複雑・ファジー小説
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- 或る日の境界 第2話完結。
- 日時: 2012/04/08 22:19
- 名前: とある犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)
ただいま、スランプ脱出する為に頑張って書こうと気張ってます。
正式なハンネは遮犬と申します。
※所々、微妙なグロが入ったりしますので、ご注意ください。大抵は大丈夫だとは思います。描写下手なので。
【目次】
プロローグ……>>1
第1話:或る日の日常
【#1>>2 #2>>5 #3>>6 #4>>7 #5>>8】
第2話:或る日の現実
【#1>>9 #2>>10 #3>>11 #4>>12 #5>>13】
第3話:或る日の錯覚
【
- Re: 或る日の境界 ( No.1 )
- 日時: 2012/03/17 17:49
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: /HF7gcA2)
或る日の出来事にすぎなかった。
それは瞬く間もなく、ただ自然に世界は異端に包まれていった。それは、誰かが気づいたわけでもない、自然とこうなっていたという形だった。
何故そんなことが起きたのか。
それは神が望んだことなのか。それとも、人間がそれぞれに導かせた結末なのか、それとも——
そこにあるのは、ただ一つの境界に過ぎなかった。
【或る日の境界】
小さく息を吐き、荒々しくも弱々しげなその呼吸音は人知れず、自分自身で実感していた。それは心臓の鼓動とまるで同じようなもので、緊張という二文字で表すには異様な緊迫感だった。
「来るぞ! 避けろ!」
その言葉を劈くようにして耳から受け取ると、呼吸などを忘れたかのように砂だらけの地面へと飛び込み、転がった。
その一瞬、光が撒き散らされると、元から自分のいた場所が黒く焦げ痕を残し、自身の体はその勢いの如く、大きく反転して飛ばされた。目の前が真っ暗になり、何も聞こえなくなったかと思う数秒後、目が覚めたそこには銃を持った高校生ぐらいの男がこちらを見つめていた。
「大丈夫か? 手榴弾は範囲が広いからな……あいつ、回り込んで俺が倒してくるから、お前は後に続いてくれ」
男はそう言い残すと、アサルトライフルを両手で持ち、いかにも風格のあるような形で走り去っていった。
ここはオンラインゲームの世界。FPSと呼ばれるオンラインゲームのシリーズが遂にリアルに感じられるゲームとして再現された。
樋里 由一(ひざと ゆいち)である俺は、このオンラインゲームの虜になっていた。RPGとしてこういうリアルなものは既に発売はされていたが、FPSによる試みは今回が初で、このコンセレクト・ヴィコーズというゲームはまさに待ち望んでいたゲームと言えた。
ただ、このゲームが発売される当初はとんでもなく批判が多かった。人を撃つ感覚や、人を殺す感覚、そして何よりそれを現実と錯覚して事件を起こす可能性が高いとして発売がされることはまず有り得なかった。
その為、正式な精神テスト等を行い、それによって会社から取り寄せの形で購入しなければならないのでプレイヤー数もそう多くはない。だが、この実戦で戦う感覚がなんとも言えず、こうしてハマってしまっているわけだった。
HPバーのようなものはRPGのように存在はせず、ダメージを食らうとそれによる衝撃と目の前が少し赤くぼやけてくる。薄っすらと透明になっていく状態はかなり危険だということを意味している。最初はどうにもどこから敵が撃って来ているか、などということがあまり分からずにいたが、こうして慣れて見ると案外予測なども出来てとても攻略性が擽られるのか、かなり楽しい。
「……もう抜け出せないかもな」
そう呟くと、俺は手に持っていたAK47を構え、サイトの奥を見つめた。その奥には、まだこちらに気づいてはいない様子のプレイヤーの姿があった。
狙いを十分に定めると、一気に銃を唸らせた。半永久的に続く銃弾の飛び出す音、そしてそれによって伝わってくるこの反動による痺れがリアルに感じることが出来る。気づくと、相手の姿は既に回収され、血の痕のみが残っていた。
モニター代わりのようにもなっている腕時計を見ると、相手を倒した数が一つ増えている。つまり、ここの敵は倒せたということだ。敵を倒すと、ピコンッという電子音のようなものが鳴り、教えてくれるのだが集中してそれが聞こえていなかった。
こうして、俺はその日もリアルFPSオンライン、コンセレクト・ヴィコーズをやり続けるに至った。
「あぁ、疲れた」
頭に装着したヘッドギアのようなものを外してため息を一つ吐いた。ゆっくりと首を回すと、コキコキと骨の鳴る音がする。
背伸びを十分にした後、ゆっくりと椅子から立ち上がった。ゲーム中、ずっと立ち上げていたパソコンの画面には、コンセレクト・ヴィコーズと書かれたパッチエンジンが中途にタブとしてあるのみ。ゲーム自体は既に切っている為、そのタブももう必要はいらず、マウスを動かしてそのタブを消した。
コンセレクト・ヴィコーズは専用ゲーム機の他、パソコンと連動して起動させる。本当に面倒臭いことこの上ないのだが、それほど楽しめる作品になっているのは間違いなかった。実際、このところほとんど毎日これにハマり込み、寝る暇も惜しんでやっている始末を繰り返している。
辺りは綺麗に整頓されており、人気もない。たかだかアパートにいる身分だし、それにまだ学生を名乗っている立場なわけで、どうにか単身赴任の親からの銀行に届く仕送りで食っていけている。
じゃあ何故コンセレクト・ヴィコーズをやるぐらいの予算があったのかというと、実のところあるわけもない。仕送りと少しのアルバイトで補っている俺の学校生活事情の中で、こんな贅沢なこと出来やしない。ましてや、食事もままならなくなりそうな時さえもあるというのに。
——それは、或る日の出来事だった。
- Re: 或る日の境界 ( No.2 )
- 日時: 2012/03/17 03:13
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: /HF7gcA2)
その或る日、一通の小包が届いた。宛先は書いていなかったが、その謎の箱に入っていたものが——コンセレクト・ヴィコーズだった。
精神検査を受けた証拠になる正式なカードも中に用意されており、そこに貼ってあった写真は紛れも無い、俺の顔だった。
どうしてこんなものが突然、前触れもなく届いたのか不思議に思いつつも、今ではこうしてコンセレクト・ヴィコーズの魅力に唆されている。
最初は、こんなゲームがあるんだけど、自分では買えるはずもないし、特に何も思っていなかったが、実際に手に入ってみるとなると、やはり違ってくる。周りは値段か高いやら、いちいち面倒臭いとか、色々な理由で断念している人がいたりするんだと思うと、優越感さえも起きる。
ただ、俺はこうした毎日を過ごすことが日課になっている。そんな自然なようで、"不自然"な出来事に俺は何一つ気づくことがなかった。
——そう、あの"或る日"までは。
第1話:或る日の日常
世界は格段に進歩を遂げていた。技術や情報が発達し、機械なども発展を遂げて、時代は機械化学による世界として広がりつつあった。まさに世界が発展途上を成し遂げようとしていた時代の真っ盛りが今のこの時だった。
そんな時代だからこそ、リアル体感型オンラインゲーム、つまり俺の今やっているコンセレクト・ヴィコーズやその他のRPGなども進出してきている。全て、体感するというタイプが多くなってきていた。
といっても、何がどう大きく周りが変化した、ということでもなく、ただそういう発展がいつの間にか、ごく自然に当たり前のようにされてきているというだけのことだ。特に俺の生活に影響が出たか、といわれればコンセレクト・ヴィコーズぐらいしか影響なんてない。
こうした日常を暮らしながら、今日も俺はいつものように学校へと通う。一人のご飯はだんだん慣れてきたことは慣れてきたのだが、個人的に気になるのは病院で暮らしている妹の香苗のことだった。昔から病弱な香苗は、幾度となく入退院を繰り返していた。香苗と外で一緒に遊んだ、という記憶はほとんど無い。
そんな妹の様子が特に気になっていた今日は、学校の帰りにでも電話してみようかと心に決め、仕度を終えた後、家を出た。
外は気持ちのいい、晴れ模様だった。
「めぇ——んッ!!」
ドンッ、と床を蹴りだす音と一緒に道場内全体に響かせるほどの大きな声が聞こえてくる。そしてその次の瞬間、バシィンッと竹刀が撓り、相手の頭上から響かされるその反動の音は清々しく感じられるものだった。
「あぁ、やってるな」
俺がそう呟きながら入るや否や、またもや「めぇ——んッ!!」という掛け声が聞こえ、バシィンッという音もまたもや続いて聞こえてきた。
「う、うわぁあっ!」
大きく尻餅をついた大柄の男は、慌てたように面を剥ぎ取ると、乱れた息を何度もふうふうとしんどそうに吐いて、小さく「参りましたぁっ」と声を呟かせた。その声の小ささといえば、その大きな図体からは想像の出来ないような声の乏しさだった。
その男の目の前に立ち、そしてさっきから面を連発して与え続けていたその人物は男の着ている藍色の袴とは違い、白色をした袴を着て、胴下には、本荘と大きく書かれてある。その本荘と書かれてある防具を着た者がゆっくりと面をとると、その中から綺麗に形の整った少女の顔が現れた。手拭を今は頭につけているので、髪型は分からないが、うっすらと見える黒髪のうぶ毛もまた可愛く見えるのが不思議だった。
「はぁ、だらしないよ? 西城君。それでも男の子?」
「う、うぅ……そんなの、本荘と比べないでくれよ……」
ボソボソと、体格に似合わず喋る城西をひとまず聞き流し、今度は俺の方に顔を向けてきた。
「由一も、遅刻。毎回優々と遅刻するから大したものだよね」
「そう嫌味みたいなことを言うもんじゃないぞ、本荘。綺麗な顔が台無しだ」
「でも事実でしょ。嫌味として捉えるなんて……まあ、由一も大したことないね」
竹刀をまるで鞘に納めるようにしてゆっくりと左手で掴むと、本荘は俺の隣を歩いて道場から出ようと靴を履いていた。
「おいっ、どこに行くんだ?」
「何でいちいち言わないといけないの? 遅刻常習犯に教える価値なんてないよ」
手拭を取りながら、横目で俺を見つつ、本荘は言った。長い黒髪がふわりと手拭から零れ落ち、綺麗な煌きを放ちながら黒髪は長く背中の方へと伸びた。
「……西城、何かあいつ怒ってる?」
「……それ、冗談で聞いてる? それとも本気?」
「……だよなぁ」
俺は何となく納得したように、頷いた後、ため息を一つ吐いた。
これでも、俺は剣道部の副主将という意味の分からない立場にいる。さっきの本荘 櫻(ほんじょう さくら)が主将の立場にいる。
そして、今さっき話した西城 和真(さいじょう かずま)が剣道部員というわけだ。
この三人。そう、この三人しか剣道部はいない。
そもそも、剣道部はほぼ廃部に近い状態に陥っていた。前の前の年の先輩が大勢で、前の年の先輩が1,2名ぐらいしかおらず、その大勢の先輩が一気におさらばしてしまったことで前の先輩が1,2名いたのだけど、何故か理由もよく話してくれずに辞めてしまった。
その頃、俺はまだ学年も一年生で、とりあえず帰宅部として過ごし、気ままな生活を送っていたが……どうにもこうにも、本荘に上手いこと言いくるめられて二年生になった今でも剣道部でいるハメとなった。
実際、元二年生の今は三年生の人達が辞めた時点でもう廃部確定の人数だったが、何をどうやったのか、本荘はこの剣道部を継続させることに至らせた。三人しか部員がいないのに、どうやって言いくるめたのか。
それにしても、俺が言いくるめられたっていうのはあることを理由にしてのことで、本荘とはそれなりに関連がある事柄だった。
「なぁ、樋里。お前、"幼馴染"のクセして何も気を遣ってやれないのかよ」
「幼馴染って言うな。あいつも、それを拒んでるだろうしな。それに、幼馴染だから何でも分かるわけないだろ」
と、吐き捨てるように西城へと言ってやった。
先ほど、西城が言ったように、俺と本荘との関連がある事柄というのは——幼馴染というステータスだった。
なんとも使い勝手の悪いステータスで、小さい頃こそは色々遊んだりしたが、最近は口も聞かず、同じ高校に入っていたということも何となく知ったぐらいで、お互いに全然干渉し合っていなかった。それなのにも関わらず、剣道部を相続させるにおいての先生との交渉の中に、たまたま傍を通りかかっただけの俺の襟を掴んで、
「こいつ、樋里 由一も加入します!」
あまりに突然のことすぎて、忘れるに忘れられない。というか、もう一生忘れることはないだろう。早く帰ってカレーでも食おうと思っていた俺に思わぬ災害をもたらしたのだから。
そんなこんなで今現在、俺は此処にいる。適当でいいから、と言われたものの、遅刻をしたらしたでやはり諌められる。入ったからにはやはり正しく来るべきなのだろうとは思うが、どうにも納得いかない点が多すぎる為、少しでもという反発心からの行為だった。
(にしても……あいつ、あんな性格だったっけ?)
どうも難しいような、それでいて近づき難い雰囲気を身に纏っている本荘はどうにも俺の昔の印象とはかけ離れていた。向こうは俺のことを下の名前で呼んではいるが、俺が櫻、何て呼んでみると普通に無視されるどころか、冷たい目線で見られたこともある。最近の中で一番怖かった出来事なのかもしれない。
とにかく、今一度振り返ってみると、俺は結構本荘が苦手なのかもしれない。それは幼馴染とか、そういうことは関係無しに、何となくそんな感じがした。
無理矢理、といっては何だが、一応副主将を任されている立場もあるので、そんなこんな思いつつも俺はいそいそと防具を装備するのであった。
- Re: 或る日の境界 ( No.3 )
- 日時: 2012/03/17 14:49
- 名前: ホットアリス (ID: blFCHlg4)
十分読みごたえがあってスランプとは思えないです。
あ、はじめまして。ホットアリスと申します。
主人公の気持ちがすごく、スムーズに入ってきます。
応援してます。
がんばってください。かしこ。