複雑・ファジー小説
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- そして蝋燭は消えた。【短編集】
- 日時: 2015/05/22 17:58
- 名前: 橘ゆづ ◆tUAriGPQns (ID: w4lZuq26)
はじめまして。橘ゆづ(たちばなゆづ)、といいます。
初めて小説を投稿してみようかなぁ、と。
雑談では「ゆづ」として色々歩き回ってるので、見かけたら声をかけていただけると嬉しいです(笑)
まだまだ初心者ですが、よろしくお願いします!
基本、短編-掌編ぐらいの短いのを綴っていこうかなと思います。
(それ以下になる場合も……)
予告なしに痛い表現や匂わす感じがあるのでご注意ください。
ついでに勝手にシリーズとか始めたり、長いものをだらだら書いたり、詩も書きます。
アドバイスなど貰えたら嬉しいです。コメも凄い喜びます。
出来れば誤字脱字も報告していただけると嬉しいです。
では、よろしくお願いします。
・目次
>>1[残念、夢の時間は終了です]
>>2[神に好かれた女]
>>3[1きっとそんな夢を見た。]
>>4[2きっとそんな夢を見た。]
>>5[終きっとそんな夢を見た。]
>>8[1蜜の世界]
>>9[終 蜜の世界]
>>10[すぐそばに]
>>11[潔癖少女の末路]
>>12[吸わない男]
>>13[心傷の靴]
>>14[眠らないブランコ]
>>15[崩れて堕ちた]
・お客様
>>6佐渡 林檎さん
最初のお客様です。私と同じく短編集を書いていらっしゃり、表現力が魅力的な方です。
- Re: そして蝋燭は消えた。 ( No.1 )
- 日時: 2015/05/21 06:35
- 名前: 橘ゆづ ◆tUAriGPQns (ID: Ft4.l7ID)
(1)残念、夢の時間は終了です。
少女視点。
心臓が身体中に響くほど大きく鳴っている。
顔は自然と赤くなって、目に涙の膜が張っていた。
こんなみっともない顔を、好きな人には見せたくなかった。
「何度」やっても慣れないものだ、告白なんて。
でも、今度こそは、今日こそはと胸を張る。
大丈夫、大丈夫。だって、あんなに好感度を上げたのだから。
──そして、返事は。
「まーた、失敗だね。」
真っ白な異空間。周りには人の気配すら、ヒガンバナさんの気配すらしない。
でもそこに、ヒガンバナさんはいるのだ。からかうような笑みで。
ふざけたピエロような動作で肩を竦めたヒガンバナさんを睨む。
また、失敗だった。
疲れた。馬鹿みたい。泣きたい。
そんな思想が頭に浮かんでは消える。
泣いていると分かれば、ヒガンバナさんは嬉々と私をからかうだろう。
今それをされると本当に心が折れそうなので、涙を隠すように顔をうつむかせた。
一度目は、何も知らない仲。
いわゆる、私の一目惚れ。当然、アタックしても先輩には響かずにそのまま私は事故でこの世とおさらば。
そこで、初めてヒガンバナさんと会った。
ヒガンバナさんは神様だ。だってこんなこと出来る人、他にいないもの。
『僕は暇なのさ。』
のらりくらりと謳ってみせた神様は本当に暇そうだった。
好きな人に振られた挙げ句、そのまま死んでしまった不幸のヒロインよろしくの私へ可哀想、なんて同情は一切なし。
少しでも加護はしろよ。
心のなかで呟く。否、全知全能何様神様だから分かっているだろうけど。
二度目は、幼馴染みという仲。
私は自惚れるつもりはないが、そこそこ顔はいい方だ。
一度目は散々だったが、料理だって裁縫だって勉強だって。
ありとあらゆることを簡単にこなせてみせた。
もちろん、全てヒガンバナさんに教えてもらったのだけど。
そんな私でも先輩、否、ユウタからの返事はno。
もう幼馴染みとしか見えないらしい。困ったものだ。
三度目は、ただの友達。否、親友とでも言おうか。
全く知らなくても駄目で、近すぎても駄目。
今までの経験から一番良いのは、結果的にこの関係。
つまりついさっきの関係……だったはずなのに。
ユウタは私を選んではくれなかった。
何でだ。こんなにも完璧だったはずなのに。
ぐつぐつとお腹の底で、強欲心が沸騰する。
ぎり、と歯を噛み締めた。
「ああ、そろそろ汚くなってくる頃かな?」
でも、次があるから。
大丈夫、大丈夫。
だって、私にはあと何千回も、何万回ものチャンスがあるのだ。
涙はいつの間にか止まっていた。
ヒガンバナさんの呟き声も、今の私には聞こえない。聞こえない。
聞こえない、ふりをする。
ねぇ、ヒガンバナさん。嗚呼、早く。
次はもっとお金持ちの家に生まれたい。
そしたら、金で釣れるかもしれないじゃない?
でも、そんなのいや。
お金で釣られるような人なんて私の好きなユウタじゃない。
もし釣られてしまったら、他のいい人を探したい。
ねぇ、だから。早く次に逝かせてよ。
早く!ねぇ!!早くしなさいよ!
精神異常者のように血走った目でヒガンバナさんにすがる。
はやく、はやく!
目を開けると、そこは宙で。
嗚呼、そっか。
夢だったのか。涙が空に落ちる。
元々、都合のいい事なんてあるわけないのに。
あーあ、あーあ。
ぐしゃり。
何処かで肉の潰れた音がした。
---
彼岸花視点。
ん?ああ。
彼女が見たものは、感じたものは、やったことは。
全て夢物語なんかじゃないさ。
ちゃんと、したんだから。
彼女の心は「一度目」までは綺麗だったからね。
だから助けてあげたのに。
期待外れだよ、悲しい。
なんて、僕は呟いてみたいね。
秋風が窓を揺らす。
ゆらりと黒い猫が僕の視界でほんの少し、揺れた。
にゃあ。喘ぐように黒猫は鳴く。不吉だ。
窓からはガラスが擦れて不協和音を放っていた。
僕は椅子に腰掛けながら、テーブルに肘をつき手を絡ませる。
黒猫に問いかけた。
んー、ねぇ、さ。
僕はね、神様なんかじゃないんだ。
知ってるって?まぁ、そうなんだけどね。
ただの、少し不思議な能力を持ったヒトなんだ。
なのに、彼女は神様なんて。笑っちゃうよねぇ。
可哀想だね、あの子。
僕が同情するなんて珍しい?
ふふふ。
嗚呼、可愛そうだよね、本当、本当。
きっと今ごろ、事故にあって死んでる最中だ。
周りの人間も写真を撮って、救急車を呼ぶ人はいないね。
僕は一人のヒトとして悲しいよ。
こんなにひどい世の中になるなんて。
怖いものだ。
ああ、くわばらくわばら。
(残念、夢の時間は終了です)
end。
- Re: そして蝋燭は消えた。 ( No.2 )
- 日時: 2015/05/19 20:05
- 名前: 橘ゆづ ◆tUAriGPQns (ID: FpNTyiBw)
(2)神に好かれた女。
神視点。
最初は見てるだけだった。ただの憐れみで、同情で。
彼女は可哀想で、健気で、美しかった。
暴力を振るわれるその姿、慰めものにされるその姿、はらはらと宝石のような涙を流すその姿。
いつからか僕は君に恋をしていたんだ。
どうしても僕の物にしたくて、だから君のお父さんと話を少しさせてもらったよ。
嗚呼、よかったよかった。
久しぶりだね。
綺麗になったね。凄く。
白色が好きだったよね?僕も君が白色が好きだと知ってから、凄く好きになったよ。
君が近くにいるような感じがして嬉しいなぁ。
そのワンピースもよく似合ってる。
ねぇ、誰を待ってるんだい?
僕はここだよ。
トオル……。
そっか、トオルか。透明で綺麗な名前だね。
君に、トオルに合ってると思うよ。
だけど、僕はもう少し女の子らしい名前がよかったなぁ。
愛とか、幸せがつくような名前。
君には幸せになって欲しいからね。誰よりも、誰よりも。
でも、よかった。
最近、トオルの姿が見えないから心配してたんだよ。
なんで神社なんかに行ったの?
僕も一緒に行こうとしたけど、バチバチして痛くて入れなかったよ。
きっと、何か秘密のことをしてたんだね。
かわいいねぇ、いじらしくて。
けど、次は許さないよ?だって僕は君の近くにいたいんだから。
嗚呼、やっぱり印が消えてる。
神社なんかにはやっぱり行かない方が善かったよ、トオル。
羽が生えて何処かへ行ってしまわないように、って背中に付けたのに、綺麗に消えてる。
ひどいなぁ、無理やり消すやつがいたんだ。
最低な極悪非道人だね、そいつ。
もう一度、つけてあげるね。
ごめんね、気づくのが遅くなって。
これ痛々しいから僕もあんまりやりたくないんだ。ごめんね?我慢して。
あれ?何を泣いてるの?
確かに痛いけど、僕からのなら愛として受け取ってくれるはずだよね?
うん、そう。それでいいんだよ。
僕に身も心も預けてね、全部。
冷たいね。凄く、冷たい。
トオル……死んじゃったんだね。悲しいなぁ、悲しいなぁ。
どうして僕を置いて逝くんだい。
君は永遠に僕の隣にいるんじゃなかったの?
一人で首吊りなんて、ひどすぎるよ。
何かに憑かれて精神を病んでたんだってね。
誰に憑かれていたんだい?怖かっただろう。
大丈夫、僕がいるからね。
ねぇ、トオル。悲しいことなんて、一つもないよ。
なのに、どうして泣いてるの?
「私は神に愛された女。あれは悪夢のような出来事だ。今でも思い出すと身震いする。私はあの悪夢から解放されたはずだ。確かにそのはずなのだ。なのに、白いものが視界に最近、写るのだ。私は神に愛された女。そしていつまでも、愛された女なのだ。」
(神に好かれた/神に憑かれた女)
end。