複雑・ファジー小説
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- 悪の刃
- 日時: 2013/08/12 19:22
- 名前: 黒金 (ID: rMENFEPd)
どうも、投稿者の「黒金-クロガネ-」という者です
このスレを開いていただき誠にありがとうございます、投稿者は学生身分なので投稿ペースがかなりバラ付きます、テストや新作ゲームに目移りしてしまい投稿が遅れる事が多々あるかと思いますが見ていただければ嬉しい限りです
また、本作品にて感想や意見をいただけるととても嬉しいです、ただ、指摘等は柔らかく言って頂けると助かります、作者は豆腐メンタルなので結構ずしりときてしまいますので.....
話の内容について
この話では以下の点が含まれます
・也チャ民独特のロール
・少々のご都合主義
・少々のシリアス展開
・ファンタジー成分
いずれかに禁断症状が出たり心臓発作を催す場合はブラウザバックを推奨します、きっとあなたの近くには黒いノートを持ったお月様がいらっしゃるかと思いますのでついでに警察に申し出ておくと良いでしょう。
では、黒金の送る一つの物語を見ていってください
これにて、本文を終わります。
投稿が増えて着ましたので↓に閲覧表を追加しておきました、書いてから二日以内で最後に投稿した物にはNEWの表示をしておきますので参考にしてください。
>>1 少年の始まり.1
>>2 少年の始まり.2
>>3 少年の始まり.end
>>4 遠くない未来.1
>>5 遠くない未来.2
>>6 遠くない未来.3
>>7 遠くない未来.end
>>8 遠のいた未来.1
>>9 遠のいた未来.2
>>10 遠のいた未来.3
>>11 追憶の日々.1
>>12 追憶の日々.2 NEW
永らく投稿期間が開いてしまい申し訳ありません。
リアルの都合でこれからも遅くなってしまうかと思いますが、思い出し時にでも見に来て頂ければ幸いです。
- 第1章:「少年の始まり.end」 ( No.3 )
- 日時: 2013/07/03 23:37
- 名前: 黒金 (ID: vLjWsTsT)
肺が痛み足をつんのめらせようとも彼は止る事がなかった、どんどん近くへと足を踏み入れ赤く染まった集落へとまっすぐに向かっていくのである、きっと大丈夫、母さんや父さんは助かってるさ、きっと集落のみんなもう逃げてる、きっと火を止めれなかっただけなんだ、早く顔を見せてあげないと、錯乱した脳で同じ言葉を繰り返す、大丈夫、大丈夫と自身に言い聞かせ、集落までもうスグの所へ来ていた、決して、転がっている黒い点だった物は目視せず、炎とは違う赤色も、見ないように、そして、少年は始まった事を理解しようとしなかった
「........っぅ...」
しかし、理解させられた
集落の中心にある井戸の前に立てられていたのは吊るし上げ台、そして、其処に吊るされ力なくぶら下がっていたのは、間違いなく彼の両親だったのだから。
激しい嗚咽が胃から込み上げてきたのがハッキリと分かった、そしてそれを止める事もできず嘔吐を繰り返した、その場に膝を付き、まるで情報を遮断するかのようにうずくまって胃液を吐き続けるのだ、若年17歳の少年、彼に叩きつけられた現実はあまりにも残酷で、受け入れがたい物だった
それから少年は動かなくなり、ただただボーっと地面を眺めていた、パキパキ、と木材の燃え崩れる音を聞きながら、思考を止めた、もう、このまま死んでしまえたら楽なのだろう、そうとも感じた、しかし
「泣いているの?」
唐突に聞えた少女の声に少年は振り返った、無感情で、無機質で、人形のような少女、もはや彼女に八つ当たりする気力も無かった、そして言葉も返せないまま、少年はただ頬に伝う雫の感覚だけを感じていた
「君は泣いているだけ?」
続く少女の言葉に激しい嫌悪感を覚え、俯くと同時に悔しくて悔しくて、反論を考える、違う、そうじゃない、俺は、泣いてなんていない、ただ、ただ....
「ちくしょう.........!」
何も言えなかった、思考を止め、逃げて、現実を見せられて、泣いて、また思考を止めて、何もしていないじゃないか、言葉と同時に地面を殴り、拳に激しい痛みを覚えながら黒い点だった物の同じ色が己の拳にも滲む、何かしなくちゃいけないんだ、何かを、するんだ
「そうだ....お墓を作らないと.......」
呟き顔を上げた時には少女の姿は無かった、しかし、そんな事よりも大切な事があるのだ、背負っていた重い薪をその場に落とし、吊るし上げ台の横に落ちていた剣を手に持った、それは少年にとっては随分と重く、血糊のついたそれからは確かな悪を感じたのだ、少年は自分が変わって行くのを感じた、明確な怒りと憎しみに蝕まれていくのを、そして少年は太いロープへと悪の刃を振り下ろした。
- 第2章「遠くない未来.1」 ( No.4 )
- 日時: 2013/06/29 22:07
- 名前: 黒金 (ID: vLjWsTsT)
寒さが身に染みる季節となりどこまでも連なる山々を白く塗りつぶしていく、小鳥のさえずりも狼の遠吠えもその場所には無かった、たった一人の男を除き、である。
「.......っ!?」
じとっとした汗を額に滲ませ上半身を飛び起こす男の姿があった、茶色の髪を一つにまとめおよそ胸のあたりまで伸ばした男の姿だ。男は自身の作った家の内装を見渡し小さく溜息を付くのである。
「また....かよ....」
大樹の根元に穴を掘り、木の板を敷き詰めただけのその家はとても暗く、ドアの隙間から差し込む日の光が無くては何があるのかも見えない始末だ、とは言うもののそこには木製のベッドが二つと使い古された剣があるのみだ、もう一つのベッドにいる筈の者は朝は必ず何処かへ行っている、気付いたら戻って着ているためあまり気にしていないが、彼にとってはとても大切な者なのだ。
「さて....早く済ませるか......」
男はベッドから出るとおもむろに腕を前方へと突き出した、すれば小さな光の球体が掌の前に生まれ低い天井の真ん中まで浮遊するのである。
「何度やってもこの光景は異様だな......」
「文句を言ってる暇は君には無い筈だけれど」
溜息交じりに小さく呟いた男に言葉を掛けたのはそれまでいなかった筈の者である、綺麗に整った黒髪を床に垂らし宝石のような赤と青の瞳、精緻な人形のようなその顔立ちで男の寝ていたベッドに座っているのだ、男はたいして驚いた様子は無く、むしろ呆れたような表情で女へと顔を向けるのだ。
「ミラ、居るなら最初から言ってくれないか?」
「レイル、君が気付かないのが悪い」
少々呆れたような口調で相手へと言葉を言葉を吐いては彼女は少々退屈そうに男へと言葉を返すのだ、男が片手で頭を抑え溜息を付いていると女は枕を手に取り、それを一瞬の光と共に本へと変えた、彼女のその力は原理も理屈もさっぱり訳が分からないが遠い未来の力らしい、男も彼女からその力を教わったのだがいかんせん理屈が分からず初歩の初歩さえできない始末であった、潜在する「まりょく」とやらを消費して使うらしいのだがさっぱり分からなかった、彼女は自称最高の魔法使い、とのことなのだがその真偽も比較対象がいなくては話にすらならないのだ。
「今日は何処まで探しに行くの?」
「聞く必要があるのか?お前は俺の身に起こる全ての事象を把握しているんだろ?」
そう、彼女は全て知っている、俺がこれから死ぬまでの間の全てを、だ。あの日俺だけが生き残る事も、俺が決意をした事も、そして何が起こるのか訊かないことも、全てお見通しなのだ。
「聞く、という経緯の上で成り立つ結果もある、私は君の全てを知ってるけど、君の全てを操る力は無い」
まるで俺の言う事に対しての回答は決まっている、と言わんばかりの淀みない返答だった、しかし、それでもいいんだ、これが最後に交わす言葉になろうとも彼女は全てを理解した上で動くのだろう。
「...じゃ、行ってくるよ」
男は本を読み始めた女を見下ろしそう言葉とした、返事は無い、身の丈に合った剣を肩に引っ掛け、男はドアを押し開けた、これから向かうのは関所、恐らく兵士と遭遇して冷静さを欠いた行動に出るだろう、そうすれば殺されるのは見え透いている、それでも、進む以外の選択肢は男に残されていなかった。
- 第2章「遠くない未来2」 ( No.5 )
- 日時: 2013/07/01 23:16
- 名前: 黒金 (ID: vLjWsTsT)
一面の雪景色、大した感動を抱く事は恐らく二度と無いだろう。あの日から幾らばかりの年月が過ぎ、少年は丁度男性と呼べる歳となっていた。あの日から一体どれだけ調べただろうか、結果として分かった事と言えば、集落を襲った者達は山賊などの類で無い事、そして、あの時手にした剣は、関所に居た兵士が持っていたのと同じ物だという事だ。あの女には何も話して無いが全てを把握しているのだろう、言う必要はあるまいて。
「さて、ここら辺でいいか…」
ある程度まで進めば無人の関所が目に入る、いや、正確には反対側を見張っている者が居る筈だ。男は剣を抜いた、イノシシや豚は殺した事は何度もあるが、人に刃を向けるのは始めてである。小さく深呼吸しては関所の門を拳で殴りつけるのである。そして
「誰か居るか!?助けてくれ!」
と叫ぶのだ、演技としてはどれほどか分からないがこれ以外方法が無いというのも事実である、男はひたすら助けを呼ぶ声を上げ続けた、そして幾らばかりの時間が過ぎ。
「何だなんの騒ぎだ?」
と声を上げる若い声が向こうから聞こえてくる、兵士がいれば門を開けて貰えるだろう。そうすればあとは開けた奴を殺せばいい。
「森に迷って集落に帰れなくなってて、それで、やっとの思いで集落に帰ったら、み、みんな…!」
と動揺したフリをして叫んだ。推測が正しければ犯人は国だ、そして生き残りが居た場合はどうだ、消しにかかるに決まっている。こんな生きた証拠がいては邪魔だろうからな。
「な、そんな馬鹿な!?関所は誰も通って無いぞ!?少し待ってろ、すぐ開ける!」
と焦った様子で言葉を返す声が静かな森に響く。しかし、騙されない、どうせ演技だろう、誰も通って無いなんてありえない、バタバタと走っていく音と共に仲間であろう誰かに話しをしている声が聞こえる、しかし、どうも雲行きが怪しげだ
「だから門の裏に居るんだよ!」
「っは、せんな事、一人の人間も守れなくて何が騎士だ!」
「あぁ、好きにさせて貰うよ、」
ぐらいがまともに聞き取れた部分である、他は喧嘩でもしているようなやかましさしか伝わってこなかった。そして少ししては鍵を開ける音が聞こえた、そして門が少し開き始めたその時、レイルは剣を突き出すのである、相手がどんな人間かなんて知らない。しかし、止まる事はできなかったのである、しかし、放たれた刃は不気味な光を放ったかのような鈍い感触に遮られた、プレートアーマー、騎士の装備する防具である。
「っ…!」
若い男は鈍い声を上げ少し後退した、その隙に門を開けては男を押し倒し刃を首へ突きつける、その男は武器を持っておらず、信じられない、といった表情をこちらへ向けるのだ。
「死にたくなかったら答えろ、もう一人の仲間はどこだ」
完全な成功である、人質を得て、尚且つ情報を引き出せるのだ、これ以上無い状態である。
勝った、そう思った瞬間
「ッ!」
肩に何かが刺さったが、それを矢だと判断するには時間が掛かった。なぜなら、待っていたと言わんばかりにそのまま蹴り飛ばされ、代わりにナイフを突きつけられたのだから。
「だから言っただろ、馬鹿が」
「あぁ、ありがと、助かった」
ある程度の信頼関係のあるであろう会話はとても耳障りであった、全て奪われた自分は誰に助けられる事も、誰を助ける事も、もう無いのだから。しかし怒りとは逆に身体は動かない、右肩に刺さった矢のおかげで右腕はろくに動かせず、ナイフを突きつけられては反撃もできないのだから。
「じゃあ、少し大人しくなって貰うからな?」
そう言っては若い男はナイフの柄で即頭部を殴るのであった、いつぞやのように痛みを感じるのは長く無かった。一瞬の内に意識はどこかへと飛ばされたのだから。
- 第2章「遠くない未来.3」 ( No.6 )
- 日時: 2013/07/03 22:54
- 名前: 黒金 (ID: vLjWsTsT)
「........っ....?」
右肩の痛みと頭痛にさいなまれ眼を覚ませばそこは薄暗い牢屋だった、両手首にロープを巻かれ、イスに足を固定され拘束されている、暫し何が起こったのかと逡巡したがそれをする必要は無くなった。
「やっと眼が覚めたか」
聞き覚えのある男の声が聞えたのだ、短い赤髪を鳥の巣のようにボサボサに生やし何をしたらそのような形で固まるのか不思議なくらいツンツンしていた、体格はこちらよりやや大きめでだいたい170~180くらいであろうか。
「なぜこんな事をした?」
こちらが相手の様子を見ていれば相手から問いを投げかけてきた、なぜ、と問われれば答えは単純なのだが、そんな言葉を相手に告げようとは思えなかった、何を語ろうが変わる気がしなかったのである、ただただ、レイルは黙って若い男を睨むのである。恨めしい、憎い、そんな思いしか彼の脳裏には無かった、死を覚悟した時はこんな物なのだろうか、全ての事柄がどうでもよく思えてきてしまうのである、たった一つの事実を除いて、であるが。
「そうか、だんまりか...じゃあ質問を変える、あの集落で何があった?」
こちらの様子を見た男は少し待ち、言葉を繋げた、あの集落で何があったか、と。よもやこいつは何も知らないのか?確かに言動を踏まえれば納得してしまう所もあるが、本当に知らないのだろうか、ただ一つ言える事は、こちらも知らない、ということだろうて。
「知らない」
「じゃあ集落に並べて立ててあったお墓は何だ?随分と手入れが行き届いていたが、とても暫く放置してあったようには見えないし、何より、俺は集落が焼け落ちてる何て国から聞いてない」
「ッ....」
そこまで見に行ったのか、おそらくあの惨状も全て見た上での質問であろう、しかし、信用できない、全てを語るに足る人物なのか。ハッキリと頷ける程コイツ等に対する恨みつらみは浅くない、語る事は拒まれた。しかし、代わりに出る言葉は他になかった。
「お前に話す事は無い、殺せ」
ただそれだけだ、つのらせた恨みはそう簡単に晴らせる物ではなく、ただ逃げたのである、これまで生きる糧として恨んでいた相手にそんな奴が居るというのは認めたくなかった、しかし目の前の男は軽く笑い
「ここで死んでいいのか?」
と言葉を発した、無論、良い訳も無く小さく舌打ちをして視線を逸らした。死んで終われたならば、あの日一緒に死んでいたのだから。
「全て話せ」
こちらの様子を伺っていた男に言葉を続けられ、負けた気がした。なぜ殺そうとした相手をそこまで信じてやれる?お前にはお前の信じる何かがあるんじゃないのか、なぜ、恨まずにいられるんだ。
「.....数年前...」
そして男に、起こった事の全てを語り始めるのである。
- 第2章「遠くない未来.end」 ( No.7 )
- 日時: 2013/07/03 23:27
- 名前: 黒金 (ID: vLjWsTsT)
「.....それで、関所に着た、あとはお前の見た通りだよ」
薪を取りに行った日から今日に至るまでの事柄を語ったが、黒髪の少女、ミラと魔法については語らなかった、どうせ言っても信じて貰えないどころか狂ってると思われても仕方が無いのだ、言える訳が無いのである。
「.....成程な...」
目の前の男は少々考え込んでは小さく声を出した、一体この男はどういう反応を取るのであろうか、信じて貰えるかが一番の問題だが、信じようとしている相手を少し、ほんの少しだけ信用していた、きっと分かってくれる、いや、もしかしたら味方になってくれる可能性もあるのだ。しかし、そう甘い訳が無かった
「.....今回の件については見逃してやる、だが、次こういう事をしたら捕縛する。」
それもそうだ、相手はお国が抱える騎士団様だ、国に忠誠を誓ったような者達がそんなので掌を返してくれる筈が無かった。しては無言で拘束していたロープを解き、「真っ直ぐ帰れよ?今度は頭に刺さる事になるからな」と言葉を残してその場を後にした。終始何かを考えているようだったが、とにかく分かり易い真実は一つだけあった。真っ直ぐ帰らないと肩の次に頭に貫通痕ができる、という事である。
「クソ.....」
何をするでも無く帰る事を強要されては特に何もせずドアを開け外へと出るのだ、どうやら門の横に設置された個室のようで門は一人分開けられていた、男が何処へ行ったかは知らないがどこかにあの弓矢の男が居る筈だ、ドアを閉じては真っ直ぐ門をくぐり、閉じるのであった。
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家に帰るまでの道のりはとても長く感じた、右肩の痛みもそうだが、あのような男が居た事の方が負担が大きい。敵が良い奴では、恨めないではないか、また闘う時に、殺すのを戸惑ってしまうかもしれない。後ろめたい気持ちが後にも先にも待っているのだ。痛みが心地よかったのは今日が最初で最後だろう。そしてドアの前に立った、あの女はこうなる事も分かって送り出したのだろうか、だとしたら、そうとう性質が悪い。しかし、彼女を憎む事もできないのである。
「君は弱い」
ドアを開けて己のベッドに座る女と眼が合えば、第一声で言葉のナイフが飛んでくるのである。女は相変わらず無表情で宝石のような瞳をこちらへと向け続けていた。
「........強くしてくれ」
「嫌だ」
「.......」
素晴らしいまでの即答であった、座布団があったのならば下に敷いてやりたいくらいである。少々考え、迷いながら言った自分が恥ずかしい、あまりのことで反論することも忘れてしまった。そうして微妙な空気の中占領されているベッドは諦めて女のベッドに座っては小さく溜息を付いた。
「君は私が居る限り死なせない、君は私に守られていればいい」
溜息を吐いて少々の時間が過ぎては、唐突に壊れたラジオのように言い始めた。彼女の姿を再度見ては本を見ているようである、笑えない冗談だ、しかし、反論することはできなかった。自らの無力が分かっているだけあり、言葉に出せない。くやしくても、できないのである。その後彼女は何も言わなくなり、こちらの言葉を待っているかのようにも見えた。そして改めて言うのである。
「俺を強くしろ、ミラ」