複雑・ファジー小説
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- 気まぐれな君に、キス
- 日時: 2013/08/04 01:36
- 名前: 卯月 ◆Nls3uHn4/Y (ID: EcIJT88K)
『君、お菓子いる?』
「…、…え?」
——————公園であった傘をさす黒髪は
とても、気まぐれで自由でした。
———————————————————————————————
どうも、卯月といいます。
−注意−
・中傷荒しはなしです。
・コメントは大歓迎!!
・誤字脱字、変な文などのアドバイスも大歓迎。
よろしくおねがいします!!
- Re: 気まぐれな君に、キス ( No.9 )
- 日時: 2013/12/12 00:21
- 名前: 卯月 ◆Nls3uHn4/Y (ID: pkkudMAq)
相変わらずな目の前の友達に
胸をなでおろす。
よかった。
そう、心底思った。
「ゆずさん、愛してる」
「きもい。バカ野郎」
私の精一杯の愛情表現も本当にやめてほしい
と言ったような顔で睨む私の心の友。
ああ、ひどい。私のガラスのハートが。
「ひどい。ぐれるよ」
「ぐれろ。駄目人間」
「うえーーーーん(棒読み)」
「うざ。…もうすぐチャイム鳴るよ。」
「…うん…」
最後もやはり毒舌なゆずは呆れながら
前を向いた。
すると、タイミングを見計らったように
始まりを知らせるチャイムが鳴り響いた。
- Re: 気まぐれな君に、キス ( No.10 )
- 日時: 2014/02/08 16:51
- 名前: 卯月 ◆Nls3uHn4/Y (ID: e.PQsiId)
「じゃあ、またね」
「うん」
私は柚子に手を振り家の扉を開く。
玄関には相変わらず、靴が二つ。
「ただいま」
言ってはみるものの返事は帰ってこない
いつものことだ。
少しあいた扉の隙間から見えたそれを無視し
私は自室へと入った。
——……
午前0時
『あ、いた。』
「……どうも。」
今日もいつもと同じようにベンチに座っていると
聞こえてきた楽しげな声に振り向けば、
そこには不思議な男が一人。
一瞬言葉を失う。そして
「うわ」
思わず口から声が漏れた。
どこもかしこも赤。あか。アカ。
この人は、色の組み合わせという脳みそが無いのか。
それともわざとそうしているのか。
とても興味深い。
「今日は一段と赤ですね」
『何それ。洋服が?いやぁ、それ程でも」
(褒めてないけど)
私の嫌みはさらりと受け流され、
合図もなしに座っているベンチの空いたスペースに腰を下ろされる。
「ちょっと、」
『隣しっつれ—い』
眉間にしわを寄せ嫌がってみるも反応なし。
男はどかない代わりにたくさんのお菓子を私の膝に乗せてきた。
『あげる』
シニカルな微笑を孕ませ私を覗き見るそれは
やはり赤だ。
私は一様頭を下げ「ありがとうございます。」
ともごもごと音にした。
『どういたしまして』
———と。
めずらしく真剣な表情をした奴。
『ずっと気になってたんだけど』
「はい?」
夜独特の雰囲気が二人を包み込む。
そのせいか、無駄に緊張してしまった。
赤は少し困ったように笑い
『…いや、なんでもない。』
そう一言言うと鼻歌を歌いだしてしまった。
私は一瞬不思議に思ったが、
これ以上追及することもないので
「そうですか」とすませる。
(でもやっぱ、きになるなー)
- Re: 気まぐれな君に、キス ( No.11 )
- 日時: 2014/04/03 11:23
- 名前: 卯月 ◆Nls3uHn4/Y (ID: JVQjWv4j)
『ところで、』
あ、そういえば。とわざとらしく手を叩き
さっきとは打って変わっておちゃらけた雰囲気
のまま私を見やる双眼と目が合う。
ああ、やっぱりこの目は少し苦手だ。
全てを見透かされたような気になる。
「なんでしょう」
『……名前、』
「…が?」
やっぱり。じっというよりかは気持が悪くなるほど
じとりと睨まれているような感覚に陥る。
ドキドキと疼く胸はぐちゃぐちゃで。吐きそう。
『なんて呼んだらいいかな?』
「…な、まえですか」
私の声にうんと頷きもう一度言葉を繰り返される。
そして、ニヒルに微笑むと
・・
『だってー、アレ駄目なんでしょう?』
(本当に意地が悪い)
さらに眉間にしわを寄せ睨むとさらりと受け流される。
うざい。笑いすぎて口が裂ければいい。
「そうですね。とりあえずあなたは死ねばいいと思います。」
『なにそれーその冗談受けないよ。』
「あなたみたいなファッションの人に言われたくないです」
『眉間にしわ寄せると不細工だよ?』
「そんな笑ってると口裂けますよ。つか裂けろ」
『あれ、最近太った?お腹周りが…』
「余計なお世話ですっ。失礼ですね!!!!!!」
『ぶっはは』
何この人何この人何この人何この人
女の子に向かって失礼すぎる。本当にデリカシーて
ものが無いのか。ただでさえ最近太ったの気にしてたのに!!
涙目になり笑う奴を私は今スグぶっ飛ばしたい。
『…で、なんて呼べばいいの?』
あー笑った。なんて言いながら私に再度
視線を向けた赤。
私も赤くなった顔を隠しつつ見上げる。
「別に呼んでもらわなくてけっっこうですっ」
『ああ、そう。じゃあなk』
「ああああああああああああああああああああ!!分りましたっ」
『(うっわぁ、おもしれぇ)』
最後まで私がこの人に口で勝てる事はなく
ため息を吐く羽目となってしまう。
まったく情けない。
私は少し間をとると口を開いた
「…榛名」
呟くように小さな声。聞こえてなければ幸いだ。
しかしその期待は打ち砕かれ、それに満足げに笑った奴は
『…そう、ハルナ、か。』
何かを含むような、そんな感情。
モヤモヤと渦巻くものは勢いを増し私の中を
占領する。
『分かった。うん、榛名。』
「……は、はい」
『じゃあ俺も名乗ろうかな』
俺の名前は、と。
『都忘れ』
どこかで聞いた事のある言葉。
もう一度心の中で反復させてみた。
『うーん、だから都って呼んでもらって結構だよ』
「……ああ、はい。ところで都さん」
そう、一旦言葉を区切り首をかしげる。
「どっかで聞いたことがあるんですよ。その名前。気のせいですかね」
『……いや、多分それあれじゃない?』
あれ?あれあれと見覚えのあるカードを出した都さん。
その瞬間近所迷惑も気にせず叫んでいた。
「あっそれだっ!!」
キラキラにデコレーションされたメッセージカード。
あの夜もらったものだ。間違いない。
確かに書いてあったような気がする。
『俺ここのオーナーなの』
「オーナー?」
そんながらじゃないけど、なんて。
よくわからなくなってきた。
んん?どういうことだ?
「じゃあ、都さんはお店を経営してるんですか?」
『…まぁそういうことになるねー』
(ありえない)
『今ありえないって思ったでしょ?』
「……っ思ってませんけどっ!?」
『嘘マジ下手』
「………すいません」
——————と。
自己嫌悪に浸っていた私の顔を覗きこんできた
都さんはふと、言葉を紡いだ。
『……榛名。』
「…はい?」
『うち、こない?』
「—————え?」
- Re: 気まぐれな君に、キス ( No.12 )
- 日時: 2014/04/04 23:38
- 名前: 卯月 ◆Nls3uHn4/Y (ID: JVQjWv4j)
「…………、…な、何言ってるんで、すか?」
たっぷりと間を置き尋ねるもそのままの意味です、
なんて意味わからなすぎる。
「頭大丈夫ですか?」
『もう、正常も正常。絶好調ですよ!」
「…え、じゃあし、しもべになれ、とか?」
『え?してほしいの?』
「いやいやいやいやいや。違いますよっ」
目の前でにやにや笑う男の心理は掴めず
ただただこちらが焦ってしまう。
ど、どういう意味なんだ。
そんな私を悟ったのか、小馬鹿にしたように見られてしまった。
『…だからー、うちで働かない?って』
(……え……)
一気にこみあげてくる羞恥心と言う名の感情。
この感情は厄介だ。
どんどん真っ赤になる顔を無残に晒し、ただ
口をパクパクと動かすことしかできないでいた。
ああ!!もう。恥ずかしい!!
「……スミマセン」
『うっわ、なんか変な妄想でもしてたのー!?』
「っなっちがっ」
エッチ、へんたーいと叫び始める都。
今すぐ辞めてほしい。本当に。
しかし今の私には羞恥心で怒る気力も殴る気力もなく
あいつは野放し同然だ。
——————と。
『まぁいいや。』
もう飽きたのか、座っていた椅子から立ち上がる赤。
まぁいいや、と言うわりにはまだにやついている口元
が絶妙に気持ち悪い。
『返事はまた今度でいいよ』
「…え、ちょっ」
すごく身勝手すぎる。
そこには消化しきれない感情だけで。
じゃあねと後ろ手に挨拶をし
かき乱すだけかき乱して去っていく。
そして、最後に振り向くと
『願い、叶えてあげるよ』
またもやニヒルに微笑むと今度こそ
去って行った。
————————————………
——————……
ピピピピピ、ピピピピピ
「っつ、うるさっ」
頭を劈くほどに鳴り響く目覚ましを叩いてとめ、
まだ朦朧とする意識を取り戻すべく眼を擦る。
しかしそれでも眠気というものは襲ってくるもので。
「っあぁ!!眠いっ」
必殺、叫んで眠気を吹き飛ばす作戦。
実に迷惑極まりないが、一番効率的なのだ。
私は乱れた髪の毛を梳かしながら、一階に下りる。
(…まぁ期待してないけど)
よろよろともたつく足を動かしリビングに入ると
一枚の紙切れが残っていた。
それに少し驚きながらも何食わぬ顔で身支度を済ませた。
そして玄関でローファーをはく。
ローファーはひんやりと冷たくなっていて、
指先からそれが伝わってくるようだ。
「いってきます」
返事が返ってくることはない。
玄関にあった靴は二つともなく、
少し寂しさを覚えるくらいだ。
私はそれを見ないふりをし、家の扉を開いた。
- Re: 気まぐれな君に、キス ( No.13 )
- 日時: 2014/04/26 22:37
- 名前: 卯月 ◆Nls3uHn4/Y (ID: JVQjWv4j)
————……・
「ちょっと、いいかしら」
突然かけられた声に振り向くと、そこには
担任の西沢がたっていた。
張り付けたような人のいい笑みを私に向けてくる。
うわ、でたー、なんて。
私の数少ない嫌いな部類に入る人間
ナンバーワンである。
今日はなんだか、運がついていない。
「はい」
なるべくいい子に振る舞う。
(なんだよ、もー)
「あなた最近夜中ふらふらしていない?」
「………何のことでしょう」
「この前隣のクラスの先生があなたが夜中
公園にいるところを見たって言っていて、ちがう?」
「…………違うと思いますよ」
あはは、なんて。
西沢はさしてその事に興味が無かったのか
そう、とため息交じりに話を終結させた。
軽薄な担任め。
しかし、そこで話が終わることはなく
次の話へと移っていった。
「あ、後そうそう。あなただけよ、出てないの」
「何がですか?」
「三者面談の日程調査書」
くらり、眩暈がする。
不覚だ。そこをつかれるとは思っていなかった。
なるべく動揺がばれないように笑顔を装う。
「あぁ!そういえば出していませんでしたね。
すいません。あの人達無理そうなので二者面談でもいいですか?」
へらへらと頭の後ろに手を当てる。
こういう時に助かる、私の特技。
「えー駄目よ。ちゃんと説得したの?」
猫なで声のような気持ち悪い声に虫唾が走った
まるで、あの人の声みたい。
「駄目ですねー」
「本当にちゃんとした?」
「しましたよ。もう床に頭をつけるぐらい」
事実、そんなことしたことがないが
まぁいいや。
とりあえず、無理なものは無理なのだ。
さっさと諦めてほしい。でないと、
「……でも、前もきてなかったじゃない。だからk」
「私に興味が無いんですよ」
不意に出た言葉ははっきりと響いた。
それをごまかすように、きっとね。なんて。
バカだ。本当に馬鹿だ。
「とりあえず、二者面談でいいですよね?」
なるべく威圧的に問いかける。
すると、まだ納得してはいないものの
諦めたのか分ったわ、と頷いた。
「じゃあ、私はこれで。さようなら、先生」
「さようなら」
最後は笑顔で別れを告げる。
夕暮れ色に染まった校舎の中は
とても場違いで、
早く深夜になってほしいと願っていた。