複雑・ファジー小説

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ありきたりなファンタジー
日時: 2013/06/11 10:40
名前: 楓 (ID: 07aYTU12)


*目次*

 >>01-03
   序章——ありえないファンタジー
   間章——ありえない「はず」

>>04-11 第一章——君も歩けば罠にかかる
>>12-20 第二章——俗に言う「迷子」というモノ

Re: ありきたりなファンタジー ( No.13 )
日時: 2012/01/03 11:31
名前: ちぇりお (ID: ChJEPbqh)

初めまして!ちぇりおです!

ちぇりおりーおー(なんだその挨拶)

カラスに変われるお兄ちゃんか・・・なんだか移動手段に使えそうだなぁ(ぉぃ)
若返りしたおじいさんが、カラスのお兄ちゃんと少女たちにどうからんでくるのか楽しみです!

応援してます!

Re: ありきたりなファンタジー ( No.14 )
日時: 2012/01/03 21:02
名前: 楓 (ID: GU/I8Rhf)

>ちぇりおさん

ありがとうございます^^
かえでえーでー(←……。)

……完全パクりな挨拶はスルーして大丈夫ですw

はい、カラスお兄ちゃんは移動手段にはもちろん、姿の不気味さに耐えれば布団や枕にも使えます。
お値段はなんと……198円!

完全にジルの存在価値を否定しそうになったのでここでやめます。
イチキュッパはかわいそうですね。

ちぇりおさんの小説も読んでみますね♪

第二章——俗に言う「迷子」というモノ ( No.15 )
日時: 2012/01/04 09:34
名前: 楓 (ID: bW1QoTcC)

「どうしたの?」
地面に影が落ちたので、誰かが自分の顔を覗き込んだのはすぐに分かった。
里奈は腕に顔を伏せて涙をぬぐうと、顔を上げる。
とたんに、塾したリンゴのように真っ赤になった。
いつも見かける、いかにもベテランそうな中年の警察官とは違い、この警察官はかなり若い。まだ青年という感じさえする。
しかし、慣れた様子で里奈の表情をうかがっている。
警察官にしては珍しい……というか、良いのか分からないが、長めの明るい色の髪が帽子から出ている。
でも、制服からして警察官なのは間違いない。里奈の家の近くにある交番にいる見慣れた警察官とまるっきり同じだ。
胸ポケットには、いつでも仲間と連絡が取れるようにトランシーバーが入っているのが見える。
——あれで学校に連絡されたら、私は不登校になるしかない!
『二年生の佐藤里奈さんが迷子で……』と、なぜか校内放送で校舎中に響き渡る警察官の声を想像して、今度は真っ青になる里奈。


「いや、あの、違くて……」
しどろもどろに何か言おうとして、目を泳がせ、また涙目になる少女を見て、警察官は考える。
——この子、熱があるのか? 顔が真っ赤だな……。


「ごめんね、幼稚園はどこかな?」
「……?」
真っ赤な目をしているのも忘れ、里奈は警察官を見上げた。
道を聞かれているのかと思って拍子抜けしたのだ。……いや、迷子の中学生に道を聞くわけがない。
何も答えない里奈を見て、警察官は里奈のぶかぶかな制服に手をのばした。
生徒手帳を見られるんだ……。最初のページには学校の電話番号が書いてある。
——ああ、このおじさんとか学校の先生とか友達とか、みんなの記憶を消せる魔法でも使えたら良いのに!

しかし、途中、警察官の手際よく動いていた腕がぴたりと止まった。
胸章に書いてあった文字を見、里奈の顔を見、もう一度胸章を見る。
『桜木中学校 二年 佐藤里奈』
どうしたのかと里奈が聞こうとすると、警察官がははっと笑った。
「そうか、お洋服を間違えちゃったから泣いていたのか」
「……え?」
「ほら、見て見なさい。さくらぎちゅうがっこうって書いてある。これは君のお姉ちゃんのじゃないか? よく見たら君、園服にしてはぶかぶかだよ。——待ってなさい、お母さんに電話してあげるから」


第二章——俗に言う「迷子」というモノ ( No.16 )
日時: 2012/01/04 11:54
名前: 楓 (ID: bU2Az8hu)

えんぷくがぶかぶか? 制服のことだろうか。
それなら、里奈の通う桜木中学校は長いスカートと紺色のブレザーという地味な制服で有名なのだからしかたない。

——スカートが長くて悪かったね!

一瞬むっとして思わず眉をひそめていたので、頑張って作り笑いをして、警察官を見上げる。
とにかく、ここを逃げ出さなければ。考えるのはあとだ。
「いや、道は分かります。一人で帰れるんで……大丈夫です」
初めてちゃんとした受け答えができた。
心の中で胸を撫で下ろしていると、警察官が目を見開いてから、笑顔になった。
何を言われるのかと里奈が身構えると……
「君、しっかりしているねぇ。お母さんがしっかりしているんだろうな」
「はあ……」
なんだ、そんなことか。
息をとめて吐き出しての繰り返しで、だんだん息苦しくなってきた。
それでも、これまで青くなったり赤くなったり点滅信号みたいだった里奈の顔も、だんだんピンク色の頬を取り戻しつつあった。

第二章——俗に言う「迷子」というモノ ( No.17 )
日時: 2012/01/04 12:00
名前: 楓 (ID: bU2Az8hu)

「えっと、それで、ご心配をおかけしてすみません、それじゃ」
こわばっていた体に力を入れる。
なんとか立ち上がり、その場を駆け去ろうとしたのだが……。
ウエディングドレスのように後ろにのびていたスカートのすそにつまずき、前かがみに倒れた。
とっさに手をついたが、コンクリートに打ち付けたひざからは細く血が流れている。


その手を……自分の小さくて丸っこい手を見て、ようやく里奈は『一番最初に気づくべきこと』に気づいた。
一度手を見て、体を起こそうと両腕に力を入れ、また見て目をこすり、また見ては目を見開いた。
この三度見のあと、里奈はか細い悲鳴をあげることになる。


警察官はその後ろで肩をすくめると、トランシーバーに向かって言った。
「迷子の女の子がいます。幼稚園生だと思うんじゃが……ごほん、思いますが、中学校の制服を間違えて着ていて、場所は桜木町二丁目……」
しかし幸いなこと、この警察官は『わけあって』トランシーバーの使い方を心得ていなかった。
だから、自分が押しているのが通信ボタンではなくスピーカーボタンなのに気づいていない。

あたり一帯に生い茂る雑草を抜け、あたり一面にスピーカーを通した警察官の声がこだまする。
——ここでやっと、ヒーローの登場だ。
まあ、限りなく頼りないヒーローではあるが。


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