複雑・ファジー小説
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- Baroque《歪》
- 日時: 2012/01/20 07:22
- 名前: 耀李 (ID: K.HEaMnc)
開演——《歪》
進行——《歪》
終焉——《歪》
歪=Baroque《バロック》
Baroqueしか無い物語に、存在価値は見出せるのでしょうか?
—【挨拶】——
色々と変な序文から初めまして、耀李(ようり)といいます。
別サイトでは別名で名乗って小説活動をしておりますが、こちらのサイトを見つけまして、「Baroque《歪》」という物語を執筆しようと思った次第です。
未熟者で駄文しか綴れませんが、どうかよろしくお願いします。
—【作品詳細】——
・ジャンルとしてはファンタジー。
・更に言うと「剣と魔法で冒険系」。
・予告も無しに流血・グロ・猟奇表現出ます。
・駄文小説。
・ト書きの精神なんぞとっくに捨てました。
・作者ただいま中二病発症中。
・更新ペースはミドリムシの歩行並み。
・六話までは半年ぐらい前に書いた文に少し修正した話なので、七話以降から文体が違うかもしれません。
作品のおおまかな詳細はこんなです。
—【作品集】——
一章
一話——「……あの女が言ったように、国王に知らせていれば死なずに済んだものを」
>>1
二話——「裏の人間御用達の情報屋リディオンと言えば、私の事だけど?」
>>3-4
三話——「誰がどんな種族であろうと、俺には関係ない。俺にとって憎むべき相手はカルドレアだけだ」
>>5
四話——この手は、復讐のためだけに汚れてきた。これからもこの手は人の血で汚れ続けるのだろう。
>>10
五話——「敵の敵は味方って言うでしょ? ここは一つ、私たちと手を組まないかい?」
>>16
—【資料館】——
登場キャラクター詳細>>
用語集>>2(最終更新:12/16)
駄目絵師耀李の徒然なる登場人物の落書き
イルス=オルフェル>>15
—【訪問者】——
・揶揄菟唖様
・
・
- Re: Baroque《歪》 ( No.1 )
- 日時: 2011/12/05 20:32
- 名前: 耀李 (ID: K.HEaMnc)
「ふーん。お前、英雄ラグスと同じ国の生まれなのか?」
「……ああ」
青年二人が隣り合い、お互いの話を聞いていた。それはほんの些細な話、お互いの生まれた国の話である。
現在、レムストラ大陸全ての国で言語が統一されたので、お互い生まれが違くとも話は可能だ。茶髪の青年は此処カルドレアで生まれ育ったのに対し、青い髪の青年はルェッチェの生まれらしい。
ルェッチェといえば、カルドレアと比べるとかなりの小国である。このレムストラ大陸の中心国家であるカルドレアと比較するのも酷な話だろうが。
そんな田舎からわざわざ、と茶髪の青年は思った。それを言えば、カルドレアの英雄であるラグス=オルフェルも出身はルェッチェなのだが。
「ルェッチェの人って体が丈夫なのか? 俺、今朝の訓練でもうへとへとだぜ……」
「まだ午前中だ、午後も休み無しで訓練だと」
「マジかよ……さすがはカルドレア王宮の騎士訓練、親父に特訓受けてたときとはわけが違うな……」
彼らはカルドレア王宮の騎士になるべく、志願した見習い騎士である。着ている鎧も真新しく、主を守るべく所持している剣の鞘にも、目新しい傷はついていなかった。
ふと、二人の目線が重なった。その先には目立つ赤髪の女性がいる。身に纏う鎧には自分達の着ている物と同じ、一輪の花をモチーフにしたカルドレアの紋章が刻まれていた。
この城にいる人間で、彼女の名前を知らぬ人はいないだろう。
「リーシア殿!」
「あら……志願兵の方かしら?」
リーシア=アイルス、カルドレア軍の中で数少ない女性騎士の一人。素早い剣捌きにも注目が行くが、何よりも彼女の美貌が名が知れる秘密だろう。
二人も一度だけ彼女の下で稽古を受けたが、厳しさの中にある優しさには惹かれる物があった。
「調子はどう?」
「はい、順調です!」
先ほどとは打って変わって、茶髪の青年はリーシアの笑みに答えている。
リーシアは彼から視線を移動させ、隣にいる青髪の青年を見た。腕甲に刻まれている我が国の紋章と、鎧の形状はまさしく見習い騎士達が使用する物である。だが、リーシアは感じていた。
幾百という戦場を潜り抜けた、修羅のような気と瞳の輝きが、その青年にはあったのだ。
「っ……あな」
た。最後の一言を言う前に、彼女は腹の激痛に気づいた。彼の顔から視線を落とし、自らの腹部を見る。全身を覆う鎧の僅かな隙間を掻い潜るように、一本の剣が刺さっていた。これはつい先日、見習いの騎士達に支給された剣だ。今ここには、見習いの騎士は二人しかいない。それに、ごく僅かな鎧の隙間に剣を通すなど、素人には出来ない芸当だろう。
目の前にいる青髪の青年の気とその剣が、一本の線で結ばれた。
「が、はぁっ!」
青髪の青年が剣を抜くと、リーシアの体はがくりと崩れ落ちた。相当深く刺さったのか、出血量はおびただしい量で、絨毯の敷いてある床にしみ込んでいく。
リーシアの肩に手を沿え、茶髪の青年が彼女の名を呼ぶ。
「リーシア殿っ! リーシア殿っ!」
「わ、たしは、いい、から……。この、事を、へい、か、に……」
例え死に際だろうと、最期まで主を守り通すのが騎士の役目。リーシアはその役目に従い、敵の存在を主へと伝えるべく、茶髪の青年伝言を託す。
その様子を、青髪の青年は口を閉ざしたまま見つめていた。
「お前……一体誰なんだよ……」
怯えの見られる声色で、茶髪の青年は青髪の青年に問いかける。
彼の答えは紡がれぬまま、リーシアの血が少しずつ床を汚していく。
先に動いたのは青髪の青年だった。青い髪を宙に揺らしながら、茶髪の青年に背を向ける。
「答えろっ!」
ついに茶髪の青年は腰にある剣を抜き、目の前にいる自分の敵へと駆け出した。
剣を振り上げ、主を守るため、仲間を守るため、青年は剣を振り落とそうとした。
一瞬、彼の体に閃光が走る。剣が鞘へと収められる音が響いた。
そして、茶髪の青年の鎧が自らの血で染まり、彼の死体は地に伏した。
「……あの女が言ったように、国王に知らせていれば死なずに済んだものを」
まだ意識の残っているリーシアの苦しむ姿を横目に、青髪の青年はその場を立ち去ろうとする。
「ま、て……あなたは、一体……」
リーシアは意識を保つのが精一杯だが、それでも力を振り絞って言葉を紡ぐ。
そんな彼女の言葉に、青年は足を止めた。
「……急所は外してあるが、あんたはどうせ死ぬだろうな。名前だけ言っておこう」
彼女の腹から流れる血は勢いを潜めている。もうじき、彼女の体から完全に血が無くなるだろう。
青年は口を開く。自分の名を言うために、言葉を発した。
「イルス=オルフェル……」
嗚呼、ファミリーネームがかの英雄ラグス=オルフェルと一緒なのは、偶然なのか否か。
- Re: Baroque《歪》 ( No.2 )
- 日時: 2012/01/20 07:28
- 名前: 耀李 (ID: K.HEaMnc)
【地名解説】
・レムストラ大陸
現在、この地球の中で最も巨大な大陸。
周辺には島国が多く見られるが、カウレアの噴火の影響か、ヒューマン以外の種族が住んでいる。
ヒューマン至上主義のため、ヒューマン以外の種を差別するのが一般的。
全部で五十ヶ国もの国でなっており、その全ての中心となる国家はアルスティン王の統べるカルドレア聖王国である。
・東レムストラ
カウレア火山より東の地域の通称。カルドレア聖王国はこちらに属している。
バロック濃度は西レムストラよりも高く、魔術に長ける人間が多い。
・西レムストラ
カウレア火山より西の地域の通称。
バロック濃度は東レムストラよりも低めだが、山地が多く、肉体的な部分に長ける人間が多い。
・カウレア火山
レムストラ大陸の中心部にある火山、カルドレア聖王国が所有している。大神カルドレアが最初に降り立った地とも言われている。
数百年前に大噴火が発生、多くの犠牲と悲劇を生み、一部の地域の環境を人間には生息不可能とした。
カルド教信者によると、大神カルドレアの怒りだと言われている。
周辺の地域は立ち入り禁止だが、最もバロック濃度が高い地域でもあるため、無謀にもこの地を訪れる人間も少なくない。
【国名解説】
・カルドレア聖王国
レムストラ大陸の中心国家。首都はルシーン。現国王はアルスティン=ドゥリ=カルドレス。
カウレア火山を所有している故か、バロック濃度が高い傾向にある。
タリンフィスの実を使っての産業が発達しており、国旗もタリンフィスの花をモチーフとしたイメージである。
・ルェッチェ国
西レムストラの小国。首都はレレシェール。現国王はオルスト=ルェッチェ。
種族戦争で危機に落ちたカルドレアを救った英雄ラグス=オルフェルの出身国。
【魔術解説】
・バロック
カウレアの噴火以来現れた謎の物質。主に気体の状態で空中に存在している。固体、液体のバロックはかなり珍しい。
人間の魔術センスを高める効果があり、あらゆる魔術の元となる物質。
カウレア火山に近いほど濃度が高くなり、カウレアの噴火が原因という説が有力だが実際は不明。
学会でもバロックの存在は無視できない存在であり、日々討論が出されている。
【種族解説】
・ヒューマン
現在、レムストラ大陸で最も数が多い人間種。
始まりの種族とも呼ばれる彼らが築いてきた文明は、多種族にも多く反映されている。
肉体的にも魔術的にも長けており、全てのバランスが良く出来ている。
・獣人
厳しい環境の中、人間が突然変異した。獣の耳と尻尾を持つ。
温度変化に強く、肉体的にも優れるが、知能はヒューマンに比べると劣る。
本能に従う種族とも呼ばれ、彼らの生活を見ると、原始的な部分が多々見られる。
・エルフ
バロックの力が人間に作用したものの成功例。耳が尖っているのが特徴。
自然の力を最も崇め、最も恐れる種族で、魔術使用の点は多種族よりも優れる。
肉体的にはヒューマンと比べると劣り、獣人とは真逆の進化を遂げた人間種。
一部種族からは魔物まがいの存在とも言われ、種族間での差別が絶えない。