複雑・ファジー小説
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- 白銀の胡蝶【キャラ募集一時停止】
- 日時: 2015/07/05 19:46
- 名前: 煙草 (ID: 7HladORa)
伝説の肩書きに違わぬ存在。
見た者に幸運を齎す、青い鳥のような。
白銀色の蝶々が、どこかにいるとの噂を耳にした。
◇ ◇ ◇
キャラの募集は一時的に停止しております
7月5日20時以降に応募されたキャラは全て保留となりますのでご了承を。
(テンプレート>>11)
—目次—
人物紹介、用語解説>>10
※未読者ネタバレあり?
※随時更新
一話〜不思議なこと〜>>1
二話〜吸血鬼(幼女)現る〜>>2
三話〜ネーミングセンス〜>>5
四話〜引っ掛かる言葉〜>>6
五話〜千倉の正体〜>>7
六話〜やってきた御姉様〜>>8
七話〜デートは昼食の後で〜>>9
- Re: 白銀の胡蝶 ( No.4 )
- 日時: 2015/06/07 15:30
- 名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)
せいや様>>
コメントありがとうございます。
お楽しみいただけたようで何よりです。
これからも、何とかめげずに更新していこうと思います。
- Re: 白銀の胡蝶 ( No.5 )
- 日時: 2015/06/07 18:18
- 名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)
この街は商店街を中心に、隣町に至るまで田畑や住宅街が広がっている。
主に西側が田畑、東側が住宅街になり、俺がいた公園は住宅街にある。
そこから商店街まで行く道すがら、俺は腹が減ったのでコンビニで飯を買うことにした。
当然、この吸血鬼の分も買ってやろうかと思ったのだが。
「わしは人の血を、ほんの少し吸うだけで1ヶ月は生き延びられる」
——と言って、あまり迷惑はかけたくないと言い張るため、俺は自分の飯だけ調達することにした。
そうして、コンビニの外でおにぎりを頬張っていると。
「そういえばさ」
「?」
「お前、名前なんていうの?」
俺はまだ、この吸血鬼の名前を聞いていなかったことに気付いたのだ。
いつまでも「お前」とか「吸血鬼」とか「コイツ」呼ばわりでは不便があるだろうし、名前くらいは知っておきたい。
——が。
「……名前、か。わしに名前など存在せぬぞよ」
「——は?」
「わしに名前なんてない。誰も名前をくれなかったのじゃ……」
悲しそうに目を伏せたコイツが言うには、自分に名前はないそうだ。
「え、記憶がないとかじゃなくて?」
「生まれたときからの記憶はある。いい思い出は——ないがの」
「——え? ほんと?」
「本当じゃ。わしは嘘など吐きとうない」
「……マジか」
な、何か俺って、トンデモナイ幼女に出くわしてねぇか——?
——よし、こうなったら俺が名前をつけてやろうじゃないか。
「——花蓮」
「え?」
蓮華の花の如く可憐に。"可憐"と"花蓮"をかけた名前だ。
うん、我ながらうまいこと言った。最高のネーミングセンスだと思う。
「蓮華って花、知ってるか?」
「——知っとるが」
「あの花みたいに可憐であれ……って意味を篭めて、今日からお前の名前は花蓮だ。覚えとけよ」
やっべぇ、俺って天才? 最高の名前じゃないか花蓮って!
——まあ、ネーミングセンス以外に取り柄なんてないわけだがな。
「——ありがとう」
「へ?」
「な、何でもない! そうか、これからわしの名前は"花蓮"になるのか! つけて貰えて感激じゃよ!」
「あ……はい」
今一瞬、純真無垢な笑顔を見たような気がした。
- Re: 白銀の胡蝶 ( No.6 )
- 日時: 2015/06/27 13:29
- 名前: 煙草 (ID: 7HladORa)
「君は、不思議だね」
商店街を吸血鬼——改め花蓮と歩いていると、不意に誰かから話しかけられた。
どこかで聞いた事のある、涼しげで儚い声色——
後ろを振り向けば偶然か、千倉柚子が立っていた。
「——千倉か。どうした? こんな時間に」
「天城君こそどうしたの。そんないたいけな女の子連れて」
「あー、コイツはちょっと訳ありっつーか……」
正直、返事に困った。
暇だから公園でのんびりしてたら、こんな可愛い吸血鬼と出会いました——だなんて、口が裂けても言えねぇ。
言ったら言ったで、頭狂ってるだろとか言われかねない。俺はそんなキャラじゃないからな。
ただ、相手は千倉だ。宍戸さんの言うことや屋上での出来事もあって、話は通じるかもしれないが——
「——大丈夫じゃよ。こやつは人間でない」
悩んでいると、花蓮がこっそり耳打ちしてきた。正直言って助かった。
だが同時に、100年もの間吸血鬼として生きてきた彼女が言ったのだ。
俺はもう、千倉は人間ではないと確信せざるを得ない。
「まあ、なんだ。コイツは吸血鬼でさ、さっき公園で会ったんだよ」
「——そ。おめでと」
「何がおめでとだ」
「君、幼女とか好きそうじゃん。付き合っちゃえば?」
「待て待てそれは違ぇだろ! いや好きだけど!」
そうだ、幼女が嫌いな奴なんてこの世には居ない!
でもさぁ千倉さん、表情ひとつ動かさないままそういうこと言うのやめてくれませんかねぇ。
何だか幼女好きが罪みたいになっちまうじゃないか。
「——そうやって公言する辺り、十分犯罪のレベルだと思うのじゃが」
何故か顔を赤らめている花蓮が言う。
「いやいや、幼女は正義だ! もっと言えば、貧乳は正義だ! それ以外の何者でもない!」
「ただの貧乳好きか、お主……」
「どうでもいいけど、大声で言うの止めてくれない? 恥ずかしい」
「——あ」
気付けば、笑ったりドン引きしたりしている通行人から、この上なく痛い視線が注がれていた。
うわー、恥ずかしい。ってか死にてぇ。
ぼろっちい布切れしか纏ってない幼女を連れて、仮にも美女(?)の千倉を前にして。
一体俺は何をしているんだ——
「なぁ、2人とも。宮城県の方向ってどっちだっけ?」
「……お、おおおお主! いくら羞恥的な経験をしたからって自刃するでない!?」
「落ち着いて、天城君。私はそれくらいで、他人を嫌いになったりしないよ」
「余計死にてぇ」
あーもう、穴があったら入りたい。
「——それに天城君、自刃程度じゃ死ねないかもだよ」
「? なんだって?」
「ううん、こっちの話」
今、コイツは何を言っていた?
自刃程度じゃ死ねないってどういうことだ。
自刃したら間違いなく死ぬだろ——
「じゃあね」
「あ、あぁ」
そうこうしているうちに、千倉は闇夜へと消えていった。
——自刃じゃ死ねない? 逆に死ねないのか?
あぁでも、場合によっては死なないのか?
くそ、よくわからん。
千倉の性格を考えると難しいが、多分ネタで言ったんだろう。うん、そうに違いない。
しかしその何気ない一言は、いつまでも俺の心を縛り付けていたのだった。
それと、あいつが出会いがしらに言った言葉——
『君は、不思議だね』
——一体俺の何が不思議だと仰る……何、貧乳ってそんな需要ない?
とまあ、冗談はさておき……花蓮なら、何か分かるだろうか?
- Re: 白銀の胡蝶 ( No.7 )
- 日時: 2015/06/27 16:19
- 名前: 煙草 (ID: 7HladORa)
「胡蝶族じゃよ」
ようやく辿り着いたブティックで服を物色する花蓮は、後ろで待つ俺にそう答えた。
「あの小娘は、胡蝶族の生き残りじゃ。わしらと同じ、真には人間でないと言える存在——」
千倉について何か知らないかと花蓮に問うたところ、彼女は千倉の事を胡蝶族と呼んだ。
曰く胡蝶族とは、読んで字の如く蝶々の遺伝を持つ人間の事らしい。
背中に蝶の羽を生やし、自由に空中を飛びまわることが出来るのだとか。
何ともファンタジックな種族である——何て言ってたら花蓮も吸血鬼だし、限がないわけだが。
だが千倉に限っては、単に飛ぶだけの存在ではないという。
「あの小娘は、ただの胡蝶族でない」
「じゃあ何と?」
「言うなれば、純血の胡蝶じゃよ」
「純血? ってことは、混血じゃないってことか?」
「察しが良いのう、お主。そうじゃ。他の種族と子孫を残さず胡蝶族の中だけで生き残ってきた存在じゃ」
なるほど、千倉は胡蝶族という不思議な存在であり、その中でも純血なのか。よく分かった。
だが、まだ肝心なことが聞けていない。
「で、純血だからどうしたってんだ? 100年も生きたお前の事だ、それだけじゃないんだろ?」
「——うむ」
1着の、上下セットのコーデを手に取る花蓮。
チューブトップに短パンという、なんともお色気満載な服であった。
そんな背伸びしたら逆に不自然だぞ。
——と言いかけたところで、花蓮もそれに気付いたのか、いそいそとコーデを元の位置に戻した。
再び服の物色に入る。
こういったことに時間がかかる辺り、やっぱりこの子も女の子なんだな。
「混血で血が薄くなると、大抵の種族は本来の力を損なっていく傾向にある。言いたいことは——分かるな?」
「——じゃあ聞き返すが、どんな力があるんだ?」
「ふふっ、面白いのうお主」
ふわりと微笑みつつも先ほどから変わらず、視線はこちらに寄越さない。
服選びって、そんなに集中することなのか?
「胡蝶族はのう、運命を書き換える力があるんじゃ」
「————えっと、すまん、スケールがでかすぎてよくわからん」
「そうか。なら、例え話から入るとしよう」
俺の馬鹿さ加減にも、適切に対応してくれる。
さすが100歳児。伊達に長年生きてないなこいつ。
「例えば、仕掛けられた爆弾により5分後にこの店が爆発し、わし諸共皆が命を落とすとしよう」
「話がでけぇなおい」
だがまあ、さっきよりは分かりやすいからよしとする。
「その時、件の小娘——千倉といったかのう? 彼奴がこの場に居合わせたとする」
「うむ」
「すると胡蝶族はの、爆弾が仕掛けられていたことを"なかったこと"に出来るのじゃ」
「——うん、例え話は分かったが、結局何が言いたいのかが分からん」
「……」
すると、流石に説明が難しかったのか——
「お主の持ってる貧乳画像が、全部消えるって現象を未然に防ぐのじゃよ」
「おっけー把握」
この上なく分かりやすい形で説明してくれた。
だが実際問題、話はややこしかった。
千倉をはじめとする、純血の胡蝶族が持つ力。
花蓮の話を要約すれば、あったはずの出来事をなかったことにする——そんなチートめいたものだ。
「時と空間に干渉し、胡蝶族のみが通ることを許された精霊道を通り、過去の出来事を書き換える。混血した胡蝶族は最早飛ぶことしか許されないのじゃが、純血である千倉とやらならやってのけるじゃろ」
「なるほど、な……」
しかし、なるほどとは言ったものの、やはりうまく飲み込めない話だ。
これは実体験を目の当たりにしないと無理だな——激しくデジャヴである。
「それにしてもお主」
「ん?」
「何故そんなにも貧乳を好む?」
「おっと、遂に俺の哲学を疲労するときが来たようだな」
「あぁ、やっぱりええわ。気は長いほうじゃが、長い話は嫌いじゃ」
「むぅ」
残念だ。貧乳の良さが伝わらないなんて。
「そんなに貧乳が好きなら、わしのでも見せてやろうか?」
「馬鹿野郎、軽々しく言うな。ちったァ恥を知れ」
「む? 差分羞恥が必要か?」
「そんな話でもねぇわ!」
「遠慮せんでよい。わしは既に、幾多の男に身体を弄ばれた存在じゃ。今更未練などないわ」
「え、まさかの……?」
「そうじゃよ。お主程度、容易いものじゃ」
「何この子、怖い!」
まだ何も言ってないのに察したよこの吸血鬼!
やっぱ100年の歳月か。亀の甲より年の功か。
そしてコイツ今、遠まわしに男としての俺を否定しやがったな?
「——うむ、これじゃの」
「?」
ようやく選び抜いた服を、俺の元へと持ってくる花蓮。
小さな花が刺繍された、薄手の白いワンピースだった。
「——麦藁帽子、いるか?」
「……? う、うむ。買ってもらえるのなら、そうしてほしい限りじゃが……」
「おっけー把握!」
俺はワンピースと麦藁帽子を引っ掴み、花蓮を連れてレジへと向かった。
- Re: 白銀の胡蝶 ( No.8 )
- 日時: 2015/06/28 14:20
- 名前: 煙草 (ID: 7HladORa)
翌朝。即ち至福の土曜日。
買ってやった服に満足した花蓮と別れ、俺は休日を目一杯楽しんでいた。
とはいえ所詮引き篭もりの俺なので、ゲームやったりアニメ見たりと自堕落な生活を繰り広げるだけなのだが。
——ピンポーン。
こんな真昼間に誰だ。
ゲームを一時中止し、俺は玄関へ小走りでかけていく。
「はいはーい」
ガチャっと扉を開けると。
「やあ、天城君」
「——ども、こんにちは」
来客だった。それも宍戸杏奈さんなのでビックリだ。
昨日ブティックで見たのとソックリなチューブトップコーデと、惜しげもなく露出された白い脚を持つ彼女。
一体ここまで何をしにきたのだろうか。というか、何で俺の住所知ってるんだこの人は。
「突然だけど、これからデートでもしないかい? ちょっと暇持て余してるんだよ」
「……え、えぇ。喜んで」
「ふふっ、そうこなきゃね」
——よっしゃああああああああ!!
俺は心の中で叫んでいた。どんな形であれ、生きてて初めて女性と出かける切欠ができたのだ。
喜ばない男子なんていないだろう。うん、いないはずだ。
「準備してくるので、中で待っててください」
「あいよ」
俺は家に宍戸さんを招きいれ、せっせと支度を開始する——
あ、ゲームどうしよう。セーブしてねぇや。
まあいい、今はそんなことより準備しないと。
◇ ◇ ◇
仮にも学校一の人気者と出かけるのだ。
恥ずかしくないよう、服はある程度選定せねばならない。
そうして選んだ服は、ベージュのハーフパンツ、青い上着、白のインナー、キャップ帽……結局いつもと変わらなかった。
俺の服装センスの無さについては一回真面目に考えるべきかもしれない。
「お待たせです」
「おやおや、可愛くなったねぇ坊ちゃん」
「からかわないでくださいよ」
確かに、こんなんだとガキくさいかもだ。
だが、宍戸先輩がそのままでいいと言い張るので、結局このまま出かけることになった。