。あてずっぽうに攻撃を加えているのだろう、僕を狙っているとは思えない程にその遠距離攻撃は乱雑に放たれていた。
砂ぼこりが吹き飛ばされ、僕は木造の兵営の壁が直径一メートル程の穴だらけになっているのを見る。ヒューゼンを見ると、自らの剣を右手に取り戻していた。
「衝撃波を発生させる能力?」「当たりだ」ヒューゼンはそう言って左手をこちらに向ける。衝撃波で空間が歪むのを見た刹那、僕は頭をひょいと傾け衝撃波をかわす。
先程の乱雑に放たれた衝撃波、あれは恐らく僕に当てるというよりもその威力を誇示して僕の動揺を誘うためのものだろう。でも残念、僕はいくつもの死線をくぐり抜けてきた。そんな事でうろたえるほど肝は細くないし大体当たらなければダメージはない。
左手から繰り出される数発の衝撃波を難なくかわした僕は、「そろそろ行くよ!」ヒューゼンに突進する。殺気を放った途端、ヒューゼンが再び動じるのがわかる。緊張で硬くした体で繰り出す攻撃をかわす事など、造作も無いことだった。
右手を打ち、剣を落とさせた後、首に木刀をちょん、と当てる。「僕の勝ち、かな」
「甘い事言ってんじゃねぇよ」ヒューゼンが引きつった笑いを浮かべる。「俺は意識の続く限り降参などと軟弱な言葉を口にする事はない」
「素晴らしいモットー」僕は胸に当てられたヒューゼンの左手に気付いていた。
「俺の勝ちだ」
衝撃!
俺は質素な硬いベッドに寝かされているのに気が付いた。頭の後ろに鈍い痛みが生じている。
上体を起こすと、白衣を着たいかにも医者といった風貌の男がこちらに気付き、眼鏡をくいっと上げた。「ヒューゼン君、大丈夫かね? 呼吸などに影響はないかね? 後頭部に打撃を受けたらしいじゃないか」
後頭部に……。そう、俺が勝ちを確信した瞬間、リレイは俺の視界から消えた。そして頭に衝撃が走った気がする。直後の記憶はない。
ゼロ距離で衝撃波を放ったはずなのに……かわされたのか……。
「ハハ……」笑えるぜ。「ハハハハハハッ!」そうか、このジアースには俺より遥かに強い奴もいるんだ! 俺は能力を得てから今まで負け知らずだった。旅を続けるうち、途方もない難敵に出くわした事もあった。だがそれらの全ての上をゆく存在、リレイ。
まだまだ俺は、未熟者という事だな。
「おっさん」「何だね? あ、それと、君の意識が戻ったら会いたいとリレイ君が言っていたよ」「その必要はねぇさ。いつかまた必ず、会いにくる」俺はベッドから出る。
「ちょっと、君! まだ君は休むべきだ」「少々くらくらするが、どうってことねぇよ。世話んなった。じゃあな」
俺は医者の制止などどこ吹く風、完全に無視してこの……病院か? 病院から抜け出した。
目的地は、とりあえず、強い奴のいるところだ!
結局、ヒューゼンとはあれから会えずじまいに終わった。
「結構見所のある人だったんだけど」「だな。チーム・シムンには入れなくとも、他の騎士よりは断然強そうだった」
「何だシャルル、見てたの」「まぁなリレイ。しかしあんたもすげぇよ。ほんの少しだがあんたの敗北を見ることになるかとひやりとしたぜ」
「ゼロ距離で衝撃波撃たれそうになった時か。あれは正直僕も頑張ったと思う」僕は手をふらふらさせる。
「何言ってんだ、あんなの楽勝だったろ」「そんな事ない。あれに戦慄してつい本気半分で後頭部殴っちゃったから」
もし真剣だったら斬ってしまっていたかもしれない。それほどにヒューゼンは強かった。
「まぁ、ヒューゼンのようなつわものが騎士になってくれる事を祈る」
チーム・シムンのシャルルと別れ、今日も僕は自己を磨き続ける。
いつか再び現れるであろう、挑戦者のためにも。
- Re: ジアース 〜沈んだ大陸外伝〜 ( No.3 )
- 日時: 2011/11/10 22:48
- 名前: ハネウマ ◆N.J./4eRbo (ID: sSCO5mTq)
- 参照: http://soysauce2010.blog82.fc2.com/
▼ヘルガのふるさと 1
私は怒っていた。
ガルト族。一般的に拝魔の一族と呼ばれるその一族は魔王の復活という大事件を引き起こした。しかも恐らくだけれど、一族はそれを「大した事ではない」と認識している。何故なら何か得体の知れないものを「魔呼びの儀式」によって召喚するのは日常茶飯事、とまでは行かないが、何度も繰り返しているから。
もう一つ「大した事ではない」と認識していだろうという推測の理由を挙げるとすれば、ガルト族はガルト島から見て外からやってくる人間を拒み、島から出てゆく人間を引き止めているから。つまり、ジアース全体の情報は流れてこないという事だ。
一族の一員として、私は憤慨していた。魔王さえ現れなければコト達は死なずに済んだんだ。責任は一族の長老にある。何故魔王の封印を解いたのか問い詰める。そして、一族の因習を根本から否定し覆す。それが私の使命。
私がそんな使命に目覚めさせられたのは魔王、いや「組織」との戦いで失われたものの大きさに、ガルト族としての責任を感じたからだ。
それだけではない。「ヘルガ、また旅にでるんだろう? だったら、拝魔の一族を止めてきてくれないか。また今回の時のような悲劇を繰り返すわけにはいかないから」とはリレイの言葉だ。他の仲間もそれに同意したから、私は今こうしてネルア地方の最西端の港村を歩いている。
私の出身地であるガルト島へと出航する船はないという。漁のついでにガルト島へと連れて行ってもらおう。
「はぁ? ダメダメ。ワシらはあんな不気味な島へ行きたくはねえべさ。お断りだべ」
方言で断られたぞ、流石田舎。
さてどうしよう。ボートを一隻借りようか。
「あのーすいません」私は視界に入った木材に座っている若い男に声をかける。「ボート借りたりできるところ知りませんか?」
「俺のを貸してやってもいいけど、何をするつもり?」「ガルト島に行くつもり。私、ガルト……拝魔の一族出身なんだよ」
何故か男の目が輝いた。「マジで!? あんな不気味で妙な噂もあって誰も行きたがらない外界と遮断されて遅れてる島に行くって!?」「酷い言われようだね」
「貸すよ! というか、俺も一緒に行くよ」「何で? 今島の事を素晴らしく酷評してたじゃん」
「酷評だなんて、とんでもない!」
話を聞いてみると、彼は冒険マニアで、子供の頃から近くの洞窟などに探検しにいくのが趣味らしい。やんちゃだね。親の仕事を手伝うため田舎に縛られて生活するのに飽き飽きしているという。ガルト族は島の外からの人間を歓迎せず追い返していると知らせると、「知ってるさ! でも俺は諦めたくないんだ。きみが何とかして俺を拝魔の一族に受け入れさせてもらってくれよ」だそうだ。
「俺はカイズ。きみは?」「ヘルガだよ。よろしく」「おう! よろしくな!」
「言っておくけど、規則を破ってガルト島から抜け出した私が何を言っても説得力を伴うかは微妙だからね。期待しないでよ」「うー、期待しちゃうなーどんな島なんだろうなー」あんまり人の話を聞かない性格らしい。まぁいっか。
小さな船は小さな帆を張り風向きに従って海を滑り出す。
予想に反して私たちは熱烈な歓迎を受けた、とかだったらどんなに良かっただろう。
まぁ大方予想通りな展開だった。いや、予想よりもっと酷いと言っていい。
まず海上で漁をする船に罵倒され、港に着くもすぐに屈強な体格の男たちが複数やってきて有無を言わせず牢獄行き。もう一度言う。牢獄だよ。お先真っ暗、一筋の光も見えないよ。
隣の牢に入れられたカイズは流石に落ち込んで……「おおっ、俺牢獄なんて初めてだよー。テンション上がるぜ!」あはははは駄目だこの子。楽観的な私にも理解できない感性してるよ。
まぁでも絶望するには早いか。きっとこの後尋問が待っている、そこで誤解を解けばいい。
と考えていたら丁度牢の扉が開き「来い。話を聞かせてもらう」と出てきた男は言う。下手な真似するとこうだぞ、と牢の鉄柵を叩くのを見せ付け私を脅す。グワーンという音が響くが、正直あんまり怖くない。それになんだか叩いた男はちょっと涙目になってるよ。痛かったのかよ。
私とカイズは急かされながら階段を上り廊下を歩き——ちなみにカイズは手錠をかけられた——、ある部屋までやってきて椅子に座らされた。
「ヘルガ! 久しぶりじゃないか、この馬鹿娘!」
私は驚いた。「お父さん!? お母さんも」「二年間以上一体全体どこで何をしてたの? 私たちには何も告げないで。寂しかったのよ?」
「ジアースを旅したり、ジアースを救ったりしてた」私はボサボサの赤髪を指に絡ませながら答える。
「救ったり? まぁいい。尋問を始める」「アーベルさん! ご無沙汰してます」「おう。相変わらずちっちゃいな。で、まず聞きたいのが……」
いろいろな事を根掘り葉掘り聞かれそれに答えた。一族の島を出て行った理由は? 旅をしてジアースを隅々まで楽しみたかったから。戻ってきた理由は? 長老に魔王の事で物申すため。そこのカイズとかいう男は? 私にもよくわかりません。等。
「ルールを破り島を出て行った上によそ者を連れてのこのこと帰ってきたのには罰が必要だが、その前に」アーベルおじさんは置かれたコップを揺らし、「俺達が呼び出した闇の精霊とそれが及ぼした影響について詳しく聞こうか」
私はここぞとばかり立ち上がりアーベル尋問官を威圧……しようと思ったが立ち上がってももともと椅子が高くて足が地についてなかったので高さはあんまり変わらず威圧感は出なかった。能力のせいで成長しない体を恨む。ほらそこカイズ、笑うな!
「私はその事に関しては長老に直接伝えたいんだよ。会わせてくれないかな」「馬鹿娘、お前が長老に会えるわけないだろ」お父さんに即刻否定された。
「……この場で話すつもりはない、ということだな」とアーベルさんが確かめる。「ならば仕方あるまい……確実に事情を吐かせてやろう」
まさか、拷問? いやいやまっさかー、そんなわけうわぁ何その視線怖いよアーベルさん。
立ち上がったアーベルさんは拷問器具を持って来いと高らかに叫んだ。
というのは嘘で、「来い。長老の所に案内する」と。
力が抜けた。