複雑・ファジー小説

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白銀の胡蝶【キャラ募集一時停止】
日時: 2015/07/05 19:46
名前: 煙草 (ID: 7HladORa)

伝説の肩書きに違わぬ存在。
見た者に幸運を齎す、青い鳥のような。
白銀色の蝶々が、どこかにいるとの噂を耳にした。



    ◇  ◇  ◇



キャラの募集は一時的に停止しております
7月5日20時以降に応募されたキャラは全て保留となりますのでご了承を。
(テンプレート>>11


—目次—


人物紹介、用語解説>>10
※未読者ネタバレあり?
※随時更新


一話〜不思議なこと〜>>1
二話〜吸血鬼(幼女)現る〜>>2
三話〜ネーミングセンス〜>>5
四話〜引っ掛かる言葉〜>>6
五話〜千倉の正体〜>>7
六話〜やってきた御姉様〜>>8
七話〜デートは昼食の後で〜>>9

Re: 白銀の胡蝶 ( No.1 )
日時: 2015/06/06 20:21
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

 "余暇"とは、つくづく罪な存在だと思う。
 何をするにしても、暇という言葉から来る行動は全て、無駄のように思えてしまうから。
 しかし俺こと"天城浩太"は、持て余した時間を人間観察に費やしていた。
 ここは学校の屋上。グラウンドで部活動に励む生徒達が、まるでアリみたいに忙しなく動き回っている。
 この光景は見ていて飽きないから、放課後はいつもここで暇つぶしをしている。

 何で帰らないかというと、家に帰ってもやることがないから。
 寧ろ身内が五月蝿いので落ち着かず、どうしても1人の時間を確保できないのだ。
 元々インドア派の俺だったが、最近はすっかりアウトドア派になってしまった。
 それも、そのあたりが原因かもしれない。

「……」

 屋上には、あまり人が立ち入ることはない。
 まず、生徒が屋上へ立ち入ること自体禁止されており、屋上に出たことのない卒業生だって山のようにいるらしい。
 何故か。伝聞だが理由はその昔、屋上が不良のたまり場になったのが原因だという。
 まあ、特にきつく規制しているわけではないから、鍵なんてかかっていないわけだが。
 ただ俺は特別だった。
 俺にはボランティア委員の一環として、貯水槽など屋上にしかない設備を点検する義務がある。
 なので一々許可を取らずとも、屋上へ立ち入るのは自由なのである。

「……」

 屋上へ立ち入れるのは、教師を除くと基本的に俺だけ。
 しかし何故か、今日は先客がいた。
 勿論教師ではない。一応顔見知りの、同学年他クラスの女子生徒"千倉柚子"である。

「そういやお前、何してんだ? こんなとこで」
「——」

 千倉はゆっくりと、こちらを振り向いた。
 特徴的な銀の短髪が、風にふわふわと揺れる。
 生気のない群青の瞳は、相変わらず何処を捉えているのかわからない。

「別に何も。天城君こそ、何してるの」
「いや、貯水槽の点検に来た。もう終わったけどな」
「そう」

 それっきり会話はなくなり、千倉はまた夕空へ視線を戻す。
 何となく居心地が悪くて、俺は別れの挨拶だけ言ってから屋上を後にした。

「ふぅ」

 あいつは——千倉柚子は、いつもあんな調子だ。
 話しかけても碌な会話が続かず、いつも煙に撒かれるというか、はぐらかされるような形で話が終わるのだ。
 端麗な容姿と果敢無げな雰囲気が人気を呼んでいるというが、俺にはあまり理解できない。
 といっても、人気があるのは男子だけで、女子からはそんなに人気はないらしい。
 3年の、専ら女子からは"頼れる御姉さん"として有名な"宍戸杏奈"が言っていた気がする。

「どうしたんだい?」
「へ?」

 噂をすればなんとやらってやつか。
 屋上から降りて壁に凭れかかっていると、件の宍戸杏奈さんが姿を現した。

「悩んでるね? 天城君」
「全く、貴方は先生なんですか?」

 全校生徒の顔と名前を覚えており、知らない人、知られていない人など全くいない。
 それが宍戸杏奈さんであり、また彼女の人柄でもある。
 当然と言えるのか、だから彼女は俺の名前と顔を知っている。勿論、千倉柚子の事も。

「ん? あたしは列記とした生徒だよ?」
「いやいや、全校生徒の顔と名前を覚えるだなんて、今時校長先生でもやりませんよ……」
「アハハ、面白い事言うねぇ。でもまあ、そうだねぇ。何たって、あたしは暇だからねぇ」
「お互い様。っていうか、暇だからってそこまでやりますか? 俺じゃ真似出来ないっすよ」
「ま、自分で言うのもなんだけど、あたしは努力家だからね。一度凝ったら極める。それがあたしなのさ」
「その結果が、それですか」

 ある意味というか、天才的だった。
 絶対将来は弁護士とかカウンセラーとか、そういう仕事に就いてそうな気がする。
 あとはまあ——保育士とかかな。

「それで、どうしたんだい? 千倉ちゃんと喧嘩でも?」
「いや、喧嘩じゃないですよ——って、何で千倉と会ったって分かるんですか!」
「顔に書いてあるよ」
「嘘だぁ」
「あはは、冗談冗談。まあ、あれだね。屋上から来たってことは、それ以外思いつかないのさ」
「なるほど」

 結論。この人は探偵にも向いているかもしれない。
 遵って、選べる進路はとても幅広そうだ。

「えっと……千倉ってほら、不思議な子っていうか」
「あぁ、分かるよ。あたしも最初は戸惑ったね。あの子、只じゃないオーラを纏ってる」
「?」

 どういうことだと俺が首をかしげていると、宍戸さんは俺に2歩ほど近付いた。
 ふわりとラベンダーが香る。この人、香水つけてるのか。

「世の中にはね、不思議なことが一杯あるんだよ。ないようなことも、実はあったりするのさ」
「?」
「ま、今からまた屋上へ戻ってみれば、はっきり分かるかもしれないねぇ」

 言われるがままに階段を登り、再び屋上へと出てみる——と。

「あ、あれ?」

 なんと、千倉の姿がなかった。

「いつのまに戻ったんだ?」
「戻ったんじゃないよ」

 後ろから追ってきた宍戸さんの声がする。

「あの子は、ここから飛んだんだよ」
「と、飛んだって——まさか……!」

 慌ててフェンスへと駆け寄り、地面を確認してみる。
 けれど、彼女——千倉の身体はどこにもなかった。

「天城くん、この際だからはっきり教えてあげるよ」
「な、何をですか?」
「千倉柚子——あの子はね、人間じゃないんだよ」

Re: 白銀の胡蝶 ( No.2 )
日時: 2015/06/07 12:17
名前: 煙草 (ID: nWEjYf1F)

 帰り道——夜の帳はすっかり降りて、時刻は午後の8時になった。

 あれから俺は、宍戸さんから"人ならざるもの"について聞いていた。
 彼女曰く、本やゲームの世界でしか存在しないような、妖精や吸血鬼といった生き物は実際に存在するらしい。
 一体何を言っているんだ——と思っていたが。
 そもそも、人類がそんな素敵(?)な発想が出来たのは、実際に存在しているものがあるからだという。

 たとえば錬金術。
 あらゆる元素を金に変換するという、古代どっかの国で流行ったとされる至高の技術だ。
 実際には、金を取り出すには至れなかったというが、専らゲームの世界では色んな物質を生み出している。
 たとえば魔法。
 呪文を唱えて炎を飛ばすとか、それこそよくあるアレだ。
 実際の魔法というのは、呪術や陰陽などの類に纏まっている。

 ——こんな具合に、実際に存在するからこそ、人類はそう言った発想を物語に持ち込める。宍戸さんはそう言っていた。
 最初こそ疑っていた俺だが、何というか彼女の話を聞いてるうちに、本当なのだろうなと思えるようになってしまった。
 そうでなければ、先の千倉の姿が消えたことに説明がつかないわけだし。

「んー……」

 気付けば俺は公園にいた。
 周囲より一際明るい街灯の下、ベンチに座り込んで考える。

 一先ず、人ならざるもの——即ち人でないものの存在については認めざるを得ないようだ。
 しかし千倉柚子——彼女の正体は一体何だというのだ。宍戸さんが言うには、とりあえず人間ではないらしいが。
 っつーか、俺まだ混乱してるな。突然姿を消した千倉と、宍戸さんの話とで。
 こうなったら、さっさと寝るのが吉か。
 明日は折角の休日だ。夜更かしでもしようかと思ったが、そんな気も削がれたわけだし。

「——人ならざるもの」
「?」

 誰だ?

「その存在が認められないというのなら、さっさと現実を目の当たりにしたほうがいいじゃろ」

 やけに落ち着いた、透明感溢れる少女の声——
 しかし、どこから聞こえてくる?
 周囲360度見渡しても誰もいない。

「誰だ?」
「お主の目先におるわ……」
「——あ」

 分かった。見えた。
 すぐそこにある茂みの中から、2つの赤い瞳がこちらを覗いている。
 ガサガサと音を立てて出てきたのは、見た目小学生の幼い少女だった。

「何時からかの……この世界は"不思議"という言葉を生み出した。それは何故か? わしのような存在があるからじゃ」
「あ? 誰だっての」
「やれやれ、人間はせっかちじゃのう……そんなんじゃから、寿命も100年しかないんじゃないかの?」

 このガキ、登場早々皮肉とは良い度胸だな。

「わしは吸血鬼——といっても、血ばっかり吸うようなコウモリみたいな輩とは違うがの」
「——」
「疑っとるか?」
「いいや。逆に確信が持てたわ」

 ガキとはいえ、それは体格的な見た目だけだ。
 しかし発する雰囲気やオーラは、ただならぬ修羅場を幾つも潜り抜けてきた、歴戦の猛者を風貌とさせている。
 何より、見た目の幼さの割りに落ち着いたような態度。
 先ほどの話をあわせれば、この子が人間じゃないことくらい信じるのも吝かでない。

「しっかし……」
「? なんじゃ?」
「どうしてそんな、ボロボロの服——ってか布切れしか纏ってねぇんだよ」
「あぁ、これか? 仕方あるまい」

 目の前にいる吸血鬼。
 彼女は服らしい服を着ておらず、どっちかといえばそこら辺のゴミ捨て場から拾ったような布しか纏っていない。
 その布でさえ彼方此方破れていて、おまけに黒く煤けていたり解れていたりとボロボロだ。

「わしは吸血鬼。当然、人間とは身体のつくりが違うから寿命も違ってくる。わしは彼此、100年の時を生きた。その間ずっとこの服じゃ。まあ、服といえるかどうかは別として、の」
「ひゃ……百年」

 やっぱり、か。吸血鬼と言い張る以上は、見た目と年齢の相違も多大なものとなるのだろう。

「しゃあぇねぇ」
「?」
「お前、ちょっとこっち来い」
「なんじゃ? こんな幼女の身体に欲情でもしたのかの?」
「ちげぇ! とにかくついてこい、新しい服くらい買ってやるよ……」
「——」

 何だ、ハトが豆鉄砲食らったみてぇな顔して。

「——変な奴じゃの」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
「そうか。じゃあいくぞ」

 どうせ俺は暇人だ。金くらい余ってる。
 それに、こういう奴らと仲良くしておけば、千倉の謎に近づく手がかりも発見できるかもしれないし。

Re: 白銀の胡蝶 ( No.3 )
日時: 2015/06/07 14:17
名前: せいや (ID: rBo/LDwv)

いいっす
いいっす!俺が個人的に好きな描写ですわ。
言葉を
あらゆる言葉をつかって楽しませてくれる。

更新たのしみしてまっす^ - ^


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