複雑・ファジー小説
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- オオカミと嘘吐き姫【参照100突破!感謝です】
- 日時: 2013/04/02 18:05
- 名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)
嘘を吐いたのはあなたですか?
これはいけませんね。あなたは“悪い子”だ。
確か前にもこんな人が食べられていましたね。
え? 誰にかって? 俺にですよ、オオカミに。
嘘吐きは、俺が食べてしまいますよ。
*
ご挨拶>>1
序章>>2
第一章>>5->>8 >>11->>13 >>16-
- Re: オオカミと嘘吐き姫 ( No.4 )
- 日時: 2013/03/30 21:09
- 名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)
>>3 憂紗様
初めまして、飛雨です。
コメントありがとうございます(´∇`)
好みだなんて嬉しい限りです//
応援有難うございます。
ご期待に添えるよう頑張ります!
- Re: オオカミと嘘吐き姫 ( No.5 )
- 日時: 2013/03/30 21:15
- 名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)
第一章 嘘吐きミリア
同情が怖かったの。
皆の目が嫌というほど哀れみに満ちていたから。
私、疲れているのかもしれない。
けれど本当に、怖かったの。
視線や言葉、他人が怖くて仕方なかった。
だから私は嘘を吐いた。
- Re: オオカミと嘘吐き姫 ( No.6 )
- 日時: 2013/03/30 21:56
- 名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)
「私のお母さんは死んでなんかないわ!」
まだ所々に雪が残る季節。
イリアス王国王都ルリエルム中央区にて。
王国最大規模を誇るルリエルム高等学校2学年Aクラスの窓際の席。
フューシャピンクの髪が印象的な小柄な少女は勢い良く立ち上がった。
その瞬間、教室の喧騒は止んだ。
クラスメイトの視線が少女に集中する。
「死んでなんかない。死んでなんか……」
小さな握り拳を震わせ、周りを睨んだ。
「え、でも私ミリアちゃんが喪服着てる所見たよ」
「あ、あたしも……」
ひそひそと話し始める女子が二人。
波紋のようにそれは伝わり、再び教室は騒がしさを取り戻す。
「こういうのまずくない? 親が死んだのに皆で騒いで……」
「騒ぐってか、励ましのつもりだったんだけど……」
「やっぱりそっとしておいた方が良かったんだって」
そう、始まりは少女、ミリアが教室に入った時。
ミリアの周りを最初は数人が囲み声をかける。
「あの……大丈夫?」「元気出して、何かあったら力になるよ」
ミリアの母が亡くなったという噂を聞き付けたグループが励まそうとしたのだ。
その行為が教室中に伝わったのが先程。ミリアが叫ぶ少し前。
次々と出て来る励まし、同情の言葉。
ミリアはそれが嫌で嫌でしょうがなかった。
そして思わず叫んでしまったのだ。
否定も肯定もしていないのにさぞ当たり前に繰り出される言の葉。
耐えかねたミリアはもう一度叫んだ。
「だから違うってば……! 黙ってよ!」
ありえない。ありえない!
頭の中で繰り返しながら、ミリアは教室を飛び出した。
- Re: オオカミと嘘吐き姫 ( No.7 )
- 日時: 2013/03/30 21:52
- 名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)
ああ、きっと私疲れてる。
皆の気遣いに怒鳴ってしまった。
けど、本当に嫌だったの。
考えてみてよ。もし逆の立場なら嫌でしょ?
それとも私が間違ってるのかな。
息を切らしながら学校から少し離れた公園に向かう。
そこはミリアが辛いことがあった時、よく来る小さな公園だった。
もっと大きく立派な公園が近くにあるため人はそちら側に流れる。
人っ子一人いない公園が今のミリアには丁度良かった。
いつも通り閑散とした公園。
静かなブランコに腰掛けて、ミリアは乱れた息を整えた。
「嫌だなあ」
ミリアは小さく呟く。
教室での出来事が鮮明に思い出される。
「お母さん亡くなったって本当?」「大丈夫? 辛いよね」「何かあったら言ってね」
相手にとっては思いやりの言葉が、ミリアにとっては鋭く研がれた刃のようだった。
哀れみに満ちた瞳。控えめな笑み。裏では他人事だって思ってるくせに偽善者ぶる言葉。
どうしてそんな顔するの?
どうして人の気持ちを理解出来てるような気になってるの?
やめてよ。何にも何にも、わかってない癖に!
自分には親がいて、家族がいて、楽しくて、笑えるのに!
ぐるぐるとそんな思想がミリアの中で渦巻く。
こんな重たい感情が自分の中にある。
自分じゃないような気がして、嫌だった。
ミリアは溜息を吐いた。
- Re: オオカミと嘘吐き姫 ( No.8 )
- 日時: 2013/03/30 22:56
- 名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)
そして悲しい程に澄みきった青空を見上げる。
フューシャピンクの髪が風に揺られた。
スノーホワイトのパーカーのフードを深くかぶり、キャメルのティアードスカートをぎゅっと両手で掴む。
その大きなラセットの瞳からは、今にも雫が零れ落ちそうだった。
駄目駄目、泣いちゃ。
口をきゅっと一文字に結び、涙を堪える。
私って弱いなあ。
折角堪えた涙がまた出そうになった。
「ミリア」
ミリアよりも少し高い声がミリアを呼んだ。
「……リリちゃん」
濡羽色のロングヘアーの彼女は隣のブランコに座った。
「ごめんね、心配で追いかけてきちゃった」
そう肩をすくめてみせる彼女。
追いかけてきちゃった。それは友達だから、だろうか。
爆発寸前まで高まった感情を抑え、ミリアは咄嗟に笑顔をつくった。
「心配かけて、ごめん」
感情のあまり入っていない声で返す。
「ううん。そんなこと全然良いの。ただ、ミリアが辛そうだったから。
本当皆酷いよね。あんな酷いこと簡単に口に出して」
「ん、大丈夫……」
「私、力になるからね」
彼女はにっこりと、少し控えめに笑った。
刹那、ミリアが噛み殺した感情がまた喉元まで込み上げて来て。
一瞬、ほんの一瞬顔を歪めるミリア。
そして直ぐに感情の欠片も無い笑みを浮かべた。
「お母さんが亡くなったっていうの、あれはただの噂だってば。あたしにお母さんはちゃんといるよ」
その作り笑いを、嘘を吐いてしまった罪悪感を隠しながら愛らしい笑みに近づける。
そして言葉を紡いだ直後、ミリアはそのことを悔やむのだ。
そんな嘘吐いたって、母は帰ってこないのに。
「そうだったの!? 早く皆に誤解だって言わなくちゃ!」
先程のぎこちない表情とは打って変わって彼女はいつもの表情を取り戻す。
それを見てミリアは少し複雑な気分になる。
自分の腕を掴む手をそっと払い、ミリアは笑う。
「ごめん、今日は休む。皆に怒鳴っちゃってごめん、って伝えておいて」
そう残し、誰もいない家への道を歩き始めた。