複雑・ファジー小説

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透明な花束
日時: 2017/01/02 12:33
名前: 亜咲 りん ◆1zvsspphqY (ID: r6RDhzSo)

 

 憎しみを束ねて、私たちは透明な花束を造り上げた。



■ flowers

*シリーズ

『傷』
【傷音】 >>06
【傷色】 >>09
【傷逢】 >>19

『セーラー少女』
【Nympho Sailor】*>>10-11
【Summer Sailor Girls】 >>21(挿絵:haru会長。様より)

『人魚のオルゴール』
【鳴らないオルゴール】 >>02 >>15 >>22

*短編

【星屑観覧車】 >>24(途中)(挿絵:haru会長。様より)
【ガラスの夜】*>>01(挿絵:とりけらとぷす様より)
【空色】>>03
【夕日の彼方】 >>04
【The girl of Ugly duck】 >>05
【零れる夢に】 >>12-13
【溺れたての子犬】 >>16(テーマ"溺れたての子犬"配布元:蒼様)
【うた】 >>17
【エメラルドグリーン】 >>18
【もしも、心臓が宝石でできていたのならば】 >>26
【Fallen Angel】 >>27
【葡萄】 *>>29
【女の子】 >>30
【雪降る喫茶店にて】 >>31


■ news

0410 執筆開始
0429 とりけらとぷす様より、挿絵をいただきました。
0717 題名変更(元は【ガラスの夜】)
0814 haru会長。様より挿絵をいただきました。
0905 haru会長。様より挿絵をいただきました。
 
  

エメラルドグリーン ( No.18 )
日時: 2016/07/27 12:13
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: hd6VT0IS)
参照: これは複ファなんだろうか……

 
 君と見た夢は、とても綺麗だった。

 エメラルドの海と、白い砂浜。そして、エメラルドの瞳と、白い肌。海風に君のブロンドの髪がさらさらと揺れて、波打った。

 まっすぐに海を見つめる君のエメラルドの瞳が、海に反射した太陽光を浴びてきらきらと輝いていたこと、今でもよく覚えているよ。

「綺麗……」

 ざぁん、と穏やかな海を見て、彼女はそう呟いた。
 それをきいて僕は、君の方が綺麗だよ、と口にしてしまいそうだったけれど、彼女の表情を見てやめた。

「ねえ。わがまま、きいてくれる?」
「君の言うことなら、なんでも」

 エメラルドの瞳がすっと細められ、そのまま彼女は目を閉じる。

「キス、して」

 乾いた唇が、そう、言葉を紡いだ。

「……いいよ」

 僕の黒髪と、彼女のブロンドの髪が、くすぐったそうにゆらゆらと揺れた。

 ゆっくりと顔を離していくと、彼女がまたふいに呟いた。

「ねえ。私たちが初めて出会ったときのこと、覚えてる?」
「ああ、もちろん」

 弱々しくこちらを見るだけの彼女の代わりに、力強く、頷く。

「この砂浜で、私は1人、貝殻拾いをしてた」
「そこで、旅行に来ていた僕と出会ったと。ここの砂浜には、綺麗な貝殻がたくさん落ちているからね」
「ええ。とても、とても綺麗な貝殻ばかり」

「けれど、それはどれも死んでしまったものたちだわ」

 ふふふ、と彼女は淋しそうに微笑む。

「貝殻を見ながら、私はよく思ったものだわ」
「……ちょっと」
「この貝殻は私だ、と」
「……駄目」
「貝殻を集める度、私は、」
「……やめろ」

「この貝殻と、同じようになっていくのかな、なんて。そう、思っていたの」

 彼女のぱさぱさの唇から零れた言葉は、僕のこころを打ち砕くのに充分だった。

「……絵里」
「さよなら、理央。あなたに会えて、良かった」

 彼女が小さく笑って、僕に手を振った。
 彼女はとても近くにいるはずなのに、なぜかとても遠くて……

「僕も、君に会えて良かったよ。けれど、僕は……」
「泣かないで。泣きそうになったら、貝殻を見て……」

「私はいつも、そばにいるから」

 そう呟いたきり、彼女は動かなくなった。
 僕の膝の上で、彼女は眠りについた。もう、2度と覚めない夢の中へと。





 君と見た夢のかたちは、きっと貝殻だ。
 エメラルドの綺麗な綺麗な貝殻。
 僕は、彼女が集めたそんな貝殻を見て、いつも思う。

 この貝殻はきっと、僕を生かすためにあるのだ。

 ならば僕は、彼女の貝殻<願い>の数だけ生きよう。
 数えるのも億劫だ。だから、とりあえず100年は生きてみようか____

 

傷逢 1 ( No.19 )
日時: 2016/07/30 14:50
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: /PzKOmrb)
参照: 会話文が苦手……みんな会話しないでほしい……(おい)

 
 歌声が余韻を残してすう……と空の彼方に溶けた。なにより、茶色の短い髪の少女からは、微かに喜びの音がきこえる。
 これほど純粋に、感情のままに歌っている人を『きいた』のは、初めてだった。

 無意識に、彼女に向かって、1歩踏み出した。しかし、伸びきった草を踏んだ音が意外に大きく、俺は慌てて立ち止まる。
 かなり近くにいたのにも関わらず、少女はその音に気づいた様子が無い。
 え、本当に気づかなかった?? もしかして、ここには滅多に人が寄り付かないから、犬の足音とでも思ったのか……?
 なら。

「……あの」

 クラスのみんなから低い、と評判の声が河原に響き渡る。あ、やべ。実はコンプレックスなのだ。
 怖がらせてしまったか、と頭を掻いていると、突然の声に驚いたのか、ややあって、彼女は俺の方を振り返った。
 大きな目がこちらを見つめる。明るい髪色の前髪はピン留めされていて、広いおでこが夕日に照らされて眩しく輝いていた。

「あ、えっと」
「……紫」

 不審なものではないことを証明しようとしたとき、彼女がなにか呟いた。

「……あなたの声、とっても素敵な色をしていますね」

 驚く俺に、手を後ろに組みながら彼女は突然そう言った。恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしながら。

 その姿に、なぜだか胸が高鳴った。

「……俺の名前は、安藤 真琴」

 気づけば俺は、彼女にそう名乗っていた。
 コンプレックスであるまるで女のようなこの名前も、このときは気にならなかった。

 彼女は目をぱちくりとさせながらもふわりと微笑み、

「私の名前は、静 夏美」

 と言った。




 これが俺と彼女の出会い。後に、運命の相手となる、衝撃的な出逢いだった。
 
 

Summer Sailor Girls ( No.21 )
日時: 2016/09/06 20:05
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: ont4q9aA)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=255.jpg

 
「なぁなぁ」
「なあに、夏」
「いや、めっちゃどうでもええことなんやけどさ、秋」

 夏のプールサイドに、腰掛ける少女が2人。そして青い空、爽やかな風が1陣。夏、と呼ばれたショートカットの少女が口を開く。

「私たち、これからどうなるんやろうね」
「いきなりやな」

 秋、と呼ばれたミディアムヘアの少女がそれに笑いながら応える。

「てきとーに勉強して、てきとーに大学行って、てきとーに就職するんちゃう?」
「そんでてきとーに結婚して、てきとーに子供産んで、てきとーに老後過ごして、てきとーに死ぬんやろ。すんごいてきとーな人生やん」
「それもそうだ」
「わははは」

 夏のプールサイドに、乾いた笑い声が2つ響いた。
 しばらく笑い続けて、また風が1陣通り過ぎると、夏、と呼ばれたショートカットの少女が呟く。

「なぁなぁ」
「なあに、夏」
「いや、めっちゃどうでもええことなんやけどさ、秋」
「今度はなにさ」
「大きくなったら何になりたい?」

 グラウンドから、部活動の掛け声が聴こえてくる。夏なのに元気だな、と思いつつ、秋、と呼ばれたミディアムヘアの少女は答えた。

「ウルトラマン」
「なんでやねん」
「前にとある小説で、そう聞かれたらこう答えろって書いてあった」
「あ、その小説知ってるかも。って全然違うやんか」

 2人の少女は、足をばたばたとさせて笑った。透き通ったプールの水がばしゃばしゃと音をたてて、青い空に飛び跳ねる。

「じゃあ、夏はどうなん?」
「え、うち?」

 夏、と呼ばれたショートカットの少女は、プールサイドに手をついて少し考える仕草をすると、静かに答えた。

「美人」
「ほんまそれな」

 2人の少女はふふふ、と笑い合った。

「あ、もうお昼。部室でお弁当食べよーよ」
「ええよ。……午前の部活サボったから、先生にこっぴどく怒られるんやろうな」
「ま、それもええやん」
「そうやね。てきとーに乗り切りましょ」
「そうそう。てきとーに、てきとーに」

「「さ、行こ!」」

 2人の少女はスカートを翻し、裸足で走り出す。



 夏のプールサイドに、青い空と爽やかな風が1陣。
 向こうで2人のセーラー少女が、楽しそうに飛び跳ねた。

 

鳴らないオルゴール ( No.22 )
日時: 2016/08/15 14:57
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: fQORg6cj)
参照: そろそろこの作品も終わりに近づいてきました……

 
[>>15の続きです]

 
 それは以前、私がたまたま見つけたものだった。

「わあ、お姫様だ」

 彼は箒で店内を掃除していて、私のその言葉を聞くと、幾分焦った表情でこちらへやってきた。

「それはどれのこと?」
「この、棚の奥の……暗くてよく見えないけど、ひらひらーってしたドレスが見えたの!」
「ああ、それか……」

 少し俯きがちに彼はその棚の奥からそれを取り出し、テーブルの上に置く。どうやらオルゴールで、小さな人形のような少女が装飾品のようだった。

「わああ……」

 幼い私でも思わず見とれてしまうほど、そのオルゴールは美しかった。
 自由に散らばる金色の髪と煌めくティアラ、憂いを帯びた緑色の瞳、胸元がひらひらとした水色のレースに覆われたドレスで、なるほど、お姫様だった。そして、それらは人形ではなく、陶器のような素材で作られていたのだ。
 ただ、これは完全なお姫様ではなかった。確かに童話に出てくるお姫様のように愛らしく、美しかったが、お姫様にあるはずのものが、このオルゴールには無かったのだ。

「これは、お姫様はお姫様でも、人魚のお姫様なんだ」
「ほんとだ。足じゃなくてお魚の尻尾が生えてる!」

 彼に言われてオルゴールの足元を見ると、水色のドレスから瑞々しい青色の鱗が生え、それは伝説にある人魚姫のようだった。

 この美しいオルゴールはきっと今まで聴いたオルゴールの音色のどれよりも素晴らしい音を鳴らすはずだ。そう思うといてもたってもいられなくなって彼に頼み込むも、

「それだけは駄目だ」

 と、彼にしては珍しく厳しい声が返ってきた。それでも私は諦めきれず、必死に懇願する。

「お願い! どうしても私、このオルゴールの音色が聴きたいの……」
「……本当に、それはさせてあげられないんだ」
「どうして?」
「それは……」

 目をきらきらとさせながら彼を見つめるも、彼は目線を合わそうとせず、口をつぐむ。と思ったら、私を落ち着かせるためか、彼が私の肩に手を置いた。なにか言葉を探しているのか、彼のブルーの瞳がゆらゆらと揺れていて、不覚にも私はどぎまぎしてしまった。

「……伝説で、人魚姫の歌を聴いた者は、どうなってしまうのか知ってる?」
「え? えーっと、お婆ちゃんは、永遠に海をさまよい続けるって言ってたよ」
「うん。だからこのオルゴールは、そういうものなんだ」
「そういうもの?」
「うん」

 彼は私の肩に手を置きながらも、オルゴールの方を見て呟く。

「このオルゴールにはね、人魚姫の呪いがかけられているんだ」

 だからここでは鳴らすことはできないんだ、と彼は続けた。

 人魚のオルゴールを見つめる彼の目線はどこか遠くを見ているようで、わたしはふいに不安になった。

 
 どこからか、潮風が吹き込んできた気がした。

 

星屑観覧車 ( No.24 )
日時: 2016/11/17 11:50
名前: 亜咲 りん ◆zy018wsphU (ID: 3JZ8Axjf)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=234.jpg

 
 あの日、それはまるで秘め事のように。

 君との大切な秘密は、もう崩れ去ってしまった。

『ねえ、知ってる? 星屑観覧車は夢を運んでくれるんだよ』

 毎晩毎晩、彼はその話ばかりをした。星屑だの、流れ星だの、観覧車だの。彼は生まれてこの方、遊園地というものに行ったことが無かったらしい。私は1度だけ行ったことがあったけど、そのときは特になにも思わなかった。だけど、嬉嬉として遊園地について語る彼の姿を見ているだけで、頬がほころんだ。
 夜に交わされる、甘やかな睦言。

 だからかな。あの日、私は夢を見た。

 そこは、夜の遊園地。動物の着ぐるみがやけにリアルで、星がとても綺麗だったことを覚えている。
 そして、なぜか少しぼやけている人混みの中に、彼がいた。
 必死に掻き分けて近づくと、彼はいつもの夜のようにきらきらと目を輝かせて、

『やっぱりすごいや』

 と、呟いた。

『僕はね、ずっと遊園地に来てみたいと思ってたんだ』
『どうして?』
『だって、ここは夢の国みたいじゃないか!』

 骨のように細い身体で、よくわからないままに、彼と私ははしゃいだ。私の身体を気遣ってあまり乗り物に乗せてくれなかった両親と遊園地に来たときよりも、よっぽど楽しかった。
 なにしろ、身体が重くないのだ。いつもは少し動くだけで疲れてしまうのに、このときだけは違った。
 人生ではじめてジェットコースターに乗り、メリーゴーランドに乗った。どこも苦しいところは無かった。
 それもその筈。だってここは____

『あ』

 突然、彼が立ち止まる。すっ、と表情が消えて、ふぅ、とため息をついた。

『……ねえ、**。最後にあれに乗らない?』
『え?』
『星屑観覧車に』
『うん、いいけど、最後って……』
『さあ、行こう!』

 にっこりと笑う彼に腕を掴まれて、そのまま観覧車まで走る。というか、さっきから観覧車は見当たらない。第一、彼の言うようなきらきらと光る星屑の観覧車なんか……そんなのあるわけ……

『!?』

 気づけば、私は観覧車に乗っていた。偽物でない証拠に、ゆっくりとした揺れを感じる。
 そして、私の目の前にはにこにこと笑顔を浮かべている彼がいた。その彼の周りには、星屑がきらきらと瞬いている。

『本当に、星屑観覧車はあったんだよ』

 彼はきらきらと虹色に輝く星屑を見ながら、そう呟く。

『ここは、僕がずっと夢で見ていた星屑観覧車とおんなじだ。ただ、少し違うのは、君がいること』
 
 彼の目が瞬くと共に、星屑たちも瞬く。彼の口が動くと共に、星屑たちもはしゃぐ。

『今日は僕についてきてくれてありがとう、**。残念だけど、ここで時間切れみたいだ。この観覧車もこのまま消えちゃうね』

 





そのうち追記します。


 


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