複雑・ファジー小説
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- 僕の名を誰が呼ぶ
- 日時: 2014/09/18 23:46
- 名前: ゆういち (ID: 9nquTbLL)
初めて投稿させていただきます、ゆういちと申します。
いろいろな人に小説、掲示板などについてアドバイスをいただければ幸いです。
もしジャンルを間違えていたら、ごめんなさい。
また、内容が矛盾することもあると思います。
- Re: 僕の名を誰が呼ぶ ( No.1 )
- 日時: 2014/09/18 17:26
- 名前: ゆういち (ID: 9nquTbLL)
冷えた風が頬をなぜる感覚に目が覚めた。
口の中に広がる泥臭い感触が気持ち悪い。だるい体を起こし、砂利を吐き出す。
暗い。耳が痛いくらいの静けさ。夜のようだ。すっきりしない思考のせいで、辺りがさっぱり分からない。
一息に立ち上がろうとするが、どうしたことだろう。足に力が入らず、膝を打ってしまった。
同時にそこでようやく頭の痛みに気付いた。
脈打つような痛みが全身に伝わり、何かを思い出すことを邪魔する。
「何が・・・起きたのだ」
だが同時に、僕の意識をはっきりさせる。
「僕は・・・何だ?」
知らず漏れた言葉は、静寂が吸い取った。
月明かりもない暗闇の中、僕はふらつく足で歩き出した。
どこを目指すでもなく、泊まるあてもない。
その上全く明かりもないときた。なんとも心細い気はするが、あの場所にとどまっていてもきっと何も始まらない。ここでのたれ死ぬことだけは嫌だ。
こうして少しずつでも進んでいれば、誰かに会うかもしれない。せめて雨風しのげる小屋くらいはあるだろう。そういう希望を抱いていないと不安で押しつぶされそうだ。
まとっていたコートは、重くて邪魔だったので捨てた。幸い寒さは感じない。足が小石か何かを蹴る。
血が喉にからみついてむせる。呼吸がしづらい。
どれほど歩いたか。視界が明滅する。
否、あれは小屋の灯りだろうか。僕はそのぼろい扉を開けていた。
- Re: 僕の名を誰が呼ぶ ( No.2 )
- 日時: 2014/09/20 22:42
- 名前: ゆういち (ID: 9nquTbLL)
——強い光が僕の瞼を差している。
そう感じると、急に思考が冴えてくる。
昨夜の出来事を思い返す。と言っても、そう長いことではない。
相変わらず何があったかわからない。
目を開け、体を起こす。床に寝かされていた僕の肩から、毛布がずり落ちた。
日が高く昇っていて、室内を明るく照らす。おそらく記憶の最後にあるあの小屋の中であろう。木材でできているこの小屋は、だいぶ年季が入っているように見受けられるが、わずかに手入れがなされている。他にも、部屋の中央にあるテーブルや隅のベッドなどに人がいたと思しき痕跡がある。
僕に毛布と一晩の情けをかけたものと同一人物のはず。
そこで、はたと気づく。
この辺りに住んでいるなら、昨夜何が起こったか話が聞けるだろう。もしかしたら僕について知っているかもしれない。
思わぬ手がかりを掴んだところで、小屋の戸が開いた。
それほど背が高くない女だ。
「あら、起きたの」
きつい眼差しと目が合っても、記憶の琴線にはかすりもしなかったようだ。
殺風景な部屋を見て、住んでいるのはこの女一人。
落胆を隠すことすら億劫に思えた。
「何よ、おはようございます、の一言もないわけ」
「僕を助けた意図を問いたい」
「まぁ、恩人に対しての第一声がそれ」
呆れた女は、持っていたバスケットの中身を見せびらかすようにテーブルに広げる。
パンにチーズ、果物。朝日に食べ物の匂いが混じる。
「いいわ。朝食でも食べながらお話しましょう」