複雑・ファジー小説

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101の日常達
日時: 2018/12/09 20:45
名前: 雷燕03 ◆bizc.dLEtA (ID: XYGrm/hO)

こんにちは。このスレッドを覗いてくださってありがとうございます。
ライトにするかこちらにするか迷いましたが、暗い話も書く予定なのでこちらに。
短編集になります。
とんでもない遅筆なので、作品によって書いた時期にだいぶ差があります。
企画などに出したものも、企画が終了した後こちらに載せています。
それでは、この物語たちが少しでも、あなたの日々の潤いになりますように。

  ■目次
  1. >>01 水色のシュシュ
  2. >>04 この町
  3. >>05 冬の雨の日
  4. >>09
  5. >>13 夏の終わりと夜の空
  6. >>14 雪を翼に
  7. >>15 幻と再会
  8. >>16 窓の向こうの景色
  9. >>17 十か月の追憶
  10. >>18 折りたたみ傘
  11. >>19 優しさの成果
  12. >>21>>22>>25 君と共に足音を
  13. >>26 黒の女
  14. >>27 イチョウ葉と革靴

Re: 101の日常達 ( No.3 )
日時: 2012/10/08 13:39
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: r6KahwXQ)  

こんにちは。コメントありがとうございます!
お褒めの言葉を頂けて嬉しいです。
しかしこれでうまくいった方と思っているので、クオリティ低めのものも多いですよ^^;
目次にある、次のやつとか。

三人称の恋愛ものというのは確かに難しそうです。
人物に共感していただけたなら光栄ですっ。
ご訪問ありがとうございました^^*

この町 ( No.4 )
日時: 2015/08/30 23:12
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: a6RsoL4B)

  この町



 私はよくこの町を歩く。近所のTSUTAYAに行って本を買ってCDを借りて、コンビニに行ってジャンプとマガジンを立ち読みして。無駄だと思うこともないことはないのだが、息抜きにはちょうど良い。たまに中学の頃の同級生に会うのも楽しいし。私の行った学校には同じ中学の人が少ないから、なかなか会うことがないのだ。

 今もそうやってぶらぶらと町を徘徊していた。どうせルートは大体決まっているのだけど。さっき読んだ、ジャンプで最近始まった新連載は長続きするだろうか。歩きながら考えるのは大体そんなどうでも良いことだ。そんなどうでもいいことを考える時間も、人生には必要だと思っている。

 そこの歩いている子供たちは、近所の仲良しさんだろうか。近くを歩いている親らしき人たちが結構若くて仲良さそうに話しているから、親同士が知り合いなのだろうか。ものすごい偏見だが、こういう若い親が子供にDQN……もといキラキラネームをつけるんだろうな。万が一私が親になっても、それだけは絶対にしまい。

 音楽好きな私には毎回近くを通るのが楽しみな家に近づいてきた。この家からいつも聞こえてくるピアノを弾いているのは、一体誰なんだろうか。私が初めてここを通った時から、近くに来ると必ず聞こえてくる。曲の合間と思われる途切れはあるのだが、それでもすぐにまた次の曲が始まる。一応私もピアノは習っているので、たまに知っている曲が聞こえてくる(大体は有名どころの曲だけれど)。凄く上手いと思う。夜は耳を澄ませば聞こえるくらいの大きさにして、24時間何時でも弾いているという噂だ。こんなにピアノの上手なニートが存在するのだろうか。

 そしてその家の横を流れる川には、草の生えた陸地部分に畑と思われる一角がある。誰かが手入れをしているところを私は見たことが無いのだが、ちゃんと野菜がなっている。川って誰の土地になるのだろうか? 勝手に畑を作って良いものなのだろうか。許可を貰うにしても、何処に貰えば良いのか分からないのだが……。

 閑話休題。赤ボールペンのインクがそろそろ無くなってきているのを思い出したので、通りかかったホームセンターに入る。


 寄るべきところには大体よったので、今度は家に向かって歩いていく。道中、籠に水泳バックや他にも色々詰め込んで自転車を走らせる少年が見えた。方向からして、海へ向かっているのだと思う。海か。友達と海水浴にでも行くんだろうな。もしかして、彼女と一緒だったりするのだろうか。だったら彼女の水着姿をこれから見るんだから胸が高鳴ってるんだろうな。

 ……公園にはえた木のそばにしゃがんでいる子供がを見つけた。ただ、しゃがみ方が少し変である。木の幹に背中を向けるのではなく、蝉の抜け殻でも見つけたのかのように幹の方を眺めている。こんなことをする少年には心当たりがあったので、公園に入ってそばにしゃがみこんでみた。顔を覗き込むと、予想通りの横顔だった。

「おーいたっくーん。話の腰折って悪いけど、今日は何話しとるん?」

 声をかけると、彼は顔を上げてこちらを向いた。

「あ、トモ兄ちゃん。んーとね……学校の友だちのこととか、さいきんこの公園によく来るいじわるカラスのこととか」

 皆にたっくんと呼ばれる彼が、植物や動物の前でしゃがみこんで「話している」のはこの町ではよく見られる光景だ。よって彼の事を知っている人は多くいるが、大抵は「ちょっと無口で変な子供」と思っているだけだ。私自身彼が本当に「話している」と信じているのか、自分でもよく分からない。でも面白いから見かける度はなしかけていたら、名前と顔を覚えてもらえた。トモ兄ちゃん、だけど。

「何そのカラス、いじめっ子なん?」
「うん。ほかのカラスにちょっかいを出したり、スズメたちを追いかけたりするの。でもシャシャが言うにはみんなと仲よくするのがにがてだから意地をはってるだけなんだって」

 彼は一緒に「お話し」をする動物や植物の全てを名前で呼ぶ。どんな膨大な数になるのか想像がつかないが、彼の頭の中には全てがインプットされているのだろう。一方人間の方には興味が薄いのか、前にクラスの人の名前を言ってもらったら片手で足りたけど。

「そっか、カラスも大変なんだねえ。それじゃ、暗くなる前に帰れよ」

 私がそう言って立ち上がると、彼は頷いてまた木……もといシャシャのほうを向き直った。彼は動物や食物と「話す」時、声と言う手段を用いない。


 家路を進むと、向こうに見るからに意気消沈した様子でとぼとぼと歩いている男子小学生がいた。……おっと失礼。よく見たら私の中3のときのクラスメートだった。つまり今は高校生のはずだ。しっかし相変わらずちっちゃいなあ。あれから背は伸びたのか?

「丸くーん!」

 私は手を振りながら彼に駆け寄った。彼はうな垂れていた首を起き上がらせてこちらを振り向く。明らかに疲れた、あるいは何か重要な心配事のある顔だ。その顔が、私を見てさらに不審げに歪む。しかしすぐに晴れた顔になった。

「あ、トモか!」
「正解。てかすぐ分かれよ」
「だってお前完全に男にしか見えねえよその格好」

 話しながら彼は笑うが、やはり何処か無理をしている感じが隠しきれていない。何かあったんだろうな。
 彼とは家が近いので、帰る方向は同じだ。彼の押す自転車とは反対側に立って、並んで歩く。家まであまり距離も無いので、話せる時間はそう長くない。私は、単刀直入に訊いてみることにした。

「浮かない顔してんなあ。何かあったのか?」
「……いや別に何も。どうしたんだよいきなり」
「意地をはるんじゃありません」
「…………」

 彼は俯いて沈黙する。

「はいはい。何、結衣と上手くいってないん?」

 彼はビクッと肩をすくませた。「……な、何で分かるんだよ」
「だって丸くんがそんなに落ち込んどるなんてそれくらいしか浮かばんよ」
「僕、中3の頃そんなに露骨に結衣のこと好きだった……?」
「うん。露骨にいちゃついては無かったけど、露骨に片思いしてた」

 さらに言えば、結衣の方も丸くんに露骨に片思いしてたけど。でも両方ピュアすぎるから、同じ高校に行ったのにまだ告って無い可能性もあるんだよな。だから言えない。

「何があったか知らんけど、それは後で紗耶にメールで聞くから良いけど」
「おい」
「とりあえずさっきみたいに意地張っとるけんそうなったんやないん?」

 彼はすねた様な顔をして沈黙した。当たりだな。純粋なくせに素直じゃないからだ。それは臆病だからだろう。きっと胸が張り裂けそうなくらい好きなのに、重いと思われたくなかったり周りに知られるのが嫌だったりで、それをきちんと伝えられていないのだろう。だから向こうも嫌われてるかもとか勘違いするんだろうな。お互い好きすぎてお互い純粋なもんだからお互いマイナス思考になる。
 まったく、キラキラしすぎなんだよお前ら。

「とりあえずトモから言えることは素直になれ、ってことだけやな」
「……自分の事自分の名前でいうのは直ってないのな」
「時と場所はわきまえるようになったよ」

 そうやって話しているうち、私の家が近づいてきた。久しぶりに丸くんと話せてよかったな、と思っているとき、丸くんのバックの中の携帯電話がメールの受信を知らせてきた。彼はそれを取り出して確認をする。携帯を開いた瞬間、「遠藤だ」と声を漏らした。遠藤とはイコール紗耶のことである。

 彼はメールを読んで何とも言えない表情をした。

「どしたん?」
「……今から龍馬の家に来いってさ」
「おお。ついて行きたいくらいやな」
「遠藤にメールして何するつもりなんか訊いてくれよー」
「もちろん訊くけど教えんよ。じゃあな!」
「おう。バイバイ」

 ちょうど分かれ道に差し掛かったので、会った時と同じく手を振って分かれた。バックから早速携帯電話を取り出してアドレス帳を開く。「さやえんどう」と登録されたアドレスにメールを送る。

『今丸くんに会ったら浮かない顔してたんやけど、何かあったん? んで今から龍馬の家で何があるん?』

 いつもと同じ白黒メールを送って、返信を待つ。きっとすぐに帰ってくるだろう。事情が複雑だったら遅くなるかもしれないけど。しかし龍馬の家で何があるのかは大体想像できる。紗耶とは考える事が同じだからな。どうせ龍馬の家に結衣がいるんだろう。

 あとで全員にメールをして心境を聞いてみよう、なんて思いながら家のドアを開けた。





山なし落ちなし。意味もn((
息抜きにのんびりと。

冬の雨の日 ( No.5 )
日時: 2012/10/14 00:23
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: MuUNITQw)

  冬の雨の日


 空は重苦しい鉛色だ。それはそのまま私の心の中に侵食してきそうで、ちょっと嫌だった。けれど冬の曇りは嫌いじゃない。晴れてるより少し暖かいから。だから出かけるなら今日にしよう。発売されて1週間近く経ってしまったCDを買いにいこう。
 制服を脱いでズボンを穿きフリースを羽織っただけだった服を着替えて、少しは外出に耐えられる格好をする。すぐ近くのTSUTAYAに行くだけだから、あんまり意気込む必要は無いのだけれど。
 財布をバッグに入れて、お気に入りの腕時計をして。
「いってきまーす」
 誰もいない家の中で大きめの声を出す。返事なんてなくていいの。儀式みたいなもんだって。
 家を出て鍵を鍵穴に刺した時、ふと手を止めた。兄は鍵を持っているだろうか? あの人結構抜けてるから、私が帰るまで制服姿で家の前に座っていたりするかもしれない。寒いだろうし、恥ずかしいだろうな。
 私は家族の中で「いつもの場所」と呼ばれる家の裏にある倉庫内に鍵を入れて自転車へ向かった。そしたら自転車の鍵は家の中だ。今「兄は結構抜けてる」なんて思ったところなのに。やっぱり兄弟だなあ……。
 どうせだから、と歩いて行くことにした。たまにはいいじゃんこういうのも。なんだかいつもと違う新鮮な気持ちになったから、いつもと違う道を通ってみようか。普段無視する曲がり角を曲がる。ちょっと回り道になるけど、それもいいじゃん。
 寒い中ひとりで見慣れない道をゆっくり歩いていると、ちょっぴり冒険してるみたいで楽しいのだけれど、ちょっと寂しくなってしまった。
 最近兄との関係がぎこちないのが気がかりなのだ。
 兄とは小さい頃から仲がよかった。……と思う。あんまり自信は無い。私が兄にべったりだっただけで、向こうは迷惑だったのかも。近頃は兄が部活で遅くまで帰ってこないこともあって、2人で話すことも減ってしまった。私は今でも兄のことが好きだから(勿論恋愛的な意味でなく)、寂しい。話しかけようにも共通の話題があんまり無いし。
「はぁ」
 物悲しくなって、ため息をつく。すると、口から白い息が見えた。これがそのまま心のわだかまりで、二酸化炭素と一緒に吐き出せたらいいのに。
 そうこうしているうちに、店の明かりが見えてきた。狭い路地から、人通りの多い道へ抜ける。あの人の歌がもうすぐ聞ける、と思うと、今までの気分も少しは晴れて楽しみだった。
「あ」
 店のちょっと手前で、ぽつぽつと雨が降り始めた。ああもうせっかく気分が良くなってきてたのに。店へ駆け込む。


 俺が家に帰ると、玄関には鍵がかかっていた。インターホンを押しても誰も出てこない。妹の自転車はあるのに。まさかまだ学校から帰ってきてないのかなと考えながら、鞄の中をあさる。……げ。この前遊びに行ったときに別のバッグへ移してそのままだっけ。
 この寒い中待ちぼうけは勘弁だ。体を探ると、胸ポケットの中にそれを見つけた。あ、朝に気付いて面倒だったんでここにつっこんだんだ。鍵を開けて家に入る。
「ただいまー」
 返事は無い。いいんだ、別に。ただの習慣だし。
 リビングには妹の学校の指定鞄が無造作に置かれていた。一度家には帰ってきたようだ。だとしたら、どこかへ出かけたのだろう。そういえばCDを買いたいと言っていたっけ。
 2階の部屋に上がって、荷物を降ろした。最近妹とあんまり話さないんだよなぁ。
 小さい頃はあいつもかわいくて俺にいつも甘えてきた。どこへでもひょこひょこついて来るもんだから確かに時には鬱陶しかったけど、そんな妹が俺だって好きだったんだ(勿論恋愛的な意味ではない)。けれどお互い大きくなって、中身の見かけだけ何となく大人に近づいて、それが恥ずかしくなったんだろうか。
 最近は俺が部活で忙しくなって、ますます溝が出来てしまった気がする。今日は珍しく部活が無かったのだけれど、向こうは知っていたかのようにいないし。いや、知っていたわけではないだろうが。
 あ、今月発売された漫画の内ひとつが売り切れててまだ買ってないんだった。部活が無い日なんて珍しいし、ちょっと出かけてこよう。
 外に出ても寒くない格好に着替えて、鞄から教科書類を取り出す。空模様は怪しいけど、自転車だから少しくらい雨が降っても大丈夫か。鞄は水を通さないし。階段を下りる。
 玄関で靴を履いているとき、ふと動きを止めた。妹は、傘を持ってるだろうか。朝の天気予報では雨が降るかもと言っていたが、妹は天気予報なんて見ない。どうせ持っていないだろう。
 俺靴箱を開けて、中に置かれてある女物の折り畳み傘を手に取る。あいつ、俺のことをちょくちょく馬鹿にするくせに、自分だってどこか抜けてるんだ。
「いってきまーす」
 家を出るときも声を出す。返事が返ってきたら、怖い。
 自転車にまたがって、何度通ったか分からない馴染みの道を走りだした。行きがけか、TSUTAYAか、帰りがけか。どこかで見つかるだろう。
 店へ向かう途中は妹に会わなかった。目的地について目当ての漫画を手に取った後、店の中をちょっと徘徊する。でも見当たらない。あれぇ? TSUTAYAだけじゃなくてどこかのコンビニで漫画の立ち読みでもしてんのかな。
 俺は代金を払うと、諦めて店を出た。自転車で通ってきた道を引き返す。帰る途中で会えるといいけど……。
 そんなことを考えていると、ぽつぽつと雨が降り出してきてしまった。ああ、失敗。結局妹には会えなかった。雨にぬれないよう、帰り道を急ぐ。あいつが風邪なんて引きませんように。




二行間で視点変換という荒業。
短めだけど、自分では結構気に入っている話です。

Re: 101の日常達 ( No.6 )
日時: 2012/10/14 12:37
名前: ドルチェ (ID: QYM4d7FG)

初めまして。タイトルに惹かれてきました。特に[冬の雨の日]は水の雰囲気がとてもよく出ていて好きです。ちょっとだけ気になったのは、ほんのすこしだけ心情を書きすぎの気がするくらいです。101ということは101シーンあったりするのでしょうか……?



これからも応援しています。

Re: 101の日常達 ( No.7 )
日時: 2012/10/14 14:17
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: S7aXaEw8)

こんにちわ。小説掲示板のほうでは、初めまして。
柚子と名乗っている柑橘系です(・ω・

読ませていただきましたが、個人的に『この町』がお気に入りです。
子どもって無垢でいいなぁと、改めて実感しました。

予定されている他の短編も、どういった内容なのか気になっております。
わくわくなうです(`・ω・´)

それでわ、失礼しました。


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